未来世紀ブラジル
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未来世紀ブラジル (1985)
BRAZIL
 映画『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』をレヴュー紹介します。

 映画『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』を以下に目次的に紹介する。
■映画『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』のポスター、予告編および映画データ
■映画『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』の解説
 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。
■映画『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』の主なスタッフ
■映画『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』の主なキャスト
■映画『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』のスタッフとキャスト
■映画『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』のストーリー(ネタバレしてます。)
 <もっと詳しく>は映画『 未来世紀ブラジル 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタバレ)です。※ご注意:映画『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』の内容やネタバレがお好みでない方は読まないで下さい。
■映画『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』の更新記録
■映画『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』の感想(画面の切り替えあり。ネタバレしてます。)

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幸の鑑賞評価: 8つ星 
■映画『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』のポスター、予告編および映画データ
未来世紀ブラジル
未来世紀ブラジル
Links:  Official Web Site
Trailers:
上映時間 Runtime: 2:11
製作国 Country: イギリス
UK
製作会社
Production Company:
Embassy International Pictures
Universal Pictures [us]
全英配給会社 Distributer: 20th Century Fox [gb] (UK)
Warner Home Video (U.K.) Limited [gb] (UK) (video)
全英初公開 Release Date: 1985/12/18
日本初公開 R. D. in Japan: 1986/10
日本公開情報 : FOX
ジャンル Genre: コメディ/SF/ファンタジー
Comedy / Sci-Fi / Fantasy
MPAA Rating 指定: Not Rated.
日本語公式サイト なし
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com.
Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc.
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■映画『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』の解説

 映画『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』は、1986 年アカデミー脚本賞&美術賞にノミネートされた鬼才テリー・ギリアム監督・脚本作品。『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』という題名から、南米の国ブラジルが舞台のSF映画かなと思って観たら全然違った。30 年代っぽいヴィジュアルを持つレトロな未来を描く映画『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』の舞台は、 20 世紀のどこか。そのどこかの 30 代後半のエリート官僚、サム・ローリー(ジョナサン・プライス)を中心に、ブラックユーモアたっぷりの官僚管理社会がファンタジックに描かれる。♪ BRAZIL♪の音楽は、サムの心の灰色を少しでも晴らしてくれるだろうか?

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■『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』の主なスタッフ

○『 未来世紀ブラジル 』の監督・脚本: テリー・ギリアム
ブラザーズ・グリム (2005) THE BROTHERS GRIMM 』等
☆BBCのTV番組『 空飛ぶモンティ・パイソン (1969〜1973) MONTY PYTHON'S FLYING CIRCUS 』で結成されたコメディ・グループ、モンティ・パイソンのメンバー。モンティ・パイソンの他の 5 人のメンバーはイギリス人だが、革新的なアニメーターであり、カメラの前よりも裏方の仕事を好んだ未来の監督テリー・ギリアムは、メンバー唯一のアメリカ出身者。ミネソタ州ミネアポリス Minneapolis, Minnesota 生まれだ。 1967 年にイギリスに移住したテリー・ギリアムは、人気のある子供向けのTV番組で働き始め、エキセントリックなアニメーション技術を発展させていく。そして、 1969 年、不条理コメディのモンティ・パイソンへの参加にお声がかかる。『 バンデットQ (1981) TIME BANDITS 』で監督としてのランクが上がったテリー・ギリアムは、本作『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』、『 バロン (1989) THE ADVENTURES OF BARON MUNCHAUSEN 』、『 フィッシャー・キング (1991) THE FISHER KING 』、『 12モンキーズ (1995) TWELVE MONKEYS 』、『 ラスベガスをやっつけろ (1998) FEAR AND LOATHING IN LAS VEGAS 』と、鬼才の名をほしいままにする。

○『 未来世紀ブラジル 』の製作: アーノン・ミルチャン
『 L.A.コンフィデンシャル (1997) L.A. CONFIDENTIAL 』< 1998 年アカデミー作品賞ノミネート>
娼婦ベロニカ (1998) DANGEROUS BEAUTY / A DESTINY OF HER OWN
交渉人 (1998) THE NEGOTIATOR
真夏の夜の夢 (1999) WILLIAM SHAKESPEARE'S A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM
ブロンド・ライフ (2002) LIFE OR SOMETHING LIKE IT
運命の女 (2002) UNFAITHFUL
デアデビル (2003) DAREDEVIL
恋は邪魔者 (2003) DOWN WITH LOVE
ニューオーリンズ・トライアル (2003) RUNAWAY JURY
ガール・ネクスト・ドア (2004) THE GIRL NEXT DOOR
『 マイ・ボディガード (2004) MAN ON FIRE 』等

○『 未来世紀ブラジル 』の脚本: トム・ストッパード
『 ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ (1990) ROSENCRANTZ AND GUILDENSTERN ARE DEAD 』(監督・原作・脚本)< 1990 年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞>
恋におちたシェイクスピア (1998) SHAKESPEARE IN LOVE 』< 1999 年アカデミー脚本賞受賞>
エニグマ (2002) ENIGMA 』等

○『 未来世紀ブラジル 』の音楽: マイケル・ケイメン ( 1948-2003 )
『 ロビン・フッド (1991) ROBIN HOOD: PRINCE OF THIEVES 』< 1992 年アカデミー歌曲賞ノミネート>
『 ドンファン (1995) DON JUAN DEMARCO 』< 1996 年アカデミー歌曲賞ノミネート>
リーサル・ウェポン4 (1998) LETHAL WEAPON 4
X−メン (2000) X-MEN
ワイルド・レンジ 最後の銃撃 (2003) OPEN RANGE
ファイティング×ガール (2004) AGAINST THE ROPES 』等

○『 未来世紀ブラジル 』の撮影: ロジャー・プラット
『 ことの終わり (1999) THE END OF THE AFFAIR 』< 2000 年アカデミー撮影賞ノミネート>
ショコラ (2000) CHOCOLAT
アイリス (2001) IRIS
ハリー・ポッターと秘密の部屋 (2002) HARRY POTTER AND THE CHAMBER OF SECRETS
トロイ (2004) TROY 』等

○『 未来世紀ブラジル 』の美術: ノーマン・ガーウッド
『 グローリー (1989) GLORY 』< 1990 年アカデミー美術賞ノミネート>
『 フック (1991) HOOK 』< 1992 年アカデミー美術賞ノミネート>
娼婦ベロニカ (1998) DANGEROUS BEAUTY / A DESTINY OF HER OWN 』等

○『 未来世紀ブラジル 』の衣装: ジェームズ・エイクソン
仮面の男 (1998) THE MAN IN THE IRON MASK
スパイダーマン (2002) SPIDER-MAN
デアデビル (2003) DAREDEVIL
スパイダーマン2 (2002) SPIDER-MAN 2 』等

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■『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』の主なキャスト

●ジョナサン・プライス as サム・ローリー〔 20 世紀、どこかの国の情報省の役人〕
『 キャリントン (1995) CARRINGTON 』< 1995 年カンヌ国際映画祭男優賞受賞>
RONIN (1998) RONIN
マリー・アントワネットの首飾り (2001) THE AFFAIR OF THE NECKLACE
ロイヤル・セブンティーン (2003) WHAT A GIRL WANTS
パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち (2003) PIRATES OF THE CARIBBEAN: THE CURSE OF THE BLACK PEARL 』等

☆『 パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち (2003) PIRATES OF THE CARIBBEAN: THE CURSE OF THE BLACK PEARL 』でのキーラ・ナイトレイのお父さんって、若い時はこんな感じだったんだぁ。『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』にも出演しているジム・ブロードベントやイアン・ホルムやボブ・ホスキンス、また、トム・ウィルキンソン Tom Wilkinson (『 フル・モンティ (1997) THE FULL MONTY 』『 恋におちたシェイクスピア (1998) SHAKESPEARE IN LOVE 』『 パトリオット (2000) THE PATRIOT 』『 イン・ザ・ベッドルーム (2001) IN THE BEDROOM 』< 2002 年アカデミー主演男優賞ノミネート>『 真珠の耳飾りの少女 (2003) GIRL WITH A PEARL EARRING 』『 イフ・オンリー (2004) IF ONLY 』等)といった同じ 40 年代生まれの英国出身俳優達のように、ジョナサン・プライスもアメリカのアカデミー賞でも名を聞かせる時代がもうすぐ来ると思っている。病気にならず、頑張ってください。(今年 57 歳だし、ちょっと心配。)

●ロバート・デ・ニーロ as アーチボルド・“ハリー”・タトル〔もぐりの暖房修理技術者〕
『 ゴッドファーザーPART II (1974) THE GODFATHER: PART II 』< 1975 年アカデミー助演男優賞受賞>
タクシードライバー (1976) TAXI DRIVER 』< 1977 年アカデミー主演男優賞ノミネート>
『 ディア・ハンター (1978) THE DEER HUNTER 』< 1979 年アカデミー主演男優賞ノミネート>
『 レイジング・ブル (1980) RAGING BULL 』< 1981 年アカデミー主演男優賞受賞>
レナードの朝 (1990) AWAKENINGS 』< 1991 年アカデミー主演男優賞ノミネート>
『 ケープ・フィアー (1991) CAPE FEAR 』< 1992 年アカデミー主演男優賞ノミネート>
RONIN (1998) RONIN
アナライズ・ユー (2002) ANALYZE THAT
アバウト・ア・ボーイ (2002) ABOUT A BOY 』(製作)
ハイド・アンド・シーク/暗闇のかくれんぼ (2005) HIDE AND SEEK 』等

☆ロバート・デ・ニーロは、マイケル・ペリンが演じたジャック・リントを演じたかったそうだ。でも、この役はロバート・デ・ニーロによくはまっていたと思う。“ Call me Harry! (ハリーと呼んでくれ!)”

●キャサリン・ヘルモンド as アイダ・ローリー夫人〔整形外科に凝っているサムの母親〕

●イアン・ホルム as M・カーツマン氏〔サムの情報省記録局の上司〕
炎のランナー (1981) CHARIOTS OF FIRE 』< 1982 年アカデミー助演男優賞ノミネート、 1981 年カンヌ国際映画祭助演男優賞受賞>
フロム・ヘル (2001) FROM HELL
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 (2003) THE LORD OF THE RINGS: THE RETURN OF THE KING
デイ・アフター・トゥモロー (2004) THE DAY AFTER TOMORROW
アビエイター (2004) THE AVIATOR 』等

●ボブ・ホスキンス as スプーア〔セントラル・サービスの暖房修理技術者〕
『 モナリザ (1986) MONA LISA 』< 1987 年アカデミー主演男優賞ノミネート、 1986 年カンヌ国際映画祭男優賞受賞>
スターリングラード (2000) ENEMY AT THE GATES
メイド・イン・マンハッタン (2002) MAID IN MANHATTAN 』等

●マイケル・ペリン as ジャック・リント〔サムの友人、情報剥奪局に勤務〕

●イアン・リチャードソン as ウォーレン氏〔サムの情報剥奪局の上司〕
フロム・ヘル (2001) FROM HELL 』等

●ピーター・ボーガン as ヘルプマン氏〔情報局次官〕
海の上のピアニスト (1999) THE LEGEND OF 1900
理想の結婚 (1999) AN IDEAL HUSBAND 』等

●キム・グライスト as ジル・レイトン〔サムの夢の女性、トラック運転手〕

●ジム・ブロードベント as ジャッフェ医師〔サムの母親の整形外科医〕
リトル・ヴォイス (1998) LITTLE VOICE
ブリジット・ジョーンズの日記 (2001) BRIDGET JONES'S DIARY
ムーラン・ルージュ (2001) MOULIN ROUGE!
アイリス (2001) IRIS 』<2002年アカデミー助演男優賞受賞>
ギャング・オブ・ニューヨーク (2001) GANGS OF NEW YORK
80デイズ (2004) AROUND THE WORLD IN 80 DAYS
ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12カ月 (2004) BRIDGET JONES: THE EDGE OF REASON 』等

●バーバラ・ヒックス as テレイン夫人〔サムの母親の友人〕

●チャールズ・マッケオン as ライム〔情報剥奪局のサムのオフィスの隣室の役人〕

●デリック・オコナー as ダウザー〔セントラル・サービスの暖房修理技術者、スプーアの相棒〕
デアデビル (2003) DAREDEVIL 』等

●キャスリン・ポグスン as シャーリー〔テレイン夫人の娘〕

●ブライアン・プリングル as スピロ〔レストラン支配人〕

●ホリー・ギリアム as ホリー〔ジャックの娘〕
テリー・ギリアムの娘

●テリー・ギリアム as シャングリラ・タワーでタバコを吸う男
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【『 未来世紀ブラジル 』のスタッフとキャスト】
監督: テリー・ギリアム Terry Gilliam (Directed by)
製作: アーノン・ミルチャン Arnon Milchan (producer)
共同製作: パトリック・カサヴェッティ Patrick Cassavetti (co-producer)
脚本: テリー・ギリアム Terry Gilliam (written by)
    トム・ストッパード Tom Stoppard (written by)
    チャールズ・マッケオン Charles McKeown (written by)
音楽: マイケル・ケイメン Michael Kamen (Original Music by)
    ケイト・ブッシュ Kate Bush (song "Sam Lowry's 1st Dream")
撮影: ロジャー・プラット Roger Pratt (Cinematography by)
編集: ジュリアン・ドイル Julian Doyle (Film Editing by)
美術: ノーマン・ガーウッド Norman Garwood (Production Design by)
衣装: ジェームズ・エイクソン James Acheson (Costume Design by)

出演: ジョナサン・プライス Jonathan Pryce as Sam Lowry サム・ローリー
    ロバート・デ・ニーロ Robert De Niro as Archibald 'Harry' Tuttle アーチボルド・“ハリー”・タトル
    キャサリン・ヘルモンド Katherine Helmond as Mrs. Ida Lowry アイダ・ローリー夫人
    イアン・ホルム Ian Holm as Mr. M. Kurtzmann M・カーツマン氏
    ボブ・ホスキンス Bob Hoskins as Spoor スプーア
    マイケル・ペリン Michael Palin as Jack Lint ジャック・リント
    イアン・リチャードソン Ian Richardson as Mr. Warrenn ウォーレン氏
    ピーター・ボーガン Peter Vaughan as Mr. Helpmann ヘルプマン氏
    キム・グライスト Kim Greist as Jill Layton ジル・レイトン
    ジム・ブロードベント Jim Broadbent as Dr. Jaffe ジャッフェ医師
    バーバラ・ヒックス Barbara Hicks as Mrs. Terrain テレイン夫人
    チャールズ・マッケオン Charles McKeown as Lime ライム
    デリック・オコナー Derrick O'Connor as Dowser ダウザー
    キャスリン・ポグスン Kathryn Pogson as Shirley シャーリー
    ブライアン・プリングル Bryan Pringle as Spiro スピロ
    ホリー・ギリアム Holly Gilliam as Holly ホリー
    テリー・ギリアム Terry Gilliam as Smoking man at Shang-ri La Towers シャングリラ塔でタバコを吸う男 (uncredited)

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<もっと詳しく>

ストーリー展開の前知識やネタバレがお好みでない方は、読まないで下さい。
■『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』のストーリー

【未来世紀ブラジル 第01段落】
黒い画面に現れるデジタル文字--- 8:49PM
20世紀のとあるところ。
 セントラル・サービスという会社のTVCMがTV画面に映る。男がダクト(冷暖房や換気などのために空気を送る管。送風管。風道。「大辞林」)の宣伝をしている。そのTVは電気店のショーウィンドウにあるもので、ショーウィンドウにある他のTVも同じ宣伝を流している。ショーウィンドウの前を乳母車を押す女性が通り過ぎる。激しい爆発が電気店で起き、ショーウィンドウが粉々に吹き飛んだ!画面には映画『 未来世紀ブラジル 』の原題名、Brazil のネオンサイン。そして軽快な♪ブラジルの水彩画 Aquarela do Brasil♪(単に“ブラジル”と呼ばれることもある)のサンバのリズムがBGMに…。この映画の題名が“ブラジル”なのは、映画の中で、アリ・バホーゾ Ary Barroso のラテン音楽♪ブラジル Brazil ♪がそこかしこと流れるからだろう。

【未来世紀ブラジル 第02段落】  情報省情報剥奪局次官のヘルプマン氏(ピーター・ボーガン)がTVのインタヴュー番組に出演。ヘルプマン氏の話によると、この国では爆弾テロの増加のせいで、情報剥奪の手数料制度というのがあるそうで、告訴された者は、拘留期間の衣食住費や尋問装置の使用料と償却料を支払わなければならない。情報局のとある一室では、いくつもあるタイプライターのような機械から続々と個人情報が紙に打ち出されている。その部屋にいる科学者風の男のデスクでも、ヘルプマン氏が出演しているTV番組が放送されている。TV番組には関心のなさそうな男だが、一匹のハエのような虫の侵入に気づき、仕留めようと躍起になる。天井に止まった虫は、叩き殺され、真下に落ちて、タイプライターのような機械の上に…。虫の死骸が落ちたせいで、データに誤りが出てしまった。タトル Tuttle という人物のデータが打ち出されていたのだが、その内の一枚がバトル Buttle という人物のものになってしまった。

【未来世紀ブラジル 第03段落】  TV画面に映るヘルプマン氏が、“楽しいクリスマスを”と別れの挨拶を言っている。そのTVがあるのは、このとある国のごく普通の家族の部屋。母親が幼い娘に「クリスマス・キャロル」を読み聞かせ、その傍らに息子と父親の姿。クリスマスの訪れを待つ一家団欒の風景だ。その部屋の階上では、ブロンドのショートカットの女性(キム・グライスト)がタバコを片手にTVを観ながら薄汚れたお湯のお風呂に入っている。女性は何か物音に気付く。誰か侵入者だ。クリスマス間近の楽しい雰囲気が一変。階下の家族の部屋では、天井が丸く穴を空けられると、その穴、窓、玄関から、情報剥奪局の武装部隊がなだれ込んできた。父親に拘留服が着せられると、その部隊を率いる役人が令状をズラズラと読み上げ、アーチボルト・バトルを情報省へ連行することを告げた。ヘルプマン氏がTVで言っていたように、やっぱり告訴される者がその費用をみる仕組みだ。役人は混乱しているバトル夫人にバトル氏の受領書等に署名を求める。夫人は夫をどこへ連れて行くのか等と弱々しく質問しながら、求められるままに 2 枚の書類にサイン。

【未来世紀ブラジル 第04段落】  天井に空けられた穴から、階上に住むショートカットの女性がバトル夫人に安否を尋ねると、情報剥奪局の武装部隊が天井めがけて銃を撃つ。天井の穴を塞ぎに来た作業局の局員 2 人が銃を撃つのをやめるように言って、銃弾がおさまった。作業局の局員は、ショートカットの女性に何の心配もないと言って、床にできた穴を塞ごうとする。作業局員が下の住人をタトルと呼ぶのを聞いた女性は、バトルの間違いだと訴える。
作業局局員ビル: Mistakes? We don't make mistakes.(間違い?オレ達は間違えないよ。)
と言ったとたん、穴を塞ぐはずの物が階下のバトルさんの部屋に落ちた。
作業局局員チャーリー: Bloody typical, they've gone back to metric without telling us.(クソッ、オレ達に言わずにメートル法に戻りやがった。)
バトル夫人は受領書を握り締めたまま倒れた。

【未来世紀ブラジル 第05段落】  情報省記録局。忙しそうに立ち回りながら働く局員達。局長のM・カーツマン氏(イアン・ホルム)が自分のオフィスの前から局員の仕事ぶりを監視している。記録局局員はよく働いているなと思っていたら、カーツマンがオフィスに入った途端、局員達は端末機のモニターでクラシック映画に観入り始めた。自分のオフィスでカーツマンがバトルに関する書類をチェックするために、慣れない端末機を弄(いじ)っていると、エラー発生。カーツマンはラウリーという局員を呼ぶが現れない。ラウリーを呼びにカーツマンがオフィスから出ると、クラシック映画を観ていた局員がいっせいに働くフリをし始める。カーツマンはラウリーはどこだと叫ぶ。

【未来世紀ブラジル 第06段落】  その頃、記録局局員サム・ラウリー(ジョナサン・プライス)は夢の中。サイケデリックな化粧を施したサムは、白い大きな羽が付いた騎士の鎧のような衣装を身に着け、青空を自由に羽ばたいている。そんなサムをブロンドのロングヘアの女性が呼んでいる。その女性は髪形は違えど、バトル家の階上に住んでいる女性だ。サムはまだ一度も実際に出会ったことがない、夢の中の美女に恋焦がれている。彼女にキスをして喜んで空を飛んでいると、変な音が。電話の音だ。サムはカーツマンからの電話〔とても未来の電話とは思えないような不便な電話機〕で起こされた。もう 11 時。目覚まし時計の故障でサムは寝過ごしたのだ。サムは上司であるカーツマンに悪びれる様子もなく、朝の支度を始めた。サムが起きると、自動的にシャワーやコーヒーやパンの用意ができる。でも、パンにコーヒーがかかってシナシナになり、サムは朝食を食べずに部屋を出た。

【未来世紀ブラジル 第07段落】  情報省記録局に出社してきたサムは、ボディチェックのところで元同僚のジャック・リント(マイケル・ペリン)に久しぶりに出会った。サムは秀才だが出世に興味がなく、野心家のジャックは出世コースを歩み、エリート集団の情報剥奪局で働いていた。そんなジャックが何故記録局に?ジャックの様子は少し不安な感じ。サムはジャックの肩越しにモニターに映る、夢の中の美女そっくりの女性を見た。彼女がこの記録局に来ている?サムはハッとしたが、次の瞬間、モニターには別の男が映っていた。

【未来世紀ブラジル 第08段落】  サムの夢の中の女性のそっくりサン、バトル家の上に暮らすショートヘアの女性は、バトル氏の誤認逮捕を報告するために記録局を訪れていた。長い列を並んでやっと役人のところに辿り着くと、役人は彼女に情報調整局へ行くように言った。彼女は情報調整局の指示でここに記入用紙を取りに来たのに。そのことを申し立てると、役人は彼女の持つ受領書をチェックして、先に調整局でスタンプを押してもらうようにと意地悪く笑った。

【未来世紀ブラジル 第09段落】  カーツマンのオフィスで、サムはタトルとバトルの人違いに気付いた。アーチボルト・バトルは靴の修理技術者で、アーチボルト・タトルは暖房装置の修理技術者。サムが、人違いは記録局のミスではなく情報剥奪局のミスだと話すと、ホッとするカーツマン。サムが昇進したら困ると話すカーツマンに対し、サムはその上司の椅子に座って足を机の上に置くというデカい態度で、昇進は断固断ると答える。サムが記録局に留まりたいのは、きっと間の抜けた上司の下で、自由にやっていけるからだろう。ところが、カーツマンの話によると、サムは母親の根回しで本当に昇進することになった。

【未来世紀ブラジル 第10段落】  整形外科医のジャッフェ医師(ジム・ブロードベント)のところで治療を受ける母親(キャサリン・ヘルモンド)に、サムは意見しに行く。サムの母、ローリー夫人は椅子に座らされ、思いっきり顔の皮を引っ張られている。今の自分で幸せだと話すサムに対し、ローリー夫人は、サムほど頭が良くないのに、野心があるから昇進しているジャックを見習うように言った。ローリー夫人は、夫の友人であり、自身とも格別に親しい情報剥奪局次官のヘルプマン氏にサムの昇進を頼んだようだ。そう話しながらもジャッフェ医師の治療は進む。ジャッフェは、弛んだ所はナイフで切り取りましょうと、切り取る箇所を筆で線を書いていき、ローリー夫人の顔をラップで巻いた。“ Already she is twice as beautiful as she was before-- Voila! (以前の 2 倍美しくなったでしょう、ヴォアラ!)”と、お化けのようなローリー夫人の顔をサムの方に見せるジャッフェ医師。

【未来世紀ブラジル 第11段落】  サムは母と共に高級レストランへ行く。レストランのあるビルの中に入る時、テロ防止のために持ち物検査がある。飛行場みたいに手荷物をセキュリティ・チェックに通す。ローリー夫人の手荷物が機械に通されると、“ブーッ”とブザーがなった。引っかかったのは、ローリー夫人からサムへのクリスマス・プレゼントだ。ローリー夫人曰く、“ It's something for executives. (管理職のためのものよ。)”というものらしい。夫人は包装を解かれたそのプレゼントをサムに渡した。

【未来世紀ブラジル 第12段落】  高級レストランには、ローリー夫人の友達のテレイン夫人(バーバラ・ヒックス)とその娘のシャーリー(キャスリン・ポグスン)がいる。サムとシャーリーを恋人同士にしようという、 2 人の母親のセッティングのようだ。しかし、いきなり恥ずかしそうにサムに塩をすすめるシャーリーは、アホっぽいのでサムの好みではない。テレイン夫人は、包装の解かれたクリスマス・プレゼントをサムに渡した。たぶん中身はローリー夫人がサムにあげた物と同じだろう。テレイン夫人もローリー夫人と同じように整形外科に凝っているが、テレイン夫人はジャッフェ医師ではなくチャップマン医師に治療してもらっている。その治療のせいで、頬の横辺りにガーゼを貼っている。テレイン夫人の言葉を借りると、併発症を起こしているそうだ。明らかにチャップマン医師の手法は間違ってそうだが、テレイン夫人にはローリー夫人に対して女の意地があるようで、治療の非を認めたくないようだ。

【未来世紀ブラジル 第13段落】  ここは高級レストランなのに、メニューは番号制。どの料理が何番なのか知らないサムに、レストランの支配人スピロ(ブライアン・プリングル)はイラつく。そして給仕された料理はもっとヘン。お皿の上には、指名された番号の料理の元来あるべき姿の写真と、たぶんその料理の味がするアイスクリームみたいなものが載っている。サムたちが食事を始めると、レストランで爆弾テロが起きる。しかし、レストランの楽隊は音楽を弾き続け、サムたちもお構いなしでランチをとり続ける。
テレイン夫人: Really, Sam - when are you going to do something about these terrorists?(サム、こんなテロリストを何とかしたら?)
サム: What? Now? It's my lunch hour.(何?今?僕は昼休みだよ。)
 サムは周囲の非常事態には無関心なのに、母親が自分を勝手に昇進させたことに怒って、食事の途中で席を立った。

【未来世紀ブラジル 第14段落】  夢の中。例のブロンド髪の女性を求め、空を飛んでいるサム。ところが眼下の緑の大地から、太くて四角い柱がどんどん急に突き出てきて飛行を妨げようとする。サムがうなされて目覚めると、部屋の中が暖房の故障で暑くなっていた。サムは急いで修理を請け負っている“セントラル・サービス”に電話をかけた。ところが、“セントラル・サービス”の電話対応は、生の声を主張するテープ録音。それによると、 23 時から 9 時まではサービスを断っているという。サムが緊急事態だと訴えても、テープの録音が流れるだけ。諦めたサムはいつの間にか、冷蔵庫の中に頭を入れて眠っていた。電話の音がする。

【未来世紀ブラジル 第15段落】  サムが電話に出ると、電話の主はサムに受話器を置いて手を挙げるように言った。おかしく思ったサムが後ろを振り向くと、黒尽くめの男がサムに銃を向けていた。恐ろしくなったサムは手を挙げる。男はサムの部屋の安全を確認すると、暖房修理に取り掛かった。この男が、本来情報剥奪局によって告訴されるはずだった、暖房修理技術者のタトル(ロバート・デ・ニーロ)だ。タトルは、サムがセントラル・サービスにかけた電話を傍受し、暖房を修理するためにサムの部屋にやってきた。この国では、セントラル・サービスの職員以外は修理を行ってはいけないことになっている。ペーパーワークが嫌いなタトルは、書類に縛られるのが嫌で、もぐりの暖房修理技術者として暗躍していた。暖房が爆発しそうな時に、修理伝票 27B/6 なんて書いてられないというタトルのことを、サムは何だか気に入った。タトルがパイプに取り付けたバイパスで、サムの部屋の暖房は直った。

【未来世紀ブラジル 第16段落】  サムの部屋のインタフォンがなる。タトルは銃を構えた。サムが戸口に出ると、つばの長い赤いキャップを被り、赤い作業着を着た、セントラル・サービスからの修理者 2 人だった。背が低くてポッチャリしているのがスプーア(ボブ・ホスキンス)で、メガネをかけてヒョロッとしているのがダウザー(デリック・オコナー)だ。サムは自然に暖房が治ったと応じるが、 2 人は納得しなかった。部屋の中へ入ろうとする 2 人に、サムは 27B/6 の伝票を持っているかどうか尋ねた。その伝票の名前に 2 人はかなりビビッた。ダウザーなんてブルブル震えている。職人さんなので、彼らもタトルと同じようにペーパーワークが苦手なようだ。 2 人は悔しそうにサムを見ながら、必ず戻ってくるといって去って行った。

【未来世紀ブラジル 第17段落】  サムはタトルに自分が情報省に勤めていることを明かし、情報剥奪局が暖房修理技術者のアーチボルト・タトルを探していることを教えた。サムはタトルがテロリストなのかどうか知りたかったが、タトルは“もう行かなきゃ”と、♪ブラジル♪をハミングしながら帰る準備をした。サムは修理代を払うと言ったが、タトルはさっきセントラル・サービスから匿ってもらったからと無料にした。高層ビルの最上階にあるサムの部屋の前の廊下から、タトルはロープをつたってヒューッと下へ降りていった。自由を愛する、もぐりの暖房修理技術者タトルは、さながら孤高の正義のヒーローといった感じだ。

【未来世紀ブラジル 第18段落】  情報省記録局。サムは上司のカーツマンに呼ばれた。カーツマンは困ったことがあると、いつも頭のいいサムを頼っているのだ。カーツマンは、尋問手数料を取りすぎたために発生した、バトルへの払い戻しの小切手に頭を悩ませていた。カーツマンは誰かがこの責任を自分になすりつけようとしていると気もそぞろだ。カーツマンからの情報を整理すると、バトルは尋問で死んでしまったようだ。サムはその小切手を家族に送ろうと、バトル夫人の銀行口座に振り込む手続きを準備する。情報省には、連絡通達用のダクトがある。カーツマンのオフィスにも 2 本のダクトがあり、 1 本は発信用のダクトで、もう 1 本は受信用のダクトになっている。サムは、コンピュータから打ち出した連絡用紙を筒に入れ、その筒を発信用のダクトにに入れた。ところが、すぐに受信用のダクトに連絡の筒がやって来た。それには、バトル夫人が銀行口座を持っていないことが書かれていた。落ち込むカーツマンに、サムは自分がバトル夫人を訪れて本人に小切手を手渡すことを申し出た。カーツマンは喜んだ。サムは手首がいうことをきかないと言うカーツマンに代わり、必要書類にサイン。バトル夫人のところへ向かうサムに、カーツマンは礼を言った。

【未来世紀ブラジル 第19段落】  ラジオで♪ブラジル♪を流しながら、バトル夫人の暮らす、郊外にあるシャングリラ・タワーへと、情報省の一人用車両であるメッサーシュミット the Messerchmidt KR200 (ドイツの航空機会社メッサーシュミットが製造したクラシック・カー)を走らせるサム。辿り着いたその場所は、シャングリラ(理想郷)とは程遠い貧民街っぽい感じで、やんちゃな子供達が情報剥奪局ゴッコをしている。サムがバトル夫人のアパートの部屋の扉をノックしていると、背後から隠れてタバコを吸っている男(テリー・ギリアム)がサムを見ている。サムが鍵のかかっていない部屋に入ると、バトル夫人が呆然と椅子に座っている。サムは、夫を奪われた夫人を気遣う様子もなく、記録局のミスではなく情報剥奪局のミスで尋問手数料が多く取られ、小切手を持ってくることになったと話した。放心状態ながらもバトル夫人は、夫が死んだのか?夫の遺体はどこにあるのか?と当然の質問をサムにする。小切手のことしか知らないとサムは答え、受け取りのサインをバトル夫人に求めた。

【未来世紀ブラジル 第20段落】  バトル夫人は怒って、そのレシートを破り、泣いた。すると、バトル夫人の息子の少年が現れ、サムに掴みかかっていった。バトル夫人が息子を制止しようと大声を出すと、天井の穴から階上のショートヘアの女性が心配して声をかけた。女性の顔が割れた鏡に映る。サムは夢の中の女性の出現に驚き、急いで階上へと向かった。しかし、サムが上の部屋に到着した時には、もう女の人の姿はなかった。外で爆発音。サムが窓から下を見ると、サムが乗ってきたメッサーシュミットが燃えている。その横をサムの探している女性が、大きな荷物を持ってスタスタと歩いている。彼女は、夢のおしとやかなイメージとは違い、パンツスタイルでボーイッシュな感じだ。彼女を追って下まで降りてきたサムだが、もう彼女はいない。サムは車で追うために、古いマットでメッサーシュミットの火を消そうと奮闘。突然大きな騒音。巨大なトラックがやって来た。運転席にはサムの追う女性。彼女はトラックでどこかに行ってしまった。

【未来世紀ブラジル 第21段落】  サムは女性を追おうと、火の消えたメッサーシュミットに乗ったが、車は動くはずがない。落ち込むサムに幼い少女が女性の名前を教えてくれた。サムの想い人は、ジル・レイトンという名前だ。サムは喜んだ。
サム: You're a very good little girl. What are you doing here?(とてもいい子だね。ここで何しているの。)
少女: I'm waiting for my daddy.(パパを待っているの。)
サム: He will be pleased when he comes home.(パパが帰ってきたら、喜ぶだろうね。)
シャングリラ・タワーから歩き去ろうとしていたサムは、そう言ってからハッとして振り返って少女を見た。少女はバトル氏の娘だ…。

【未来世紀ブラジル 第22段落】  記録局に戻ってきたサムは、端末を使ってジル・レイトンについて調べている。周りにはもう他の局員はいない。自分のオフィスから出てきたカーツマンが、残業〔?〕しているサムに声をかけた。車両部から車が一台無くなったことで苦情を受けていることと、バトル夫人の小切手のことだ。サムは車については書類を提出すると答え、小切手のことも片付いたと答えた。(実際はレシートをバトル夫人が破っちゃったから片付いていない。)今のサムにはそんなことはどうでもよかった。ジルの情報を得るために必死。ところが、ジルは第 3 級の容疑者になっていて、彼女の詳しい情報は情報剥奪局が握っている。そのことを知ったサムは、昇進を受け入れて情報剥奪局へ行くとカーツマンに言った。カーツマンは大反対。その上、サムの代わりに昇進辞退の書類にすでにサインしたと言った。
サム: What! Shit!(何だって!クソッ!)
カーツマン: It's what you wanted isn't it?(君が望んでたことだろ?)
サム: Yes ... No ... I don't, know.(ああ…いいや、僕には分からない。)

【未来世紀ブラジル 第23段落】  モノレールのような乗り物で帰路につくサム。その乗り物に揺られながら居眠りしたサムは、夢を見た。ロングヘアのジルを入れた籠が宙に浮いているが、籠にはロープが何本かつけられている。浮腫んだ東洋人の仮面を付け、ボロをまとった虫のような人々が、そのロープを持ってゾロゾロ歩いている。

【未来世紀ブラジル 第24段落】  サムが家に着くとドアが開いていた。部屋の中はあらゆるパイプやダクトが外に出てメチャメチャになっている。セントラル・サービスのスプーアとダウザーの仕業だ。また戻るという言葉通りに、スプーアとダウザーは書類を完璧にして現れた。 2 人はタトルが修理のために装着したバイパスを見つけた。もぐりの暖房修理技術者に修理をしてもらうことは禁止されている。スプーアとダウザーは、戦利品である違法行為の証拠を持って、意気揚々と帰って行った。サムの部屋をパイプだらけのままにして。

【未来世紀ブラジル 第25段落】  帰社途中に見た夢の続き。ジルの入った籠のロープを持っていた不思議な人たちの中に、バトル夫人がいて、“死体はどこなの?”と叫んでいる。サムは戦うべき相手を見つけた。それは日本の戦国武将の格好をした怪物だ。サムは戦国武将と戦い、倒した。サムがその仮面を取ると、仮面を外した戦国武将はサム自身だった。元々戦国武将のシーンは、黒澤明監督を敬愛するテリー・ギリアム監督のファン心の産物であるそうだ。

【未来世紀ブラジル 第26段落】  ピンポーン!パイプに絡まって眠っていたサムは、インタフォンの音で目覚めた。赤と黒のミリタリー・ファッションっぽいレオタードを着たメッセンジャー・ガールが部屋に入ってきた。彼女はローリー夫人からのメッセージを歌にのせてサムに伝えた。若返り手術成功パーティへの招待状だ。
メッセンジャー・ガール: It's reply paid.(返信料込みよ。)
サム: Oh ...(he sings uncertainly) Thank you very much, mother, but actually -(おぉ…♪ありがとう、母さ〜ん、でも、実は…♪)
メッセンジャー・ガール: You don't have to sing it.(あなたは歌わなくてもいいのよ。)
サム: Oh, right ...(あぁ、そうか…。)

【未来世紀ブラジル 第27段落】  普段ならあり得ないことだが、サムは母親の若返り手術成功パーティを訪れた。サムの目的は、パーティに出席している情報剥奪局次官のヘルプマン氏に会って、昇進の辞退を取り消してもらうことだ。サムの母親は、ジャッフェ医師の手術のお蔭で、わりと美しく若返っていて、若いツバメを侍らせるほどになっていた。一方、母の友人のテレイン夫人は、若返り治療の失敗で以前より包帯の量が増えたようだ。(本人はまだ併発症だと言っている。)サムはそんな痛々しいテレイン夫人の背後に、バトル夫人の幻を見た。サムは元同僚のジャックにも会った。ジャックの妻アリソンもジャッフェ医師の手で整形手術をした一人だ。サムがジャックと話しているところに、車椅子のヘルプマン氏が現れた。ヘルプマン氏はジャックの妻の名前をバーバラと間違えるが、ジャックは間違いを訂正することなく、そのままバーバラで通した。

【未来世紀ブラジル 第28段落】  ヘルプマン氏に頼まれ、サムは脚の不自由なヘルプマン氏のトイレを手伝った。ピカピカのバスルームで、ヘルプマン氏は親しい友人であったサムの父親のことを話した。映画の中で、サムの父親は過去形で話されている人物。死んだとも言われていないし、どうなっているのか分からないが、とにかく映画には出演していない。ヘルプマン氏は、天花粉のようなものがこぼれた洗面台上に、“ 'Ere I am J.H. (J・H、僕はここだよ。)”という文字を指で書いた。('Ere I am J.H. という言葉は、サムの父親の名前ジェレマイア Jeremiah のアナグラム。)ヘルプマン氏にはこう言うサムの父親の声がオフィスで聞こえるそうだ。それが、サムの父親が息子サムのことを助けてやって欲しいと思っていることの表れだと考えているヘルプマン氏は、サムの母親ともサムの昇進を約束していた。昇進を拒んだことをヘルプマン氏が残念に思っていると感じだサムは、思い切って今更ながら昇進を受け入れたい旨を伝えた。ヘルプマン氏はサムの心変わりを喜び、文字が書かれた洗面台の粉を息で吹き飛ばした。

【未来世紀ブラジル 第29段落】  サムの情報剥奪局への初出勤。情報剥奪局の入り口ロビーも、記録局同様に大きなホールになっているが、一般市民が出入りしていた記録局ロビーとは違い、人は殆どいない。受付には男性が一人いるだけで、IDの確認もしない。サムはエレベーターに乗り、 30 階にいる情報剥奪局の上司ウォーレン氏(イアン・リチャードソン)に会いに行った。 30 階に到着するが、そこは地下駐車場のような空間。誰もいない。しばらくすると、向こうの方にウォーレン氏と彼を取り巻く情報剥奪局の人々の群れが仕事について話しながら足早に歩いているのが見える。ところが今度はサムの近くにその人の群れがやって来ている。サムはセカセカと歩く群れに入り、先頭を行くウォーレン氏に自分の名前を告げた。ウォーレン氏は忙しそうに歩きながら、他の課に書類を見せない等の情報剥奪局の方針を的確にサムに話し、群れを引き連れたままサムをオフィスにまで連れて行った。サムのオフィスのドアには、 DZ-015 とサムの番号が付いている。
ウォーレン氏: ... your very own office. Congratulations, DZ/015, welcome to the team.(まさに君のオフィスだ。おめでとう、 DZ-015 号。チームへようこそ。)

【未来世紀ブラジル 第30段落】
 ウォーレン氏は取り巻く人々の質問に答え、指示を与えながら、またセカセカと歩いていき、サムは自分のオフィスの中に入った。オフィスはコンクリートをうっただけの内装で、縦に長い部屋。机の上にはヘルプマン氏からのプレゼントが置いてあった。プレゼントは、母親とテレイン夫人がくれたのと同じ、“管理職のためのもの”だ。突然机が壁に引っ張られた。どうやら机は、隣の部屋の人と、壁を隔てて共有しているようだ。サムは机がどんどん隣のオフィスの中に引っ張り込まれそうになるのを防ごうと奮闘する。サムは隣のオフィスを訪ねる事にした。隣人はハーベイ・ライム(チャールズ・マッケオン)と言う、これもまたヘンテコな男。ライムの部屋には端末機があり、サムはジル・レイトンについて調べるために、それを貸して欲しいと申し出た。サムに端末機をいじられたくないライムは、自分が調べてやると言ったものの、端末機の使い方が良く分かっていないらしい。ライムは、自分の無能を悟られたくないので、気が散るので部屋に戻って待っているようにサムに指示した。

【未来世紀ブラジル 第31段落】  自分のオフィスに戻ったサムだが、この情報剥奪局の事務促進課はかなり暇なところみたい。ライムがジル・レイトンについて調べている間、サムは机の上でヘルプマン氏がくれたプレゼントで遊んでいる。管理職の必需品であるそのプレゼントは、決定を下す時に使うものだろうか。円錐形の小さな金属を落として、 YES か NO かを決めるオモチャだ。そんな事をしている間に、サムは眠りに落ちた。サムは、ロングヘアのジル・レイトンが入れられている宙に浮く籠についたロープを掴み、彼自身も宙に浮いた。ところが、石畳の床からカーツマンに似た石の怪物が出てきて、“戻ってきてくれ。”とサムの足を引っ張った。

【未来世紀ブラジル 第32段落】  長い時間がかかってやっとライムはジル・レイトンについてのデータを引き出した。ところが、それは彼女がトラック運転手であることなど、すでにサムが知っている情報ばかり。サムは強引にライムの端末機を使い、 5001 号室の 412/L がより詳しい情報を握っていることを知った。オフィスから出たサムは、ウォーレン氏に車〔バトル夫人のところに乗っていったメッサーシュミット〕について車両部に報告を出すように言われたが、今のサムにとってはそんなことよりジル・レイントンの情報のほうが優先だ。サムはエレベーターに乗って 50 階にまでやって来た。 50 階は 30 階とはまた全然雰囲気が違う。ここの廊下は真っ白で病院のようだ。サムは 5001 室のドアの前で虫を足で踏み潰した。白い床に虫の痕が残る。

【未来世紀ブラジル 第33段落】  5001 号室の受付には中年女性のタイピストがいる。タイプから打ち出される文字は、“ AHHHH, Oh God ... No, don't ... UHH, please ... I ... STOP!! I can't stand... AIIEEEE. (あー、神様・・・いや違う・・・うー、お願いだ・・・私は・・・やめて!我慢できない・・・あー)”となんかヘン。サムににこやかに対応するタイピストが、イヤフォンを少し耳から離すと、タイプに打ち出されているような拷問を受ける人の声がイヤフォンから外に漏れる。タイピストの許可を得てサムが部屋の中へと入ると、白衣を着たジャックが手を洗っていた。 5001号室の 412/L とはジャックのことだったのだ。ジャックの白衣には血がついている。ジャックは情報剥奪局で被疑者の拷問を担当しているようだ。

【未来世紀ブラジル 第34段落】  5001 号室のオフィスは、無機質なサムのオフィスとは違って、普通っぽい。ジャックはサムに銀色の包装のクリスマス・プレゼントを渡した。きっと中身は例の管理職の必需品だ。ジャックの三つ子の娘の一人、ホリー(ホリー・ギリアム)が遊んでいる。ジャックは妻のバーバラと残りの 2 人の娘が外出しているとサムに話した。パーティの夜にヘルプマン氏から妻アリソンの名をバーバラと呼ばれてから、ジャックはずっとバーバラと呼んでいるようだ。しかも、ジャックは三つ子の娘の区別も余りできていないみたい。ジャックはサムに情報を提供したがらなかったが、サムがバトルの誤認逮捕について知っていると分かると、ひどく動揺した。バトル氏はジャックの拷問で亡くなったようだ。ジャックによると、誤認逮捕の目撃者であるジル・レイトンが逮捕され、 6 時に 5001 号室に連れて来られることになっているようだ。サムはジルが拷問されないように、自分がジルを捕まえて誤認逮捕について黙らせようとジャックに提案した。サムのジルへの想いを知らないジャックは、サムの意見を承諾し、サムにジル・レイトンについてのファイルを渡した。また、サムが活動しやすいように、ジャックの地位を示すワッペンが付いたスーツを貸した。ジャックのスーツに着替えたサムは、エレベーターに乗った。

【未来世紀ブラジル 第35段落】  情報剥奪局のロビーにジル・レイトンが誤認逮捕を訴えに来ているのが、降りてくるエレベーターの中から見えた。サムはロビーでエレベーターを降りようとするが、エレベーターの故障で地下まで行ってしまう。サムはジルを救いにロビーへ行こうと、地下にちょうど止まっていた次官専用のエレベーターに乗ろうとした。しかし、サムは警備の男に阻まれてしまう。警備員はサムにIDを見せるように言うが、ジャックのスーツなのでサムはIDを持っていない。サムは逃げた。逃げるサムを警備員達が銃で狙う。サムは、階段でロビーに上がってきた。受付で怒っているジルの背後から、武装部隊がジリジリと迫ってきている。サムはジルを捕獲しようとしている部隊を止めた。サムの胸についているジャックのワッペンを見た兵隊たちは、すんなりとサムの命令を聞き入れた。サムはジルを強引に引っ張って外へ連れ出した。

【未来世紀ブラジル 第36段落】  サムはジルを助けようとしているつもりだが、ジルは自分を拘束しようとしている情報剥奪局員のサムに対して嫌悪感を持っている。ジルは、サムが道にばら撒いてしまったジルのファイルを集めようとしている間に、トラックに乗って去ってしまおうとする。ところが、夢の女性へのサムの執念はものすごく、走り去ろうとしたトラックに飛び乗った。ジルはサムに降りるように言うが、サムは情報省官僚の権限を振りかざしてジルにトラックを走らせ、一緒に情報剥奪局から去った。ジルはサムに助けられたことを知らないので、急に愛の告白をしたりするサムを何とかトラックから降ろそうと苦慮する。そしてついに「信じて欲しい」「愛している」と訴えるサムをトラックのボンネットから振り落とした。ジルはサムをひき殺したと思った。後味の悪い思いで、ジルは車を降りてサムの安否を確かめに行く。トラックのフロントガードにしっかりと捕まりながら自分を信じて欲しいと訴えるサムに、ジルは少し気を許したようだ。

【未来世紀ブラジル 第37段落】  トラック運送の仕事をしているジルは、工場に町へと運ぶ物を取りに行く。サムの暮らすこの国は、都心では洗練された近代的な雰囲気があるが、それ以外のところはシャングリラ・タワーみたいにスラムっぽかったり、手付かずの土地だったりで、地域によって差が激しい感じ。トラックにコンテナ・ハウスの一室を載せ、工場の人から手渡された茶色い包みを持って、ジルは再び町へと向かう。ジャックの言葉のせいで、もしかしたらジルがテロリストかもと疑っているサムは、その茶色の包みが気になっている。検問がやって来たが、サムは運転しているジルの横からアクセルを踏んで、検問を突っ切らせた。お蔭で、ジルとサムが乗るトラックは、背後から装甲車に激しく追跡される。町の中に入り、ビルの谷間でカーチェイスを繰り広げるトラックと装甲車。サムはトラックからコンテナ・ハウスをふり落とし、装甲車に激突させた。ルールを破ることに快感を覚えていたサムだが、装甲車から出てきた男が火達磨になっているのを見て、ちょっとは事の重大さを感じたみたい。

【未来世紀ブラジル 第38段落】  サムとジルは身を隠すためにデパートに入った。サムはそこでテレイン夫人とその娘シャーリーに出会う。テレイン夫人は整形手術に伴う併発症のために、包帯でぐるぐる巻きになっていた。サムがテレイン夫人のおバカな話を聞いていると、デパートの中で爆弾テロが起こった。苦しむ人々の中、サムはジルを探した。板の下敷きになっていたジルを助け起こすと、サムはジルを酷い女と罵った。サムは、あの茶色の包みが爆弾だったと思っているのだ。自分がテロリストだと思われたジルは、横に転がっていた茶色の包みを、怒ってサムに投げつけた。茶色の包みの中身は、役人達への付け届けであった“管理職のためのもの”だった。ジルと一緒にテロ被害者の救助活動に当たっていたサムは、当局によって捕まえられる。

【未来世紀ブラジル 第39段落】  サムは上司のウォーレン氏にこっぴどく叱られた。エレベーターでジャックに会ったサムは、ジルの無実を訴えたが、ジャックによるとジルは殺されたようだ。単なる誤認逮捕の目撃者であったジルは、タトルと手を組むテロリストに仕立て上げられている。偶然に一枚の書類にバトルとタトルの出力ミスが起き、善良なる市民であったバトル氏が殺害されたことは、お役所のシステムから生じた弊害なのに、ジャックはこの偶然が誰かによって内部から仕組まれたものだとすっかり責任転嫁。そんなジャックは、しつこくジルの無実を訴えるサムに当分近づかないでくれと言って、家路に向かった。自分のオフィスでキレたサムは、続々と連絡事項を届けるダクトの発信用と受信用の穴をパイプでつなぎ、連絡の筒が届かないようにした。すると、廊下でダクトが破裂!白い書類がパラパラと宙を舞った。

【未来世紀ブラジル 第40段落】  サムがアパートに戻ると、またドアが開いている。暖房の故障で氷柱がぶら下がるほど寒くなった部屋に、セントラル・サービスのスプーアとダウザーが防寒着をまとって作業をしている。スプーアはサムに「暖房修理に伴う住居の強制的暫時受け渡し命令」という書類をこれ見よがしに見せつけた。スプーアからレシートを貰ったサムが外に出ると、廊下にタトルがいた。タトルは、理不尽なセントラル・サービスへの復讐のため、外の配管のパイプを付け替えた。スプーアたちの防寒着に暖かい空気を送るパイプと、汚水のパイプを付け替えたため、スプーアたちは汚水にまみれてしまう。そこへ、死んだと思っていたジルが現れた。サムはジルに駆け寄り、いい雰囲気。そんな 2 人を残して、タトルはいつものようにヒューっとロープを伝ってビルの谷間に消えていった。

【未来世紀ブラジル 第41段落】  サムはジルを母親の部屋に匿った。サムによると、母親は整形外科に入院していて、明日退院することになっている。誰も居ない豪華な部屋で、サムとジルは激しくキスをする。いい案が思いついたサムは、名残惜しそうなジルを部屋において、情報剥奪局へと向かった。サムは、“管理職のためのもの”のオモチャで遊んでいる受付の男に、ヘルプマン氏のオフィスに上げて欲しいと頼むが、もちろんダメ。地下では、警備員達がクリスマス・ソングを歌う練習をしていた。サムは警備員に見つからないようにこっそり次官専用のエレベーターに乗り込んだ。エレベーターのボタンは数字ではなく、アルファベット。サムはこのエレベーターを動かすための暗号を思い出した。母の若返り手術成功パーティでヘルプマン氏に会った時に、氏が言っていた言葉だ。“ Here I am J.H. ”エレベーターはサムをヘルプマン次官のオフィスまで運んだ。

【未来世紀ブラジル 第41段落】  ヘルプマン氏のオフィスには誰もいない。次官だけあって、流石に立派な部屋だ。サムはヘルプマン氏の机の上に、サムの母親の写真が飾られているのに気付いた。オフィスの奥には、タイプライターのような機械からデータが打ち出されている部屋がある。サムはその部屋の端末を操作した。母親の部屋に戻ったサムは、ブロンドのロングヘアのカツラを被り、ロマンチックな白いネグリジェを着たジルを発見。まるで夢で見たような光景だ。サムは端末を操作し、情報省のコンピュータ内でジルを抹殺したことを告げた。ジルは今ここに生きているが、データ上では死んだことになったのだ。“ Care for a bit of necrophilia? ”とおどけて言うジルを、サムは母親のベッドに押し倒した。

【未来世紀ブラジル 第42段落】  幸せな夢の中、翼を持つサムは最愛のジルを抱きしめている。朝、目覚めたサムは、ジルとラブラブ・モード。幸せの絶頂のはずだったのに…。天井に丸く穴が空けられ、窓から武装部隊が侵入。拘留服を被らされたサム。そして銃声の音…。

【未来世紀ブラジル 第43段落】  拘留服の隙間から見えるのは、ビニールシートで仕切られた部屋の中、机を挟んで自分の向かいに座る役人。ジルについて尋ねるサムを無視して、役人はサムの罪状を読み上げる。メッサーシュミットのこと、バトル夫人への小切手のこと、暖房ダクトの修理のこと、情報省の通信用ダクトを破壊させたこと等の事実が歪められ、全てがサムの有罪を裏付ける証拠になっている。サムは、バトル・タトル事件を内部で仕組んだテロリストに仕立て上げられているのだ。情報剥奪の手数料制度があるので、役人は有罪を認めたほうが安く付くとサムに囁く。

【未来世紀ブラジル 第44段落】  拘留されているサムの所に、サンタクロースの格好をしたヘルプマン氏がやって来た。サムは、自分はテロリストではないので、ここから出してくれるようにヘルプマン氏に頼むが、無駄。ヘルプマン氏はヘルプしてくれない。データ上、ジルは逮捕に抵抗し死亡したとなっていると聞き、サムは自分がジルの死亡を細工したと打ち明けるがそれも無駄。ジルの死亡はデータに 2 度記載されていた。サムの母親のためにも尋問に協力するようにとヘルプマン氏は言って、孤児の慰問に出かけていった。

【未来世紀ブラジル 第45段落】  大きな円柱の中のような空間が尋問室だ。その中心にある拷問用のイスにサムは縛られる。浮腫んだ東洋人の仮面をつけた白衣の男がサムに近づいてきた。その男はジャックだ。サムは必死にジャックに無実を訴えた。尋問の声を聞き取るマイクを手で塞ぎ、仮面を外したジャックはサムに怒った。ジャックもそれなりに友人に酷いことをするのには気が退けるようだ。(嘘っぽいけど。)ジャックは気を取り直し、プロとして仕事に取り掛かるため、再び仮面を被った。恐怖に震えるサム。

【未来世紀ブラジル 第46段落】  銃声。ジャックは頭を銃で撃たれて倒れた。上からロープを伝ってタトルとその仲間がサムを救いにやって来たのだ。タトル達は、情報剥奪局の部隊と激しい撃ち合いを繰り広げ、銃弾に倒れる者を出しながらも、サム救出に成功する。サムは、タトルから勧められ、爆弾の発火装置を押した。情報剥奪局の巨大なビルは爆発し、崩壊。サムはタトルと共に町に紛れ込んだ。テロリストっぽい服をゴミ箱に投げ入れ、一市民の姿になったタトルが人ごみを歩くと、情報剥奪局から舞い上がってきた書類が彼に絡みついた。そしてついには書類に全身を覆われ、身動きが取れなくなる。タトルの異変に気付いたサムは、タトルを助けようと体に取り付いた書類の紙を剥がしていったが、その書類の塊の中には誰もいなかった。

【未来世紀ブラジル 第47段落】  情報剥奪局の武装部隊が迫ってきた。逃走するサムは教会の中に入った。すると、レストランの支配人だったスピロが現れ、サムの母親のお葬式が始まることを告げた。ピンクのド派手な棺があり、大きなローリー夫人の写真も飾られている。若い男達に囲まれた女性がいる。その女性は 20 年若返ったサムの母親…?顔がジルにそっくりだ!サムは必死に若くなった母親に話しかけていると、情報剥奪局の部隊が教会に侵入してきた。棺が倒れ、ドロドロの死体が外に出てきた。過ってその棺の中に入ってしまったサムは、どんどん落ちていく。

【未来世紀ブラジル 第48段落】  サムは暗いビルとビルの合間に落ちた。すると以前に夢で見た、ボロをまとった虫のような人々がサムに襲い掛かってくる。逃げるサムは、行き止まりの壁にあるドアノブを引き、その中に入った。そこは殺風景な小さな部屋。外では人々がドアを押している。必死にドアを押さえるサム。しばらくすると、車が動くエンジンの音がし、この部屋が移動しているような感じがする。もう外に恐ろしい人々がいる気配はない。サムが部屋の窓の外を見ると、トラックの運転席にいるジルが振り返って微笑んでいるのが見えた。ここはジルがトラックで運んでいるコンテナ・ハウスの中だ。サムはホッと安堵する。サムとジルは都心を離れ、情報省の支配のない大自然に囲まれた場所で、コンテナ・ハウスの中でいつまでも幸せに暮らし…。

【未来世紀ブラジル 第50段落】  幸せな大自然の風景に、突然現れたヘルプマン氏とジャックの顔。ジャックが“ ...He's gone. (片付きました。)”とヘルプマン氏に言う。遠くを見つめるような目のサムが拷問室のイスに座らされている。一人拷問室に残されたサムは、♪ブラジル♪をハミングする。

( Brazil, where hearts were entertaining June
We stood beneath an amber moon
And softly murmured "Someday soon"
We kissed and clung together )〔曲がフェイド・インするので( )の部分は聞こえない。〕
Then, tomorrow was another day
The morning found me miles away
With still a million things to say
Now, when twilight beams the sky above
Recalling thrills of our love
There's one thing I'm certain of
Return I will to old Brazil...

以上。
※本作『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』の幸の感想(画面切替)はここをクリック・・・。

<もっと詳しく>からスペースを含まず18109文字/文責:幸田幸

参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集
       http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
      http://www.trond.com/brazil/
■映画『 未来世紀ブラジル 』の更新記録
2004/07/02新規: ファイル作成
2005/02/25更新: ◆一部テキスト追記と書式変更
2005/03/30更新: ◆データ追加
2005/08/26更新: ◆データ追加
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幸田 幸
coda_sati@hotmail.com
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