タクシードライバー | |
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映画の森てんこ森■映画レヴュー | |
タクシードライバー (1976) | |
TAXI DRIVER | |
映画『 タクシードライバー (1976) TAXI
DRIVER 』をレヴュー紹介します。 映画『 タクシードライバー TAXI DRIVER 』を以下に目次別に紹介する。 ■映画『 タクシードライバー TAXI DRIVER 』の解説及びポスター、予告編 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。 ■映画『 タクシードライバー TAXI DRIVER 』の映画データ ■映画『 タクシードライバー TAXI DRIVER 』の主なキャスト ■映画『 タクシードライバー TAXI DRIVER 』のトリビア ■映画『 タクシードライバー TAXI DRIVER 』のスタッフとキャスト ■映画『 タクシードライバー TAXI DRIVER 』の<もっと詳しく> <もっと詳しく>は映画『 タクシードライバー 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタバレ)です。※ご注意:映画『 タクシードライバー (1976) TAXI DRIVER 』の内容やネタバレがお好みでない方は読まないで下さい。 ■映画『 タクシードライバー TAXI DRIVER 』の結末 ■映画『 タクシードライバー TAXI DRIVER 』の感想 ■映画『 タクシードライバー TAXI DRIVER 』の更新記録 >>「映画解説・レヴュータイトル一覧表」へ(画面の切り替え) |
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幸の鑑賞評価: 8つ星 | |
■映画『 タクシードライバー (1976) TAXI DRIVER 』の解説及びポスター、予告編 | |
タクシードライバー |
■映画『 タクシードライバー TAXI DRIVER
』の解説 映画『 タクシードライバー (1976) TAXI DRIVER 』は、1976 年カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した、マーティン・スコセッシ監督の時代を超えた名作。しかし、俳優陣の若さには時代を感じる。映画『 タクシードライバー 』でNY批評家協会賞やLA批評家協会賞を受賞した、ロバート・デ・ニーロのカッコ良さに耽溺、また、ハーヴェイ・カイテル(『 ピアノ・レッスン (1993) THE PIANO 』『 リトル★ニッキー (2000) LITTLE NICKY 』『 レッド・ドラゴン (2002) RED DRAGON 』等に出演)の長髪ポン引き姿に衝撃!本作『 タクシードライバー 』で演じた 12 歳半の少女売春婦役でアカデミー助演女優賞にノミネートされた、当時 13 歳のジョディ・フォスターの演技は流石。栴檀(せんだん)は二葉(ふたば)より芳(かんば)しってことだろう。『 アンナと王様 (1999) ANNA AND THE KING 』などで見せる、彼女の意思強く理知的な美しさには心奪われる。また、映画『 タクシードライバー 』には、デ・ニーロと 76 年に結婚、 79 年に離婚したダイアン・アボットも出演。 映画『 タクシードライバー 』の舞台は、閉塞感漂う 70 年代アメリカはニューヨーク。ベトナム戦争帰りの孤独な若者トラヴィス(ロバート・デ・ニーロ)は、タクシードライバー。彼は"何か"をやりたいと思っているが…。 |
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。 Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com. Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc. |
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■映画『 タクシードライバー (1976) TAXI DRIVER 』の映画データ | |
上映時間:114分 製作国:アメリカ 公開情報:COL アメリカ初公開年月:1976年02月08日 日本初公開年月:1976年09月 ジャンル:ドラマ/スリラー/犯罪 《米国コピーTagline》On every street in every city, there's a nobody who dreams of being a somebody. |
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■映画『 タクシードライバー (1976) TAXI DRIVER 』の主なキャスト | |
●ロバート・デ・ニーロ as “タクシードライバー”トラヴィス・ビックル 『 1900年 (1976) NINETEEN HUNDRED 』 『 ディア・ハンター (1978) THE DEER HUNTER 』 『 恋におちて (1984) FALLING IN LOVE 』 『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』 『 アンタッチャブル (1987) THE UNTOUCHABLES 』 『 レナードの朝 (1990) AWAKENINGS 』 『 ケープ・フィアー (1991) CAPE FEAR 』 『 恋に落ちたら… (1993) MAD DOG AND GLORY 』 『 RONIN (1998) RONIN 』 『 アナライズ・ユー (2002) ANALYZE THAT 』 『 シャーク・テイル (2004) SHARK TALE 』 『 ミート・ザ・ペアレンツ2 (2004) MEET THE FOCKERS 』 『 ハイド・アンド・シーク/暗闇のかくれんぼ (2005) HIDE AND SEEK 』等に出演、 『 アバウト・ア・ボーイ (2002) ABOUT A BOY 』 『 STAGE BEAUTY (2004) 』製作 |
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■映画『 タクシードライバー (1976) TAXI DRIVER 』のトリビア | |
「映画の森てんこ森」内にあるカンヌ国際映画祭パルムドール作品 『 タクシードライバー (1976) TAXI DRIVER 』 『 ピアノ・レッスン (1993) THE PIANO 』 『 ロゼッタ (1999) ROSETTA 』 『 ダンサー・イン・ザ・ダーク (2000) DANCER IN THE DARK 』 『 息子の部屋 (2001) LA STANZA DEL FIGLIO (伊題) / THE SON'S ROOM (英題) 』 『 戦場のピアニスト (2002) THE PIANIST 』 『 エレファント (2003) ELEPHANT 』 『 華氏911 (2004) FAHRENHEIT 9/11 』 (2005/03/13 現在) |
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【『 タクシードライバー 』のスタッフとキャスト】 | |
監督: マーティン・スコセッシ Martin Scorsese
製作: マイケル・フィリップス Michael Phillips ジュリア・フィリップス Julia Phillips 脚本: ポール・シュレイダー Paul Schrader 撮影: マイケル・チャップマン Michael Chapman 特殊メイク: ディック・スミス Dick Smith 音楽: バーナード・ハーマン Bernard Herrmann 出演: ロバート・デ・ニーロ Robert DeNiro トラヴィス・ビックル シビル・シェパード Cybill Shepherd ベッツィ ピーター・ボイル Peter Boyle ウィザード ジョディ・フォスター Jodie Foster アイリス アルバート・ブルックス Albert Brooks トム ハーヴェイ・カイテル Harvey Keitel スポーツ マーティン・スコセッシ Martin Scorsese シルエットを見る男 レオナルド・ハリス Leonard Harris パランタイン議員 ダイアン・アボット Diahnne Abbott 店の売り子 ▲TOPへ |
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<もっと詳しく> | |
ストーリー展開の前知識やネタバレがお好みでない方は、読まないで下さい。 |
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■映画『 タクシードライバー (1976) TAXI
DRIVER 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー 【タクシードライバー 第01段落】 交通違反 なし 健康 普通 年齢 26歳 学歴 大した事なし 軍歴 1973 年 5 月に海兵隊を名誉除隊 イタリア系の青年トラヴィス・ビックル(ロバート・デ・ニーロ)が、タクシー会社の面接に答えている。ベトナム戦争によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)だろうか、トラヴィスは不眠症だ。そんな自分に適しているだろうからと、彼は常勤のタクシードライバーになる。午後6時〜午前6時( or 8時)まで、週6日( or 7日)の勤務、週給 350 ドル(現在の1ドル 120 円換算で 42,000 円、 76 年当時では不明だが1ドル 300 円換算とした場合 105,000 円)の収入、人種に拘り無く誰でも乗せ、どんな危険な街でも走る。 【タクシードライバー 第02段落】 タクシーを走らせながら、彼が夜のニューヨークで通りすがりに見る人間は、売春婦、街娼、ヤクザ、ホモ、オカマ、麻薬密売人…。トラヴィスからすれば、彼らは全て悪だ。仕事が終わって車庫に戻れば、バックシートの掃除。眠れないので気分転換に行くポルノ映画。そんな彼には親しい友人も恋人もいない。ただただ規則正しく過ぎていく時間の中に自分の足跡を刻み付けたいのか、彼はノートに日記をつけている。「 5 月 10 日、雨は人間の屑どもを舗道から洗い流してくれる…奴らを根こそぎ洗い流す雨はいつ降るんだ?」ベトナム戦争の傷が癒えない 70 年代アメリカ社会が持つ閉塞感は、無意識のうちにトラヴィスの心にもとり付いている。彼は自分の人生にきっかけが必要だと思っていた。 【タクシードライバー 第03段落】 トラヴィスは選挙事務所の前で、気品漂う金髪の美女ベッツィ(シビル・シェパード)を見かけ、一方的に恋に落ちる。彼女は、大統領選に出馬しているパランタイン議員(レオナルド・ハリス)の選挙事務所で働く、いわばキャリアガール。美しくて有能なベッツィのことを、彼女の同僚のトム(アルバート・ブルックス)も慕っているようである。タクシーを事務所前に停め、トラヴィスは高嶺の花である彼女を見つめる。「自分の殻だけに閉じこもり一生を過ごすのはバカげている」というトラヴィス自身の言葉通り、彼は行動派だ。ジャケットを羽織って、ちょっと小奇麗な格好をした彼は、なんと選挙事務所のベッツィを訪ね、堂々と彼女を口説くのだ。まず美人であるということを褒め称えてから、彼女に無遠慮とも思える言葉をかけるが、それが逆に功を奏す。そして見事、彼女の休憩時間に一緒に食事をする約束を取り付ける。美女にはこういう手がいいんだなと、妙に納得。 【タクシードライバー 第04段落】 5 月 26 日、午後 4 時。二人は喫茶店で食事をする。トラヴィスは、彼女との教養の差を感じながらも、ここでも「僕達の間には何かある」なんて淡々と口説く行動派。ベッツィはそんな彼に今までの男性とは違う魅力を感じる。次のデートは映画だったが、あまりにも行動派すぎて、トラヴィスは嫌われてしまう。彼はベッツィをポルノ映画に連れて行ったのだ。(信じられない!)彼女への取り成しの電話も花も、もちろん意味をなさない。トラヴィスの部屋にはつき返された花がいっぱい枯れている。頭にきたトラヴィスは、選挙事務所にいるベッツィに文句を言いに行く。やはり彼女も冷たくてよそよそしい人間だったと、社会から疎外感を感じているトラヴィスは思っているようだが、どんな女の子でもデートにいきなりポルノ映画はイヤだろう。でも、まぁ、この失恋が彼の"きっかけ"となる。 【タクシードライバー 第05段落】 トラヴィスは髭の男の客(マーティン・スコセッシ: 『 ギャング・オブ・ニューヨーク (2001) GANGS OF NEW YORK 』 『 アビエイター (2004) THE AVIATOR 』等の監督)を降ろそうとタクシーをとめた。ところが、その男は怒って、トラヴィスにメーターを止めさせず、乗降記録を書かせなかった。そしてタクシーを駐車した向かいのアパート二階の一室に映る女性のシルエットを見るようにトラヴィスに命令。その髭男曰く、女性は彼の妻で、そのアパートの部屋に暮らす黒人男性と浮気をしているそうだ。後部座席で怒り狂っている髭男は、妻を殺害する残酷な方法をトラヴィスに話す。トラヴィスは彼の言葉で、マグナムといった拳銃に興味を持つ。 【タクシードライバー 第06段落】 深夜、タクシードライバー達が休憩に集まる食堂。ベッツィにフラれて落ち込んでいる彼は、先輩ドライバーのウィザード(ピーター・ボイル)を外に連れ出し、悩み事を相談する。その悩みは明確なものではなかったが、トラヴィスはここから飛び出して何かをやりたいとウィザードに打ち明ける。そんなトラヴィスにウィザードは、人間なんてなるようにしかならないと教える。どうせ負け犬の自分達にはどうにもならないのだから深く考え込まないほうがいいという、タクシードライバー歴 17 年の男の意見を、若いトラヴィスはバカげた話だと受け取る。 【タクシードライバー 第07段落】 6 月 8 日、トラヴィスに転機の日が訪れた。彼は闇ルートで銃を買うことにしたのだ。以前、ドライバー仲間から銃を勧められたときは、断った彼だったが、きっかけと偶然の出会いが突然の変化に結びついたのだろう。彼はディーラーからマグナムを含めた 4 丁の銃とホールダーを一つ買った。それから毎日体を鍛え、射撃場で銃の練習をする。しかしポルノ映画に行く習慣は変わらない。 【タクシードライバー 第08段落】 ベッツィとの仲がまだ良好だったとき、偶然トラヴィスは大統領選挙に出馬しているパランタイン議員たちをタクシーに乗せた。ベッツィが尽力している議員だからだろう、トラヴィスは彼に「応援しています」などのお愛想を言う。パランタインは警戒したのだろうか、気をよくしたのだろうか、運転席の横についているトラヴィスの身分証を確認し、「アメリカが最も頭を痛めている問題は何か?」と運転手に質問をする。トラヴィスはよく分からないといいながらも、悪でいっぱいのゴミ捨て場みたいな街をどうにかしてもらいたいと答える。頭のいいパランタインはそんな抽象的な答えの意味するところを、即座に理解した。それには急激な改革が必要だ。 【タクシードライバー 第09段落】 ピカピカに磨いたウェスタンブーツに白いテープでナイフを装着し、それを素早く取り出す練習をしたり、腕からすぐに銃が出てくるようにしたり、トラヴィスの武装化は着々と進んでいた。彼の部屋にはパランタイン議員のポスターが貼られている。ある程度、計画が巧くいくようになると、人は誰かにそれをほのめかしたいものである。軍隊の上着を着たトラヴィスは、パランタインの屋外演説会に現れ、シークレット・サービスの男に話し掛ける。トラヴィスの服の下には、きっと銃やナイフが装着しているのだろう。自分の部屋に戻ってきたトラヴィスは、シークレット・サービスに怪しまれ、話し掛けられた自分を鏡の前で演じる。NHKでロバート・デ・ニーロのインタヴューを観たときに知ったけど、このシーンは映画史に残る名場面で、" You're talking to me? (オレに何か用か)"というアドリブの台詞は有名なのだそうだ。トラヴィスは日記に書く。「…これ以上我慢できない。あらゆる悪徳と不正に立ち向かう男がいる。絶対に許さん。俺さ( Here is )。」 【タクシードライバー 第10段落】 そしてそれを実行してしまう日がやってくる。立ち寄ったコンビニで強盗に遭遇したトラヴィスは、店主を脅してお金を奪おうとする黒人の男に発砲した。助けられた店主は、心配するな何とかなると銃の許可証を持っていないトラヴィスを逃がし、もう死んでしまっている(?)にも拘わらず、強盗犯を棒で殴りつける。 【タクシードライバー 第11段落】 トラヴィスは両親に結婚記念日と誕生日のお祝いのカードを送ることにした。カードには、政府の仕事をしているから住所は教えられないとか、ベッツィと付き合っているといった嘘が書かれてある。ここで、『 バッファロー'66 (1998) BUFFALO '66 』はヴィンセント・ギャロ版タクシードライバーだったのかなぁと、ちょっと思った。銃を手にしながら、メロドラマを観ているトラヴィスは、足でテレビを倒し、「クソ、チクショウめ」と頭を抱える。何かがトラヴィスの中で爆発しようとしているのか。 【タクシードライバー 第12段落】 トラヴィスの心にはずっと引っかかっていることがある。それは、以前夜の街でタクシーに乗せかけた売春婦の少女(ジョディ・フォスター: 『 アンナと王様 (1999) ANNA AND THE KING 』 『 ロング・エンゲージメント (2004) UN LONG DIMANCHE DE FIANCAILLES (原題) / A VERY LONG ENGAGEMENT (英題) 』等)のことだ。急いでトラヴィスのタクシーに乗り込んできたその少女は、どこかへ行こうとしていた。しかし、追ってきた長髪のいかがわしい男(ハーヴェイ・カイテル: 『 ピアノ・レッスン (1993) THE PIANO 』 『 リトル★ニッキー (2000) LITTLE NICKY 』 『 レッド・ドラゴン (2002) RED DRAGON 』等)に連れて行かれてしまった。その男はトラヴィスのタクシーに1ドル札を置いていった。ずっとトラヴィスは、その1ドル札をなぜか使えないでいた。銃を手にした今、トラヴィスは少女に会いに行くことにした。 【タクシードライバー 第13段落】 トラヴィスは、同じくらいの年齢の女の子と二人でいかにもな格好をして街を歩いているその少女をひっかけた。彼女と一緒に過ごすには、例の長髪のスポーツという男を通さなければならないらしい。短髪にサングラス、ウェスタンブーツにジーンズ、白いTシャツにチェックのシャツを上着のように着ているトラヴィスを見て、スポーツは初め新顔の彼を刑事かと警戒する。 70 年代にしては清潔な格好をしている男を"カウボーイ"とスポーツはからかい、トラヴィスが無害な男かどうか確かめつつ、少女が 12 歳半であることや料金設定について話した。トラヴィスは少女に導かれて、すぐ近くのアパートの階段を登っていった。するとまだ売春ビジネスと関わっている男がいて、トラヴィスに部屋代を請求した。その男は部屋の外で時間を計っている見張りだ。 【タクシードライバー 第14段落】 部屋の中に入るのを戸惑うトラヴィスを少女が招く。服を脱ごうとする少女の行動を止めさせ、彼女に名前を尋ねるトラヴィス。本当の名前は気に入らないと言いたがらなかったが、少女の名前がアイリスだということがわかった。トラヴィスはアイリスにあの夜自分のタクシーに乗ったことについて訊いたが、彼女は何も覚えていなかった。彼女に「俺が逃がしてやるよ」と言ったトラヴィスは、明日の昼1時に個人的に二人で"朝食"を食べる約束をし、握手をして部屋を出て行った。トラヴィスは、廊下にいる時間を計る男に、例の晩にスポーツからもらった1ドル札をチップとして渡した。 【タクシードライバー 第15段落】 商売用のホットパンツではなく長いジーンズをはいたアイリスと一緒に、トラヴィスは街の食堂で昼の朝食を食べた。トラヴィスは、君は子供で家にいて、ちゃんとした服でデートし、学校へ行くべきだとお説教する。そんな彼にアイリスはズレてるというが、トラヴィスもそんな彼女にズレてると言う。私からすると二人ともズレてる。でも彼らからすれば私もズレてるんだろう。アイリスはバーモントの集会所に一緒に行こうと誘うが、トラヴィスはあそこに居る人間は不潔な感じがするので、残念だがと断る。バーモントの集会所って何をする所なんだろう?大統領選挙について集まるところ?それとも左翼の人たちが集まるところ?ウーマンリヴの集会?また、トラヴィスはアイリスにスポーツの悪口を言う。スポーツを信頼しているアイリスは、私達はてんびん座だから合っていると自分たちの関係を擁護し、トラヴィスのことをさそり座だと言う。急にアイリスを救うと言って現れた、 70 年代らしからぬ格好をしたトラヴィスは、彼女にとっては謎めいているからだろう。アイリスにお役人に見えると言われて、嬉しいトラヴィスは、彼女に小遣いをやるからスポーツからはもらうなと言う。 【タクシードライバー 第16段落】 トラヴィスからスポーツの悪口を言われたアイリスは、不安になる。家出した少女を飼い慣らして売春をさせる、街のギャングであるスポーツは、本当に悪い男だ。音楽をかけながらアイリスを抱きしめ、俺はお前と居るときが一番幸せだみたいな甘い言葉をささやく。そうしてまた 12 歳半の少女の心は癒されていく。アイリスはすっかりマインド・コントロールされているのだ。 【タクシードライバー 第17段落】 「今オレの人生はひとつの方向に向かっている。初めての事だ。」トラヴィスは、念入りにブーツを磨き、ベッツィから返された、すでに枯れてしまった花を焼き、アイリスへの小遣いを封筒に入れる。今日は彼が"何か"をやる日なのだ。 ・・・ ▲TOPへ ◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say ! 【タクシードライバー 第18段落】 パランタインの屋外演説会に姿を見せたトラヴィスは、なんとモヒカン狩り。そしてサングラス、軍服の上着にジーンズといった出で立ちだ。演説が終わり、壇上から降りてきたパランタインがシークレット・サービスに守られながら、観衆の間を行く。トラヴィスはパランタインに近づいていき、銃を取るため懐に手を入れた。ところがその仕草がシークレット・サービスに見破られ、追われることになる。必死の思いで自分の部屋に辿り着けたトラヴィスだが、次に彼が足を運んだ場所は、スポーツが売春を行っているあのアパートだった。モヒカン姿のトラヴィスにスポーツは誰だか気付かず、怪しむ。スポーツからタバコの火を投げかけられたトラヴィスは、銃を彼の腹部に向けて撃った。ぶっ倒れるスポーツ。それからアパートの階段に座り込んでから、中に乗り込んでいく。見張りの男、スポーツ、客の男を次々銃で殺していったトラヴィスだが、自らも首や腕を撃たれている。アイリスはこの惨劇に怯え、「殺さないで」と叫び声をあげ、ソファの影にうずくまっている。トラヴィスは銃で自殺を試みるが、すでに弾は使い切ってしまっていた。銃声を聞きつけた警察が部屋にやってきたとき、部屋には血だらけになって死んでいる客の男と見張りの男、上を向いてソファにじっと座るトラヴィス、恐怖に震えるアイリスの姿があった。血がべっとりとついた手を銃のようにして、ゆっくりと3回こめかみを撃つ振りをしたトラヴィスは、もう動かなくなってしまった。トラヴィスは死んじゃったの? 【タクシードライバー 第19段落】 トラヴィスの部屋の壁には、パランタイン議員のポスターではなく、新聞記事の切り抜きと、手紙が貼られている。その新聞記事には、" Taxi Driver Battles Gangsters (タクシー運転手、ギャングと戦う)"" Taxi Driver Hero to Recover (英雄タクシー運転手が回復)"の文字。手紙にはアイリスの両親からトラヴィスへの感謝の気持ちがしたためられている。トラヴィスはギャングに売春をさせられていた少女を、命をかけて救った英雄となっているようだ。 【タクシードライバー 第20段落】 ドライバー仲間と一緒に話をしているトラヴィスの首には傷跡が残っている。あの襲撃事件の時の傷だ。一時は意識不明の重体だったが、今は回復して仕事に復帰している。トラヴィスのタクシーにお客が現れた。それはベッツィだった。バックミラーに映る彼女の姿を見て、トラヴィスは微笑み、「パランタインが指名されたな」と話し掛ける。新聞で事件の記事を読んだベッツィは、またトラヴィスのことが気にかかっているのだろう。彼女を降ろしたトラヴィスは、料金を受け取らずに「じゃあ」と言ってタクシーを夜の街中へと走らせた。 ▲TOPへ 【映画『 タクシードライバー 』感想】 【映画『 タクシードライバー 』感想 第01段落】 トラヴィス・ビックルは誰の心の中にも居る、と思った。トラヴィスはベッツィに言う。「君は一人ぼっちだ。電話、書類、周りの人は意味が無い。君は幸せな人じゃない。友達が必要だ。」階級の違う男の誘いにベッツィが乗ったのは、彼の言葉が孤独な彼女の心の琴線に触れたからだ。この言葉は、トラヴィス自身にも当てはまっている。また、アイリスもその孤独ゆえに家出をし、スポーツの偽りの優しさに騙され、少女売春をしている自分に疑問を持たなくなった。ベッツィは作詞家クリス・クリストファーソンの言葉を引用し、トラヴィスのことを"事実と作り話が半分半分の歩く矛盾"だと評する。しかし、それは彼女自身も含めた現代人の姿なのだ。 【映画『 タクシードライバー 』感想 第02段落】 人類(主に西洋社会)は、様々な圧政や不平等と戦い、現在ある自由を勝ち得てきた。また科学技術の発達にもより、現代人は精神的にも肉体的にも、人類史上最も自由になったと言えるだろう。しかし、自由になった分だけ、昔なら神や権力者に転嫁できた自己の存在に関する問題を、各個人が直接に背負うことになった。一方で、機械化された社会に取り込まれた現代人は、画一化され、搾取され、日々の生活に追われている。個人を重んじる分だけ、人間関係が希薄となるが、誰しもが自分を温めてくれる心許せる相手を必要としている。ヤマアラシジレンマ(人と人の距離が近づけば近づくほど、お互いのエゴイズムで傷つけあう度合いも高くなるが、おたがいに親密になりたいというジレンマのこと。ショーペンハウエルの寓話を引用して、フロイトが最初に論じた)というものだろう。 【映画『 タクシードライバー 』感想 第03段落】 規則的に流れていく時間の中で、現代社会に生きる誰しもが、多かれ少なかれトラヴィスのように孤独や疎外感、不安を抱えている。そこから逃れるために、トラヴィスは自己正当化した犯罪に走った。日々ホームページ作りに勤しんでいる私も、美しくなりたいとダイエットに励む隣のお姉さんも、必死に英単語の暗記をしている向かいの受験生の男の子も、俳句教室に通って専門誌に自分の俳句が載るかどうかに一喜一憂する町内会のオバサンも、みんな根はトラヴィスと一緒のように感じる。それらは、何かに熱中することで、自己の存在意義を確かめたいという、無意識の欲求の現れだ。その気持ちを内に発散させるか、外に発散させるかの違いだと思う。 【映画『 タクシードライバー 』感想 第04段落】 ロバート・デ・ニーロが演じたトラヴィス・ビックルが、孤独な現代人そのものを体現した人物であるからこそ、サイコパスの犯罪者であるにも拘わらず、彼が 70 年代半ばから映画ファンとなった男性達のヒーローとなったのかもしれない。(アルベール・カミュ著『異邦人』のムルソーをカッコいいと思うのに似ているかも。ちょっとトラヴィスにムルソーを感じた。)そのことを強烈に印象付ける事件が、 1981 年のレーガン元大統領暗殺未遂事件である。ジョディ・フォスターファンのジョン・ヒンクリーという当時 20 代半ばの男が、トラヴィスに自分を重ね合わせてしまい、ワシントンDCで大統領に発砲した。彼は女性と巧く付き合えない、空想の世界に住んでいる孤独な男だった。ヒンクリーが使ったモーテルや他の部屋から押収された品物には、ヒンクリーとジョディ・フォスターの会話を録音したテープや彼がジョディに宛てた手紙やレーガン大統領夫妻の写真つき絵葉書などがあった。その手紙には、これからレーガンを撃ちに行く、もう帰ってこられないかもしれないが、ぼくが君のためにこれをしたことを分かって欲しい、という内容のことが書かれていたらしい。 【映画『 タクシードライバー 』感想 第05段落】 ジョン・ヒンクリーのことをヒーローだと思う人は先ずいない。トラヴィスもパランタイン議員の暗殺を行っていれば、ヒンクリーと同じように世間からは変態扱いだったろう。しかし、偶然に議員の暗殺に失敗し、街のギャングの手から少女アイリスを救ったお蔭で、一介のタクシードライバーに過ぎないトラヴィスが一躍英雄となり、好きだった女性の関心も再び得ることが出来るようになる(サイコパスには魅力的な人が多いらしい)。腐った社会が崇めるヒーローは、一皮向けば変態だということなのだろうか。また、悪に立ち向かいたいトラヴィスの標的は、大統領選に出馬する議員であり、少女に売春をさせる街のギャングであった。ベッツィが属する社会の象徴である議員に、彼女に振られた憎しみを転嫁したかったのかもしれないが、議員もギャングも同レベルで悪だってことだ。なんかブラック・コメディの要素も感じる。他にも、人種差別、階級差別、ベトナム戦争、銃社会など、いろんな問題が盛りだくさんなんだけど、まさに 70 年代っぽいバーナード・ハーマンの音楽と共に、映画がシャープに巧くまとまっていると思った。 以上。 <もっと詳しく>からスペースを含まず8713文字/文責:幸田幸 参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集 http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm IMDb allcinema ONLINE Nostalgia.com CinemaClock.com ロバート・K・レスラー(著)「FBI心理分析官」 |
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■映画『 タクシードライバー (1976) TAXI DRIVER
』の更新記録 2002/12/18新規: ファイル作成 :2003/04/04更新: ◆映画や俳優についてリンク 2004/07/12更新: ◆テキストとリンク一部およびファイル書式 2005/03/13更新: ◆一部テキスト追記と書式変更 2005/09/24更新: ◆データ追加 |
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幸田 幸 coda_sati@hotmail.com |
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