キャメロット・ガーデンの少女 |
|表紙|目次|読む映画試写会|レヴュー|観たい度映画|予告編|エッセイ|日誌|試写会情報|リンク集|
| 映画人 |解説・レヴュー一覧表 |映画ゲーム |思い出映画|ブロードバンド(B)版|旅行の森てんこ森| |
映画の森てんこ森■映画レヴュー |
キャメロット・ガーデンの少女 (1997) |
LAWN DOGS |
映画『 キャメロット・ガーデンの少女 (1997)
LAWN DOGS 』をレヴュー紹介します。
映画『 キャメロット・ガーデンの少女 LAWN
DOGS 』を以下に目次的に紹介する。
■映画『 キャメロット・ガーデンの少女 LAWN
DOGS 』の解説及びポスター
ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。
■映画『 キャメロット・ガーデンの少女 LAWN
DOGS 』の映画データ
■映画『 キャメロット・ガーデンの少女 LAWN
DOGS 』のあらすじ
■映画『 キャメロット・ガーデンの少女 LAWN
DOGS 』のスタッフとキャスト
■映画『 キャメロット・ガーデンの少女 LAWN
DOGS 』の<もっと詳しく>
<もっと詳しく>は映画『 キャメロット・ガーデンの少女 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタばれ)です。※ご注意:映画『 キャメロット・ガーデンの少女 (1997)
LAWN DOGS 』の内容やネタばれがお好みでない方は読まないで下さい。
■映画『 キャメロット・ガーデンの少女 LAWN
DOGS 』の結末
■映画『 キャメロット・ガーデンの少女 LAWN
DOGS 』の感想
■映画『 キャメロット・ガーデンの少女 LAWN
DOGS 』の更新記録
>>「映画解説・レヴュータイトル一覧表」へ(画面の切り替え) |
幸の鑑賞評価: 8つ星 |
■映画『 キャメロット・ガーデンの少女 (1997)
LAWN DOGS 』の解説及びポスター |
キャメロット・ガーデンの少女
|
■映画『 キャメロット・ガーデンの少女 』の解説
映画『 キャメロット・ガーデンの少女 』は、ブリュッセル国際ファンタジー映画祭のグランプリである金のカラス賞
Golden Raven 等、数々の映画祭で評価を受けた。この『
キャメロット・ガーデンの少女 』は、 1997
年ジョン・ダイガン監督作品。本作『 キャメロット・ガーデンの少女
』の演技により、モントリオール国際映画祭などで主演男優賞を獲得したサム・ロックウェル(『
コンフェッション (2002) CONFESSIONS OF A
DANGEROUS MIND 』等に出演)は、演技派俳優としてより脚光を浴びるようになった。ロックウェル演じる
21 歳の青年トレント。彼を慕う 10 歳の女の子「キャメロット・ガーデンの少女」デヴォンを演じるのは、
1986 年生まれの可愛い女の子、ミーシャ・バートン。本作『
キャメロット・ガーデンの少女 』で注目された彼女は、大ヒット映画『
シックス・センス (1999) THE SIXTH SENSE 』等にも出演。有望若手女優の一人だ。 |
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com.
Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc. |
▲TOPへ |
■映画『 キャメロット・ガーデンの少女 (1997)
LAWN DOGS 』映画データ |
上映時間:101分
製作国:イギリス/アメリカ
公開情報:アミューズ
イギリス初公開年月:1997年11月21日
日本初公開年月:1999年4月24日
ジャンル:ドラマ/ファンタジー |
▲TOPへ |
■映画『 キャメロット・ガーデンの少女 (1997)
LAWN DOGS 』のあらすじ |
さて、『 キャメロット・ガーデンの少女 』のストーリーは。アメリカ、ケンタッキー州郊外にあるゲート付きの住宅地、キャメロット・ガーデン。孤独で想像力豊かな少女デヴォンは、その緑の芝生が美しい閑静な町へ両親と共に引っ越してきた…。
アメリカ社会の闇を強烈に描き出せているのは、監督がアメリカ人ではないからかな。(イギリス出身のオーストラリア人。) |
▲TOPへ |
【『 キャメロット・ガーデンの少女 』のスタッフとキャスト】 |
監督: ジョン・ダイガン John Duigan
製作: ダンカン・ケンワーシー Duncan Kenworthy
脚本: ナオミ・ウォーレス Naomi Wallace
撮影: エリオット・デイヴィス Elliot Davis
美術: ジョン・マイアー John Myhre
音楽: トレヴァー・ジョーンズ Trevor Jones
出演: サム・ロックウェル Sam Rockwell トレント
ミーシャ・バートン Mischa Barton デヴォン
キャスリーン・クインラン Kathleen
Quinlan クレア(デヴォンの母)
クリストファー・マクドナルド Christopher
McDonald モートン(デヴォンの父)
ブルース・マッギル Bruce McGill ナッシュ
エリック・メビウス Eric Mabius ショーン
デヴィッド・バリー・グレイ David
Barry Gray ブレット
アンジー・ハーモン Angie Harmon パム
べス・グラント Beth Grant トレントのお母さん
トム・アルドリッジ Tom Aldredge トレントのお父さん
▲TOPへ |
<もっと詳しく> |
ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。 |
■映画『 キャメロット・ガーデンの少女 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー
【キャメロット・ガーデンの少女 第01段落】 "
Once upon a time in a far off land lived
a girl and her mother and father. Their village
was surrounded by a high wall. Outside the
wall was the forest, home of Babi Yaga, the
witch. Babi Yaga had iron teeth to cut through
trees. His legs were chicken legs and he
ate little girls for dinner. But inside the
wall, the girl was safe. (昔むかし、遠い村に女の子と両親が住んでいました。村は高い城壁に囲まれ、城壁の外は森でした。森は"バビヤガ"の住処。木を切る鋭い鉄の歯とニワトリの脚を持つバビヤガは、夕食に女の子を食べる怖い魔法使い。でも城壁の中にいれば安全でした。)"
【キャメロット・ガーデンの少女 第02段落】 以上は、一人ぼっちで草原にいる
10 歳の女の子デヴォン・ストッカード Devon
Stockard (ミーシャ・バートン)の空想の世界。ウエスタンのギター(?)の音がBGMに流れ、緑の芝生が美しい瀟洒な住宅街が現れる。夏の熱い日差しの中、芝刈り機で庭を行き来する人が見られるその町は、アメリカはケンタッキー州
Kentucky, USA 郊外にある田舎の高級住宅街キャメロット・ガーデン
Camelot Garden 。閉ざされた郊外の街に暮らす狭隘(きょうあい)で偽善的な人々を描いたティム・バートン
Tim Burton 監督のファンタジー映画『 シザーハンズ (1990) EDWARD SCISSORHANDS 』や、イギリス人のサム・メンデス Sam Mendes
監督がアメリカの中流家庭を鋭く描いたアカデミー賞作品『
アメリカン・ビューティー (1999) AMERICAN
BEAUTY 』をちょっと彷彿とさせるオープニングだ。
【キャメロット・ガーデンの少女 第03段落】 夏休みのある日、デヴォンは、チャリティとして近所に買ってもらうクッキーを母クレア
Clare Stockard (キャスリーン・クインラン:『
アポロ13 (1995) APOLLO 13 』等に出演)と父モートン Morton Stockard
(クリストファー・マクドナルド:『 ベティ・サイズモア (2000) NURSE BETTY 』)と一緒に作っている。一見微笑ましい家族に見えるのだが…。レーズンで飾り付けをしていたデヴォンは、クッキーにハエが止まったのに気付いた。彼女はレーズンの代わりにそのハエをクッキーにねじ込んだ。
【キャメロット・ガーデンの少女 第04段落】 ストッカード一家は、キャメロット・ガーデンに引っ越してきたばかり。近隣との交流を図るため、ガール・レンジャー(ガール・スカウト
Girl Scouts の最年長組?)のチャリティとして、娘のデヴォンは父が作ったリストに従ってクッキーを売りに行く。赤いベレー帽、丸襟に赤いリボンの付いた白い半袖のブラウス、グレーのチョッキとスカート、赤いリボンのついた白いハイソックスと黒のベルトのついた靴。ガール・レンジャーのファッションに身を包んだデヴォンは、クッキーを入れた白い袋を乗せたカートをガラガラと引っ張り、町を歩いた。
【キャメロット・ガーデンの少女 第05段落】 しかし、デヴォンは両親が心配するように無口で内気な女の子。そんな子が知らない家に行ってクッキーを売るなんて、かなりのストレスだ。退職した警官で、町の警備員のナッシュ
Nash (ブルース・マッギル:『 愛しのローズマリー (2001) SHALLOW HAL 』『 アリ (2001) ALI 』『 トータル・フィアーズ (2002) THE SUM OF ALL
FEARS 』等に出演)が、近所の敷地に入ろうとするが入れないデヴォンを見て、クッキーを買おうと声をかけた。デヴォンは彼に一言。"You
are not on my list.(あなたはリストにないわ。)"
【キャメロット・ガーデンの少女 第06段落】 デヴォンが通り過ぎた家の庭では、シャツが汗でビッショリの青年トレント
Trent (サム・ロックウェル:『 ギャラクシー・クエスト (1999) GALAXY QUEST 』『 真夏の夜の夢 (1999) WILLIAM SHAKESPEARE'S
A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM 』『 グリーンマイル (1999) THE GREEN MILE 』『 チャーリーズ・エンジェル (2000) CHARLIE'S
ANGELS 』『 ウェルカム トゥ コリンウッド (2002) WELCOME
TO COLLINWOOD 』『 コンフェッション (2002) CONFESSIONS OF A
DANGEROUS MIND 』『 マッチスティック・メン (2003) MATCHSTICK
MEN 』等に出演)が芝刈りをしている。 21 歳で芝刈りを生業にしているトレントは貧しい労働者階級。そんな彼に対する町の人の対応は冷たく差別的だ。元は同じ労働者階級なのに、今はこの町の人々に尻尾をふって生きているナッシュも、トレントに5時以降は町には来るなと言う。
【キャメロット・ガーデンの少女 第07段落】 暑い中、芝刈りをしたトレントは、シャワーを浴びたかった。仕事の疲れに、トイレを貸さない家主や、ナッシュの態度…。水色の古いトラックに乗って家に向かっていたトレントは、後続車を気にすることなく、狭い橋の真ん中でいきなり駐車した。素っ裸になって欄干に上ったトレントは、跳び込みの選手のようにくるくる回ってまっ逆さまに川に飛び込んだ。後方の車の女性たちから黄色い囁き声が聞こえる。川から上がってきたトレントは、何事もなかったかのようにまたトラックに乗って出発した。
【キャメロット・ガーデンの少女 第08段落】 ストレスの反動は、デヴォンもトレントと同じ。反抗だ。デヴォンは母親からの言い付けを破り、町のゲートの外に出た。わざと靴を脱いで歩き、白いハイソックスをドロドロにしたデヴォンが辿り着いたのは、丘を越えた森の中にある汚いトレーラーハウス。ワクワクしているデヴォンは、ボロボロの小さな鉄格子の門を開けて敷地内へ入った。すっかりおとぎ話の中の女の子気分になっているデヴォンは、何もいない犬小屋の前にクッキーを置き、汚いトレーラーハウスのドアを開けた。デヴォンはここがバビヤガの家だと思った。
【キャメロット・ガーデンの少女 第09段落】 デヴォンが家の中を散策していると、"バビヤガ"が帰ってきた。トレントだ。彼に興味津々のデヴォンは、自分を無視して外の椅子に座って煙草を吸っているトレントに話し掛けた。トレントが乗っているトラックは、デヴォンのおじさんと同じ
65 年型フォード F100 。アメリカ中西部にあるインディアナ州
Indiana で暮らしていたロシア Russia からの貧しい移民のおじさんは、エンジン・マウントの故障でトラックごと川に落ちて死んでしまったそうだ。
【キャメロット・ガーデンの少女 第10段落】
▼バビヤガについて。
デヴォンは、亡くなったおじさんからロシア民話を聞いたことがあるのだろう。ロシア民話の中には有名なバーバ・ヤーガ
Baba Yaga the Witch という魔女がいる。幼いデヴォンは、たぶんそのバーバ・ヤーガをバビヤガ
Babi Yaga と聞き間違えたのかなと思う。バーバ・ヤーガは女神の3つの部分、処女
Virgin・母親 Mother・悪婆 Hag のうち、悪婆に由来しているもので、良い存在ではないが、全く悪い存在なわけでもないそうだ。彼女は人間を食べ、その頭蓋骨を壁に飾ったが、自分に仕える人々は助けた。また、季節の移り変わりを命令した。彼女の小屋にはニワトリの脚が付いていて移動が可能らしい。すり鉢に乗った彼女は、すりこ木で漕ぎながら、空気中を飛ぶ。(奇天烈だ!)
【キャメロット・ガーデンの少女 第11段落】 ムソルグスキー
Modest Petrovich Musorgskii 〔(1839-1881)
ロシアの作曲家。国民音楽の興隆に尽くしたロシア五人組の一人。ロシア人としての自覚に基づく独自の作風を樹立し、のちの印象派に影響を与えた。交響詩「はげ山の一夜」、オペラ「ボリス=ゴドノフ」など。<「大辞林」より>〕のピアノ組曲♪展覧会の絵
Pictures at an Exhibition ♪に、♪バーバ・ヤーガの小屋
The Hut Of Baba Yaga ♪という曲があり、映画にも挿入されている。
【キャメロット・ガーデンの少女 第12段落】 デヴォンのおとぎ話は、少しだけ日本の山姥の出てくる話「三枚のお札」に似ていると思った。バーバ・ヤーガはロシアの山姥みたいなものらしいから、もしかして「三枚のお札」の話はバーバ・ヤーガに端を発するものだったのかな。(もしくはその逆。)それとも、どこの国の人でも同じような物語を作るものなのかなぁ。
【キャメロット・ガーデンの少女 第13段落】
▽ストーリーに戻る。
トレントにドライブに連れて行って欲しいと頼むデヴォンは、両親の前とは全然違う積極的な女の子になっている。トレントに相手にされなかったが、デヴォンは次も迷わずにここに来られるように、道路から森の中への入り口にある木の枝に自分のハイソックスを引っ掛けて目印にした。
【キャメロット・ガーデンの少女 第14段落】 もう
10 歳なのにデヴォンには未だに空想の世界に浸る傾向がある上、かなり屈折した女の子に成長している。それは、どうも両親にも原因があるようだ。おじさんがインディアナの貧しいロシア移民だったということは、元々デヴォンの両親も今のように裕福ではなかったはず。郊外の閑静な住宅街で暮らすという、一応のアメリカン・ドリームを達成したストッカード一家だが、父モートンは、町で発言権を持つため、議会の椅子を狙っており、まだまだ上昇志向。娘のデヴォンにチャリティとしてクッキーを売りに行かせるのも、秋の評議員選挙を睨んでのイメージ戦略のようだ。また、母クレアは、豊かな生活に魔がさしているようで、名士の息子である大学生のブレット
Brett (デヴィッド・バリー・グレイ)と貞淑な妻らしからぬことをしている。
【キャメロット・ガーデンの少女 第15段落】 翌日も、デヴォンはクッキーを売りに行く振りをして、森のトレントの家に向かった。トレントの家には先客がいた。キャメロット・ガーデンに暮らす大学生の女の子パム
Pam (アンジー・ハーモン:『 エージェント・コーディ (2003) AGENT CODY
BANKS 』等に出演)だ。才色兼備なパムは階級の違う粗野な青年との火遊びを楽しんでいるだけで、トレントを正式な恋人だとは思っていない。パムの帰り際、彼女のそんな気持ちを知っているトレントは、わざとトラックで送ろうと誘う。キャメロット・ガーデンの人々にトレントとの関係を知られたくないパムは、やんわりと彼を無視して、自分の自転車で帰った。パムは去ったが、トレントの庭にはもう一人キャメロット・ガーデンの少女、デヴォンがいる。
【キャメロット・ガーデンの少女 第16段落】 デヴォンに請われ、庭の葉っぱのない木に登って、その枝に赤いリボンを付ける羽目になったトレント。木に登って作業をするトレントに、デヴォンは話し掛けた。誰にも心を開かないデヴォンが、トレントにはおしゃべりになれるのは、彼がバビヤガだから。バビヤガのいる空想の世界の中では、デヴォンはおとぎ話に登場するような女の子になれるのだろう。デヴォンは自分が心臓の手術で2回死にそうになったことをトレントに話した。デヴォンの体には心臓の機能を正常にする為の、ポンプが入っている。体の方はもう大丈夫みたいだけど、大きな手術は彼女の心に暗い影を落としているようだ。同世代の子供には馴染めないデヴォンだが、ショットガンで撃たれ、一度死にそうになったと話すトレントには、余計に親近感を持つ。
【キャメロット・ガーデンの少女 第17段落】 木の枝が折れてトレントは墜落。地面に落ちたトレントが目を開けると、沢山の赤いリボンが風に揺れる木がきれいだ。怖くて犬小屋に引っ込んだデヴォンに、トレントは車にあるビールと煙草を持ってくるように頼んだ。犬のようにその要求に応え、ビールを飲んでゲップをするトレントの真似をするデヴォン。そんな彼女にトレントも少しは親近感を持ったようだ。仕事の序でに住宅街の門の外まで、デヴォンをトラックで送ってあげた。デヴォンは幼かったが、なぜ門の外でトラックを降りなければならないかは理解していた。
【キャメロット・ガーデンの少女 第18段落】 ストッカード家の庭で町の人を呼んだホーム・パーティが開かれた。犬が好きなデヴォンは、ブレットといつもつるんでいるショーン
Sean (エリック・メビウス:『 バイオハザード (2001) RESIDENT EVIL 』等に出演)が飼っているドーベルマン doberman
、スタッカーに近づくが、子供嫌いのスタッカーにウ〜ッと唸られ拒否される。台所に入ろうとしたデヴォンは、サラダボールを持った母とブレットの情事を目撃し、一瞬ショックを受ける。ところが何も言わずにその場を去るデヴォンは俄かに微笑む。きっと彼女の母親への愛は冷め切っているのだろう。
【キャメロット・ガーデンの少女 第19段落】 芝刈りをし終えたトレントがモートンに料金を貰いに、パーティの中へと入ってきた。パムと目が合うが、もちろん彼女は彼を無視。ブレットとショーンは絡んでくるし、ナッシュに身に覚えのない町のランプ泥棒を疑われるし、モートンからは料金をごまかされそうになるし、トレントはかなり虐められる。そんなトレントを居たたまれない気持ちで見つめるデヴォン。
【キャメロット・ガーデンの少女 第20段落】 パーティを立ち去るトレントをショーンが追って来た。ショーンとトレントは、小学校3年生の時に同じクラスだったそうだ。ショーンから言われて、トレントはやっとそのことを思い出した。外科医の息子のショーンは、すぐに転校して私立の学校に変わったのだ。ショーンはどうも同性愛志向みたいで、トレントのことを気に入っている様子。親しげに別れたトレントとショーンを見ていたデヴォンは、トレントのために持ってきたステーキをガレージの道具箱の中に捨てた。
【キャメロット・ガーデンの少女 第21段落】 パーティの明るい音楽が外から聞こえる中、締め切ったガレージで、デヴォンは一人遊んでいた。それもヘンな遊び。トレントがショーンと仲良さそうだったのがストレスになったのかな。車の屋根に座ってフロントガラスにオシッコをかけると、ワイパーを動かしてそれを拭いた。また、ダッシュボードの中の銃を取り出し、"
Go ahead, make my day! (やれるもんならやってみな。)"とダーティーハリー
Dirty Harry の真似をして運転席から銃を構える。"バーン"と声を出してデヴォンの銃を持つ手を掴んだのは、ブレット。彼は"
You smell like Mom. (ママと同じにおいだ。)"とデヴォンを触ろうとしてきた。トンでもない男!!!ブレットは、逃げるデヴォンに黙っているようにジェスチャーした。
【キャメロット・ガーデンの少女 第22段落】 その日の耐えがたいストレスから逃れる為、デヴォンは大胆にも芝居を打つ。パーティの後片付けをする両親に、トレイシーという友達の家に泊まりに行く話をでっち上げた。もちろんデヴォンには友達なんかいないのだが、トレイシーのお父さんが銀行家であると聞くと、両親は即座にOK。さすが娘は両親の偽善的傾向を知り尽くしている。
【キャメロット・ガーデンの少女 第23段落】 翌日、母クレアの運転するオープン・カーでトレイシーの立派な家の前まで送ってもらったデヴォン。もちろんクレアはトレイシーの親に挨拶に行こうとする。しかし、デヴォンは子供っぽいから止めて欲しいとクレアを車から降りさせなかった。デヴォンは母親がいなくなったのを見謀ると、トレイシーの家には入らず、一目散に駆け出した。
【キャメロット・ガーデンの少女 第24段落】 デヴォンが森のトレントの家に着いたときには、もう日が暮れていた。今日も先にパムがトレントを訪れていた。パムが帰るのをこっそり犬小屋から窺っているデヴォン。パムがいなくなって気がふさいでいるトレントに、家に入り込んだデヴォンはまた色々と話し掛ける。目を輝かせて撃たれた時の感触について質問するデヴォンに、トレントは偏見のせいで警察にショットガンで撃たれ、6ヶ月間刑務所に入ったことを話した。トレントもデヴォンと話している内に、気が紛れてきたようで、小さな女の子がこんな時間にこんな所にいる不自然さに気付いた。トレントはデヴォンをトレーラーハウスの外に出した。
【キャメロット・ガーデンの少女 第25段落】 両親についた嘘の手前、家に帰れないデヴォンは、トレントをニワトリ狩に誘った。二人で近くの農家のニワトリ小屋から一羽を拝借し、トレントの家に戻って捌(さば)いて食べた。その途中、デヴォンはしっかり家に公衆電話をかけ、アリバイ作りをするのを忘れなかった。森の中の庭で満腹になった二人は、焚き火の横で寛(くつろ)いでいる。
【キャメロット・ガーデンの少女 第26段落】 もし2人のことが知れれば、大変なことになることはデヴォンも分かっている。パパにバレれば、トレントは今日のニワトリのように足を切られ、火焙りにされる!デヴォンはトレントに怪しく話す。「辺りが暗くなり、バビヤガが野原に出ると、野犬がやってくるの。そして恐ろしい風が吹きすさぶ。バビヤガは素手で野犬を殺し、食べてしまう。バビヤガは歌い踊り、そのお腹は肉と血でいっぱい。」
デヴォンは、切られたニワトリの足を持って、トレントの腕の上で踊らせながら、バビヤガの歌を歌った。この時、ムソルグスキーの♪バーバ・ヤーガの小屋
The Hut Of Baba Yaga ♪がバックに流れる。デヴォンにとってあらゆる悪の象徴であるバビヤガは、トレントではなく、父モートンになってしまった。バビヤガに殺される野犬がトレントだ。
【キャメロット・ガーデンの少女 第27段落】 ベッドの上のデヴォンは、ソファで眠っているトレントに、バビヤガから逃げる方法を話した。「女の子は犬からクシとタオルを貰ったの。女の子は森を走って逃げ、捕まりそうになったらタオルを投げると大きな川ができるの。牛が水を飲み干すまでバビヤガは渡れない。また追ってきたら今度はクシを投げると大きな森が生えてくるの。」
眠りたいトレントはデヴォンの話を真剣には聞いていないが、大切なことを教えてあげたような気がするデヴォンはホッとして眠りについた。
【キャメロット・ガーデンの少女 第28段落】 翌朝、トレントはデヴォンに友達でいたかったら、2人のことは秘密にしておこうと話し、トラックで彼女を送った。車の中で、デヴォンはトレントに大人になったら何になりたいと尋ねる。トレントは面食らうが、この土地を出たいと答えた。いつかお金がたまったら、新しいシャツと靴下を買って、この人生とオサラバする。デヴォンはトレントのプランが気に入った。自分たち2人を『
ボニーとクライド/俺たちに明日はない (1967)
BONNIE AND CLYDE 』のようだと感じたのだろう。嬉しそうに"
DEVON AND TRENT "" TRENT AND DEVON
"と連呼する。
【キャメロット・ガーデンの少女 第29段落】 トレントはキャメロット・ガーデンにすぐに行かず、寄り道してデヴォンを湖に連れて行った。そこは幼い頃の楽しい思い出のある、トレントのお気に入りの場所のようだ。何だか嬉しくなってきたトレントはカー・ラジオの音量を上げて、トラックの屋根の上に登り、デヴォンと一緒にダンスを踊った。♪
Dancing in the Dark ♪〔 by Bruce Springsteen
アルバム『 Born in the U.S.A. 』( 1984 )に収録〕
【キャメロット・ガーデンの少女 第30段落】 湖ではデヴォンの父モートンとナッシュがボートに乗って釣りをしていた。岸にいる騒がしい2人組みを威嚇する為、ナッシュは銃を水面に向かって撃った。「薄汚い娘だ。」とモートンは芝刈りの青年と一緒にいる少女がデヴォンだと気付かない。ヤバイと感じ、車の屋根から降りようとするトレントに、デヴォンは耳打ちした。デヴォンはトレントと一緒に、ボートの2人にお尻を見せた。"
DEVON AND TRENT "の小さな抵抗だ。トレントにキャメロット・ガーデンの門の外まで送ってもらったデヴォンは、動き出す水色のトラックを別れが惜しそうに指でなぞった。
【キャメロット・ガーデンの少女 第31段落】 ちょっとだけ強くなったデヴォンは、夕食の時、両親にブレットの自分への猥褻行為を告白した。しかし、ブレットは、父親にとっては大会社の副社長の息子、母親にとっては可愛い間男だ。両親の微妙な態度を感じ取ったデヴォンは、ブレットはくすぐっただけだと言い直した。娘の危機より自分たちのエゴを優先させる両親に対して、気持ちが悪くなったデヴォンは、食べていたステーキを吐いた。自分の部屋で髪を梳いているデヴォンに、ダイニングにいる両親が自分の手術の傷跡について話すのが聞こえた。父モートンが、デヴォンが年頃になった時、男の子が触ってあの傷を見たら逃げ出すと言うと、母クレアは笑ってそれに応える。傷つくデヴォン。
【キャメロット・ガーデンの少女 第32段落】 イヤなことがあると、デヴォンはヘンな遊びをする。人形を置いて、一人二役でチェスみたいなゲームをしている。自分でやってるんだけど、デヴォンはやり方が汚いと人形を怒って、手足をもぐ。部屋のダンボールには無残な姿をした人形がいっぱいだ。父と母から精神的虐待を受けて育った子供の心の闇だろう。そんな時、外で芝刈り機の音が聞こえた。デヴォンは急に明るい表情になり、素早く階段を下りた。母親に許可を得て、向かいの家で芝刈りをしているトレントに水を持って行く。トレントは、お礼に芝刈り中に見つけたカメをデヴォンにあげた。
【キャメロット・ガーデンの少女 第33段落】 ところで、この町にはデヴォン以外にもヘンな子供がいる。4、5歳の感じで、メガネをかけているその男の子ビリー
Billy は、嗜好が暴力的で盗癖がある。芝刈りをするトレントや、道を歩くデヴォンに玩具の銃を向けて遊ぶ(仕返しはされている)し、町の家々の街灯ランプを盗んで、その傘を投げて一人で戦争ごっこをしていたりする。ナッシュが頭を悩ませていたランプ泥棒は、トレントではなく、ビリーだ。今日もビリーは、ショーンの黄色い年代物のオープン・カーの中に置いてあった、買ったばかりのCDをうまく盗った。
【キャメロット・ガーデンの少女 第34段落】 ブレットはトレントにCDが盗まれたと確信する。トレントに心を寄せているショーンは、少し反対するが、彼らはこっそりと芝刈り機のオイルタンクに砂糖を入れた。芝刈り機はもちろん故障、その上、ショーンとブレットは家に帰ろうとしているトレントのトラックを止め、CDを返すように難癖を付けてきた。日頃肉体労働しているトレントが力で負けるはずがない。ブレットは道に倒された。お次はショーンだ。「何が望みだ?」と訊くトレントに、「何をしてくれる?」と意味深なショーン。トレントは思い切り彼にキスをして突き飛ばした。するとショーンの犬スタッカーがご主人様の危機と、トレントに噛み付く。すっかりトレントに心奪われたショーンは、スタッカーを蹴飛ばし、道を塞いでいる自分のオープン・カーを動かすようにブレットにキツく命令した。
【キャメロット・ガーデンの少女 第35段落】 芝刈り機はもう二度と動かない。機械がなければもう芝刈りをして働くことができない。落ち込むトレントは、遊びにやって来たデヴォンを、トラックで自分の両親の家に連れて行った。その小さな家は貧しい集合住宅にあり、星条旗
the Stars and Stripes が掲げられている。デヴォンはトレントの母親(べス・グラント:『
ドニー・ダーコ (2001) DONNIE DARKO 』『 パール・ハーバー (2001) PEARL HARBOR 』『 オールド・ルーキー (2002) THE ROOKIE 』等に出演)に優しく迎え入れられた。部屋に飾られている、水泳の跳び込み競技で賞をとったトレントの写真。母親の体を気遣うトレント。トレントの家族はお互いを思いやる良い家族のようだ。
【キャメロット・ガーデンの少女 第36段落】 芝刈り機を潰され、トレントがあんなにショーン達に腹を立てたのには訳があった。彼は両親に仕送りをしていたのだ。トレントの父親(トム・アルドリッジ)は朝鮮戦争
Korean War ( 1950-1953休戦)の退役軍人で、戦争の時、配給されたチーズの缶詰の中に入っていたバクテリアのせいで、肺が全体の4分の1しかない。父親は息苦しく、肺は日に日にバクテリアに蝕まれているというのに、政府はこのことを認めてはいなかった。それなのに、今でも戦争で死んでいった仲間の星条旗を大事に仕舞っている父親。トレントの家族は長い間このことで苦しんできた。帰る途中、"バビヤガ"がもっと大きな世界にもいることを知ったデヴォンは、トレントの父親から貰った星条旗をトラックの窓から捨てた。♪
Knockin' on Heaven's Door ♪〔 by Bob Dylan
アルバム『 Pat Garrett and Billy the Kid
』( 1973 )に収録〕
【キャメロット・ガーデンの少女 第37段落】 トラックを止め、森の裏の草原に降り立ったデヴォンとトレント。デヴォンは親友だからとトレントに手術の大きな傷跡を見せた。父モートンのようにその傷を毛嫌いすることなく、トレントはデヴォンの指示通りにそっと傷を触った。次はトレントがショットガンの傷跡を見せる番。お互いの傷を見せ合いっこして、デヴォンはトレントのことをより深く信頼するようになったのだが…。・・・
▲TOPへ
◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。
ATTN: This review reveals the movie content.
Please don't say that I didn't say !
【キャメロット・ガーデンの少女 第38段落】 そこへ、ショーンの犬スタッカーが草原に現れた。スタッカーと仲良くしたいデヴォンは、トラックで追いかけようと提案。トラックは走って逃げるスタッカーを追った。ところが、トレントは思わず(わざと?)スタッカーをトラックで轢いてしまった。トレントはデヴォンに目を瞑っておくように言い、傷ついたスタッカーを棒で殴り殺した。顔を覆った指の隙間から、トレントがしていることを見てしまったデヴォンは、トラックを降り、自分の家に向かって走り去った。トレントは死んだ犬を星条旗で包み、キャメロット・ガーデンの門の外に置いた。
【キャメロット・ガーデンの少女 第39段落】 血相を変えて家に戻って来た娘デヴォンを見て、クレアは夫を家に戻した。両親の前でナッシュの質問に答えるデヴォン。幼い娘の断片的な返答を聞いて、その場にいた大人たちは、トレントが少女猥褻魔だと思った。犬を殺されたショーンと一緒に、怒りに燃えたモートンはナッシュを連れ、トレントの所へ向かう。大変なことになったと思ったデヴォンは、父親と一緒の車に乗り、誤った道を教えるが、結局一行はトレントの家に辿り着いた。
【キャメロット・ガーデンの少女 第40段落】 車の中にいるデヴォンは、今度はトレントが犬のように棒で殴られるのを見た。トレントはぐったりとしていて、これ以上殴られると危ない。モートンはナッシュの制止を聞かず、ショーンにまだトレントを殴らせようとした。愛犬を殺されたとはいえ、これ以上殴るのは気が引けるショーンは、棒を振り上げたまま、迷っていた。
【キャメロット・ガーデンの少女 第41段落】 銃声!!お腹から血を出し、ショーンがモートンに倒れ掛かった。デヴォンがショーンを撃ったのだ。デヴォンはトレントに走りより、逃げるように言った。トレントがトラックの方へ向かうと、デヴォンは父モートンに銃を向け、財布を渡すように脅した。「新しいシャツを買って。」と受け取った財布と銃をトレントに握らせると、デヴォンは家の中に入った。モートンは茫然自失である。トレントはまだ現実と空想の違いがはっきり分からないデヴォンのために、銃の中の弾を抜いた。
【キャメロット・ガーデンの少女 第42段落】 家の中から出てきたデヴォンは、トラックに乗り込んだトレントに、バビヤガの話の通り、タオルとクシを渡した。
トレント:" Whatever happened at the
end of that story? (あの話の女の子はどうなる?)"
デヴォン:" The girl got a way. She
ran and ran and she was home. (無事に逃げるわ。走って家まで逃げるの。)"
トレント:" Home? Yeah, tell me where
that is, Devon?(家?俺の家はどこだ、教えてくれ。)"
デヴォン:" Home is in my hands. (私の手の中にあるわ。)"
【キャメロット・ガーデンの少女 第43段落】 トラックが走っていくのを見たデヴォンは、父親を銃で脅して肩車させると、赤いリボンの沢山ついた木に登った。父モートンは木の幹にヘナヘナと座り込み、ナッシュはその間に電話で救急車を手配した。デヴォンは木の上から川に銃を投げ捨てた。木の上に座りながら、デヴォンはバビヤガから逃げるトレントを想像した。今度は彼がデヴォンの物語の主人公だ。彼がトラックの窓から川にタオルを投げると、川の水位が上がり、橋が沈んだ。道路にクシを捨てると、次々と木が生えて森になった。デヴォンはトレントが安全に逃げおおせたと思うのだった。
▲TOPへ
【映画『 キャメロット・ガーデンの少女 』の感想】
バビヤガとは一体何だったのか?
盗まれている街灯のランプを見て、モートンはナッシュに話す。"
I don't like it one bit. We're insecure.
(我々は脅かされている。)" 彼らはトレントのような自分達の社会に属さない人々を疑っているのだが、実際は彼らの社会から生まれた少年ビリーが盗んでいたのだ。ビリー少年は、これから二人が向かう湖の近くで、ランプの傘を何個も投げ、湾岸戦争
Gulf War ( 1991 )ごっこを楽しんでいる。
第二次世界大戦後の冷戦中、初めて熱い戦争となった朝鮮戦争で戦ったトレントのお父さんは、戦争で死んだ仲間に負い目を感じ、今もまだ悩んでいる。その追悼の意を表すために、星条旗を飾っているのだろう。実際に『
パッチ・アダムス (1998) PATCH ADAMS 』のお父さんも第二世界大戦とは違って、戦う理由の見つからなかったこの戦争で、自分の為に友人を失い、長い間そのトラウマに苦しんだ上、自殺されたそうだ。国が行った戦争でそんなに辛い目にあっている老兵を苦しめているのは、戦場で朝鮮兵から受けた傷ではなく、国から配給されたバクテリア入りの缶詰だった。
モートンが異種の人間に対して持つような「我々は脅かされている。」という勝手な妄想がバビヤガなのではと私は思った。その犠牲者が、マクロ的に考えれば、大国アメリカに犯されたイラクのような国であり、ミクロ的に考えれば、コミュニティから爪弾きにされているトレントのようなプアーホワイト
poor white であり、ブレットとショーンにバカにされていたメキシコ人郵便配達夫のようなカラード
colored である。
移民国家のアメリカでは、新しく入ってきた移民は大概底辺の仕事から始める。彼らはアメリカン・ドリームを目指して、努力して働き、自分たちの地位を上げる。しかし、労働人口の空洞化は起こらない。トレントのような這いあがれなかった旧移民もいるし、また新しい移民がやって来て低所得労働に付くようになるからだ。移民は階層化されている。自由で平等になれるチャンスを与えてくれるアメリカ社会では、いつも誰かがその底辺を支える役割を果しているのだ。
映画の中ではあまりないことなのだが、トレントは犬を殴り殺した。キャメロット・ガーデンに引っ越してきながら、釣り相手は警備員のナッシュであることから、ロシア系(?)のモートンは、WASPが仕切る社会にまだ馴染めずにいると思う。権力を持つWASPがモートンを虐め、モートンはトレントを虐め、トレントは犬を虐めた。それがアメリカ社会。だからトレントは犬を星条旗で包んだのだと思う。殺された犬は社会システムによる犠牲者の象徴的な存在だ。原題の"
LAWN DOGS (芝生の犬)"とは、社会の底辺で生きる芝刈り青年トレントのことであり、そういう境遇の人たちを指すのではないのかなぁ。
ストッカード家では、モートンが社会での出世に気を取られている間に、妻は浮気をしているし、娘は現実感のないヘンテコな子に育っている。デヴォンは"
I don't like kids. They smell like TV. (子供は好きじゃないの。TV漬けになっているから。)"と今の子供を批判するが、彼女自身もダーディーハリーや、ボニーとクライドのようなバイオレンス物(昔の作品だけど)が好きな今時の子供の一人。病気だったせいで、友達と接することがなく、エゴイストな両親に育てられたデヴォンは、自分が批判する子供たちよりもっと現実感がない。血を流して今にも死にそうなショーンを見て、"
He won't die. I lost bucketsful and I didn't
die. (彼は死なないわ。私だって死ななかったもの。)"と言ってのけるくらいだ。
大国は外患ではなく内憂から滅びるという。ストッカード夫妻は自分達が育てた娘によって、築き上げてきたものを失った。銃社会アメリカでは、子供による銃乱射事件が起こる。今年(
2003 年)のアカデミー賞でもカンヌ国際映画祭でも、
1999 年 4 月 20 日にコロラド州 Colorado のコロンバイン高校
Columbine High で起こった銃乱射事件を題材にした映画が賞を取った。マイケル・ムーア
Michael Moore 監督の『 ボウリング・フォー・コロンバイン
(2002) BOWLING FOR COLUMBINE 』(アカデミー長編ドキュメンタリー賞)と、ガス・ヴァン・サント
Gus Van Sant 監督の『 エレファント (2003) ELEPHANT 』(パルムドール)だ。日本も他人事ではないかもしれないが、こんな悲惨な事件が起こるアメリカはやっぱり病んでいると思う。
最後の感動的なトレントとデヴォンの別れのシーン。「俺の家はどこだ、教えてくれ。」と尋ねるトレントに、「私の手の中よ。」とデヴォンは両手で彼の頬を包んで答える。国家の未来は子供達の手に委ねられている。その手の中に銃を持たせてはいけない。デヴォンが持っていた銃の弾を抜いたトレントの気持ちが、映画制作者の気持ちでもあるだろう。
以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず14351文字/文責:幸田幸
参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集
http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
IMDb
allcinema ONLINE
Nostalgia.com
CinemaClock.com
MSN Entertainment
http://entertainment.msn.com/music/
Exquisite Russian Lacquer Art
at sunbirds.com
http://www.sunbirds.com/index.shtml
Yahoo! News
※台詞の日本語訳は、ほぼヴィデオ字幕の引用です |
|
■映画『 キャメロット・ガーデンの少女 (1997) LAWN
DOGS 』の更新記録
2003/05/26新規: ファイル作成
2004/07/15更新: ◆テキスト一部とリンクおよびファイル書式
2005/03/09更新: ◆一部テキスト追記と書式変更 |
▲TOPへ |
幸田 幸
coda_sati@hotmail.com |