サイダーハウス・ルール＠映画の森てんこ森

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映画の森てんこ森■映画レヴュー

サイダーハウス・ルール　(1999)

THE CIDER HOUSE RULES

幸の鑑賞評価：８つ星　

■映画『サイダーハウス・ルール　THE CIDER HOUSE RULES 』の解説及びポスター、予告編

サイダーハウス・ルール

Links:	Official Web Site
Trailers:

■映画『サイダーハウス・ルール　(1999) 』の解説

　映画『サイダーハウス・ルール　(1999) THE CIDER HOUSE RULES 』は、マイケル・ケインがアカデミー助演男優賞、原作者のアメリカ現代文学の巨匠ジョン・アーヴィンが脚色賞を受賞した、ラッセ・ハルストレム監督の 1999 年作品。
　『スパイダーマン　(2002) SPIDER-MAN 』でトビー・マグワイアが気に入り、彼の他の作品も観たくなったので、映画『サイダーハウス・ルール』をちょっと借りてみた。軽い動機だったけど、最近観た映画の中で一番泣いてしまったかもしれない。映画『サイダーハウス・ルール』は、とても心に響いた映画だったので、小説のほうもいつか読んでみたいかも。映画『サイダーハウス・ルール』では、ハルストレム監督作品『ショコラ　(2000) CHOCOLAT 』と同様、登場人物やその場の状況を表現するのに色がうまく使われていると思った。
　映画『サイダーハウス・ルール』は、1930 ～ 40 年代のアメリカはメイン州ニューイングランドを舞台に、孤児院で院長のウィルバー・ラーチ医師（マイケル・ケイン）の愛情に包まれて育った青年ホーマー・ウェルズ（トビー・マグワイア）が大人になっていく過程を感動的に描いている。

●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com.
Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc.

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■映画『サイダーハウス・ルール　(1999) THE CIDER HOUSE RULES 』の映画データ

　上映時間：126分
　公開情報：アスミック・エース
　アメリカ初公開年月：1999年12月10日
　日本初公開年月：2000年７月１日
　ジャンル：ドラマ

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■映画『サイダーハウス・ルール　(1999) THE CIDER HOUSE RULES 』の主なキャスト

●トビー・マグワイア as ホーマー・ウェルズ
『スパイダーマン　(2002) SPIDER-MAN 』
『シービスケット　(2003) SEABISCUIT 』
『スパイダーマン２　(2002) SPIDER-MAN 2 』等に出演
『 25時　(2002) 25TH HOUR 』製作

●シャーリーズ・セロン as キャンディ・ケンドール
『スコルピオンの恋まじない　(2001) THE CURSE OF THE JADE SCORPION 』
『コール (2002) TRAPPED 』
『 WAKING UP IN RENO (2002) 』
『モンスター　(2003) MONSTER 』
『トリコロールに燃えて　(2004) HEAD IN THE CLOUDS 』
『イーオン・フラックス　(2005) AEON FLUX 』
『スタンドアップ　(2005) NORTH COUNTRY 』

●マイケル・ケイン as ウィルバー・ラーチ医師
『リトル・ヴォイス　(1998) LITTLE VOICE 』
『デンジャラス・ビューティー　(2001) MISS CONGENIALITY 』
『オースティン・パワーズ　ゴールドメンバー　(2002) AUSTIN POWERS IN GOLDMEMBER 』
『愛の落日　(2002) THE QUIET AMERICAN 』
『ウォルター少年と、夏の休日　(2003) SECONDHAND LIONS 』
『バットマンビギンズ　(2005) BATMAN BEGINS 』

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【『サイダーハウス・ルール』のスタッフとキャスト】

監督：ラッセ・ハルストレム　Lasse Hallstrom
製作：リチャード・Ｎ・グラッドスタイン　Richard N. Gladstein
原作：ジョン・アーヴィング　John Irving
脚色：ジョン・アーヴィング　John Irving
撮影：オリヴァー・ステイプルトン　Oliver Stapleton
編集：リサ・ゼノ・チャージン　Lisa Zeno Churgin
音楽：レイチェル・ポートマン　Rachel Portman
プロダクションデザイン：デヴィッド・グロプマン　David Gropman

出演：トビー・マグワイア　Tobey Maguire　ホーマー・ウェルズ
　　　　シャーリーズ・セロン　Charlize Theron　キャンディ・ケンドール
　　　　マイケル・ケイン　Michael Caine　ウィルバー・ラーチ医師
　　　　デルロイ・リンド　Delroy Lindo　ミスター・ローズ
　　　　ポール・ラッド　Paul Rudd　ウォーリー・ワージントン
　　　　キーラン・カルキン　Kieran Culkin　パスター
　　　　ジェーン・アレクサンダー　Jane Alexander　看護師エドナ
　　　　キャシー・ベイカー　Kathy Baker　看護師アンジェラ
　　　　エリカー・バドゥ　Erykah Badu　ローズ・ローズ
　　　　ケイト・ネリガン　Kate Nelligan　オリーヴ・ワージントン
　　　　Ｋ・トッド・フリーマン　K. Todd Freeman　マディ
　　　　Ｊ・Ｋ・シモンズ　J.K. Simmons　レイ・ケンドール
　　　　エヴァン・デクスター・パーク　Evan Dexter Parke　ジャック
　　　　スカイ・マッコール＝バートシアク　Skye McCole Bartusiak　ヘイゼル

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ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。

■映画『サイダーハウス・ルール』の「テキストによる映画の再現」レヴュー

【サイダーハウス・ルール　第01段落】　　　「どんな人生でも人の役に立て」
　セント・クラウズ孤児院の院長ウィルバー・ラーチ医師（マイケル・ケイン）が、息子のように愛した孤児ホーマー・ウェルズ（トビー・マグワイア）に教えたことである。実際ラーチ先生の人生がそうだった。自分の家庭を持つことなく、恵まれない孤児、望まない妊娠をした女性達のために生きた。この映画『サイダーハウス・ルール』ではラーチ先生のバックグラウンドについてはあまり語られていないので、ハーバード大卒のエリート医師である彼が、なぜそういう生き方をしたのかは具体的によくわからない。

【サイダーハウス・ルール　第02段落】　　しかし、ラーチ先生にとってはセント・クラウズ孤児院そのものが家庭だった。一般的に家庭の中にいれば、誰しもが誰かの役に立っていると思う。親子の関係だけについて書くと、親は物質的にも精神的にも子供達のために、子供たちは精神的に親のために役に立っている。しかし、孤児というのは、生まれながらにして誰からも必要とされていないし、誰の役にも立っていない。家庭を持たなかったラーチ先生も、孤児のホーマーも、人間らしく生きるには、誰かの役に立たなければならない。孤児のホーマーは『スパイダーマン　(2002) SPIDER-MAN 』や『シービスケット　(2003) SEABISCUIT 』のトビー・マグワイアである。

【サイダーハウス・ルール　第03段落】　　ラーチ先生は孤児達の世話役として役に立っていたが、仕事上ではなく、もっと愛情を注げる対象を必要としていたと思う。だから、二度も養子先から返されたホーマーに特別なものを感じ、父親の愛情を持って彼に産婦人科医の医術を教えたのだ。ラーチ先生がホーマーに「私の役に立て」と教えたことで、ホーマーは孤児ではなくなったと思う。先生がエーテルを吸いながら眠りにつくのは、心身ともに疲れていたからにちがいない。ホーマーはそんなラーチ先生の片腕となって実際に彼の役に立ち、またその存在で心を和ませた。二人は完全に“親子”である。妻の役割は看護師のアンジェラ（キャシー・ベイカー：
『シザーハンズ　(1990) EDWARD SCISSORHANDS 』
『コールドマウンテン　(2003) COLD MOUNTAIN 』）が果たしていた。

【サイダーハウス・ルール　第04段落】　　子供を撮るのが上手なハルストレム監督だけあって、孤児たちがとても不憫に可愛らしく涙を誘うように撮影されていた。彼らは雪合戦や孤児院に一本しかない映画「キング・コング」の鑑賞、ラーチ先生やホーマーによる本の読み聞かせを楽しみ、「おやすみメインの王子、ニューイングランドの王」というラーチ先生の就寝の決まり文句に胸を温かくして眠った。たまに訪れる養子探しの夫婦には自分が一番可愛く見えるように微笑んだ。孤児達の本能は正しい。先にもらわれていくのは、可憐で可愛い子だ。今回は金髪の青い目の少女ヘイゼル（スカイ・マッコール＝バートシアク：
『パトリオット　(2000) THE PATRIOT 』
『マリー・アントワネットの首飾り　(2001) THE AFFAIR OF THE NECKLACE 』
『ファイティング×ガール　(2004) AGAINST THE ROPES 』
『ブギーマン (原題) (2005) BOOGEYMAN 』）だった。その夜には看護師の言葉に従って、皆微妙な心境でヘイゼルのためにお祈りをする。

【サイダーハウス・ルール　第05段落】　　不細工なので貰い手が無いメアリー・アグネス（パ・ドゥ・ラ・ユエルタ：『ウォーク・トゥ・リメンバー　(2002) A WALK TO REMEMBER 』）は、女の子の中では一番年上。気が荒いけどホーマーのことが大好き。ホーマーの次に年長のバスター（キーラン・カルキン：
『１７歳の処方箋　(2002) IGBY GOES DOWN 』等に出演、
『パーティ★モンスター　(2003) PARTY MONSTER 』のマコーレー・カルキンの弟で、顔もよく似ている）は、トラックの運転ができ、ラーチ先生とホーマーのお手伝いもする。カーリー（スペンサー・ダイアモンド）は里親の出現を心待ちにしている可愛い少年。アル中の母親から生まれた所為でひどい気管支炎を患っているファジー（エリク・パー・サリヴァン：
『ジョー・ダート (原題)（2001）JOE DIRT 』
『運命の女　(2002) UNFAITHFUL 』
『ファインディング・ニモ　(2003) FINDING NEMO 』）は、好奇心の強い男の子。映画「キング・コング」を観て、母親への憧憬からコングの愛した女性のことをコングの母親だと思っている。彼らのシーンは、思わず涙を流してしまう仕掛けで一杯だった。

【サイダーハウス・ルール　第06段落】　　ホーマーはそんな孤児達からとても愛されていた。看護師のエドナ（ジェーン・アレクサンダー）とアンジェラもホーマーを信頼していた。もちろんラーチ先生は、学位はないが自ら教えた腕の立つ産婦人科医であるホーマーを自分の後継者に考えていた。実際の社会に出れば学歴もないただの孤児であるホーマーだが、セント・クラウズにいれば医師として働くことができる。そうすることがホーマーにとっても幸せなのだ。しかし、子供はある時期父親に反発するものである。ホーマーは自立を願うと同時にそんな重い責任が自分にのしかかってくるのもイヤだった。このままずっとセント・クラウズしか知らずに人生を送ることにも不安があった。もっと外の世界が見てみたい。そして、ホーマーにはラーチ先生のしている事で納得のいかないことがあった。当時は法的にも禁止されていた堕胎だ。セント・クラウズ孤児院は、不幸にも妊娠してしまった女性が駆けつける場所でもあった。孤児であるホーマーは自分もひょっとしたら焼却炉で焼かれていたのかもしれないと思うと、堕胎を認めることはできなかった。世間の無知のお陰でむちゃくちゃな堕胎手術をされた若い女性が、ラーチ先生の尽力の甲斐なく、亡くなるのを見ても、ホーマーの考えは変わらなかった。

【サイダーハウス・ルール　第07段落】　　ホーマーがセント・クラウズを旅立つ日がやって来た。ホーマーとほぼ同じ年代の少尉ウォーリー・ワージントン（ポール・ラッド：『ロミオ＆ジュリエット　(1996) WILLIAM SHAKESPEAR'S ROMEO & JULIET / ROMEO + JULIET 』）がその美しい恋人キャンディ・ケンドール（シャーリーズ・セロン）の堕胎手術のために孤児院を訪れた。二人は愛し合っているが、ウォーリーが出征するため、今回は出産を見送るのだ。パイ生地を全部平らげてしまった子供のゲロを掃除し終わったホーマーが窓から外を見ると、颯爽と軍服を着ているウォーリーがカッコいいオープン・カーの前で恋人の回復を待っている。心臓の疾患で戦争に行けない自分とは違う。彼が戦地で乗る飛行機は「解放者」。また同じ子供が廊下でゲロをはいた。そうだ、僕も解放してもらおう。ホーマーはウォーリーに自分も一緒に車に乗せて行ってもらえないか頼んだ。行き先はウォーリーまかせだ。つまり彼らと同じケニス岬へ行く。ウォーリーは快諾した。

【サイダーハウス・ルール　第08段落】　　「何か別の道で役に立ちたい」と言うホーマーを止めることはできないとラーチ先生には分かっていた。「不幸なものばかり、それが世間だ」と言いつつも、「お前の心臓だ」とホーマーのレントゲン写真を持っていくように渡す。ラーチ先生は窓から少し見ただけで、ホーマーを見送らなかった。それほど悲しみは大きかったのだ。セント・クラウズ全体がホーマーとの別れを惜しんだ。

【サイダーハウス・ルール　第09段落】　　術後のため後部座席でぐったりとしているキャンディ。助手席のホーマーは新しい旅立ちに心ときめかせながらじっと黙っている。ウォーリーが話をし始めた。ウォーリーがリンゴ農園の跡取り息子と知ったホーマーは、彼のリンゴ園で働かせてもらうことにする。キャンディはエビ漁師の娘だ。メイン州は『イン・ザ・ベッドルーム　(2001) IN THE BEDROOM 』でも舞台だったが、アメリカ合衆国の有名なロブスターの産地である。ウォーリーとキャンディはホーマーが海もロブスターも見たことがないと知って驚く。いつの間にか眠っていたらしい。ホーマーが目覚めると、オープン・カーは海辺に止まっていた。ホーマーは生まれて初めて海を見た。それは静かな感動だった。

【サイダーハウス・ルール　第10段落】　　ウォーリーの家に到着したホーマーは、リンゴ園のサイダーハウスで寝起きしている季節労働者たちに紹介された。そこのボスであるミスター・ローズ（デルロイ・リンド：
『ロミオ・マスト・ダイ　(2000) ROMEO MUST DIE 』
『ラスト・キャッスル　(2001) THE LAST CASTLE 』
『ザ・ワン　(2001) THE ONE 』
『ザ・セル　(2000) THE CELL 』）は、堂々とした風格を持った男で、白人の若者が加わるとはと驚いた。彼はナイフの早抜きの名人で、他の労働者達からも一目置かれている。彼の娘のローズ・ローズ（エリカー・バドゥ）は父親思い、痩せていて余計な口は叩かないマディ（Ｋ・トッド・フリーマン）、マディと対照的なピーチズ（ヘヴィ・Ｄ）、アウトサイダーなジャック（エヴァン・デクスター・パーク：『 PLANET OF THE APES　猿の惑星　(2001) PLANET OF THE APES 』）などがホーマーの仕事仲間となった。彼らはホーマーが字の読めることに驚き、壁に貼ってある紙の字を読んで欲しいと頼んだ。ホーマーが見るとそれにはルールが書かれているようだ。これがタイトル『サイダーハウス・ルール』なのだ。ホーマーがサイダーハウス・ルールを読み始めると、ミスター・ローズがそれを遮った。「…俺達が書いた規則じゃない。」

【サイダーハウス・ルール　第11段落】　　ホーマーがミスター・ローズからリンゴの取り方などの仕事を覚えている間に、セント・クラウズではホーマーの履歴の捏造が行われていた。理事会が新しい人材を孤児院に送り込もうとしていたが、ラーチ先生は反対だった。理事会はラーチ先生を退かせて、堕胎を行わない医師を後任に据えようとしていたからだ。ラーチ先生は後任にはホーマーを就かせたかった。しかし、いくら腕が良くても彼には学位が無い。そこでラーチ先生はホーマーの履歴を自分と同じハーバード大学医学部卒にし、卒業証書も偽造して作り上げていた。孤児院で行われた理事会の会議でラーチ先生がわざと“完璧な学歴”を持つホーマーを気に入らない振りをすると、理事会はホーマーを後任に推してくる。先生の思うツボだった。

【サイダーハウス・ルール　第12段落】　　親の心子知らず。ホーマーは恋に夢中だった。ウォーリーは冒険心旺盛な性格のため、何不自由ない裕福な暮らしと家の仕事を退屈に思っている若者だ。それで今回の戦争でビルマでの危険な任務に志願していた。ウォーリーは出征していった。“独りが苦手な”美女キャンディと、経験に飢える青年ホーマーの間に何も起こらないはずが無い。キャンディはホーマーを家の夕食に誘い、一緒に映画に出かけた。何もかもが新しい経験であるホーマーの新鮮な反応に、キャンディは惹かれた。もちろんウォーリーのことは心から愛している。美しく奔放な女性キャンディは、そういう女性なのだ。決して悪い女性ではない。海辺で追いかけっこをする二人は、いつしか抱き合いキスをして、林の中で結ばれる。

【サイダーハウス・ルール　第13段落】　　ミスター・ローズたち労働者が移動する季節になった。ホーマーは彼らと一緒には旅立たず、農園に残った。キャンディとの恋愛、農園やエビ漁の仕事。ホーマーは先生に手紙を書いた。「…僕は残ります。人の役に立っていると思うから。」手紙を読んで人生の思春期にあるホーマーが恋に落ちたと知るラーチ先生は、「お前は私の芸術品だ」と自らの後任を勧める返事を書くが、ホーマーはもう完全にセント・クラウズを巣立ってしまったと感じるのだった。

【サイダーハウス・ルール　第14段落】　　季節が変わり、ミスター・ローズたちがリンゴ園に戻ってきた。以前と変わったことが二つある。ジャックがいなくなったことと、ローズの元気がなくなったこと。ローズの様子に彼女が妊娠しているとホーマーは察知する。「自分で始末をつける」というローズを心配したホーマーは、彼女のことをキャンディに相談する。一年前の妊娠の事実を打ち明けたキャンディに心を許したローズは、彼女に真実を教える。父親は誰なのか…。

【サイダーハウス・ルール　第15段落】　　リンゴを摘むホーマーのところに、キャンディが慌ててやって来た。ローズのお腹の子供の父親はなんとミスター・ローズだった。他の労働者達は二人が話をするのをじっと聞いている。彼らの間では周知の事実だったようだ。自分の娘と寝ているのかとホーマーに問い詰められたミスター・ローズは、ホーマーにウォーリーへの裏切りを責めるが、はっきりと次元が違う問題だ。「娘を愛している。誰のものにもさせん」とミスター・ローズはホーマーに言い捨てた。

【サイダーハウス・ルール　第16段落】　　ホーマーとキャンディの間にも終わりが近づいてきた。戦争で傷つき下半身麻痺となったウォーリーが、一ヵ月後の 10 月の末に戻ってくることになったのだ。どんよりとした空の下、エビ漁の港で「どうすればいい？」と尋ねるホーマーに「何もしないで」と言うキャンディ。彼女はウォーリーを待つつもりなのだ。彼女の曖昧な返事にイライラするホーマーだったが、決心すべきなのは自分だということを悟る。決心して取捨選択するのが人生である。ホーマーはキャンディの情夫としての人生を捨てた。ホーマーが選択したのは…。・・・

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◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。
　ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say !

【サイダーハウス・ルール　第17段落】　　夜、ホーマーがサイダーハウスに戻ると、出て行こうとするローズをミスター・ローズが引き止めようとしていた。お前には関係ないと食って掛かるミスター・ローズに「僕は医者です」とホーマーは応える。ホーマーはローズの堕胎手術を行った。ラーチ先生が送ってくれた診察鞄の道具で、ホーマーは手馴れた手つきで作業を進めていく。ミスター・ローズは手術に付き添ったが、途中で気持ちが悪くなり、雨が降る外に出て、やり場のない気持ちを吐き出すように叫び声を上げるのだった。

【サイダーハウス・ルール　第18段落】　　ローズの手術は成功した。自分のしでかしたことの罪の大きさを思い知り、打ちひしがれてベッドで横たわったままのミスター・ローズは、マディに「お前がボスをやれ」と告げる。以前ミスター・ローズが読むのを咎めたサイダーハウスの壁に貼られているルールを読んでくれる様にホーマーに頼むローズ。ルールーを読み上げるホーマー。これといったことの無いばかばかしい規則に、他の労働者達は「俺達をバカにしている」と憤慨気味。「大したこと無いね。何だろうと思ってたのに」と呟くローズ。するとミスター・ローズが急に立ち上がり、「…その規則は住人じゃない奴が作った。規則を作るのは俺達だ」と大声で訴える。それを複雑な表情で聞くローズ。別の労働者からそのルールの書いた紙を焼くように言われたホーマーは、焼却炉に燃やした紙を入れた。

【サイダーハウス・ルール　第19段落】　　朝、キャンディとの最後のデートからホーマーが戻ってくると、ローズが自転車に乗って夜中に出て行ったと労働者たちから聞かされた。ホーマーがサイダーハウスに入ると、ミスター・ローズがベッドで横たわっている。掛け布団の下には真っ赤な血。ミスター・ローズはホーマーとマディに息も絶え絶え訴える。警察に訊かれたら、自分は娘の家出のショックのあまり自殺したと言ってくれと。実際のところは、ローズが家を出ようとしたとき、彼女の手を最後にもう一度握りたいと思ったミスター・ローズの行動が勘違いされてしまい、彼はローズにナイフで刺されてしまったようだ。刺し傷は数ヶ所あった。ホーマーとマディが警察にミスター・ローズの言う通りに証言してくれると約束をすると、彼は息を引き取った。

【サイダーハウス・ルール　第20段落】　　キャンディから、セント・クラウズからの手紙を受け取ったホーマー。ラーチ先生がエーテルを吸いながら死んだのだ。「エーテルの吸いすぎは事故に違いありません」と手紙には書かれているが、実際は不明だ。

【サイダーハウス・ルール　第21段落】　　再び季節労働者たちが移動する季節が巡って来た。労働者達のトラックに乗せて貰ったホーマーは、ウォーリーを彼の母親と一緒に家に迎え入れるキャンディを見る。キャンディはホーマーがトラックに乗って移動するのに気付いたようだ。辛い表情を浮かべるが、仕方が無いと決心したように車椅子のウォーリーに向き直り、彼にキスをする。労働者達はホーマーに一緒にフロリダへ行こうと誘うが、ホーマーの行き先は決まっていた。

【サイダーハウス・ルール　第22段落】　　ハロウィンの準備をするセント・クラウズ。ホーマーの姿に気付いた孤児達は大喜びで彼に飛びつく。ホーマーがベッドの上でトランクを開けていると、カーリーが心臓のレントゲン写真を見つけた。それを見た看護師のアンジェラはホーマーに真実を教える。そのレントゲン写真はホーマーのものではなく、ファジーのだった。ホーマーの心臓は健康なのだ。ホーマーが出征したら自分の心臓が耐えられないと、ホーマーが戦争に行かずに済む様にラーチ先生が仕組んだことだった。

【サイダーハウス・ルール　第23段落】　　部屋の戸口に立ったホーマーは眠りにつく孤児達に言う。「おやすみメインの王子、ニューイングランドの王」かわいい笑い声が部屋に響く。

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【映画『サイダーハウス・ルール』の感想】

愛するものが死んだ時には、
自殺しなけあなりません。

愛するものが死んだ時には、
それより他に、方法がない。…

という中原中也の「春日狂想」の初めの部分を思い出しました。心から愛する息子、娘を失って、自殺かどうかはわかりませんが、ラーチ先生もミスター・ローズも死んでしまいました。

　当時は違法であった堕胎手術を行い、「法律が何だ、孤児達が恩恵を受けたか」と憤慨するラーチ先生と、サイダーハウス・ルールに憤り、「俺はきっちり筋を通したいんだ、そうするためには規則を破る」と言って死んでいったミスター・ローズには同じものを感じます。かたや人生をかけて孤児達の世話を行った崇高な医師、かたや娘を愛するあまりに道を踏み外してしまった季節労働者でありますが、二人とも自分が作ったルールに添って生きています。そしてその責任は自らが負わなければならないことも知っていました。もしホーマーが女の子だったら、ローズと同じような悲劇が起こったかもしれないと思います。

　この映画の舞台であるメイン州を含むニューイングランドは、アメリカ合衆国北東部に位置し、他バーモント州、ニューハンプシャー州、マサチューセッツ州、ロードアイランド州、コネチカット州の６つの州からなる地方です。ニューイングランド、新しいイギリスという名前は、イギリスからメイフラワー号に乗ってやってきた移民達が最初に定住した地域であることに由来しています。アメリカ合衆国発祥の地、ニューイングランドに生きたラーチ医師とミスター・ローズの考え方は、アメリカ合衆国建国の理念を思わせます。また、二人の辿った人生には、その理念のもとで突き進んできたアメリカの光と影を感じました。

以上。
＜もっと詳しく＞からスペースを含まず8111文字／文責：幸田幸

参考資料：「映画の森てんこ森」映画タイトル集
　　　　　　　http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
　　　　　　IMDb
　　　　　　allcinema ONLINE
　　　　　　Nostalgia.com
　　　　　　CinemaClock.com
　　　　　　公式サイト
　　　　　　　http://www.asmik-ace.com/Cider/

■映画『サイダーハウス・ルール　(1999) THE CIDER HOUSE RULES 』の更新記録
2002/08/20新規：ファイル作成
2004/07/11更新： ◆テキスト一部とリンクおよびファイル書式
2005/03/15更新： ◆一部テキスト追記と書式変更
2006/01/14更新： ◆データ追加

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幸田　幸
coda_sati@hotmail.com

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