抱擁
表紙目次読む映画試写会レヴュー観たい度映画予告編エッセイ日誌試写会情報リンク集
映画人解説・レヴュー一覧表映画ゲーム思い出映画ブロードバンド(B)版旅行の森てんこ森
映画の森てんこ森■読む映画試写会■映画レヴュー
抱擁 (2002)
POSSESSION
 映画『 抱擁 (2002) POSSESSION 』をレヴュー紹介します。

 映画『 抱擁 (2002) POSSESSION 』を以下に目次的に紹介する。
■映画『 抱擁 (2002) POSSESSION 』の解説及びポスター、予告編
 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。
■映画『 抱擁 (2002) POSSESSION 』の映画データ
■映画『 抱擁 (2002) POSSESSION 』の主なスタッフ
■映画『 抱擁 (2002) POSSESSION 』の主なキャスト
■映画『 抱擁 (2002) POSSESSION 』のスタッフとキャスト
■映画『 抱擁 (2002) POSSESSION 』の<もっと詳しく>
 <もっと詳しく>は映画『 抱擁 (2002) POSSESSION 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタバレ)です。※ご注意:映画『 抱擁 (2002) POSSESSION 』の内容やネタバレがお好みでない方は読まないで下さい。
■映画『 抱擁 (2002) POSSESSION 』の結末
■映画『 抱擁 (2002) POSSESSION 』の更新記録

>>
「映画解説・レヴュータイトル一覧表」へ(画面の切り替え)
幸の鑑賞評価: 8つ星 
■映画『 抱擁 (2002) POSSESSION 』の解説及びポスター、予告編
抱擁
抱擁

Links:  Official Web Site
Trailers: 
■映画『 抱擁 (2002) POSSESSION 』の解説

 映画『 抱擁 (2002) POSSESSION 』は、イギリス文学の権威、ブッカー賞受賞のA・S・バイアット著作の小説「抱擁」の映画化。 19 世紀の戒律厳しいヴィクトリア朝の二人の詩人の秘めた恋愛。それを古書の中から偶然発見した米国人研究家(アーロン・エッカート)が、英国人の研究家(グウィネス・パルトロー)に協力を仰ぐ。この現代の二人は古いラブレターを読み交わし、真実を追おうと行動を共にしていき、自分達も愛し合うようになる…。
 タイトル『 抱擁 』だからラブシーンが強烈な映画なのかと勝手に想像していたら、そういうわけではなく、『 抱擁 』は非常に文芸作品的。それに、二人の詩人の行く末も意外な展開。目立った手法は、現代と 19 世紀が同時に何度も行き来して二組の男女の交錯を効果的に演出している点。これはシンクロニシティー(ユングの心理学用語で「共時性」)と言って、フラッシュバックともに映画製作に偶に見られる。『 抱擁 』の 19 世紀の二人はしっとりと時代を感じさせ、現代の二人はでしゃばりすぎず、車窓のイギリスの田園地帯は美しい。
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com.
Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc.
▲TOPへ
■映画『 抱擁 (2002) POSSESSION 』の映画データ
 上映時間:103分
 製作国:アメリカ
 公開情報:ワーナー
 アメリカ初公開年月:2002年08月16日
 日本初公開年月:2003年02月 予定
 ジャンル:ドラマ/ロマンス
▲TOPへ
■映画『 抱擁 (2002) POSSESSION 』の主なスタッフ
○『 抱擁 』の監督のニール・ラビュートは
ベティ・サイズモア (2000) NURSE BETTY

○『 抱擁 』の製作のバリー・レヴィンソンは
バンディッツ (2001) BANDITS 』監督・製作

○『 抱擁 』の脚本のローラ・ジョーンズは
アンジェラの灰 (1999) ANGELA'S ASHES 』脚本

○『 抱擁 』の配役のメアリー・セルウェイは
K−19 (2002) K-19: THE WIDOWMAKER 』も担当

○『 抱擁 』の製作デザインのルシアーナ・アリギは
いつか晴れた日に (1995) SENSE AND SENSIBILITY
真夏の夜の夢 (1999) WILLIAM SHAKESPEARE'S A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM
アンナと王様 (1999) ANNA AND THE KING 』でも手腕を発揮した。
▲TOPへ
■映画『 抱擁 (2002) POSSESSION 』の主なキャスト
●グウィネス・パルトロー as モード・ベイリー
恋におちたシェイクスピア (1998) SHAKESPEARE IN LOVE
リプリー (1999) THE TALENTED MR. RIPLEY
デュエット (2000) DUETS
ザ・ロイヤル・テネンバウムズ (2001) THE ROYAL TENENBAUMS
愛しのローズマリー (2001) SHALLOW HAL
抱擁 (2002) POSSESSION
オースティン・パワーズ ゴールドメンバー (2002) AUSTIN POWERS IN GOLDMEMBER
ハッピー・フライト (2003) VIEW FROM THE TOP 』
シルヴィア (2003) SYLVIA
スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー (2004) SKY CAPTAIN AND THE WORLD OF TOMORROW
プルーフ・オブ・マイ・ライフ (2004) PROOF

●アーロン・エッカート as ローランド・ミッチェル
ベティ・サイズモア (2000) NURSE BETTY
エリン・ブロコビッチ (2000) ERIN BROCKOVICH
ザ・コア (2003) THE CORE
ミッシング (2003) THE MISSING
ペイチェック 消された記憶 (2003) PAYCHECK
▲TOPへ
【『 抱擁 』のスタッフとキャスト】
監督: ニール・ラビュート Neil LaBute
製作: バリー・レヴィンソン Barry Levinson
    ポーラ・ウェインスタイン Paula Weinstein
製作総指揮: レン・アマト Len Amato
    デヴィッド・バロン David Barron
原作: A・S・バイアット A.S. Byatt
脚本: デヴィッド・ヘンリー・ホアン Davi Henry Hwang
    ローラ・ジョーンズ Laura Jones
    ニール・ラビュート Neil LaBute
撮影: ジャン=イヴ・エスコフィエ Jean-Yves Escoffier
編集: クレア・シンプソン Claire Simpson
音楽: ガブリエル・ヤーレ Gabriel Yared
配役: メアリー・セルウェイ Mary Selway
製作デザイン: ルシアーナ・アリギ Luciana Arrighi

出演: グウィネス・パルトロー Gwyneth Paltrow モード・ベイリー
    アーロン・エッカート Aaron Eckhart ローランド・ミッチェル
    ジェレミー・ノーサム Jeremy Northam ランドルフ・ヘンリー・アッシュ
    ジェニファー・エール Jennifer Ehle クリスタベル・ラモット
    レナ・ヘッディ Lena Headey ブランシュ・グローヴァー
    ホリー・エアード Holly Aird エレン・アッシュ
    トビー・スティーヴンス Toby Stephens ファーガス・ウルフ
    トレヴァー・イヴ Trevor Eve クロッパー
    トム・ヒッキー Tom Hickey ブラッカダー
    グレアム・クラウデン Graham Crowden ジョージ・ベイリー卿
    アンナ・マッセイ Anna Massey ジョージ・ベイリー夫人 
    フェリシティ・ブランガン Felicity Brangan アッシュの使用人
    メグ・ウィン・オーウェン Meg Wynn Owen リーズ夫人
    ホーリー・アール Holly Earl 子役メイ・ベイリー

▲TOPへ
<もっと詳しく>

ストーリー展開の前知識やネタバレがお好みでない方は、読まないで下さい。
■映画『 抱擁 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー
 私は日本公開前に字幕スーパーなしの英語で観たので、わかる範囲でレヴューします。映画データについては調査した時点と公開される時点で異なる場合があります。本作の内容については、語学力と経験・常識不足のため、間違いや勘違いや適切でない表現があるかもしれません。どうかご理解賜りますようお願いいたします。また、リンクやメールをいただく場合はここを必ずお読みくださいますように。
▲TOPへ

【抱擁 第01段落】  恋の炎が激しく燃え上がるのは、 19 世紀の二人。時は英国ヴィクトリア朝。当時の戒律厳しい世の中で、妻以外と恋愛、外出、遠出など考えられない時代。或いは同性愛など、完全に認められない日陰のあだ花。それが、 150 年の歳月が過ぎて、当時ありえなかった、そして文献にもそんな片鱗を少しも残さなかったある二人の情熱詩人たちの秘めたる恋物語が明らかになる…。

【抱擁 第02段落】  映画は先ず、木漏れ日の差す森を散策する一人の男性から。恋をしているのだろうか、唇から紅潮した恋の詩が漏れてくる。緑の自然は今も昔も不変だから、このシーンは今なのか昔なのか一瞬わからなかったが、その上品な男性の服装や髪型から、昔の方、つまりヴィクトリア朝だと判断できる。この人物は 19 世紀の著名な詩人ランドルフ・ヘンリー・アッシュ(ジェレミー・ノーサム)。ジェレミー・ノーサムは
理想の結婚 (1999) AN IDEAL HUSBAND 』も時代ものだった。この人の顔つきや雰囲気は時代劇に合っているのだろう。
ハッピー、テキサス (原題) (1999) HAPPY, TEXAS
エニグマ (2002) ENIGMA
ゴスフォード・パーク (2001) GOSFORD PARK 』等にも出演。

【抱擁 第03段落】  アッシュが詩を口ずさんでいると、シーンは一転して現代ロンドンのオークション会場。ヴィクトリア女王の時代の偉大な英国詩人ランドルフ・ヘンリー・アッシュの残した詩集が今日の目玉だ。いわゆる競(せ)りにかけられ、会場の椅子席から右手の指を二本見せているのは、アメリカから来ているアッシュ専門家クロッパー(トレヴァー・イヴ)だ。暫くして、ファーガス・ウルフ教授(トビー・スティーヴンス)に伴われて現れたのは、モード・ベイリー(グウィネス・パルトロー)。ファーガス・ウルフはモードの友達兼恋人のような存在で、詩人ランドルフ・アッシュを研究する若い大学教授だ。そしてパルトロー扮するモード・ベイリーは、やはりヴィクトリア朝時代でアッシュほどメジャーでない女流詩人クリスタベル・ラモットを研究する大学教授。この映画ではグウィネスはブロンドの髪を何気なくアップして、服装はこのシーンこそ黒い袖なしドレスだが、あとは一貫してプレーンなセーター等、地味に徹している。

【抱擁 第04段落】  モード・ベイリー役のグウィネス・パルトローは
恋におちたシェイクスピア (1998) SHAKESPEARE IN LOVE 』でアカデミー主演女優賞、先日亡くなった父親ブルース・パルトロー監督・製作の
デュエット (2000) DUETS 』、
ザ・ロイヤル・テネンバウムズ (2001) THE ROYAL TENENBAUMS 』で常にラコステのワンピースとミンクのコート姿、
愛しのローズマリー (2001) SHALLOW HAL 』でデブちゃん、
オースティン・パワーズ ゴールドメンバー (2002) AUSTIN POWERS IN GOLDMEMBER 』でトム・クルーズと一緒にびっくりカメオ出演等、年々女優街道を邁進し続けている。

【抱擁 第05段落】  ベン・アフレックとお付き合いしていたし、以前婚約していたブラッド・ピット(『 セブン (1995) SEVEN または SE7EN 』で共演して恋愛)とは、お互いの俳優・女優としてのキャリアを優先するために合意で泣く泣く破棄したそうだ。それにしてもトップ・スター達はカップルも超豪華!グウィネスは「 People 誌」の 1998 年度「世界で最も美しい 50 人」に選ばれているし、 174 cm の長身でウェハースのようにきゃしゃで細身、「デザイナー達の夢」と呼ばれる理想的体型・ルックスだそうだ。父親が監督ブルース・パルトロー、母親が女優ブライス・ダナーであるハリウッドの言わばサラブレッドである。

【抱擁 第06段落】  同じ頃、ロンドン名物、赤いダブルデッカーバス(二階バス)に乗っているアメリカ人男性ローランド・ミッチェル(アーロン・エッカート)。彼はランドルフ・アッシュの研究家、白髪のブラッカダー教授(トム・ヒッキー)の許で特別研究員( fellowship と言っていた)をしている。イギリス人俳優の役が、みな背広姿でキリッとしているのに、このローランドだけはいかにもヤンキーという感じで非常にラフな格好で、無精髭。アーロン・エッカートは
ベティ・サイズモア (2000) NURSE BETTY 』の浮気者の夫役をしていた。また
エリン・ブロコビッチ (2000) ERIN BROCKOVICH 』でジュリア・ロバーツをいろいろ助けてあげるハーレー・ダヴィッドソン野郎を演じ、それでバイクの面白さを覚えて、撮影後、自分でもバイクを買ったそうな。だんだん主役になってきたなというのが感想。カッコイイし、ますます成功していって欲しい。高校卒業後は、大学にすぐ進まずに三年間休みをとって、ハワイでサーフィン、フランスでスキー三昧だったそうだ。

【抱擁 第07段落】  ローランドがロンドン図書館でアッシュの書物を閲覧していると、昔風の手書きの便箋二枚が挟まっていた。どうやらラブレターのようだ。興味を覚えたローランドは、小さな子が欲しくてたまらないものを力ずくでも自分の物のようにするのと似て、その便箋を、図書館員に隠れて自分のノートに挟んでネコババする。アメリカ人が"ヨソ"の国に行って悪賢いことをしてるって感じ。その時、シンクロニシティー(ユングの心理学用語「共時性」、以下シンクロと略します)のシーンで、 19 世紀、書斎で詩人ランドルフ・アッシュが便箋にスラスラとペンで手紙をしたためている。そして、以降、昔のシーンに変わる度に音楽までそれにふさわしいBGMになる。音楽担当のガブリエル・ヤーレは
カミーユ・クローデル (1988) CAMILLE CLAUDEL
ショコラ (2000) CHOCOLAT 』でも活躍している。

【抱擁 第08段落】  この手紙はどうやらコピーでなくオリジナルのようだ。ローランドは早速ロンドンでの友達にも嬉しくて打ち明けるし、研究室のブラッカダー教授にも伝える。そして、詩人アッシュには 15 年間も恋愛して結婚した妻(ホリー・エアード)がいるが、その妻に宛てたラブレターではなさそうだと気付く。そして、やはりヴィクトリア朝時代で同性愛者だった女流詩人クリスタベル・ラモットが相手ではないかと目星がついてくる。そこで、そのクリスタベル・ラモットを研究していて、ラモットの血縁に当たる大学教授モード・ベイリー(グウィネス)に会うことになる。シンクロでは、アッシュが食事会で初めてクリスタベル・ラモット(ジェニファー・エール)と顔を合わせ言葉を交わすシーン。

【抱擁 第09段落】  今は大英博物館では「恋の詩 百年記念 展覧会」というイヴェントが行なわれている。だから街は詩人ランドルフ・ヘンリー・アッシュのブームなのだ。ローランドはモードと連れ立って図書館に行き、あの見つけたラブレターの件を話す。シンクロでは、女性の画家ブランシュ・グローヴァー(レナ・ヘッディ)がキャンバスに向かっている。ここではすぐに飲み込めなかったが、このブランシュと女流詩人クリスタベル・ラモットとはレズの間柄で、当時の同性愛などとんでもない世の中で、ひっそりと同棲していたのだ。

【抱擁 第0段落】  片や大恋愛の末に結ばれた妻のいる世間で立派な地位にいる偉大な詩人。片やレズの相手と同棲している女流詩人。二人とも情熱的な心と情熱的な詩を書くのは変わらない。しかし、 150 年後の現在まで、この異種の、接点のない筈の二人が恋愛関係に陥っていたという文献や記録は存在していない。モードはローランドにちょっと気があるみたいな目線と仕草。彼女はそのオリジナルの手紙を図書館から盗んできたと聞いてビックリするが、一緒に調べてみようということになる。そしてその晩は、ローランドはモードの部屋のソファで寝させてもらう。

【抱擁 第10段落】  翌朝、モードは遠縁の血族に当たるクリスタベル・ラモットの墓地にローランドを車で案内する。そして北ヨークシャーらしい美しい田園地帯を車を走らせ、ラモット家の末裔のジョージ・ベイリー卿夫妻(グレアム・クラウデンとアンナ・マッセイ)の居る館(ほとんどお城)を訪問する。親戚だからモード・ベイリーと同じ、苗字はベイリーだ。由緒ある家柄らしく、大昔の曾(ひ)曾…祖母の写真まで飾ってある。ここに今夜泊まらせてもらうが、深夜に、モードのリードで屋根裏部屋を探索して、二人は物凄い"宝"を発見する。レースで包まれた昔の手紙の束だ!

【抱擁 第11段落】  シンクロ:ラモットへ送るラブレターを書くアッシュと、返事をしたためるラモット。ニコッと微笑むのが男心をくすぐるのだろうか。クリスタベル・ラモット役のジェニファー・エールは女優ローズマリー・ハリスの娘で、母親の方は
ギフト (2000) THE GIFT 』で洗濯物の向こうから現れたアニーの祖母の亡霊の役や
スパイダーマン (2002) SPIDER-MAN 』のメイ・パーカー伯母さんの役をしている。ジェニファー・エール自身は私はあまり観たことがなかったが、ぽっちゃりとしたうりざね顔で(失礼だが、ちょっとオカメ顔)、とびきり美人というふうではないのだが、どこかアッシュを惹きつける女性的魅力があるように上手に演技しているのだろう。それから、解らない点はレズビアンであるのに男性にも惹かれるのかということ。

【抱擁 第12段落】  真夜中の屋根裏部屋で、ローランドとモードはラモットのためていたアッシュからの手紙を交替に声を出して読み進める。内容が恋愛そのものだから、こうやって読み合ううちにローランドとモードはいいムードになっていく…のかと想像したら、そんな単純な映画ではなかった!シンクロ:遠く目と目を合わせるラモットとアッシュを、傍らから勘を鋭く見抜くラモットのレズの同棲相手ブランシュ。また、妻エレンに泣かれるラモット。ある日、手紙の内容から、アッシュからの便りがラモットに届いていないことがわかる。画家のブランシュが嫉んで手紙や詩を隠していたのだ。それを知ったラモットは、絵の具やキャンバスを投げつけてブランシュに憤慨する。その後、手紙の届かない誤解のとれたアッシュとラモットは、当時の社会の目や世論の危険を顧みず、街角で夢の再会を果たす。それまで、とにかく手紙、手紙だったのだ。

【抱擁 第13段落】  そういう事態に進んでいく手紙を、ローランドとモードはまだ読み続けている。新たな事実の発見ばかりだ。その時、館の主のジョージ・ベイリー卿が深夜の気配がおかしいので銃を構えて上がってくる。どうやってその手紙の束を見つけたのか叱るが、親戚の女の子のする事なので、ちょっと咎めるだけ。またシンクロ:届いた不倫のラブレターや詩を郵便受けから隠しとっておいたブランシュは、アッシュの自宅を訪れて、アッシュの妻エレンに渡そうとする。すると、エレンは夫の不倫は知っていたらしく、ビンタを食らわしてブランシュを帰らせる。

【抱擁 第14段落】  その頃、ファーガス・ウルフはモードの動きを感じて、何か秘密を隠していると気付いてくる。それでもなお、ローランドとモードは本当に美しいイングランドの田園地帯を車でどんどん行く。シンクロ:昔の風情ある汽車に揺られて、見つめ合い寄り添うアッシュとラモット。一方、ローランドとモードは美しい滝のほとりに佇む。この滝は北ヨークシャーのトマソン・フォスという地にあるそうだ。きっと有名なんだろう。 1959 年の 7 月に書かれた詩に、滝の後ろに洞窟があるという文句があるから、もしそうなら証拠になると言って、ローランドは服を脱いで滝壷を越えて潜り、本当に洞窟を見つけた。裸のローランドにモードはちょっと嬉しそうな笑い。シンクロ:アッシュとラモットは旅先の宿で、古風な調度品と甘いムードに包まれて二人だけで食事。そして女の方から隣のベッドルームに先に入り、妖しい目配せでアッシュを誘う。きついコルセットの紐をほどいて、二人はベッド・イン。この映画は邦題『抱擁』のイメージと違って、ラブシーンはこの時くらい。

【抱擁 第15段落】  現代。ローランドとモードは知らないうちに一つのダブルベッドに並んで入っている。でもまだ手紙を声を出して読んで、笑い合っている。そしてモードの友達と言うか恋人と言うか、ファーガスの噂もして。まだまだ情熱的な深刻なムードでない。キスまでは確認できたが。シンクロ:ベッドの上で裸のアッシュと、寄り添うラモット。アッシュは泣いている。そしてまた抱き合う。今。ローランドとモードは抱き合う。でも、ちょっとした事からお互い感情を害してしまう。翌日、寒そうな岩場の海岸で、カモメが飛び交い、入り江が美しい。シンクロ:ピカリング駅のベンチで手紙を破るラモット。旅は終わった。もう会えないのか…。汽車が来る。今。ロンドンに戻った車の二人。喧嘩した雰囲気で、モードはローランドを降ろす。あっ、ここは英国なので、アメリカから来ているローランドは車を持っておらず、運転するのは常にモードの方。

【抱擁 第16段落】  田園地帯をベンツで行くファーガス・ウルフ教授とアメリカ人の"営利追求型業者的"アッシュ専門家(コレクター?)のクロッパー。二人が向かった先は、さっきまで若い二人が泊まっていたジョージ・ベイリー卿の屋敷だ。ジョージは無用だとばかり、銃で脅して帰させようとするが、腹黒いクロッパーは、クリスタベル・ラモットの遺した手紙類を売ればどんな価値があるとお思いですか、とニヤッと笑い、名刺を置いていく。このベイリー卿の館は言わば城ほど広くて手入れが必要なので、いかにも古くさびれているのを見て、お金で釣ったのだ。

【抱擁 第17段落】  ロンドンに戻ってから、喧嘩別れしたモードを愛していた自分に改めて気付いたローランドは、友達からポルシェを借りて彼女に会いに行く。丁度ファーガスが帰ったところだったが、花束を捧げて訪れたローランドを、モードは優しく迎える。そして再び詩人たちの謎解きの行程を進める。今度は、ドーバー海峡を船で渡って、フランスへ。イギリスとフランスは、ドーバー海峡なら直線距離にしてたった約35キロ。だから気軽に往来するのだろう。フランスではカーン大学を訪れてまんまと資料を手に入れた。カーン大学は
デュラス 愛の最終章 (2001) CET AMOUR-LA 』のヤン・アンドレアが哲学を専攻したところだ。

【抱擁 第18段落】  わかったことは、実は、ラモットはアッシュの子供を身ごもり、フランスに渡ってそちらの遠縁の所に身を寄せて密かに赤ん坊を産んだのだった。シンクロ:暫く経って、降霊術のリーズ夫人(メグ・ウィン・オーウェン)の所で、アッシュはラモットと久しぶりに再会するが、怪しげに手と手を繋いで霊を仰ぐ動作をしている最中に、アッシュは「子供はどうした!?」と叫ぶ。怒っている様子だ。・・・

▲TOPへ

◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。
 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say !


【抱擁 第19段落】  ローランドはモードに別れの手紙を書き残して、彼女の許から去ろうとする。と、その時、ファーガスとクロッパーのヒソヒソ話しを目撃。シンクロ:アッシュの老後。病気でもう死にそうだ。そばで妻エレンが日記をつけている。何か真相が?…ラモットは子供のことを書いた手紙をアッシュに送ったが、エレンはそれを夫アッシュには渡さず、開封しないまま、アッシュの棺に入れて埋葬したようだ。現代。研究室にローランドを追ってきたモードは、ブラッカダー博士にとりなされて、ローランドとモードはお互い謝り合い、また仲直り。そしてローランドとモードとブラッカダー博士はあの儲けを企む二人を追って、急行する。そこは、ランドルフ・アッシュの墓地。ファーガスとクロッパーの二人は、世間で未だかつて誰も知らない、世紀の詩人のスキャンダルを横取りして、莫大な利益を上げようと企んでいるのだ。そのためアッシュの墓に入っている極秘の手紙を、墓泥棒して盗もうとする。しかし、それは、駆けつけた三人に取り押さえられた。

【抱擁 第20段落】  部屋で、ローランドとモードは棺から出てきた小箱を開けてみる。うら若い女性の写真も無傷で入っていた。ラモットからアッシュへ宛てた未開封の手紙も入っている。「あなたには娘がいます…。」その娘メイの成人した姿の写真だったのだ。娘はフランスで産んでから、イギリスのリンカーンに住むラモットの妹の家庭に預けて、自分は「伯母」として一緒に暮らしたらしい。それに、ラモットのレズ相手ブランシュは入水自殺したとわかる。ここで初めてブロンドの髪をアップから長く下ろしたモードを見て、「綺麗だよ」と言うローランド。優しく口づけ。

【抱擁 第21段落】  ヴィクトリア朝の二人の詩人の密かな想い。アッシュはこの手紙に目を通すことなく逝ってしまった。自分に子供がいたことも知らない。シンクロ:緑豊かなイングランドの丘陵。アッシュが野原で幼い少女に出会い、名前を訊いている。これは空想か?その可愛い子はメイ・ベイリー(子役ホーリー・アール)と言い(やはり、モード・ベイリーの先祖だ!)、丘を下った家に住んでいる。伯母さん(つまりラモット)もいる。お父さん似(アッシュ似のこと)だと言われている…等々。それを聞いてにっこりするアッシュ。そして伯母さんに渡してねと、手紙を1通その子に託す。飛ぶように駆け下りていったその少女は、緑したたる丘を兄弟(本当は従兄弟)と戯れ、その手紙は…風で飛んでいった。さて、この『抱擁』での現代の二人の恋の行方は?タフガイのアメリカ人ローランドと、内気で上品で淑やかなイギリス女性モードのことだから、まぁ、ボチボチ進行していくのだろう。

以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず7373文字/文責:幸田幸

参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集
       http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
      公式サイト(英語版)
       http://www.possession-movie.com/
■映画『 抱擁 (2002) POSSESSION 』の更新記録
2002/12/30新規: ファイル作成
2004/12/29更新: ◆一部テキスト追記と書式変更
2005/09/30更新: ◆データ追加
2005/10/06更新: ◆追記
▲TOPへ
幸田 幸
coda_sati@hotmail.com
「映画の森てんこ森」へ 「旅行の森てんこ森」へ
映画解説・レヴュータイトル一覧表
映画の森てんこ森 バナー03

映画の森てんこ森 coda21幸田幸 クレジット バナー01
幸のイタリア各都市情報へ
旅行の森てんこ森 バナー03
136x70
本サイトの作文、データ及び画像などのコンテンツの無断転用はお控え下さい。
貴サイトへの御掲載についてはメールにてお知らせ頂ければ幸いです。
© 2002-2005 Sachi CODA at Eigano-Mori Tenko-Mori, CODA21. All Rights Reserved.