めぐりあう時間たち | |||||||||||||||||||||||||||
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めぐりあう時間たち (2002) | |||||||||||||||||||||||||||
THE HOURS | |||||||||||||||||||||||||||
映画『 めぐりあう時間たち (2002) THE HOURS
』をレヴュー紹介します。 映画『 めぐりあう時間たち THE HOURS 』を以下に目次的に紹介する。 ■映画『 めぐりあう時間たち THE HOURS 』のポスター、予告編および映画データ ■映画『 めぐりあう時間たち THE HOURS 』の解説 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。 ■映画『 めぐりあう時間たち THE HOURS 』の主なキャスト ■映画『 めぐりあう時間たち THE HOURS 』のスタッフとキャスト ■映画『 めぐりあう時間たち THE HOURS 』の<もっと詳しく> <もっと詳しく>は映画『 めぐりあう時間たち 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタバレ)です。※ご注意:映画『 めぐりあう時間たち THE HOURS 』の内容やネタバレがお好みでない方は読まないで下さい。 ■映画『 めぐりあう時間たち THE HOURS 』の結末 ■映画『 めぐりあう時間たち THE HOURS 』の更新記録 >>「映画解説・レヴュータイトル一覧表」へ(画面の切り替え) |
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幸の鑑賞評価: 7つ星 | |||||||||||||||||||||||||||
■映画『 めぐりあう時間たち THE HOURS 』のポスター、予告編および映画データ | |||||||||||||||||||||||||||
めぐりあう時間たち
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●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。 Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com. Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc. |
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■映画『 めぐりあう時間たち THE HOURS 』の解説 映画『 めぐりあう時間たち (2002) THE HOURS 』は、マイケル・カニンガム原作のピュリツァー賞に輝く小説の映画化。映画『 めぐりあう時間たち 』では三人のヒロインが時代と場所と超えて交錯してストーリーが綴られていく。まさに“めぐりあう時間たち”なのだ。 1920年代のロンドン郊外では著名な小説家ヴァージニア・ウルフ(ニコール・キッドマン)が「ダロウェイ夫人」を執筆している。第二次世界大戦後の1951年、ロサンゼルスでは妊婦中の主婦ローラ・ブラウン(ジュリアン・ムーア)が夫の誕生日パーティもそっちのけで「ダロウェイ夫人」を読むのに夢中。そしてダロウェイ夫人の現代版とも言えるクラシカ・ヴォーン(メリル・ストリープ)はニューヨークに住み、詩人・小説家である元恋人(エド・ハリス)はエイズで死にそうになっている。 映画『 めぐりあう時間たち 』では、この三人の女性が絡み合って、人生の可能性と意義を求めていく様をしっとりと見せるが、果たしてどのように合流点があるのかはお楽しみに。 映画『 めぐりあう時間たち 』では、ニコール・キッドマンが 2003 年のアカデミー主演女優賞に輝いた。 ▲TOPへ ■映画『 めぐりあう時間たち THE HOURS 』の主なキャスト ●ニコール・キッドマン as ヴァージニア・ウルフ 『 ドッグヴィル (2003) DOGVILLE 』 『 白いカラス (2003) THE HUMAN STAIN 』 『 コールド マウンテン (2003) COLD MOUNTAIN 』 『 ステップフォード・ワイフ (2004) THE STEPFORD WIVES 』 『 バース (2004) BIRTH 』 『 奥さまは魔女 (2005) BEWITCHED 』 『 ザ・インタープリター (2005) THE INTERPRETER 』 ●ジュリアン・ムーア as ローラ・ブラウン 『 妹の恋人 (1993) BENNY & JOON 』 『 逃亡者 (1993) THE FUGITIVE 』 『 ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク (1997) THE LOST WORLD: JURASSIC PARK 』 『 ブギーナイツ (1997) BOOGIE NIGHTS 』 『 理想の結婚 (1999) AN IDEAL HUSBAND 』 『 マグノリア (1999) MAGNOLIA 』 『 ハンニバル (2001) HANNIBAL 』 『 エデンより彼方に (2002) FAR FROM HEAVEN 』 『 フォーガットン (2004) THE FORGOTTEN 』 ●メリル・ストリープ as クラリッサ・ヴォーン 『 マディソン郡の橋 (1995) THE BRIDGES OF MADISON COUNTY 』 『 アダプテーション (2002) ADAPTATION 』 『 クライシス・オブ・アメリカ (2004) THE MANCHURIAN CANDIDATE 』 『 レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語 (2004) LEMONY SNICKET'S A SERIES OF UNFORTUNATE EVENTS 』 ●エド・ハリス as リチャード・ブラウン 『 奇蹟の詩 サード・ミラクル (1999) THE THIRD MIRACLE 』 『 スターリングラード (2000) ENEMY AT THE GATES 』 『 戦争のはじめかた (2001) BUFFALO SOLDIERS 』 『 ビューティフル・マインド (2001) A BEAUTIFUL MIND 』 『 白いカラス (2003) THE HUMAN STAIN 』 『 僕はラジオ (2003) RADIO 』 |
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【『 めぐりあう時間たち 』のスタッフとキャスト】 | |||||||||||||||||||||||||||
監督: スティーヴン・ダルドリー Stephen
Daldry (Directed by) 製作: ロバート・フォックス Robert Fox (producer ) スコット・ルーディン Scott Rudin (producer ) 製作総指揮: マーク・ハファム (executive producer) 原作: マイケル・カニンガム (novel) ヴァージニア・ウルフ Virginia Woolf (novel Mrs. Dalloway and other writings) 脚本: デヴィッド・ヘア David Hare (screenplay) 撮影: シーマス・マッガーヴェイ Seamus McGarvey (Cinematography by) 編集: ピーター・ボイル Peter Boyle (Film Editing by) 音楽: フィリップ・グラス Philip Glass (Original Music by) 出演: ニコール・キッドマン Nicole Kidman ヴァージニア・ウルフ ジュリアン・ムーア Julianne Moore ローラ・ブラウン メリル・ストリープ Meryl Streep クラリッサ・ヴォーン スティーヴン・ディレイン Stephen Dillane レナード・ウルフ ジョン・C・ライリー John C. Reilly ダン・ブラウン ジャック・ロベッロ Jack Rovello リッチー・ブラウン トニー・コレット Toni Collette キティ エド・ハリス Ed Harris リチャード・ブラウン アリソン・ジャネイ Allison Janney サリー・レスター クレア・デインズ Claire Danes ジュリア・ヴォーン ジェフ・ダニエルズ Jeff Daniels ルイス・ウォーターズ アイリーン・アトキンス Eileen Atkins バーバラ ミランダ・リチャードソン Miranda Richardson ヴァネッサ・ベル ジョージ・ロフタス George Loftus クウェンティン・ベル チャーリー・ラム Charley Ramm ジュリアン・ベル ソフィー ウィバード Sophie Wyburd アンジェリカ・ベル リンダ・バセット Linda Bassett ネリー ▲TOPへ |
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<もっと詳しく> | |||||||||||||||||||||||||||
ストーリー展開の前知識やネタバレがお好みでない方は、読まないで下さい。 |
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■映画『 めぐりあう時間たち 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー 私は日本公開前に字幕スーパーなしの英語で観たので、わかる範囲でレヴューします。映画データについては調査した時点と公開される時点で異なる場合があります。本作の内容については、語学力と経験・常識不足のため、間違いや勘違いや適切でない表現があるかもしれません。どうかご理解賜りますようお願いいたします。また、リンクやメールをいただく場合はここを必ずお読みくださいますように。 ▲TOPへ 【めぐりあう時間たち 第01段落】 セピア色の映像で、「あなたの人生をこれ以上駄目にしたくない」と夫に遺書を遺して 59 歳で入水自殺するのは、イギリスの女性小説家ヴァージニア・ウルフ( 1882 - 1941 )。この映画はマイケル・カニンガム原作のピュリツァー賞に輝く映画と同題の小説「 The Hours 」が原作であり、その小説は更に、ヴァージニア・ウルフ著作の「ダロウェイ夫人( Mrs. Dalloway )」を題材にしている。 『 リトル・ダンサー (2000) BILLY ELLIOT 』のスティーヴン・ダルドリーが監督し、ニコール・キッドマンとジュリアン・ムーアとメリル・ストリープの三大女優が、別々の時代と場所で生きる三人のヒロインを演じる。そして、ストーリーはたった一日の出来事。 【めぐりあう時間たち 第02段落】 ロサンゼルス、 1951 年。ベッドに寝たままの身重の妻ローラ・ブラウン(ジュリアン・ムーア)をチラッと見て、朝食の段取りをする夫ダン・ブラウン(ジョン・C・ライリー: 『 シカゴ (2002) CHICAGO 』で記述したばかりです)。ダンは第二次世界大戦から凱旋しているが、結婚生活は夫婦双方ともホンネなしの遠慮と虚無の生活のようである。ダンは息子リッチー(ジャック・ロベッロ)に朝食を用意し、ママはもう少ししたら起きてくるからね、と出勤前の背広姿でこの7歳くらいの息子の世話をしている。今日はこの夫ダンの誕生日だ。妻が寝ている間に、夫は自分で誕生日用の花を花瓶に活けている。妻ローラは起きてきて、「花を自分で飾ったのね」と夫に言って「誕生日おめでとう」と送り出す。 【めぐりあう時間たち 第03段落】 この「花」は、ヴァージニア・ウルフ著の「ダロウェイ夫人」で、「お花を買ってくるわ」というセリフがあり、この小説の大切な要素なのだ。 【めぐりあう時間たち 第04段落】 時と舞台は変わって、英国はリッチモンド、 1923 年。やはり朝。レナード・ウルフ(スティーヴン・ディレイン)は愛犬と共に立派な英国的な郊外の屋敷に散歩から戻ってくる。妻ヴァージニア・ウルフ(ニコール・キッドマン)はベッドに寝たまま、しかめっ面をしている。執筆中の小説「ダロウェイ夫人」に気が行って、イライラし続けているようだ。小説家だから並みの神経や感性の人でないのは当然だろうが、ヴァージニア・ウルフは正気でなくなってきているのだ。夫はそんな妻を保護し、監督し、我慢する役割を担っている。それに、昔の人はコンピュータもタイプライターもないから大変。ペンで書くから、スペルを間違えればページ一枚ごと書き直しだ。ロサンゼルスのブラウン家でダンが花を活けている頃、映像は交錯して、このリッチモンドでもヴァージニア・ウルフが花を花瓶に活けている。 【めぐりあう時間たち 第05段落】 更に時と舞台は変わって、ニューヨーク、 2001 年。出版社の編集の仕事をしているクラリッサ・ヴォーン(メリル・ストリープ)は、同じく中年女性のサリー・レスター(アリソン・ジャネイ: 『 アメリカン・ビューティー (1999) AMERICAN BEAUTY 』 『 ベティ・サイズモア (2000) NURSE BETTY 』等に出演)と同じダブルベッドを使っている、つまりレズビアンだ。「お花は自分で買うわ」とクラリッサは言って、花屋へ。クラリッサの昔の恋人で、三十年来友人である詩人・小説家のリチャード・ブラウン(エド・ハリス)が文芸関係で授賞したので、お祝いの花束を買うのだ。リチャードの書く小説は難解で、書くのに十年、読むのに十年、なんて冗談も花屋のバーバラ(アイリーン・アトキンス)が言うほどだ。 【めぐりあう時間たち 第06段落】 リチャードはエイズを患っていて、元気なく、憔悴している。古いレンガのアパートの4階くらいの部屋に独りで住んでいる。花束を抱えて勝手知ったるリチャードの部屋に入ったクラリッサは、早速花を活ける。彼女は、かつて半年ほど恋人関係だったエイズの彼の世話を、それ以来ずっと続けているのだ。「今日は授賞のお祝いのパーティを夕方5時から私のところでするから、あなたは何もしなくていいから来てね。」とクラリッサは言う。「あなたの作品はずっと生きるのよ。」とも言う。エイズのリチャードの健康状態を考えると、自然にそういう言葉が出るのだろう。すると出し抜けに彼が言う。「僕がもし死んだら怒るかい?僕は君を満足させるためだけに生きている気がするんだ。」更に「一体、君は何年間これをしているの?ここに来て、世話をして。サリーのこともあるし…。」言葉を失ったクラリッサは「3時半に迎えに来るわ。着替えをしてもらうから。」と言って、帰っていく。 【めぐりあう時間たち 第07段落】 このローラ・ブラウンとヴァージニア・ウルフとクラリッサ・ヴォーンの三人の女性のその日の生活と心理が、映画では頻繁に交錯して写されていく。それがある一点で結び合うとは最後まで気付かなかった!ここではある程度一人ずつまとめて書いていこうと思う。 【めぐりあう時間たち 第08段落】 ロサンゼルス。料理の本を見ながら夫の誕生日祝いの支度をしているローラ。ローラ役のジュリアン・ムーアは 『 エデンより彼方に (2002) FAR FROM HEAVEN 』等、派手すぎず安定した雰囲気でか、結構重宝がられて役を授かっているようだ。ジュリアン・ムーアは本名がジュリー・アン・スミス Julie Anne Smith といい、あまりにも平凡な氏名のため、女優になる際に芸名を考えた。姓のムーアは父親のミドルネームから、そして名は、自分の二つの名前ジュリーとアンを一緒にして、ジュリアン。 【めぐりあう時間たち 第09段落】 なお、『ハンニバル』ではジョディ・フォスター Jodie Foster が大役クラリス・スターリングを降りたため、ジュリアン・ムーアが役を獲得している。これには実は、ヘレン・ハント Helen Hunt 、ジリアン・アンダーソン Gillian Anderson 、ケイト・ブランシェット Cate Blanchett といった錚々たる競争相手が随分いて、その中から抜擢されたそうだ。それにジュリアン・ムーアは 2002 年度の全米映画批評会議主演女優賞に輝いている。 【めぐりあう時間たち 第10段落】 ロサンゼルス、 1951 年。バースデイケーキを上手く作れなくて苛立っているローラ。そこに隣人のキティ(トニー・コレット: 『 シックス・センス (1999) THE SIXTH SENSE 』 『 チェンジング・レーン (2002) CHANGING LANES 』 『 アバウト・ア・ボーイ (2002) ABOUT A BOY 』 『 コニー&カーラ (2004) CONNIE AND CARLA 』等に出演)が来て、明るく大輪のバラのように華やかに初めはお喋りする。でも話を聞いていると、病院に行く深刻な状態であると分かり、人間にはおもての顔と内面の顔があるのだと気付かせる。ここで感極まったローラは、女性同士なのにキティに口にキスをする。息子リッチーはそんな母親のそばにいつもいて、母親の仕草や顔色を幼いながらも観察している。キティが帰ったあと、ローラは一応は出来上がったバースデイケーキをゴミ箱に捨ててしまった。 【めぐりあう時間たち 第11段落】 ローラは料理する気にもなれず、またベッドに戻って読書に夢中だ。読んでいるのはヴァージニア・ウルフ著の「ダロウェイ夫人」。計算してみたら「ダロウェイ夫人」が出版されたのは 1925 年だから、ローラのこの時の 1951 年からは四半世紀ほど前だけなのだ。この 20 世紀文学の最高傑作とも称せられる小説は、ローラの生きていた当時ではさぞセンセーショナルな作品だったのだろう。ローラは毎日の生活━━夫も子供も含んで━━から逃避したいのだ。暫く読んだあと、ローラは薬の瓶をいくつかハンドバッグに入れた。ケーキを作り直そう、そうしたら外出よ、と息子リッチーに言う。ここで変だなぁと思ったのは、バースデイケーキの色だ。ふつう、真っ白とかチョコレートの色であるのが、どういうわけが蒼いのだ。心を表しているのかしら? 【めぐりあう時間たち 第12段落】 台所のテーブルにちょこんと蒼いバースデイケーキを夫に残して、ローラは車に乗って、息子を知人の中年女性の家に預ける。ちょっとだから大人しく待っていて、と言う母親の言葉に、息子リッチーは母の心の中が読めたように反応して「ママ〜〜!」と号泣して車を追いかけようとする。その叫び声を聞きながらも、ローラは車を走らせ、あるホテルの部屋に入る。そして「ダロウェイ夫人」の読書を誰にも邪魔されずに続ける。暫くして彼女はバッグに入れてきた薬を飲もうとするが、水に寝台ごと洗い流される幻想を見て、「死ねない!」と言って、独りベッドで泣くのだ。 【めぐりあう時間たち 第13段落】 ローラ・ブラウンは息子の許に戻って来る。ママが長いことお留守しなくてよかったでしょ、可愛い子、と息子リッチーを抱く。帰宅し、夫ダンと誕生日祝いをしながら、結婚以来、お互いの本心を語っていなかったような仮面の夫婦に、夫は優しくこう言うのだ。「パパはローラ・マグラスというシャイな女の子と出会ったんだよ。そしてこの女性となら幸福を分かち合えると感じたんだ。」とダンは息子リッチーに語って聞かせる。ローラも嬉しそうな顔。これで、この一家も安泰になるのかな…?。後日、隣人のキティの見舞いに病院に行くことの話から、キティがこの世から消えてしまうかもしれないと思うとローラは恐ろしくなる。 【めぐりあう時間たち 第14段落】 次はまた 1923 年 の英国リッチモンドのヴァージニア・ウルフに移ろう。ニコール・キッドマンは 『 ムーラン・ルージュ (2001) MOULIN ROUGE! 』等で見る端正で艶やかな容姿とうって変わって、"時の人"ヴァージニア・ウルフの役作りに専念したようだ。本来の彼女のちょっと上を向いた可愛い鼻でなくて、ワシ鼻に近い長くて大きな鼻をつけているのだ。勿論メークが上手いから偽物と分からないが、美貌のニコール・キッドマンとはかけ離れた容貌でびっくり。これ本当にニコール・キッドマン?と何度も自分の目を疑ってしまった。メーキャップ担当の一人は 『 フォレスト・ガンプ/一期一会 (1994) FORREST GUMP 』 『 アリ (2001) ALI 』 等の Jay Cannistraci 。ヴァージニア・ウルフとそっくりに仕上げたヘア・スタイリストは 『 サイダーハウス・ルール (1999) THE CIDER HOUSE RULES 』 『 リプリー (1999) THE TALENTED MR. RIPLEY 』 『 ニューヨークの恋人 (2001) KATE & LEOPOLD 』 の Peggy Schierholz 。 【めぐりあう時間たち 第15段落】 ニコール・キッドマンは左利きなのだが、この映画のヴァージニア・ウルフの右利きに合わせて、右で書けるように自分で訓練したらしい。話は飛ぶが、彼女が夫トム・クルーズ Tom Cruise と破局を迎えた際に言った言葉は「これでヒールを履けるようになったわ。」キツ〜イ!因みにトム・クルーズは身長 168 p 、ニコール・キッドマンは 171 p だ。 【めぐりあう時間たち 第16段落】 1923 年 のリッチモンドのヴァージニア・ウルフの家には、今日、姉たちがやって来る。メイドさんのネリー(リンダ・バセット)に接待の料理の種類の指示も与えないほど、使用人たちとも上手くいっていないヴァージニアは気分が不安定だ。姉のヴァネッサ・ベル(ミランダ・リチャードソン: 『 スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする (2002) SPIDER 』等に出演)が到着した。十歳前後の長男クウェンティン(ジョージ・ロフタス)と次男ジュリアン(チャーリー・ラム)と一人娘アンジェリカ(ソフィー ウィバード)を連れている。屋敷の広い庭で、小鳥が死んだのを発見したアンジェリカは「死んだらどうなるの?」と叔母のヴァージニアに尋ねる。ヴァージニアは「来たところに戻るのよ。」「でも、私、来たところを覚えていない。」こんなやり取りをして、ここでも死についての考え方が出てくるのだ。ヴァージニアは死んだ鳥にバラを置いてやって、すぐ横に顔を並べて瞑想する。 【めぐりあう時間たち 第17段落】 ヴァージニア・ウルフは、姉一家が帰ってしまう時、「私は考え方を変えたの。」と言って、姉ヴァネッサに、これも口にキスをする。姉は何とも言えない表情で、馬車で去って行く。帰ってしまうと、ヴァージニアはタバコをふかせて考えごとをしている。そして行動に移す。足早に屋敷の裏門からそっと出て行った。すると、夫のレナードは妻の異変にすぐ気付き、後を追う。駅に着くと、案の定、妻ヴァージニアはプラットフォームに座っていた。妻の言動に常に留意し、悪態にも我慢して妻を見守っている夫。夫は妻に家に戻るように言う。ヴァージニアはこれまでにも二度も自殺を図った事があるのだ。 【めぐりあう時間たち 第18段落】 ヴァージニアは訴える。「私の人生は私から奪われている。ロンドンに戻るべきよ。ロンドンが恋しい。私はこの町で死んでいくのだわ。」ここで、リッチモンドという町を調べてみた。リッチモンド Richmond はロンドンの中心であるピカデリー駅から、現代で言うならば地下鉄で40分くらいの町。都会ではなく、田園風景が残っている上品な住宅地で、ロンドンの上流階級の人達が暮らすような伝統的な町だそうだ。リッチモンドと「死」とどちらかを選ぶとしたらどうすると夫に訊かれて、「死」を選ぶと応えたヴァージニア。だが、列車が到着したけれど、夫レナードと腕を組んで帰途についた。 【めぐりあう時間たち 第19段落】 次はメリル・ストリープ扮するクラリッサ・ヴォーンの現代のNY。メリル・ストリープは 『 マディソン郡の橋 (1995) THE BRIDGES OF MADISON COUNTY 』等 30 本ほどの作品に出演しており、<現存する最も偉大な映画女優>として映画ファンに見なされている。彼女は役作りには定評があり、完璧主義者だそうだ。『 激流 (1994) THE RIVER WILD 』では、危険な急流に代役なしに挑戦したし、『 ミュージック・オブ・ハート (1999) MUSIC OF THE HEART 』では、8週間一日6時間も練習してヴァイオリンを実際に弾けるようにした。彼女の辞書に不可能はないのかも。 【めぐりあう時間たち 第20段落】 クラリッサ・ヴォーンは自宅のアパートで、今晩のリチャード・ブラウンの祝賀会の料理に勤しんでいる。そこに、時間が大分早いのだがと言って、ルイス・ウォーターズ(ジェフ・ダニエルズ)がやって来た。ルイスはリチャードの元ホモ相手で、クラリッサと近況を話し合う。あぁ、同性愛だったからリチャードはエイズにかかっているのかと分かった。同性愛でも、かつては異性のクラリッサと恋人関係だったのか。また、同様に、クラリッサは昔は男性のリチャードと付き合っていたが、今は同性のサリーがパートナーである。こういうのがアメリカなのか…。 『 リプリー (1999) THE TALENTED MR. RIPLEY 』 『 Kissing ジェシカ (2001) KISSING JESSICA STEIN 』 『 抱擁 (2002) POSSESSION 』と、やはり同性愛を扱うストーリーは日本より欧米映画はずっと多い。 【めぐりあう時間たち 第21段落】 ルイス・ウォーターズは今は学生の恋人が出来たのだとクラリッサに報告している。そして、今夜のパーティの主役であるリチャード・ブラウンがエイズで死につつある現実とは離れて、リチャードのかつてのパートナーである自分は別の新しい新鮮な人生を歩みつつあるのだ。また、その後で帰ってきたクラリッサの大学生の娘ジュリア(クレア・デインズ)は母親が泣いているのを見て「お母さんの友達は悲しい人達ばかりね」と言って慰める。この娘ジュリアの父親とはクラリッサは全然会っていない。ジュリアは母親の男性との関係や現在のサリーとのレズ関係等について、干渉はしない。ジュリアは全く自由に自分の道を進んでいる。ルイスとジュリアの二人を登場させる意味は、この映画の三人の別の時代に生きるヒロイン達の暗く意味のないと思っている人生と対照的に、「希望」を象徴しているのだろう。・・・ ▲TOPへ ◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say ! 【めぐりあう時間たち 第22段落】 そうしている間に、リチャードを迎えに行く約束の3時半になった。リチャードは写真立てのウェディングドレス姿の女性に視線が行き、映像は、 1951 年のロサンゼルスで母親ローラを慕って号泣するリッチーにダブる。ウェディングドレス姿はローラ・ブラウンだ。そしてこのリチャード・ブラウンは、幼いリッチー(リッチーはリチャードの愛称)の五十年後なのだ!ここで繋がった!リチャードはアパートの窓を壊し、壁紙や柱もズタズタにして、何か覚悟を決めている。そこにクラリッサが迎えに来て、その異常な光景に動揺する。リチャードはクラリッサに言う。「僕は君の為に生きてきた。でももう僕を逝かせてほしい。今日、君がやった事を話してみて。『ダロウェイ夫人』の本のように、花を買いに行ったよね。…僕が 19 で、君が 18 歳だった。君は僕によくしてくれた。僕達二人ほど幸福な人はいないよ。」こう言って、リチャードは窓の枠から死んだ小鳥のように落下していった。 【めぐりあう時間たち 第23段落】 リチャードは自らで命を絶ってしまった。クラリッサは祝賀パーティのご馳走の後片付けを虚しくしている。そこに現れたのは、白髪の女性。クラリッサがリチャードのメモから電話番号を調べて連絡した、リチャードの母親ローラ・ブラウンだ。ジュリアン・ムーアは上手くメークを施して、老女に奇麗に巧みに化けている。初対面ながら、お互い会えてよかったという雰囲気だ。ローラの夫ダンは癌で亡くなっていると言う。それに、娘、つまりあの当時、ローラのお腹にいた子、即ちリチャードの妹も死んでしまっているそうだ。「私は子供達を愛していました、でも、子供達を捨てたのです。」ここにも重い人生があったのだ。 【めぐりあう時間たち 第24段落】 ローラの話は続く。二人目の子供が生まれた時、自分は家を捨てようと決心していた。カナダで職を得たという書置きを残してバス停から去って行った。誰も私を許してくれないでしょう。私は人生を選んだのです。エイズのリチャードは、幼時から母親ローラの精神の不安定さを体で知っていて、とうとう母親に去られてしまった。でも片身離さず持っていた写真立てで分かるように、五十年来、母親を慕い続けていた。こういう何とも重く沈んだ空気の中で、クラリッサは現在の心からのパートナー、サリーにキスをする。ローラはクラリッサの若い娘ジュリアの部屋に泊めてもらうことになる。ジュリアは、老女ローラをいたわって抱きしめる。ジュリアは今夜は居間のソファーで眠ればよい。気立ての優しいジュリアにひと時でも心の平安を見つけるローラ。人間って、こういった些細な心配りから希望や幸せを見つけられるのだろう。 【めぐりあう時間たち 第25段落】 ラストは、ヴァージニア・ウルフの冒頭の入水自殺。この映画は全編を通して短調の音楽が奏でられ、否が応にも人生の奥深さ、難しさを考えさせられる。三人の女性達が共通して人生の可能性と意義を求めていくこの作品は、 2002 年の< National Board of Review of Motion Pictures (全米映画批評会議)>で最優秀作品賞に輝いた。製作のスコット・ルーディンは 『 スリーピー・ホロウ (1999) SLEEPY HOLLOW 』 『 アンジェラの灰 (1999) ANGELA'S ASHES 』 『 ズーランダー (2001) ZOOLANDER 』 『 ザ・ロイヤル・テネンバウムズ (2001) THE ROYAL TENENBAUMS 』 『 アイリス (2001) IRIS 』 『 チェンジング・レーン (2002) CHANGING LANES 』等のヒットで知られる。最後に、次元の低い事で申し訳ないが、ニコール・キッドマンには醜い鼻をつけずに、不自然な顔ではなくて、いつも通りの奇麗な顔のままで観たかったナ。それにつけ鼻はなぜ?って考えて余計なことを勘繰ってしまう。ひょっとして製作者側の誰かがメリル・ストリープに気を使って、彼女(大きな顔になってしまったが以前はもっと綺麗だったヨ)に合わせさせたのかしら?なぁ〜んか、最後まで観ていて違和感があったので…。 以上。 <もっと詳しく>からスペースを含まず8500文字/文責:幸田幸 参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集 http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm IMDb allcinema ONLINE Nostalgia.com CinemaClock.com 公式サイト(英語版) http://www.thehoursmovie.com Los Angeles Times http://www.slis.keio.ac.jp/~ueda/movie/mrsdalloway.html アラン探訪 そして英国へ http://member.nifty.ne.jp/fujitagroup/pub/ireland10.htm いつも参考にしておりますallcinema ONLINE さんには、2003年02月05日の時点で[ 解説 ]は出ていませんので、これをアップしました。Thanks to allcinema ONLINE. |
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■映画『 めぐりあう時間たち 』の更新記録 2003/02/05新規: ファイル作成 2004/07/07更新: ◆テキストとリンク一部およびファイル書式 2004/12/28更新: ◆一部テキスト追記と書式変更 2005/05/24更新: ◆データ追加 2005/10/06更新: ◆追記 |
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幸田 幸 coda_sati@hotmail.com |
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