理想の結婚
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映画の森てんこ森■映画レヴュー
理想の結婚 (1999)
AN IDEAL HUSBAND
理想の結婚
理想の結婚
【解説】
 映画『 理想の結婚 (1999) AN IDEAL HUSBAND 』を紹介します。映画『 理想の結婚 (1999) AN IDEAL HUSBAND 』は、1999 年シアトル映画祭でルパート・エヴェレットが最優秀男優賞を受賞した、オリヴァー・パーカー監督のイギリス発ロマンティック・コメディ。『 理想の結婚 』の原作はオスカー・ワイルドの戯曲「理想の夫[ 原題:An Ideal Husband ]」である。
 映画『 理想の結婚 』の簡単なストーリー… 1895 年、ロンドンの社交界で、世間から理想のカップルと謳われる若手政治家のロバート(ジェレミー・ノーザム:『 ゴスフォード・パーク (2001) GOSFORD PARK 』等)とその妻ガートルード(ケイト・ブランシェット:『 ヴェロニカ・ゲリン (2003) VERONICA GUERIN 』等)。二人の共通の友人である遊び人の独身貴族アーサー(ルパート・エヴェレット:『 シュレック2 (2004) SHREK 2 』等)とロバートの妹メイベル(ミニー・ドライヴァー)は、お互い気があるようでないような感じ。そんなところにロバートが過去に犯してしまった汚職事件の証拠を握るチーヴリー夫人(ジュリアン・ムーア:『 エデンより彼方に (2002) FAR FROM HEAVEN 』等)がウィーンから現れて…。
 この映画『 理想の結婚 』では、ルパート・エヴェレットの伊達男ぶりが面白かった。ミニー・ドライヴァーは現代的な女性という役どころにピッタリではあったが、もうちょっとメイベル役が綺麗な人だったらなー。
映画『 理想の結婚 (1999) AN IDEAL HUSBAND 』の「テキストによる映画の再現」(あらすじとネタばれ)ご注意:『 理想の結婚 (1999) AN IDEAL HUSBAND 』の内容やネタばれがお好みでない方は読まないで下さい。
『 理想の結婚 』の感想(ネタばれご注意)
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●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
■映画『 理想の結婚 (1999) AN IDEAL HUSBAND 』のデータ
 上映時間 100分
 製作国 イギリス
 公開情報 クレスト
 初公開年月 2000/02/
 ジャンル ドラマ/ロマンス/コメディ
 《米国コピーTagline》He just doesn't know it yet.
【『 理想の結婚 』のスタッフとキャスト】
監督: オリヴァー・パーカー Oliver Parker
製作: バーナビー・トンプソン Barnaby Thompson
    ウリ・フラクトマン Uri Fruchtmann
    ブルース・デイヴィ Bruce Davey
原作戯曲: オスカー・ワイルド Oscar Wilde
脚本: オリヴァー・パーカー Oliver Parker
撮影: デヴィッド・ジョンソン David Johnson
美術: マイケル・ハウエルズ Michael Howells
編集: ガイ・ベンズリー Guy Bensley
音楽: チャーリー・モール Charlie Mole
 
出演: ケイト・ブランシェット Cate Blanchett ガートルード
    ミニー・ドライヴァー Minnie Driver メイベル
    ルパート・エヴェレット Rupert Everett アーサー
    ジュリアン・ムーア Julianne Moore チーヴリー夫人
    ジェレミー・ノーサム Jeremy Northam ロバート
    リンゼイ・ダンカン Lindsey Duncan マークビー夫人
    ピーター・ヴォーン Peter Vaughn フィップス
    ジョン・ウッド John Wood キャヴァーシャム伯爵
    サイモン・ラッセル・ビール Simon Russell Beale エドワード
    ジェローン・クラッベ Jeroen Krabbe アルンハイム男爵
◆俳優について映画人(俳優・女優・監督など)のリストへ
 以下のデータは主に IMDb のデータを幸が翻訳し、関連情報を翻訳追記したものです。許可なしに無断でコピー・転用などしないようお願いします。もし、本文を引用される場合は「映画の森てんこ森 幸田幸 http://www.coda21.net」などのクレジットを明記し、私にご連絡ください。

 ケイト・ブランシェット Cate Blanchett は、1969年5月14日、オーストラリアのメルボルンで生まれる。現時点(2003年9月3日)で、満 34 歳。本名 Catherine Elise Blanchett キャサリン・エリーズ・ブランシェット。父はテキサス出身のアメリカ人で広告会社の重役だったが、ケイトが 10 歳の時に心臓発作で亡くなった。母はオーストラリア人。脚本家のアンドリュー・アプトン Andrew Apton 氏との間に 2 歳のダシール Dashiell John Upton くん(2001年12月3日イギリスのロンドン生まれ)がいる。コンピュータ業の兄と劇団のデザインをしている妹がいる。

 ケイト・ブランシェットは、メルボルンにあるメトディスト女子大学 Methodist Ladies College (MLC) 時代に演劇部の部長をしていた。NIDA(オーストラリア国立演劇学院 Australia's National Institute of Dramatic Art)に入り、そこで演技を学び、1992年に卒業して一年余りして、舞台の世界で批評家と観客の両方から高い評価を受けた。彼女は、シドニー劇団、カーライル・チャーチル・トップ・ガールズ Caryl Churchill's Top Girls に入って、ティモシー・ダリーの「カフカ・ダンス」 Timothy Daly’s Kafka Dances の花嫁フェリーチェ・バウアー Felice Bauer の役を演じて、1993年にシドニー劇団批評家協会賞で、演技を評価されて史上初の新人賞を獲得した。そして、シドニー劇団でまた、デヴィッド・マメット David Mamet の「Oleanna」でジェフリー・ラッシュの相手役キャロルを演じて、ローズモント最優秀女優賞 the Rosemont Best Actress Award も受賞した。
 その後、彼女は、ABCのテレビのゴールデンアワー・ドラマ『 ハートランド (1994) Heartland 』で共演し、称賛された。1995年、ベルヴォア・ストリート Belvoir Street 劇団の「Hamlet ハムレット」でオフェリア Ophelia の役で最優秀女優演技賞にノミネートされた。その他の出演としては、シドニー劇団の「Sweet Phoebe」のヘレン Helen 役、そして、ベルヴォア・ストリート劇団の「The Tempest」のミランダ Miranda 役、「The Blind Giant is Dancing」のローズ Rose 役が注目を浴びた。
 テレビ出演では、ABC放送の「Bordertown (1995)」のビアンカ Bianca 役、「G.P. (1994)」と人気シリーズ番組「Police Rescue (1994) 警察救助」のジャニー・モリス Janie Morris 役が光っている。

 ケイト・ブランシェットは、『 パラダイス・ロード (1997) PARADISE ROAD 』で映画デビューした。
同じ年の『 オスカーとルシンダ (1997) OSCAR AND LUCINDA 』ではレイフ・ファインズとの共演で初の主役に抜擢され、批評家から高い評価を受ける。そして翌 98 年、シェカール・カプール監督の 『 エリザベス (1998) ELIZABETH 』 の主役でヴァージン・クイーンの強烈なインパクトを与えた演技が絶賛され、1998年ゴールデン・グローブ賞の女優賞(ドラマ)をはじめ 世界の映画賞で堂々 16 部門に受賞した。アカデミー賞でも主演女優賞にノミネートされたが、惜しくも『 恋におちたシェイクスピア (1998) SHAKESPEARE IN LOVE 』のグウィネス・パルトローに攫われた。ケイト・ブランシェットは、本作を機に映画界でも一躍トップ・スターに躍り出た。

 その後は、その確かな演技力を活かし『 理想の結婚 (1999) AN IDEAL HUSBAND 』 『 狂っちゃいないぜ (1999) PUSHING TIN 』 『 リプリー (1999) THE TALENTED MR. RIPLEY 』『 耳に残るは君の歌声 (2000) THE MAN WHO CRIED 』『 ギフト (2000) THE GIFT 』など幅広い役柄をこなし、着実に大女優としての評価を得てくる。
 ケイト・ブランシェットの2001年は、超多忙だ。『 シャーロット・グレイ (2001) CHARLOTTE GRAY 』『 シッピング・ニュース (2001) THE SHIPPING NEWS 』『 バンディッツ (2001) BANDITS 』などに出演、理知的な美貌と底知れない演技の深さで観る者を魅了する。そしてピーター・ジャクソン監督のファンタジー超大作 『 ロード・オブ・ザ・リング (2001) THE LORD OF THE RINGS: THE FELLOWSHIP OF THE RING 』で、エルフ族の王妃ガラドリエルを演じる。あまり出番は多くないが彼女の存在は大きい。『 ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 (2002) THE LORD OF THE RINGS: THE TWO TOWERS 』『 ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 (2003) THE LORD OF THE RINGS: THE RETURN OF THE KING 』 の三部作全てに出演している。
 2002年には他に、『 ヘヴン (2002) HEAVEN 』がある。そして最近では、『 ヴェロニカ・ゲリン (2003) VERONICA GUERIN 』が話題になっている。

 彼女は、身長 5 フィート 8 と 2 分の 1 インチ(1.74m)。中背である。1999 年にはピープル誌が選ぶ「もっとも美しい50人」にも選ばれた。
※以下のデータは、CinemaClock.com の許諾を得て引用しています。
Cate Blanchett
ケイト・ブランシェット
Birth Name:  Catherine Blanchett
 
Age:  34 years
Date of Birth:  May 14, 1969
Place of Birth: 

Melbourne, Australia

 
Films:  Lord of the Rings: The Return of the King (2003)
Veronica Guerin (2003)
The Lord of the Rings: The Two Towers (2002)
Heaven (2002)
The Lord Of The Rings: The Fellowship Of The Ring (2001)
Bandits (2001)
The Man Who Cried (2001)
Charlotte Gray (2001)
The Gift (2001)
The Shipping News (2001)
The Talented Mr. Ripley (1999)
An Ideal Husband (1999)
Pushing Tin (1999)
Elizabeth (1998)


= movie playing in theatres this week


Starring in "The Gift"
c Copyright Paramount Pictures


 
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ネタばれ御注意!
 このレヴューは「テキストによる映画の再現」を目指して作文しています。よって、ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。
■映画『 理想の結婚 (1999) AN IDEAL HUSBAND 』のストーリー 

【理想の結婚 第01段落】  裕福で世間から高い尊敬を受けるヴィクトリア朝の政治家である Sir ロバート・チルターン(ジェレミー・ノーザム:『 ハッピー、テキサス (原題) (1999) HAPPY, TEXAS 』『 理想の結婚 (1999) AN IDEAL HUSBAND 』『 エニグマ (2002) ENIGMA 』『 ゴスフォード・パーク (2001) GOSFORD PARK 』『 抱擁 (2002) POSSESSION 』等)と美しく聡明な妻のガートルード(ケイト・ブランシェット)のカップルは、理想の夫婦である。清廉潔白な性格であるガートルードは、ロバートを美徳の模範だと考えており、二人はお互いに愛し合っている。しかし、本当にロバートはガートルードが思うような人物なのか?

【理想の結婚 第02段落】  ウィーンから悪女チーヴリー夫人(ジュリアン・ムーア:『 妹の恋人 (1993) BENNY & JOON 』『 逃亡者 (1993) THE FUGITIVE 』『 ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク (1997) THE LOST WORLD: JURASSIC PARK 』『 ブギーナイツ (1997) BOOGIE NIGHTS 』『 理想の結婚 (1999) AN IDEAL HUSBAND 』『 マグノリア (1999) MAGNOLIA 』『 ハンニバル (2001) HANNIBAL 』『 エデンより彼方に (2002) FAR FROM HEAVEN 』『 めぐりあう時間たち (2002) THE HOURS 』等)がある陰謀のためにロンドンにやってくる。昔ロバートが閣僚の秘書をしていたとき、政府の極秘事項であるスエズ運河への出資に関する情報をアルンハイム男爵(ジェローン・クラッベ)に流して賄賂を受け取ったことがあった。もともと金持ちではなかったロバートが政治家として成功するためには、お金が必要だったのだ。その汚職の証拠の手紙を手に入れたチーヴリー夫人は、自分が投資しているアルゼンチン運河計画をイギリスの国策にして利益を得るために、国会で運河計画に賛成する発言をするようにとロバートを恐喝する。その計画は国益に反するとして、計画反対の答弁をするつもりであったロバートは困惑する。しかし、チーヴリー夫人の要請を受け入れなければ、過去の罪が世に知れ、自分の築いてきた地位とガートルードとの幸せな結婚を失うことになる。いくらでもお金を払うというロバートをチーヴリー夫人は「過去を買い戻せるほどの金持ちはいない」と一蹴する。

【理想の結婚 第03段落】  困り果てたロバートは、自分とガートルードの共通の友人である、アーサー・ゴーリング卿(ルパート・エヴェレット)に相談する。アーサーは、世の中不公平だと嘆くロバートに、そうでなければ特権階級である自分が困ると言ってのける、退廃的な独身貴族の遊び人だが、友人思いである魅力的な人物だ。曲がったことが大嫌いなガートルードのショックが大きくならないように、本題には触れずにそれとなく彼女に話して欲しいとロバートはアーサーに頼む。アーサーはガートルードを訪ね、話をしようとするが、核心に触れてはいけないため、ロバートが思うようにはことが進まない。そこでアーサーは「何か困ったことがあったら、僕のところへ来てくれ、力になる。」とガートルードに告げる。

【理想の結婚 第04段落】  そこへロバートの妹メイベル(ミニー・ドライヴァー)が現れる。ガートルード同様、婦人参政権運動に参加する、進歩的な考え方を持つメイベルは、アーサーのことが好きだが、勝気な性格のために素直に気持ちを表現しようとしない。また、アーサーもそんなメイベルのことを憎からずに思っているが、独身貴族であることに慣れきってしまっているので、二人の関係はなかなかうまくいかないでいる。しかし、メイベルの誘いでアーサーは一緒に絵の展覧会に行く約束をする。

【理想の結婚 第05段落】  チーヴリー夫人はロンドンの知り合いであるマークビー夫人(リンジー・ダンカン)と、学生時代の同級生であるガートルードを訪ねるが、夫と彼女との間に何かあると感じるガートルードは、マークビー夫人が家を出るとすぐに、チーヴリー夫人を追い返そうとする。頭にきたチーヴリー夫人は、自分が陥れたロバートの現状をガートルードにばらしてチルターン邸をあとにしようとする。ちょうどそこにチーヴリー夫人からの手紙を受け取って、慌ててやって来たロバートが現れ、彼に事の次第を確かめたガートルードは、自分の理想とは違うロバートに絶望する。ロバートは家を出て、アーサーの邸宅に向かう。

【理想の結婚 第06段落】  メイベルとのデートに出かけようとするアーサーのもとに、次々と訪問者がやって来る。日本の唯美主義を信奉するアーサーの住居は、温室を含む5部屋からなるオリエンタルな雰囲気の屋敷である。それぞれの部屋にそれぞれの訪問者が入れられる。息子の結婚を願っているアーサーの父親のキャヴァーシャム伯爵(ジョン・ウッド)、ロバート、ガートルードからアーサーへの意味深な手紙、そして実はアーサーの元婚約者であるチーヴリー夫人。

【理想の結婚 第07段落】  これから訪ねるというガートルードからの手紙を受け取ったアーサーは、執事のフィップス(ピーター・ヴォーン)に女性が来たら必ず中に通し、それ以後に来る客人は入れるなと命ずる。ところが、偶々先にやって来たのはチーヴリー夫人。彼女が主人のいう女性だと勘違いしたフィップスはチーヴリー夫人を通し、後にやって来たガートルードに帰ってもらう。部屋に通されたチーヴリー夫人はテーブルの上に置かれたガートルードの手紙をこっそり手に入れる。父親との話を終えたアーサーは、ロバートと話をする。ガートルードが隣室にいると思っているアーサーは、ガートルードへの思いを語るロバートの声がよく聞えるように、ドアを開けるが、隣で聞いているのはチーヴリー夫人である。物音で隣の部屋に誰かがいるのに気付いたロバートが、部屋を確認しに行くと、チーヴリー夫人の姿を見つける。ロバートはアーサーに裏切られたと思い、怒って屋敷を出て行く。

【理想の結婚 第08段落】  「あなたが行かれてから、私の愛は粉々に…。お会いしたいの。すぐ伺います。」と書かれた手紙を読んで、ガートルードがアーサーを愛していると勘違いしたチーヴリー夫人は、学生の頃から馬が合わないガートルードへの復讐のためか、それとも以前捨てはしたもののやはり本当にアーサーを愛していたためか、アーサーを誘惑しようとする。また、アーサーもロバートの汚職の証拠である手紙を奪うためにチーヴリー夫人を誘惑しようとするが、お互いにうまくいかない。

【理想の結婚 第09段落】  そこでチーヴリー夫人は賭けを申し出る。アーサーが信じるようにロバートが国会で自分の信念を貫く答弁をすれば、証拠の手紙をアーサーに渡し、反対に運河計画に賛成する答弁をすれば、アーサーは自分と結婚しなければならない、という内容だ。アーサーは受けて立つ。チーヴリー夫人が屋敷を去った後、アーサーは急いでメイベルとのデートに向かうが、展覧会場にはもうメイベルの姿は無かった。アーサーが展覧会に来ていると思ってやって来たガートルードから、兄ロバートの問題について聞かされたメイベルは、ガートルードと一緒に国会を傍聴しに行ったのだ。

【理想の結婚 第10段落】  傍聴席には、チーヴリー夫人、メイベルとガートルードの姿、そしてアーサーが急いで議員席につく。日頃は国会なんぞに顔を出すことも無い息子アーサーにキャヴァーシャム伯爵はビックリ。アルゼンチン運河計画について、ロバートは自分の信念を曲げることの無い立派な演説を行った。議事堂に拍手が鳴り響く。ガートルードは潔い夫を見直す。チーヴリー夫人も潔く負けを認めて拍手を送る。そしてアーサーに手紙を渡す。ガートルードはロバートに声をかけようとするが、将来を絶望しているロバートは「…最愛の君が僕の人生を破滅させた。僕らはもう終わりだ。君は許してくれまい。」と言って去る。

【理想の結婚 第11段落】  そんな二人をアーサーと一緒に見ていたチーヴリー夫人は、ガートルードがアーサーに送った手紙をロバートの仕事場に送って一騒動起こそうと企む。アーサーはガートルードにチーヴリー夫人の新たな陰謀について話そうとするが、ロバートを失いかけていることに動揺するガートルードは話を聞かずに去る。メイベルはデートをすっぽかした上にチーヴリー夫人と親しく話をしていたアーサーに怒りをぶつけて去る。アーサーは「情報がいっぱいあるのに、誰も聞いてくれない」から、早く寝るために家に帰る。

【理想の結婚 第12段落】  ロンドンで一騒動起こると怪しげにマークビー夫人に告げ、チーヴリー夫人はウィーンに帰る。そのころ、仕事場で手紙を整理していたロバートは、チーヴリー夫人が送ったガートルードの手紙を見つける。ロバートは手紙を読んですぐに家に向かう。家ではアーサーとガートルードが親密に話をしている。二人を見たロバートは手紙を突きつけて怒る。アーサーは咄嗟にその手紙はロバート宛だと言い、メイベルが助け舟を出す。アーサーとメイベルがガートルードを庇うためについた嘘の内容は次の通り。

【理想の結婚 第13段落】   「ガートルードはアーサーの家にロバートがいると思ったので、アーサー宛にロバートへの手紙を書いた。それを展覧会でアーサーに会うことになっているメイベルに託した。しかし、アーサーが展覧会に現れなかったので、手紙は渡せなかった。そこで、メイベルはどうせロバートへの手紙なのだからと、直接ロバートにその手紙を送った。」という筋書きである。納得したロバートは手紙の内容に感激し、ガートルードを抱きしめる。嘘が嫌いなはずのガートルードは自分が嘘をつく羽目になり、困惑顔でロバートを抱きしめる。でも、まぁ、うまくいくのならこれでいいか。そしてガートルードは、アーサーがチーヴリー夫人から取り返した証拠の手紙を持ってきてくれたと話す。ロバートはアーサーに感謝の気持ちを表す。 ・・・

◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。
 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say !


【理想の結婚 第14段落】  そこへ、キャヴァーシャム伯爵がイギリス首相からロバートへの入閣の要請の手紙を携えて現れる。一瞬喜ぶロバートだったが、一度不正を犯した自分が政治の大役を担うことをガートルードが快く思わないだろうと思い、その辞退と政界からの引退を告げる。驚いたキャヴァーシャム伯爵は、ロバートを説得するようにガートルードにいうが、ガートルードも同意見だ。しかし、ロバートを不憫に思うアーサーは、「彼を追い詰めるな。完全でない人間ほど愛が必要なんだ。」とガートルードを説得する。嘘をついたばかりのガートルードは納得し、ロバートが書いた辞退の手紙を破る。

【理想の結婚 第15段落】  アーサーはメイベルにやっとプロポーズをするが、そのことをメイベルの兄であり後見人であるロバートに告げると、ロバートは思わしくない顔をする。なぜなら、アーサーはメイベルとのデートをすっぽかして元婚約者のチーヴリー夫人と会っていたから(と、ロバートは思っている)。アーサーはガートルードを見る。自分を守ってくれるために皆でついた嘘が仇となってアーサーとメイベルを苦しめることに、ガートルードは良心の呵責を感じる。そして、あの夜は自分とアーサーが会うはずで、手紙はアーサーに対して書かれたものであるとガートルードは真実を話す。それを聞いたキャヴァーシャム伯爵は大笑い。つられて皆も大笑いする。そしてロバートは結婚を認め、アーサーとメイベルの結婚式が行われるのだった。

■映画『 理想の結婚 (1999) AN IDEAL HUSBAND 』の感想 
 「理想の結婚」[原題:An Ideal Husband ]は、「最初の現代人」といわれるオスカー・ワイルドの四大喜劇の一つである。オスカー・ワイルド四大喜劇とは、「ヴィンダミア卿婦人の扇」「つまらぬ女」「理想の夫」「まじめが肝心」である。この映画の中には、ところどころにオスカー・ワイルドに関するアイテムが登場し、ワイルドに造詣がある人には、もっと映画が楽しめるようになっている。

 例えば、チルターン夫妻、アーサー、チーヴリー夫人、メイベルが観劇していたのは戯曲「まじめが肝心」[原題:The Importance of Being Earnest ]で、オスカー・ワイルドが舞台挨拶に出てくる。また、監督のオリヴァー・パーカーが、「まじめが肝心」で Algernon Moncrieff が偽名として使うバンベリーという名前で出演している。ロバートがアーサーに相談するために現れた独身者クラブでのシーンだ。ユーモアとウィットに富んだセリフが散りばめられた本作であるが、"Fashion is what one wears oneself. What is unfashionable is what other people wear.[粋なのは自分の装い。野暮なのは他人と同じ装い。]"や、"To love oneself is the beginning of a lifelong romance.[自分を愛す、それが生涯のロマンスだ。]"などは、奇抜なファッションで有名だったワイルドらしい言葉だ。

 戯曲「理想の夫」は 1895 年、オスカー・ワイルドが 41 歳のときにヘイマーケット劇場で初演されている。同年彼は同性愛の罪で投獄され、二年間を獄中で過ごす。 1851 年に開かれたロンドン万国博覧会で、パクス・ブリタニカの頂点を極めたヴィクトリア朝イギリス。それから約 40 年経ったこの時代は、大英帝国の終焉の始まりの様相を帯びている。 1850 年から 70 年の間、イギリスの国柄は根本的な変化をきたしていた。交通手段の大幅な進歩のため、東ヨーロッパや北アメリカの安価な農産物が押し寄せ、食糧自給率が低下する。それに対し、対外投資は急速な伸びを見せている。この映画でもスエズ運河の出資について問題になっていたが、投資の性格が 70 年代を過ぎると、エジプトやトルコ、ペルシャなどへ向けた、政治性を帯びたものに変わっていった。

 大英帝国は大国の衰退の過程として、帝国の過剰拡大を招いていくことになるのだ。ロバートが国会演説の中で、「…その力をさらに力を得るためにだけ、使う傾向が増えています。金を増やすためにのみ金を使い、国の精神に与える影響も省みない、そうした良心なき商業こそが、この国の精神を危ういものにしている」と批判しているのは、まさに当時の世相を反映していると思う。

 「小英国主義」を主張する自由党政治家グラッドストーンは、 1868 年から4度イギリスの首相となるが、 1894 年に辞任する。グラッドストーンは「アイルランド自治法案」を提案したが、古くからの植民地であるアイルランドを放棄すれば、インドやスエズなどの植民地もいずれイギリスから離れていくだろうという、覇者の焦りを感じた人々の反対にあい、否決される。オスカー・ワイルドはアイルランドが誇る文学者の一人である。理想主義の政治家であるロバートに入閣を薦めた首相は、もしかしたらグラッドストーンという設定なのかなと思う。また、「 An Ideal Husband [理想の夫]」とは、イギリスに対する揶揄をこめた表現なのではとも思う。妻を愛するがゆえに、妻の理想の夫であろうとして、窮地にさらされるロバートに、「文明と進歩」の名の元に他国への侵略を繰り返してきたが、他国を統治することに道義的な正当さを信じられなくなってきている当時の良心的なイギリス人エリートの苦悩をなぞらえているように思う。

以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず5742文字/文責:幸田幸

参考資料:「理想の結婚」日本語版オフィシャルサイト
     「大英帝国衰亡史」 中西輝政(著)
     IMDb
     allcinema ONLINE
     CinemaClock.com
     Nostalgia.com
     The Easter Egg ArchiveTM
(■解説とネタばれ:2002/08/24 ◆俳優についてリンク更新:2003/09/03)
■テキストとリンク一部およびファイル書式更新:2004/07/07
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