17歳の処方箋
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17歳の処方箋 (2002)
IGBY GOES DOWN
 映画『 17歳の処方箋 (2002) IGBY GOES DOWN 』をレヴュー紹介します。

映画『 17歳の処方箋 IGBY GOES DOWN 』を目次的に紹介する。
■映画『 17歳の処方箋 IGBY GOES DOWN 』のポスター、予告編および映画データ
■映画『 17歳の処方箋 IGBY GOES DOWN 』の解説
 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。
■映画『 17歳の処方箋 IGBY GOES DOWN 』の主なスタッフ
■映画『 17歳の処方箋 IGBY GOES DOWN 』の主なキャスト
■映画『 17歳の処方箋 IGBY GOES DOWN 』のあらすじ
■映画『 17歳の処方箋 IGBY GOES DOWN 』のスタッフとキャスト
■映画『 17歳の処方箋 IGBY GOES DOWN 』の<もっと詳しく>
 <もっと詳しく>は映画『 17歳の処方箋 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタバレ)です。※ご注意:映画『 17歳の処方箋 (2002) IGBY GOES DOWN 』の内容やネタバレがお好みでない方は読まないで下さい。
■映画『 17歳の処方箋 IGBY GOES DOWN 』の結末
■映画『 17歳の処方箋 IGBY GOES DOWN 』の更新記録

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幸の鑑賞評価: 8つ星 
■映画『 17歳の処方箋 (2002) IGBY GOES DOWN 』のポスター、予告編および映画データ
17歳の処方箋
17歳の処方箋
Links:  Official Web Site
Trailers:

QuickTime

上映時間 Runtime: 1:37
製作国 Country: アメリカ
USA
製作会社
Production Company:
Atlantic Streamline
Crossroads Films
Igby Productions Inc. [us]
全米配給会社 Distributer: MGM Home Entertainment [us]
Metro-Goldwyn-Mayer Distributing Corporation (MGM) [us]
United Artists [us]
全米初公開 Release Date: 2002/05/23 (Seattle International Film Festival)
2002/09/13 (limited)
日本初公開 R. D. in Japan: 2004/09/11 予定
日本公開情報 : エスピーオー
ジャンル Genre: コメディ/ドラマ
Comedy / Drama
MPAA Rating 指定: Rated R for language, sexuality and drug content.
日本語公式サイト
http://www.17-shohou.com/
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com.
Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc.
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■映画『 17歳の処方箋 (2002) IGBY GOES DOWN 』の解説

 映画『 17歳の処方箋 (2002) IGBY GOES DOWN 』は、サリンジャー J.D. Salinger の青春文学「ライ麦畑でつかまえて The Catcher in the Rye 」の現代版とも評される、バー・スティアーズ監督の初映画監督・脚本作品。映画『 17歳の処方箋 』は、各映画賞での評価も高く、キャストも豪華。味のある俳優の演技を楽しみたい方には、必見の映画だ。スーザン・サランドン、ジェフ・ゴールドブラムといった名女優、怪優の演技はもちろんのこと、主演の若手俳優キーラン・カルキンも光っている。又、各キャラクターに対して、色んな創造を膨らませることができ、観た後も余韻を楽しめる映画だ。『 17歳のカルテ (1999) GIRL, INTERRUPTED 』にあやかった様な邦題である『 17歳の処方箋 』の原題は「 IGBY GOES DOWN (イグビーは落ちる)」。現代のホールデン・コールフィールド Holden Caulfield であるイグビーはどうなっちゃうのかな?

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■映画『 17歳の処方箋 (2002) IGBY GOES DOWN 』の主なスタッフ

○『 17歳の処方箋 』の監督・脚本: バー・スティアーズ
10日間で男を上手にフル方法 (2003) HOW TO LOSE A GUY IN 10 DAYS 』(screenplay)等

 アンクレジットで校長先生として出演している脚本家のゴア・ヴィダルは、スティアーズ監督のおじさん。そういうコネもあって、『 17歳の処方箋 』のキャストは豪華なのかな?映画『 17歳の処方箋 』の主人公、イグビーのように、ハイソな階級出身のバー・スティアーズ監督は、兄弟がエイズで亡くなった後にこの作品を書いたそうだ。最初は映画にするつもりはなく、小説にするつもりだったらしい。イグビーのモデルは、もしかしてその亡くなった兄弟なのだろうか。

○『 17歳の処方箋 』の製作総指揮: デヴィッド・ルービン
ロミオ&ジュリエット (1996) WILLIAM SHAKESPEAR'S ROMEO & JULIET / ROMEO + JULIET
イングリッシュ・ペイシェント (1996) THE ENGLISH PATIENT
キャメロット・ガーデンの少女 (1997) LAWN DOGS
交渉人 (1998) THE NEGOTIATOR
リプリー (1999) THE TALENTED MR. RIPLEY
コールド マウンテン (2003) COLD MOUNTAIN 』等のキャスティング・ディレクター。

○『 17歳の処方箋 』の音楽: ヨーン=ウーヴェ・ファーレンクローク=ピーターセン
 80 年代に♪ロックバルーンは99( 99 Luftballons (原題) / 99 Red Balloons (英題) )♪がヒットしたドイツのバンド、ネーナ Nena のキーボードだった。

○『 17歳の処方箋 』の編集: ウィリアム・M・アンダーソン
1492・コロンブス (1992) 1492 CONQUEST OF PARADISE
トゥルーマン・ショー (1998) THE TRUMAN SHOW
イフ・オンリー (2004) IF ONLY 』等

○『 17歳の処方箋 』の衣装: サラ・エドワーズ
アップタウン・ガールズ (2003) UPTOWN GIRLS 』等

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■映画『 17歳の処方箋 (2002) IGBY GOES DOWN 』の主なキャスト

●キーラン・カルキン as イグビー・スローコム
サイダーハウス・ルール (1999) THE CIDER HOUSE RULES 』等

  まさにこのイグビーの役は、キーラン・カルキンのはまり役。『 シカゴ (2002) CHICAGO 』のリチャード・ギア Richard Gere が受賞した、 2003 年ゴールデン・グローブ賞コメディ・ミュージカル部門の男優賞に、本作『 17歳の処方箋 』のキーラン・カルキンも、『 アバウト・ア・ボーイ (2002) ABOUT A BOY 』のヒュー・グラント Hugh Grant 、『 アダプテーション (2002) ADAPTATION 』のニコラス・ケイジ Nicolas Cage 、『 パンチドランク・ラブ (2002) PUNCH-DRUNK LOVE 』のアダム・サンドラー Adam Sandler といった錚錚たるメンバーと共にノミネートされた。また、 2003 年MTVムービー・アウォードでブレイクスルー男優賞にもノミネートを受けた。

 『 パーティ★モンスター (2003) PARTY MONSTER 』で 9 年ぶりにスクリーンに復活したマコーレー・カルキン Macaulay Culkin の弟。

【イグビー・スローコム】 本名は、ジェイソン・スローコム・Jr.。子供の頃、ディグビーという縫いぐるみがあって、彼はそれを“イグビー”と呼んでいた。悪いことをしては、イグビーのせいにしていた彼を戒めるために、母ミミは末息子をイグビーと呼ぶようになった。争いと混乱と矛盾に満ちた息苦しい世界で成長してきたイグビーは、自らを生んだ機能障害に陥った生活に希望もなく耐えていて、もっとリアルなものに憧れている。イグビーは好奇心いっぱいのいたずらっ子。反抗という唯一の効果的なツールとして、プレップ・スクール(アメリカのエリート私立中等学校)を次々と落第している。

●クレア・デーンズ as スーキー・サーパスティン
若草物語 (1994) LITTLE WOMEN
ロミオ&ジュリエット (1996) WILLIAM SHAKESPEAR'S ROMEO & JULIET
めぐりあう時間たち (2002) THE HOURS
ターミネーター3 (2003) TERMINATOR 3: RISE OF THE MACHINES 』等

 若い頃のクレア・デーンズのイメージが強いので、老けたなぁと感じた。 1979 年生まれだから、まだ 24 歳くらいなのにやつれて見えたのは、悩みを抱えている女の子を演じるためだったのかな?

【スーキー】  スーキーは現実的な女の子。独立心があって自由な心を持ち、自己主張が強い。イグビーのインスピレーションの源。アイスクリーム・サンデーと自然な感じと哲学的な議論が大好き。

●ジェフ・ゴールドブラム as D.H
ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク (1997) THE LOST WORLD: JURASSIC PARK 』等

 背が高くて、独特の風貌と雰囲気を持つジェフ・ゴールドブラムは、本作『 17歳の処方箋 』の中で、とてもカッコイイ。リッチな成功者を、颯爽としたスタイルとどことなくコミカルな感じで演じていて GOOD ! 私は好きだナ、この俳優。

【D.H】  リッチな成功者で、物質主義者のD.Hは、誠実でないのを隠しはしない。イグビーの名付け親。D.Hの新たなペット・プロジェクトは、彼が考えるイグビーのあるべき姿にイグビーを作り上げること。彼の理想はいつも紙の上、つまり契約書の上だけにある。

●ジャレッド・ハリス as ラッセル
Mr.ディーズ (2002) MR. DEEDS 』
バイオハザード アポカリプス (2004) RESIDENT EVIL: APOCALYPSE 』等

 『 グラディエーター (2000) GLADIATOR 』『 ハリー・ポッターと賢者の石 (2001) HARRY POTTER AND THE SORCERER'S STONE / HARRY POTTER AND THE PHILOSOPHER'S STONE 』『 モンテ・クリスト伯 (2002) THE COUNT OF MONTE CRISTO 』『 ハリー・ポッターと秘密の部屋 (2002) HARRY POTTER AND THE CHAMBER OF SECRETS 』『 ケイナ  (2003) KAENA LA PROPHETIE (原題) / KAENA THE PROPHECY (米題) 』等のリチャード・ハリス Richard Harris ( 1930-2002 )の息子。名優の息子も名優って感じで、曲者な役を好演している。

【ラッセル】 ラッセルは派手やかで芝居じみてて機知に富んでいる。彼はパフォーマンス・アーティスト(数年間実際のプロジェクトはないが)で、レイチェルの親友。パーティに出かけるのが好きで、忘れていたことを指摘するのが大好き。

●アマンダ・ピート as レイチェル
チェンジング・レーン (2002) CHANGING LANES
“アイデンティティー” (2003) IDENTITY 』
恋愛適齢期 (2003) SOMETHING'S GOTTA GIVE
隣のヒットマンズ 全弾発射 (2004) THE WHOLE TEN YARDS 』等

【 レイチェル】 美しいがレイチェルはD.Hの愛人。自分のことをプロの振り付けしだと紹介するレイチェルだが、彼女は踊らないダンサー。絵を描かない画家のラッセルと同様、気ままで自由な人種なのだ。

●ライアン・フィリップ as オリバー・スローコム
ゴスフォード・パーク (2001) GOSFORD PARK
Re:プレイ (2003) THE I INSIDE 』等

 ライアン・フィリップは実際に観た映画では、『 ゴスフォード・パーク (2001) GOSFORD PARK 』しか知らないけど、本作『 17歳の処方箋 』では『 ゴスフォード〜 』の時より複雑な人格を演じているせいか、イイ感じだった。

 『 リトル★ニッキー (2000) LITTLE NICKY 』『 キューティ・ブロンド (2001) LEGALLY BLONDE 』『 メラニーは行く! (2002) SWEET HOME ALABAMA 』『 キューティ・ブロンド/ハッピーMAX (2003) LEGALLY BLONDE 2: RED, WHITE & BLONDE 』等のリース・ウィザースプーン Reese Witherspoon の夫。

【オリバー・スローコム】 少なくとも表面上は典型的な完璧な息子であるスローコム家の長男。彼の興味は権力、金、体面、印象。オリバーは熱烈な資本家であることを誇りに思っているのだ。オリバーはまた、イグビーの監視に悩まされる。

●ビル・プルマン as ジェイソン・スローコム
インデペンデンス・デイ (1996) INDEPENDENCE DAY
THE JUON/呪怨 (2004) THE GRUDGE 』等

【ジェイソン・スローコム】  複雑で感じやすくてもろいイグビーの父、ジェイソンは、ついに情緒不安定。精神分裂症を患うまで、彼はイグビーの人生に大きな影響を与えていた。彼はイグビーの未来の前兆であり、シンボルであるかもしれない。

●スーザン・サランドン as ミミ・スローコム
『 アトランティック・シティ (1980) ATLANTIC CITY 』< 1982 年アカデミー主演女優賞ノミネート>
『 テルマ&ルイーズ (1991) THELMA & LOUISE 』< 1992 年アカデミー主演女優賞ノミネート>
『 ロレンツォのオイル/命の詩 (1992) LORENZO'S OIL 』< 1993 年アカデミー主演女優賞ノミネート>
若草物語 (1994) LITTLE WOMEN
『 依頼人 (1994) THE CLIENT 』< 1995 年アカデミー主演女優賞ノミネート>
『 デッドマン・ウォーキング (1995) DEAD MAN WALKING 』< 1996 年アカデミー主演女優賞受賞>
バンガー・シスターズ (2002) THE BANGER SISTERS
ムーンライト・マイル (2002) MOONLIGHT MILE
Shall we Dance? シャル・ウィ・ダンス? (2004) SHALL WE DANCE? 』等

 本作『 17歳の処方箋 』では、 2003 年ゴールデン・グローブ賞の助演女優賞にノミネートされた。受賞しても良かったんじゃないのと思うくらい、彼女の演技は光っていた。いい女優さんデス。

【ミミ・スローコム】 几帳面で、気の強いイグビーの母、ミミは異常に自己投薬にハマっている。長男オリバーはうまくいっているが、次男イグビーのことで悩んでいる。自分が困らない限り、二人の息子には最高のものを望んでいる。彼女はいつもどんな議論でも自分がしきらなければ気がすまない。流行り病の神経症みたいに、ずっとエキセントリックな状態で人生を過ごしていたい人。

●ローリー・カルキン as 10 歳のイグビー
サイン (2002) SIGNS 』等

 主人公イグビーを演じるキーラン・カルキンの弟。

●ピーター・アンソニー・タムバキス as 13 歳のオリバー
シックス・センス (1999) THE SIXTH SENSE
リトル★ニッキー (2000) LITTLE NICKY 』等

●セリア・ウェストン as バニー〔D.Hの本妻〕
リプリー (1999) THE TALENTED MR. RIPLEY
イン・ザ・ベッドルーム (2001) IN THE BEDROOM
光の旅人 K−PAX (2001) K-PAX
エデンより彼方に (2002) FAR FROM HEAVEN
10日間で男を上手にフル方法 (2003) HOW TO LOSE A GUY IN 10 DAYS
ハルク (2003) THE HULK
ニューオーリンズ・トライアル (2003) RUNAWAY JURY
ヴィレッジ (2004) THE VILLAGE 』等

●エリザベス・ジャガー as リサ
 ミック・ジャガー Mick Jagger とジェリー・ホール Jerry Hall の娘。ランコムの若い娘用化粧品、エルセーエム LCM のイメージ・キャラクターとして活躍している彼女。その 2 年間の契約金は、 50 万ポンド( 1 ポンド=約 200 円換算でおよそ 1 億円)らしい。当時 18 歳でそんな大金を手にしても、ミックの娘なら“ I can't get no satisfaction ! ”かも。本作『 17歳の処方箋 』はエリザベス・ジャガーの映画デビュー作。一体いくらで出演したのかしら?でも、どの辺りに登場してた?

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■映画『 17歳の処方箋 (2002) IGBY GOES DOWN 』のあらすじ

 イグビー・スローコム(キーラン・カルキン)は、反抗的でイヤミっぽい 17 歳。イグビーは古い特権階級の窮屈な世界である家族とうまくいっていない。父ジェイソン・スローコム(ビル・プルマン)は精神分裂症で何年も入院中、自分自身に夢中の母ミミ・スローコム(スーザン・サランドン)はよそよそしく、兄オリバー(ライアン・フィリップ)は詐欺師のような若い共和党主義者。イグビーは外により良い世界があるに違いないと思い、それを探し始める。

 幸運にもプレップ・スクールを落第したイグビーだが、恐ろしい中西部にある陸軍士官学校に入れられる。盗んだ母親のクレジット・カードを持って、イグビーは逃亡。しかし、失敗し、今度はドラッグと手を切るための更生施設に入れられる。夏は、ニューヨークにいる彼の名付け親、D.H(ジェフ・ゴールドブラム)の賃貸物件を改装するアルバイトするために、イグビーはNYへ。そこでイグビーは、D.Hの愛人で振付師のレイチェル(アマンダ・ピート)や退屈しきっている女の子スーキー(クレア・デーンズ)といった、常軌を逸した人々と出会う。家庭という機能を失ったスローコム家から自由になろうとするイグビーの努力は、喜劇から悲劇へと転じ…。

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【『 17歳の処方箋 』のスタッフとキャスト】
監督: バー・スティアーズ Burr Steers (Directed by)
製作: リサ・トーネル Lisa Tornell (producer)
    マルコ・ウェーバー Marco Weber (producer)
製作総指揮: ヘレン・ビーデルストン Helen Beadleston (executive producer)
    ヴァネッサ・Coifman Vanessa Coifman (executive producer)
    フラン・ルッチ Fran Lucci (executive producer)
    デヴィッド・ルービン David Rubin (executive producer)
脚本: バー・スティアーズ Burr Steers (written by)
音楽: ヨーン=ウーヴェ・ファーレンクローク=ピーターセン Jörn-Uwe Fahrenkrog-Petersen (Original Music by)
撮影: ウェディゴ・フォン・シュルツェンドーフ Wedigo von Schultzendorff (Cinematography by)
編集: ウィリアム・M・アンダーソン  William M. Anderson (Film Editing by)
    ロバート・フラゼン Robert Frazen (Film Editing by)
    パードリック・マッキンレー Padraic McKinley (Film Editing by)
美術: ケヴィン・トンプソン Kevin Thompson (Production Design by)
衣装: サラ・エドワーズ Sarah Edwards (Costume Design by)

出演: キーラン・カルキン Kieran Culkin as Jason 'Igby' Slocumb, Jr.
    クレア・デーンズ Claire Danes as Sookie Sapperstein
    ジェフ・ゴールドブラム Jeff Goldblum as D.H. Banes
    ジャレッド・ハリス Jared Harris as Russel
    アマンダ・ピート Amanda Peet as Rachel
    ライアン・フィリップ Ryan Phillippe as Oliver 'Ollie' Slocumb
    ビル・プルマン Bill Pullman as Jason Slocumb
    スーザン・サランドン Susan Sarandon as Mimi Slocumb
    ローリー・カルキン Rory Culkin as 10-Year-Old Igby
    ピーター・アンソニー・タムバキス Peter Anthony Tambakis as 13-Year-Old Oliver
    ビル・アーウィン Bill Irwin as Lt. Ernest Smith, Pershing Academy
    キャサリン・ガティ Kathleen Gati as Ida
    ギャノン・フォレスター Gannon Forrester as Little Cadet
    セリア・ウェストン Celia Weston as Bunny
    エリザベス・ジャガー Elizabeth Jagger as Lisa Fiedler

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ストーリー展開の前知識やネタバレがお好みでない方は、読まないで下さい。
■『 17歳の処方箋 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタバレあり)

【 17歳の処方箋 第01段落 】  大きなイビキの音。母ミミ・スローコム(スーザン・サランドン)が豪華なベッドで眠っている。そのベッドの上の両脇には、母を見守る 2 人の息子、兄オリバー(ライアン・フィリップ)と弟イグビー(キーラン・カルキン)。息子たちの会話は何だか怪しい。どうやら 2 人は大量の睡眠薬を飲ませた母親がこと切れるのを待っているようなのだ。ガーガーとイビキをかいて、いっこうに死ぬ気配のない母ミミの頭に、兄オリバーがビニール袋を被せ、その袋の上から首にハンカチを巻いた。袋の中の酸素はすぐになくなった。母の目が大き見開いたかと思うと、そのまま動かなくなった。ヨーグルトのようなものが付いたスプーンがベッドから床に落ちた。イグビーは母親を眺めた…。

【 17歳の処方箋 第02段落 】  イグビーは父ジェイソン(ビル・プルマン)との子供の頃の思い出を振り返った。イグビー(ローリー・カルキン)は父と兄オリバー(ピーター・アンソニー・タムバキス)と一緒にクラシック映画を観に行った。映画館から出て、仲良く三人で歩道を歩いた。「いつから仕事に戻るの?」オリバーが不安そうに父に尋ねた。病気は治っているけど、本調子じゃない等と答える父は、何だかちょっと普通ではない感じだ。また、こんなこともあった。家族 4 人で食卓を囲んでいた時のことだ。スローコム家は上流階級だから、食器は豪華で、 4 人の家族はそれぞれ長方形のテーブルの各辺に座っている。母ミミが向かいに座る父ジェイソンに、お風呂に入るように注意した。仕事に行かなくなった父に母はイヤミだった。食後に薬を飲むように言った母に、父は薬を投げつけ、席を立った。母はそのうちの一粒を飲んで、気を取り直そうとしていた。少しすると、素っ裸の父が食卓に戻った。ママの言うことは正しいと言った父は、グラスを手に持ち、乾杯の掛け声を上げた。

【 17歳の処方箋 第03段落 】  イグビーはパパが大好きだった。イグビーは、誕生日パーティにやって来た道化役が怖くて、自分の部屋のクローゼット(バスルーム?)に閉じこもった。ママはそんなイグビーを甘やかすなと言ったが、パパは椅子に座ってイグビーが出てくるのを待っていてくれた。パパは、ここに居るのはイグビーとパパだけだと言って優しく微笑み、イグビーを安心させた。イグビーがパパの傍に行くと、パパは紙でできた誕生日の王冠をイグビーの頭にのせた。

【 17歳の処方箋 第04段落 】  アメリカ北東部のコネティカット州にあるプレップ・スクール。 17 歳のイグビーは校長室で今まさに放校処分を受けようとしているところ。しかし、イグビーにはそれでも悪びれる様子はない。イグビーを迎えに来た母ミミに、校長先生は兄オリバーはコロンビア大学で優秀な成績を修めていると褒めた。しかし、弟イグビーは正反対!校長室から出てくると、親に恥をかかすのが楽しいかとミミは黒い皮の手袋でイグビーを打った。精神異常の父、体面しか考えない母親、感情を出さないエリートの兄という家族構成では、末っ子イグビーが反抗的で皮肉っぽくなるのも無理はない気がする。何度も退学しては転校を繰り返しているイグビーに、母ミミはもう次の学校を選んでいた。士官学校だ。

【 17歳の処方箋 第05段落 】  まさか本当に入れられるとは思っていなかったが、イグビーは士官学校生となった。厳しい規則を潜り抜け、イグビーはドラッグにハマッた。そして上流階級出身だからだろうか、他の生徒から虐められた。白い大きな袋を被せられたイグビーは、いじめっ子たちに囲まれ、箒で殴られる。倒れるイグビーに、その中の一人が叫んだ。“ Igby goes down! (イグビーが倒れる!)”

【 17歳の処方箋 第06段落 】  士官学校の制服を着たイグビーは、母ミミと兄オリバー、そして名付け親である、資本主義社会の成功者、D.H(ジェフ・ゴールドブラム)と会食した。ミミは嬉しそうにイグビーの友人の話をしようとしたが、イグビーは嘘かホントかその親友は小銃の爆発で死んだと話した。

D.H: I believe, umm, that certain people in life are meant to fall by the wayside; to serve as warnings to the rest of us; signs posts along the way. (思うに、うーん、道半ばで死ぬ者は、残された者にとっては目標に向けての警告役だ。)
イグビー: To where? (目標って?)
D.H: Success. (成功さ。)
オリバー: Our father would be a 'slippery when schizophrenic' sign, for instance... (例えば、僕達の父は、精神分裂症になるとダメッていう警告役だね。)
〔ちょっと気まずい雰囲気〕
オリバー: ... along the highway of life. (人生のハイウェイにおいてさ。)

 D.Hは、夏休みにNYにある自分の賃貸物件の改装のアルバイトをしないかとイグビーを誘った。イグビーは、D.Hが週末に別荘に泊まってもいいと言ってくれたので、喜んでNY往きを受けた。

【 17歳の処方箋 第07段落 】  イグビーは会食をした日の翌朝 7 時には士官学校へ向けて出発する予定だったが、イグビーには別のプランがあった。イグビーはミミのカバンからクレジット・カードと常備薬を盗み、逃亡する。シカゴのヒルトンホテルにやって来たイグビーは、ミミのクレジット・カードと自分で偽装した母親からの息子を宿泊させて欲しいという手紙をホテルのフロントマンに見せた。ホテルに部屋を取ることができたイグビーは、部屋の中でミミの薬を使ってハイになろうとしながら、友人宅に電話をかけ、その妹とデマカセの話をしている。すっかり自分の逃亡プランが成功したと思っているイグビーだが、大人はそんなに甘くない。フロントマンはミミに電話をしていた。ミミに頼まれた士官学校の先生がイグビーを連れにホテルの部屋までやってきたとき、イグビーは薬ですっかりおかしくなっていた。イグビーは士官学校ではなく、麻薬を断つ施設に入る羽目になった。

【 17歳の処方箋 第08段落 】  ミミは又してもイグビーの失態にイライラしっぱなしで、メイドにあたっている。施設でも、イグビーは大人の神経を逆なでする反逆児。セラピストの先生をバカと言ってイラつかせ、頭を殴られる。だけど、いっこうに反省する様子のないイグビー。

【 17歳の処方箋 第09段落 】  ミミは病院に検査入院した。オリバーがミミに付き添っている。ミミはオカマっぽい医師に部屋から出て行けと言えるくらい元気みたいだが。

【 17歳の処方箋 第10段落 】  施設に居るイグビーに会いにD.Hがやって来た。D.Hは、夏にはイグビーに働いて欲しいのだから、薬と縁を切るようにとイグビーを励ました。そして、イグビーに一度も面会に来ていないミミの状況を説明した。ミミは乳癌だった。治療を受ければ病気は治るが、乳房は切除しなければならないと深刻に話すD.Hに、イグビーは母親のことは何も聞いていなかったみたいに、突然口を開いた。「あの海辺にある別荘だね。」母を憎むイグビーにとっては、夏休みを過ごすNYの方が関心事なのだ。

【 17歳の処方箋 第11段落 】  夏休み。D.Hに車で迎えに来てもらったイグビーはNYへ。車の中、D.Hは皆が責任を持って暮らすには、家族にも契約が必要だとイグビーに説いた。その紙が再出発の原点になると、D.Hはイグビーに青い契約用紙を渡した。

【 17歳の処方箋 第12段落 】  退院したミミは、家にはまだ戻らず、ホテルにいた。オリバーはトイレで吐いているミミに、休んでから家に帰るようにと気遣うが、ミミは明日イグビーの入学を頼むためにアンソニー高校の校長に会うと言ってきかなかった。夏休みの間、D.Hがイグビーから 2 ヶ月間ずっと母親をどれだけ憎んでいるか聞かされることになると話すミミに、オリバーはイグビーが好きな話題だと答える。イグビーには生まれつき憎まれていると、ミミはまた吐いた。吐きながらミミは、夏休みの平日はイグビーをオリバーの大学寮に、週末はD.Hのところに泊めるように命令した。オリバーが夏休み中、弟の子守だと嘆くと、ミミは昔から最悪の兄だと毒づいた。オリバーはミミに聞こえないようにポツリと言った。「でも憎まれてはいない。」

【 17歳の処方箋 第13段落 】  イグビーはNYのD.Hの賃貸物件であるフローリングの床が広がる一室で改装工事に精を出さずに、仕事の同僚のくだらない話を聞いていた。そこへD.Hが美しくセクシーな若い女性レイチェル(アマンダ・ピート)を連れてさっそうと現れた。この部屋は愛人レイチェルのためにD.Hが借りたものだ。イグビーの目は、背中の大きく開いた黒い超ミニのワンピースを着たレイチェルに釘付け。ちょっぴりドキドキしながら仕事をし始めるイグビー。

【 17歳の処方箋 第14段落 】  D.Hの海辺の別荘でのパーティ。イグビーは砂浜の方へ歩いていく一人の女の子が気にかかり、後を追う。何となく不機嫌そうなその彼女、スーキー・サーパスティン(クレア・デーンズ)は、パーティに集まっているハイソな連中の娘ではなく、パーティのために雇われたケータリング会社の人間だった。

【 17歳の処方箋 第15段落 】  別荘の中、D.Hは妻バニー(セリア・ウェストン)にレイチェルをダンスの振付師だと紹介した。たぶんD.Hは例の賃貸物件の部屋でバニーにレイチェルからダンスを習わせ、その報酬と見せかけてレイチェルにお金を渡す算段だったと思われるが、バニーはダンスには興味を示さず、スローコム家の兄弟に直行した。バニーは 2 人が大好きみたいだ。そしてまたすぐにバニーは夫D.Hを連れて、他のパーティ客のところへ行ってしまった。当てが外れた上に、バニーの妻面を目の当たりにしたレイチェルは、ちょっとご機嫌斜め。不機嫌にその場にいたスローコム兄弟に話しかけた。

【 17歳の処方箋 第16段落 】  オリバーは、自分がエリート大学生であることと、イグビーがプレップ・スクール入学待ちの落ちこぼれであることをレイチェルに的確に説明。すると、ケータリングのバイトに来ている大学生のスーキーが話に割り込んできた。美しくて、自分と同じようにリルケの詩が好きみたいなスーキーのことをオリバーは気に入った感じ。オリバーは、バーに戻るスーキーに付いて行った。

【 17歳の処方箋 第17段落 】  イグビーはレイチェルに自分の母親が死んだら、D.H夫妻と一緒に暮らすと話し、二人の仲を裂かないでと頼んだ。でも、そんなことより、イグビーは美人のレイチェルに心ときめいている。レイチェルは、D.Hをヤキモキさせるために、イグビーに親しげに振舞った。D.Hはバニーと一緒にお客を接待しながら、レイチェルの思惑通りに気が気でない感じ。レイチェルは近くに来たら、あのスタジオに寄ってねと、イグビーに住所(電話番号?)を書いた紙を渡した。

【 17歳の処方箋 第18段落 】  夏休みは終わり、イグビーはミミが手続きをした高校へと向かわなければならない。オリバーが手配したリムジンに乗り、制服を着たイグビーは空港へと向かう。が、イグビーは母親の誕生日プレゼントを買うからリムジンを下ろして欲しいと、運転手にチップを渡した。上流階級の人間は、未成年でも下々の者がチップに弱いことを知っているのだ。イグビーはNYの町を走りに走った。

【 17歳の処方箋 第19段落 】  イグビーが向かった先は、この夏自分が改装したレイチェルのスタジオ。生活感のないガランとしたその部屋には、レイチェルの友人で、派手〔ホモ?〕っぽい男のラッセル(ジャレッド・ハリス)がいた。ラッセルはパフォーマンス・アーティストだそうだ。レイチェルは突然現れたイグビーが誰なのか分からなかったが、イグビーが説明するとすぐに思い出してくれた。イグビーは彼女にここに隠れたいと頼んだ。D.Hとの関係を壊したくないレイチェルは渋ったが、なぜかそんな彼女をラッセルが咳払いでプッシュしてくれた。レイチェルは、スタジオのドア近くの窓枠にD.Hが使う鍵が置いてあるから、それを使うようにイグビーに言った。

【 17歳の処方箋 第20段落 】  ミミがD.H宅に訪れ、妻バニーと話をしている。バニーは、ミミにもしものことがあっても、オリバーとイグビーを養子にして育てるのはとても嬉しいとニッコリ微笑み、この何年もの間、精神的だけでなく経済的にも 2 人の父親であったD.H以外に今さら誰に 2 人の息子を任せられるだろうかと言った。しかし、その言葉を素直に受け取るわけにはいかないようだ。バニーの次の言葉は、自尊心の高いミミの頭にカチンときた。「二枚目だけど病気のご主人、収入がなくなって、あなたも苦労した。」ミミは子供のいないバニーにイヤミっぽく言った。「(子供が)出来やすいの。」そして「バニー、あなたは哀れな女。」とだけ言い、玄関の鏡に口紅で書いた“ Fuck you. ”の文字を残して出て行った。

【 17歳の処方箋 第21段落 】  イグビーはレイチェルとHした。でも 2 人ともそれ以上の気持ちはない。お金の無いイグビーは、レイチェルにD.Hからお金を借りて欲しいと頼んだ。レイチェルはD.Hとの関係は壊れやすいものだと答え、ラッセルから仕事を貰うようにイグビーに勧めた。お金を貰う当てがなくなったイグビーは自分の持ち物を売ろうと、町で座り込んでいた。そんなイグビーに、海辺の別荘のパーティで出会ったスーキーが気付き、一緒にマリファナを吸おうと誘った。イグビーはすぐに彼女に付いて行った。

【 17歳の処方箋 第22段落 】  セントラル・パークでスーキーはセッセとマリファナを紙に巻く。そうしながらイグビーと 2 人で話をした。スーキーはベニントン大学の学生だが、お酒やダイエット・ピル、緊張、人生から立ち直る時間が欲しくて、今は休学中。スーキーも、ヴァケーションを延長しているイグビーのように悩める若者のようだ。そんなスーキーに、イグビーはパパも 6 年も苦悶していると答えた。

【 17歳の処方箋 第23段落 】  士官学校の教官がミミに頼まれ、イグビー捜索のために、イグビーが夏を過ごしたところを見回りに来た。教官はレイチェルのスタジオにやって来たが、ラッセルがうまく追っ払ってくれた。最初、スタジオに泊まるのは 2、3 日だけだとレイチェルは言っていたが、イグビーはそれ以上の期間ここにいる。そして、スーキーとのデートも楽しんだ。スーキーは大好きなアイスクリーム・サンデーを頬張りながら、イグビーに何をするつもりなのか訊いた。イグビーは、嘘かホントか、この町を出て平和部隊に入りたいと答えた。新しい経験をして、人生の意義を知りたいのだそうだ。そんなイグビーにスーキーは、平和部隊に入るには大学に 3 年在籍しなけらばならないと、お姉さんらしくアドヴァイス。まだ高卒検定試験も合格していないと不安そうに話すイグビーに、スーキーは、イグビーがその検定試験を受けに行く時に一緒に行くと言ってくれた。つっぱているイグビーだが、本当はとても不安。イグビーにはスーキーの言葉が優しく響いた。

【 17歳の処方箋 第24段落 】  イグビーはスーキーをレイチェルのスタジオに連れて行った。スーキーをドアの外で待たせ、窓枠の上の鍵を取って自分が先に中に入ると、なんとD.Hが来ていた。それもズボンをズリ落とした状態で。イグビーは固まった。D.Hは、高校に行かずに家族から逃げているイグビーを叱りつける事はしなかった。愛人と遊んでいたモードから、イグビーの名付け親モードに頭をすぐに切り替え、ズボンを元の状態に戻しながら、ミミに生きていることを伝えるようにイグビーに言った。そして、顔色が悪いのでステーキでも食べろとお金も渡した。D.Hの顔は穏やかだが、心は怒っていると、イグビーは感じている。D.Hはレイチェルには何も言わずに部屋を出て行った。これでD.Hとレイチェルの壊れやすい関係は壊れてしまった。レイチェルは怒ってイグビーに殴りまくった後、急いでD.Hを追った。

【 17歳の処方箋 第25段落 】  レイチェルに殴られ、倒れたままのイグビー。スーキーが部屋の中に入ってきた。イグビーはスーキーと愛し合った。マットの上で寄り添いながら、スーキーはイグビーになぜ士官学校に入ったのか尋ねた。イグビーは母ミミに反抗して次々に学校を辞めたので、その復讐として士官学校へ入れられたと話した。期待に応えない息子である自分への母の仕打ちから、父ジェイソンが精神分裂症になったのも、父の母に対する戦いからだとイグビーは考えるようになっていた。イグビーはレイチェルに父ジェイソンのことを話した。

【 17歳の処方箋 第26段落 】  朝、小さなイグビーは、バスルームで歯を磨いていた。 15 分以内に身支度を終えないと、パパに送ってもらえないというママの声が聞こえる。ところが、そのパパがまだパジャマ姿でバスルームに現れ、パジャマを着たままシャワーにかかり始めた。パパはシャワーを浴びながら大声で叫びだし、挙句、シャワー室のすりガラスの扉を叩き割った。びしょぬれの白いパジャマにパパの腕から流れる真っ赤な血。座り込んでいるパパがイグビーに言った。“ You see it, Igby? I feel this great, great pressure coming down on me. It's constantly coming down on me. It's crushing me. (分かるか、イグビー?この大きな大きなプレッシャーが襲い掛かってくるのをパパは感じるんだ。いつもパパは襲われて、潰されてしまうんだ。)”

【 17歳の処方箋 第27段落 】  夜、イグビーはスーキーと町を歩きながら、彼女に父親のことを尋ねた。スーキーは今まで父親の話題を口にしたことがなかったからだ。スーキー曰く、彼女の父親はユダヤ教の神父で、母親は大学で詩を教えている詩人。スーキーは、両親は理想主義者で頭のいいナルシストだと評し、スーキー自身、そういう所が両親に似ていると言った。でも、スーキーは養女なのだそうだ。そんなスーキーをイグビーが茶化した。
イグビー: How many Vassar professors and intellectual theologians beget nymphomaniacal, pseudo-Bohemian JAPs? (大学教授と知的な神学者の子供が、色情魔で似非ボヘミアンなユダヤのお嬢様なの?)
スーキー: I am not a JAP. (私はユダヤのお嬢様じゃないわ。)
※JAP…〔軽蔑〕Jewish American Princess ユダヤのお姫さま[お嬢さま](裕福なユダヤ系アメリカ人家庭の娘).「EXCEED英和辞典」

 スーキーは食べていたアイスクリームをイグビーの顔に付けた。スーキーの悩みの中には、ユダヤ人であることも含まれているのだろうか。

【 17歳の処方箋 第28段落 】  レイチェルのただっ広い部屋のマットの上で、裸で寝ているイグビーとスーキーを、無表情にじっと見ているオリバー。オリバーはD.Hからイグビーの居場所を聞いたのだ。オリバーの存在に気付いた 2 人。スーキーが服を着るために、その場から離れると、オリバーはイグビーにヴァケーションはこの場で終わりだと言った。未成年なのだから教育を受けなければならないと言うオリバーに、イグビーは金曜日に高卒検定試験を受けると言い返す。服を着替えたスーキーが出て来て、自分がイグビーに受験を勧めたと言った。イグビーに金曜日に会う約束をして部屋を出て行こうとするスーキーに、オリバーはD.Hのお金でタクシーで送って行こうと申し出た。

【 17歳の処方箋 第29段落 】  タクシーの中、オリバーは“イグビー”という名前の由来をスーキーに話した。そしてスゴイ金持ちだから、親しくしても損はない人物だと、D.Hについても話した。スーキーにモーションをかけるオリバーは、彼女に母親の職業を尋ねた。スーキーはオリバーの態度にちょっとドキドキしながら彼の質問に答えた。やっぱりスーキーは父親について触れないので、オリバーはスーキーの教師で詩人の母親が離婚しているのか、ゲイなのか訊いた。スーキーが一応男性と同居していると冗談っぽく笑うと、オリバーも笑った。オリバーはスーキーの部屋に入るために、下手な芝居をする。自分の部屋の鍵を忘れてきたので、電話を貸して欲しいとスーキーに頼んだ。スーキーは後に起こることが予測できたが、オリバーの願いを聞き入れた。

【 17歳の処方箋 第30段落 】  スーキーの部屋に入り込んだオリバーは、父ジェイソンに関する思い出を語った。母ミミが父ジェイソンの病気のことを皆に知られて恥をかくのを嫌がったので、オリバー少年は父のオフィスに連れて行かれた。オリバーは父のデスクの引き出しの中を見て驚いた。タバコが何本も何本もきれいに並べられていたのだ。オリバーはそれらを見て、人に見つからずにどうやってこれらを並べたのだろうという戸惑いを感じた。そうスーキーに語りながら、オリバーはどんどん彼女の体に近づいていく。スーキーはオリバーの絶対的な魅力に抗しきれず、彼を受け入れた。

【 17歳の処方箋 第31段落 】  レイチェルは鏡の前で美しく身づくろいしている。ファンデーションで麻薬を打った針の痕もしっかり隠した。そんな彼女を見守っているラッセルとイグビー。シャネルっぽい白いスーツを着て、完璧に美しくキメたレイチェルは、D.Hとのデートに向かった。レストランで席に座っているD.Hの前に現れたレイチェルは微笑んだが、D.Hは嫌そうにうんざりとした顔をして無言で席を立ち、レストランを出て行った。

【 17歳の処方箋 第32段落 】  金曜日。イグビーはスーキーと一緒に高卒検定試験場へ向かうためにバスを待っている。イグビーはスーキーが何も言わなくても、兄オリバーと彼女の間にどういうことがあったのか見当が付いていた。でも、だからと言って、イグビーはスーキーを激しく責めたりはしなかった。試験が終わり、帰りのバスの中、イグビーは一人じゃ怖いからと、近い将来にスーキーと一緒に西海岸へ行く約束をした。

【 17歳の処方箋 第33段落 】  イグビーはNYを訪れたミミに会いに、レストランに入った。イグビーがミミに会う気になったのは、 2 年後に相続するお金を今貰うためだ。オリバーはもうミミから遺産を引き継いでいる。しかし、ミミはイグビーにお金を渡すのを拒んだ。理由は、イグビーが高校を卒業していないからと、何か未解決のことがあるからみたいだ。春からでも入学させてくれるというアンソニー高校へ行くように言うミミに、イグビーは高卒検定試験に合格したから高校には行かないと、合格証書を突き出した。しかし、ミミはそんなことではたじろかない。たじろいたのはイグビーの方だった。ミミがオリバーと彼のユダヤ人のガールフレンドと一緒に食事をしたと話したのだ。そのガールフレンドとはスーキーに違いない。イグビーは自分側の人間だと思っていたスーキーの思いがけない行動に愕然とした。

【 17歳の処方箋 第34段落 】  イグビーがレイチェルのスタジオに戻ってきた時、ラッセルからの電話があった。電話が留守電モードになっていたので、ラッセルのメッセージが聞こえた。ラッセルがレイチェルに渡した薬物が粗悪品なので使用すると危険だという知らせだった。驚いたイグビーは暗い部屋の中、レイチェルがいないか探そうとした。すぐにマットの上に倒れているレイチェルを見つけたイグビーは、D.Hに電話した。大人のD.Hは何もできないイグビーに代わってレイチェルを病院に預けてくれた。D.Hは病院でラッセルに会ったが、完全に彼を無視し、イグビーに送っていこうかと優しく言った。

【 17歳の処方箋 第35段落 】  レイチェルのスタジオへの階段を上がりながら、D.Hはミミとジェイソンの結婚式の時に付き添い役をしたこと、 2 人の結婚が黄金のカップルと新聞でもてはやされたことを話した。イグビーがいつものように窓枠の鍵を取ってドアを開けようとした時、D.Hの怒りが爆発した。D.Hはイグビーを殴りまくった。

【 17歳の処方箋 第36段落 】  暗い部屋の中、赤くはれ上がった顔をして眠っていたイグビーは目を覚まし、オリバーの存在に気付いた。オリバーはいつも温和なD.Hが怒りを露わにさせるなんてと驚いた。オリバーがその原因を尋ねると、イグビーはレイチェルだと答えた。オリバーはイグビーを高校まで送っていくつもりで来たが、イグビーの痛々しい状態を見て今日行くのは無理だと考えた。高卒検定試験に受かったから高校には行かないと言うイグビーに、オリバーはミミに転移が見つかったことを明かした。ミミを憎んでいるイグビーは、“ Good. ”と反応し、帰るオリバーに「スーキーによろしく。」と空元気を装った。

【 17歳の処方箋 第37段落 】  洗面台の鏡に映った自分に、イグビーは嘗て父から聞いた言葉をかける。“ …It's constantly coming down on me. It's crushing me. (僕の心はいつもプレッシャーに襲われている。潰される。)”朝、マットの上で目覚めたイグビーは、部屋のベンチに座る父ジェイソンの幻影を見た。いつかイグビーが道化役を怖がった時みたいに、父ジェイソンはここに居るのはイグビーとパパだけだと言って微笑んでいる。イグビーは父の幻影に近づいたが、彼はどこにもいない。

【 17歳の処方箋 第38段落 】  イグビーは急いでスーキーの部屋を訪ねた。鍵がかかった部屋のドアを叩いて、イグビーは一緒に町を出ようとスーキーに訴えた。ドアの向こうのスーキーは、イグビーとは一緒に行けないと答え、オリバーと自分のことを説明しようとした。 WASP 出身のエリートであるオリバーが本気でユダヤ系のスーキーと付き合うわけがないと、イグビーはスーキーの痛いところを突いた。イグビーの言葉に泣き崩れたスーキー。下着姿の彼女の横には、男の影。オリバーだ。オリバーは、泣いているスーキーに何の言葉もかけずに部屋から出て、同じように泣き崩れているイグビーに「お前には負けたよ。」と言ってアパートの階段を下りていった。

【 17歳の処方箋 第39段落 】  イグビーはラッセルのところに転がり込み、以前レイチェルが勧めたように彼から仕事を貰うことにした。ラッセルがくれる仕事とは、薬の売人だ。イグビーの仕事は順調だった。そんなある夜、イグビーはラッセルから列車のチケットを受け取った。それは兄オリバーがラッセルに渡したものだった。母ミミが危ない状態らしい。翌朝、イグビーは便器に座って眠りこけているレイチェルに会った。用を足したいイグビーは、レイチェルを起こした。レイチェルはD.Hに捨てられた悲しみからまだ立ち直っていないようだ。でも、イグビーに対してはもう怒っていないようで、レイチェルはミミに対するお悔やみを言った。 ・・・

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◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。
 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say !




【 17歳の処方箋 第41段落 】  以前にデートしたダイナーで、イグビーはスーキーと会った。イグビーがスーキーのために注文したアイスクリーム・サンデーがテーブルの上にある。スーキーは遠慮なくそのサンデーを食べた。イグビーは家に帰って母を殺すことを教えたが、スーキーはオリバーから聞いてもう知っていた。ニューヨークにはもう戻らないつもりのイグビーは、スーキーに抱かせて欲しいと頼んだが、あっさりと断られた。

【 17歳の処方箋 第42段落 】  病床のミミのところに帰って来たイグビーは、ベッド近くの椅子に座って、ミミのカツラを被っている。手を差し伸べたミミを無視し、話しかけようとしたミミを遮り、イグビーは死ぬ間際だからってミミに謝らないと言った。どうして自分を呼んだのかと項垂(うなだ)れるイグビーに、ミミは「道化役」だと答え、青い紙を渡した。たぶん状況的に、その青い紙はイグビーが相続するお金の小切手かなと思う。



【 17歳の処方箋 第44段落 】  ところが、ミミはイビキをかいて眠り続けたまま。映画の冒頭シーンである。オリバーがビニール袋とハンカチでミミを窒息死させた。袋とハンカチを取り、見開いたミミの目を手で閉じさせる。オリバーは母ミミの意志を貫徹させた。ベッドに横たわるミミをじっと見つめていたイグビーは、ミミの上に馬乗りになり、「ママ、起きて。」と、布団が掛かっている体の部分を殴って泣いた。そしてそうしながらポツリと「ゴメンね。」と言った。泣き疲れたイグビーは、そのままミミの傍で寝入ってしまった。

【 17歳の処方箋 第45段落 】  別の部屋で、オリバーはD.Hに、葬儀屋が来る前に遺体を見るかと尋ねた。ピアノを弾こうとしているD.Hは、もう見たと答えた。

【 17歳の処方箋 第46段落 】  葬儀屋が来て、イグビーは母のベッドから下ろされた。葬儀屋の処理が済むまでの間、イグビーは電話で母の悲報を知らせ続けた。オリバー曰く、悲報を伝えるのが趣味なんだそうだ。電話の時、イグビーは自分のことをイグビーとは言わずに、ジェイソン・Jr.という本名を言おうとしていた。“名付け親”のD.Hの手前なのか、それともこれからずっとなのか、イグビーは自分の本当の名前に目覚めたのかもしれない。仕事を終えたと伝えに来た葬儀屋は、“ Good job. ”と対応したオリバーに、ちょっとヘンな顔をした。葬儀屋はミミの遺体が自然死っぽくないことに気付いているようだ。流石大人のD.Hは、葬儀屋の微妙な感情を察知し、彼がろくでもないことを言い出す前に、サッと多めのチップを渡した。これで一件落着だ。翌日、メイドが片付けたミミの部屋の床には、まだ、ヨーグルトみたいなものが付いたスプーンが落ちている。

【 17歳の処方箋 第47段落 】  思いっきり甘えん坊な姿をさらけ出したイグビーなのに、生まれて初めて母親に愛情を感じたのが死ぬ時だったと、オリバーに生意気なことを言っている。イグビーはミミのお葬式に出るつもりはない様だ。厚かましくて出られないと話した。今まで反抗し続けてきた自分を憎むように言うイグビーに、オリバーは憎む気はないし、甘えはよせと答えた。西海岸に旅立つつもりのイグビーは、兄オリバーを抱きしめた。その拍子に、オリバーが手にしていたグラスが落ちて割れた。

【 17歳の処方箋 第48段落 】  ミミのお葬式。ミミが望んだ様に、弔辞を述べる人たちがミミへの褒め言葉を連発しているようだ。オリバーはD.Hとバニーの間に座り、無表情にジッとしている。荷物を抱えたイグビーは教会の扉のところに立って、ミミに別れを告げると、病院にいる父ジェイソンのところへ行った。父ジェイソンの意識はここにあらずだが、そんな父をイグビーは愛おしく見つめ、微笑んだ。そして、父の額にキスをすると、イグビーは病室を出た。イグビーの乗った飛行機は 4800 キロの彼方にある西海岸を目指し、飛んでいく。

【映画『 17歳の処方箋 』の感想】
 この項は幸の感想ですが、話の流れ上当然ネタばれを含みますので、十分ご注意ください。

【映画『 17歳の処方箋 』の感想 第01段落】  当たりハズレが多い、ミニシアター系の中で、この『 17歳の処方箋 』は私の中ではヒットだ。やっぱり女性心理としてはカッコイイ俳優が出ていなければ、映画として認められない〔?〕わけで、『 17歳の処方箋 』はまずその点でもクリア。ジェフ・ゴールドブラム、ライアン・フィリップが、カッコよかった。ミミがD.H、スーキーがオリバーに惹かれたのが十分理解できる配役になっているところに、座布団一枚である。挿入曲もカッコよくてよかった。

【映画『 17歳の処方箋 』の感想 第02段落】  そして、上の解説のところにも書いたけど、登場人物について色々想像できるところもイイ。未熟な反抗少年イグビーが主人公な映画だから、彼が知らないハイソな大人の世界は観客にとっても未知なまま。ミミやバニーやD.Hの会話から、たぶんそうだろうなぁと思い巡らすのはなかなか楽しい。パンフレットの中で、監督が各キャラについて解説しているのだが、それによると、D.Hは WASP の中でもぐりの商売をしてのし上がってきた人物らしい。想像するに、D.Hとミミとジェイソンは学生時代からの友人同士で、D.Hは WASP のお坊ちゃまジェイソンに憧れと嫉妬心を持っていた。もちろんミミは憧れの女性だ。もしかしらたミミは一時期、D.Hのガールフレンドだったかもしれない。だけど、上流嗜好のミミはジェイソンの家柄を取った。だから、イグビーを殴りつける前、D.Hはミミとジェイソンの結婚式で付き添い役をした話なんかしたのかなぁなんて、ネ。



【映画『 17歳の処方箋 』の感想 第04段落】  ジェイソンが精神病を患い、職を失ったことで、自分が思い描いていた結婚生活がすっかり不可能になってしまったことの腹立ちが、ミミにはある。それでイグビーの記憶に残っているように、ミミはジェイソンにキツク当たる。その結果、イグビーにとって愛情を感じることのできる存在の優しい父がおかしくなってしまったとイグビーは考えた。父への愛情の深さが、イグビーの母親への反抗として表に表れる。自分を責めるべき夫は、その能力を失ってしまったが、その代わりに息子イグビーがミミを責める。ミミがイグビーから生まれつき憎まれていると感じているのは宿業のようなものだろう。

【映画『 17歳の処方箋 』の感想 第05段落】  いくら上流階級とはいえ、ミミは夫が仕事を失い、収入がなくなったことで困ったはずだ。ミミはD.Hを頼った。それを指摘するのが、D.Hの妻バニーだ。母親が有閑マダムなままで、高額な月謝のプレップ・スクールに通いながらも、相続する遺産が残っていたのは、D.Hのお蔭だろうと思う。D.Hにしてみても、本妻との間に子供がいないわけだから、イグビーはとてもかわいい存在に違いない。ジェイソンが廃人となってからは、ミミの夫、オリバーとイグビーの父親はD.Hだった。契約書が好きなD.Hだけど、法的な紙の上に表せない家族の柱だったのだ。そういう父親心理のために、イグビーのことで自分を欺いていたレイチェルが許せなかったのだと思う。

【映画『 17歳の処方箋 』の感想 第06段落】  イグビーの未来は、監督の兄弟がそうであったようにエイズで死亡だろう。オリバーとの別れの時に、グラスが割れたのは、そういう不吉な暗示だと思う。より奔放な明るい日差しの西海岸で、イグビーはより薬にはまったり、無秩序な性におぼれたりして、HIVポジティブになってしまうのだ。兄弟で不幸なくじを引いた方って、ずっとそうなっちゃうのよね〜。



以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず15384文字/文責:幸田幸

参考資料:IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
■解説とネタバレ:2004/08/01 ◆俳優についてリンク更新:2004/08/01)
2005/03/30更新: ◆データ追加
2005/03/31更新: ◆データ追加
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幸田 幸
coda_sati@hotmail.com
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