カミーユ・クローデル
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カミーユ・クローデル (1988)
カミーユ・クローデル
カミーユ・クローデル
CAMILLE CLAUDEL

【解説】
  映画『 カミーユ・クローデル (1988) CAMILLE CLAUDEL 』は、1989 年、ベルリン国際映画祭で主演女優賞、セザール賞最優秀賞等を受賞した、女流彫刻家カミーユ・クローデルの激しく悲しい人生を描いたブルーノ・ニュイッテン監督映画。イザベル・アジャーニが原作に惚れ込んで映画化権を獲得し、彼女がタイトル・ロールを演じた意欲作である。
  『 カミーユ・クローデル 』のストーリー...19 世紀末のパリ。女性の芸術家への道がまだ開けていなかった時代に、彫刻家を志す才能溢れた若い女性カミーユ・クローデル(イザベル・アジャーニ)と、すでに偉大な彫刻家となっていたオーギュスト・ロダン(ジェラール・ドパルデュー)は出会う。2倍の年齢差にもかかわらず、二人の天才は激しく愛し合うが…。
 『 カミーユ・クローデル 』では、情熱的で純粋で繊細な女性をイザベル・アジャーニが好演。あまりにも愛らしい。それにしても、姉カミーユは彫刻家として、弟ポールは詩人として後世に名を残しているなんて、クローデル家ってスゴくない? 

●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
■『 カミーユ・クローデル (1988) CAMILLE CLAUDEL 』のデータ
 上映時間 150分
 製作国 フランス
 公開情報 デラ=ヘラルド・エース=シネマテン=フジテレビ提供/ヘラルド・エース=ヘラルド
 初公開年月 1989/10
 ジャンル 伝記/ロマンス
 《米国コピーTagline》
【スタッフとキャスト】

監督: ブルーノ・ニュイッテン Bruno Nuytten
原作: レーヌ・マリー・パリス Reine-Marie Paris
脚本: ブルーノ・ニュイッテン Bruno Nuytten
    マリリン・ゴールディン Marilyn Goldin
撮影: ピエール・ロム Pierre Lhomme
音楽: ガブリエル・ヤーレ Gabriel Yared
 
出演: イザベル・アジャーニ Isabelle Adjani カミーユ・クローデル
    ジェラール・ドパルデュー Gerard Depardieu オーギュスト・ロダン
    マドレーヌ・ロバンソン Madeleine Robinson ルイーズ=アタネーズ・クローデル
    ロラン・グレヴィル Laurent Grevill ポール・クローデル
    アラン・キュニー Alain Cuny ルイ=プロスペール・クローデル 
    カトリン・ブアマン Katrine Boorman ジェシー・リップスコム
ネタばれ御注意!
 このレヴューは「テキストによる映画の再現」を目指して作文しています。よって、ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。
<もっと詳しく>

  1885 年パリ。ポール・クローデル(ロラン・グレヴィル)は、夜中に彫刻のための土をとりに出た姉のカミーユ・クローデル(イザベル・アジャーニ:『 アデルの恋の物語 (1975) L'HISTOIRE D'ADELE H. (原題) / THE STORY OF ADELE H. (米題) 』等)を探している。

 美しい青い瞳を持つカミーユは、激しい気性を持ち、その心を彫刻に捧げている。幼い頃から粘土で人形を作り、火で炙っていたというカミーユの才能を信じる父親(アラン・キュニー)は、まだ女性に職業芸術家としての道が開けていない時代であったが、惜しみなくカミーユに経済的支援を行っていた。カミーユが彫刻の勉強をするために一家はパリに移り住み、彼女にアトリエも持たせていた。父親がカミーユを溺愛するのが許せないのか、精神が不安定な母親(マドレーヌ・ロバンソン)は、彼女に冷淡で、事ある毎に怒っていた。カミーユには弟と妹がいたが、弟ポールとはより強い絆で結ばれていた。ポールは美しい姉カミーユに、姉以上の気持ちを抱き、その思いに苦悩していた。

 カミーユの彫刻の師であったブーシェがイタリアへ行くことになり、彼女の新しい師として高名な彫刻家ロダン(ジェラール・ドパルデュー:『 1900年 (1976) NINETEEN HUNDRED (米題) 』『 愛と宿命の泉 PART I /フロレット家のジャン (1986) JEAN DE FLORETTE 』 『 愛と宿命の泉 PART II/泉のマノン (1986) MANON DES SOURCE (原題) / MANON OF THE SPRING (米題) 』『 カミーユ・クローデル (1988) CAMILLE CLAUDEL 』『 美しすぎて (1989) TROP BELLE POUR TOI (原題) / TOO BEAUTIFUL FOR YOU (米題) 』 『 シラノ・ド・ベルジュラック (1990) CYRANO DE BERGERAC 』 『 グリーン・カード (1990) GREEN CARD 』 『 1492・コロンブス (1992) 1492 CONQUEST OF PARADISE 』『 仮面の男 (1998) THE MAN IN THE IRON MASK 』『 メルシィ!人生 (2000) LE PLACARD (原題) / THE CLOSET (英題)  』『 宮廷料理人ヴァテール (2000) VATEL 』 『 ヴィドック (2001) VIDOCQ 』『 ミッション:クレオパトラ (2002) ASTERIX & OBELIX: MISSION CLEOPATRE (原題) / ASTERIX & OBELIX: MISSION CLEOPATRA (米題) 』『 シティ・オブ・ゴースト (原題) (2002) CITY OF GHOSTS 』『 ブランシュ (2002) BLANCHE 』等)が紹介されることになる。ロダンは彼女のアトリエにやって来るが、政府の仕事を請け負う忙しい芸術家であるため、すぐに帰ってしまう。自分の作品を評価してくれないロダンにカミーユは腹が立つが、同じように彫刻家を目指すイギリス人の友人ジェシー(カトリン・ブアマン)は、女たらしで有名な偉大な芸術家を強烈な個性を持つ男だと評価する。

 一見カミーユに何の興味もないように振舞っていたロダンだが、アトリエで見た彼女の作品に衝撃を受けていた。また、カミーユが自分の工房に現れ、持ち帰った大理石で作った足の作品を見て、彼女の類まれなる才能を確信し、自分の弟子として作品作りをさせる。カミーユはロダンに認められたことを喜ぶ。自分が学校やイタリアで学んだことをカミーユがすでに知っていると彼女に告げるロダン。芸術家としてスランプ期にあった大彫刻家と、彫刻家を目指す才能溢れた野心に燃える若い娘は、心惹かれあう。

 偉大な小説家ビクトル・ユーゴーが死んだ。パリの街はその死に衝撃を受ける。ロダンの愛人のローズがユーゴーの葬儀に自分を連れて行ってくれないと、泣き騒いでいる。彼女とロダンの間には息子もいるが、結婚はしていない。ローズの存在を意識したカミーユは、ロダンのアトリエを訪ね、自ら進んでモデルとなりうずくまったように横たわる。ロダンは彼女を愛撫する。

 夏のバカンスにもともと暮らしていた田舎の家に行くクローデル一家。カミーユの父親は、娘とロダンの危うい関係を知らず、娘の師であるロダンを招く。ローズとジェシーと共に現れたロダンは、カミーユの才能は自分の仕事に不可欠であるので、バカンス中であるが彼女を連れて行きたいと家族に願い出る。喜んだカミーユは部屋の影で激しくロダンにキスをする。

 ロダンは郊外に二人のアトリエとして大きな屋敷を用意する。カミーユの激しさと才能がロダンに芸術家としての霊感を呼び覚まさせ、カミーユはロダンの作品「カレーの市民」のために仕事に没頭する。カミーユは大好きな父親が家に戻ってくる日曜日にも帰ってこなくなる。カミーユとロダンの関係はうまくいっているようだったが、年の離れた型にとらわれない芸術家同士の恋愛は、世間からは良いようには噂されない。カミーユは、ロダンのためではなく自分自身のために作品を作ってサロンに出展するようにと父親から忠告を受ける。

 カミーユは、芸術活動よりも政治的活動に精力的になるロダンに対して批判的な目を持つようになるが、彼に対する愛情は変わらない。ローズか自分かどちらかを選ぶようにロダンに迫るが、ロダンは言葉を濁す。カミーユはロダンの許を去り、お腹の子供を堕胎する。

 家には帰りたくないと、ポールのところへやって来たカミーユの瞳には、以前のような美しい輝きはなくうつろだ。彼女はポールに、堕胎し、ロダンと別れたことを話す。ポールは心の拠り所をカミーユではなく、神に見出すようになっていた。数日カミーユを泊めた後、彼女のために部屋を見つける。彼はカミーユが撒き散らす石膏の屑に耐えられなかったのかもしれない。

 ロダンと別れてから、カミーユは音楽家のドビュッシーと交友を持つが、ロダンに感じたほどの情熱は感じない。作品作りは続けているが、彼女の作品には、ロダンの亡霊がとり付いて離れない。カミーユは自分がロダンの愛人でモデルであるとしか世間から評価を受けていないことにイラだつ。私には芸術作品を見る目がないのでわからないが、カミーユは愛するロダンの作風を忘れようとしても忘れられなかったのかもしれないし、カミーユの作ったものがロダンの作品として世に発表されていたために、カミーユの彫刻がロダンと似ていると人々に思われてしまったのかもしれない。カミーユは後者の意見の上に、自分の才能を羨むロダンが自分の彫刻家としての成功を邪魔しているという被害妄想を持つようになる。また、ロダンの口添えのお陰で外交官となったポールがアメリカへと旅立つことになる。カミーユの心の支えがまた消え、お酒に溺れる彼女の精神は、より不安定になっていく。そんな彼女にロダンも救いの手を差しのべようとするが、精神を病んだ彼女には全てが裏目となる。

 セーヌ川が氾濫した時、家に閉じこもったきり出てこないカミーユを心配した画廊のプロ氏が、彼女の部屋を訪れる。猫がたくさんいる水浸しの部屋に、お酒を飲んで倒れているカミーユ。しかし、その部屋にある彼女の作品は素晴らしい。プロ氏はカミーユに個展を開くと約束をする。やっと世間に認めてもらえると喜ぶカミーユだったが、その喜んでいる彼女の精神は、すでにもう彼女自身のものではなかった。個展の開催に祝辞を述べるポールは、いまや副領事となり、詩人としても認められていた。けばけばしい奇妙な格好をしたカミーユの姿が、彼の目に入る。自分の愛していた美しい姉の見るも無残な姿に、ポールは彼女に挨拶もせず個展会場を出て行く。

 どんどんカミーユの精神状態は悪くなり、 1913 年に精神病院に送られたまま、 1943 年にその生涯を閉じる。

 パリのオルセー美術館に、カミーユ・クローデルの「壮年」が展示されている。この映画の中にも、同じテーマをもった作品が出ていたと思うが、若い女の手から、老婆に連れ去られる愛人の男の手が離れていくという群像である。この作品はロダンと決別直後の 1899 年に作成され、ロダンとの別れを表しているといわれている。追いすがる若い女はカミーユで、年齢が刻まれ衰えた肉体を持つ男はロダン、そして彼を連れ去って行く、やせ細った老婆が、ロダンの長年連れ添った愛人のローズ・ブーレである。

 また、この群像は「人生の齢」とも題されている。若さを嘆願するが、年を重ねた男は老いに連れ去られ、死へと導かれる、という普遍的なテーマが感じられるからだ。彼女の偉大な彫刻家としての才能を感じる。

 弟のポール・クローデルは「この若い女は私の姉である。哀願し、侮辱され、ひざまずく私の姉カミーユ。そして今この瞬間、私達の目の前で彼女から離れようとしているのは、ほかならぬ彼女の魂である。」とこの群像について伝えている。天才的な才能と情熱で自分の心を壊してしまったカミーユ。天才同士の愛というのは、お互いのパワーが凄すぎて、どちらかを壊してしまうのだろう。しかし、カミーユの母親もちょっとおかしかったことから、彼女の精神の瓦解には遺伝的な要素も含まれているのではないかと思う。

(■解説とネタばれ:2002/08/23アップ ◆俳優についてリンク更新:2003/10/02)
以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず3743文字/文責:幸田幸

参考資料:「ポケットガイド オルセー美術館」
       allcinema ONLINE
coda_sati@hotmail.com
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