娼婦ベロニカ
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娼婦ベロニカ (1998)
DANGEROUS BEAUTY (原題) / A DESTINY OF HER OWN (豪題)
 映画『 娼婦ベロニカ (1998) DANGEROUS BEAUTY / A DESTINY OF HER OWN 』をレヴュー紹介します。

 映画『 娼婦ベロニカ  DANGEROUS BEAUTY 』を以下に目次的に紹介する。
■映画『 娼婦ベロニカ  A DESTINY OF HER OWN 』の解説及びポスター
 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。
■映画『 娼婦ベロニカ  DANGEROUS BEAUTY 』の映画データ
■映画『 娼婦ベロニカ  A DESTINY OF HER OWN 』のあらすじ
■映画『 娼婦ベロニカ  DANGEROUS BEAUTY 』のスタッフとキャスト
■映画『 娼婦ベロニカ  A DESTINY OF HER OWN 』の<もっと詳しく>
 <もっと詳しく>は映画『 娼婦ベロニカ 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタばれ)です。※ご注意:映画『 娼婦ベロニカ (1998) DANGEROUS BEAUTY / A DESTINY OF HER OWN 』の内容やネタばれがお好みでない方は読まないで下さい。
■映画『 娼婦ベロニカ  DANGEROUS BEAUTY 』の結末
■映画『 娼婦ベロニカ  A DESTINY OF HER OWN 』の感想
■映画『 娼婦ベロニカ  DANGEROUS BEAUTY 』の更新記録

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幸の鑑賞評価: 8つ星 
■映画『 娼婦ベロニカ (1998) 』の解説及びポスター
娼婦ベロニカ
娼婦ベロニカ

 映画『 娼婦ベロニカ (1998) DANGEROUS BEAUTY / A DESTINY OF HER OWN / THE HONEST COURTESAN 』の舞台は、1070 年もの間、自由と独立を維持し、ルネサンスの繁栄を謳歌した水の都ヴェニス。東方貿易で栄えた商都は、"娼"都でもあった。
 『 娼婦ベロニカ 』は、 16 世紀、その衰退期に実在した、詩人であり、最初のフェミニストであった高級娼婦、ヴェロニカ・フランコの半生を、マーガレット・ローゼンタールの原作「 The Honest Courtesan 」を基に映画化した作品。当時の風習や絢爛豪華な衣装も見もの。
 原題の「 DANGEROUS BEAUTY (危険な美女)」や日本語題の「娼婦ベロニカ」は、ちょっと映画の主旨とは違うものを想像させる題名になっている。オーストラリアでは「 A DESTINY OF HER OWN (彼女自身の運命)」、イギリスでは原作の題名である「 THE HONEST COURTESAN (本物の高級娼婦)」が題名になっている。
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com.
Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc.
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■映画『 娼婦ベロニカ 』の映画データ
 上映時間:111分
 製作国:アメリカ
 公開情報:FOX
 アメリカ初公開年月:1998年2月20日
 日本初公開年月:1999年10月23日
 ジャンル:ドラマ/ロマンス
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■映画『 娼婦ベロニカ 』のあらすじ
 『 娼婦ベロニカ 』のストーリー...イギリス女優のキャサリン・マコーマック(『 スパイ・ゲーム (2001) SPY GAME 』等に出演)演じる美女ヴェロニカは、友人の兄マルコ・ヴェニエ(ルーファス・シーウェル)と愛し合うようになる。しかし、ヴェニスの名士の子息である彼は、いくら愛していても持参金も地位もないヴェロニカと結婚するわけにはいかなかった。失意のヴェロニカが選んだ道は、高級娼婦。嘗てその道で活躍した母親パオラ(ジャクリーン・ビセット)に手解きされながら、ヴェロニカはヴェニス一の高級娼婦に成長していく…。
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【『 娼婦ベロニカ 』のスタッフとキャスト】
監督: マーシャル・ハースコヴィッツ Marshall Herskovitz
製作: エドワード・ズウィック Edward Zwick
    マーシャル・ハースコヴィッツ Marshall Herskovitz
    アーノン・ミルチャン Arnon Milchan
    サラ・キャプラン Sarah Caplan
原作: マーガレット・ローゼンタール Margaret Rosenthal
脚本: ジャニーン・ドミニー Jeannine Dominy
撮影: ボジャン・バゼリ Bojan Bazelli
音楽: ジョージ・フェントン George Fenton
衣装: ガブリエラ・ペスクッチ Gabriella Pescucci

出演: キャサリン・マコーマック Catherine McCormack ヴェロニカ・フランコ
    ルーファス・シーウェル Rufus Sewell マルコ・ヴェニエ  
    オリヴァー・プラット Oliver Platt マッフィオ・ヴェニエ
    モイラ・ケリー Moira Kelly ベアトリーチェ・ヴェニエ
    ジャクリーン・ビセット Jacqueline Bisset パオラ・フランコ
    ナオミ・ワッツ Naomi Watts ジュリア・デ・レッツッェ
    フレッド・ウォード Fred Ward ドメニコ・ヴェニエ
    ジェローン・クラッベ Jeroen Krabbe ピエトロ・ヴェニエ
    ジョアンナ・キャシディ Joanna Cassidy ロウラ・ヴェニエ
    メリーナ・カナカレデス Melina Kanakaredes リビア
    ダニエル・ラペーン Daniel Lapaine セラフィーノ・フランコ
    ジャスティン・ミセリ Justine Miceli エレナ・フランコ
    ジェーク・ウェバー Jake Weber アンリ王
    サイモン・ダットン Simon Dutton ランベルティ大臣
    ピーター・アイアー Peter Eyre 総督
    グラント・ラッセル Grant Russell フランチェスコ・マルテネンゴ
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ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。
■映画『 娼婦ベロニカ 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー

▼ヴェネチアの歴史とイントロ。
【娼婦ベロニカ ヴェネチアの歴史とイントロ 第01段落】  伝説によると、西暦 452 年にヴェネチアの町は建設されたことになっている。アクィレイア Aquileia やパドヴァ Padua (Padova) 、他の北イタリアの町に暮らす人々は、5世紀の間イタリアを侵略する他民族から逃れる為、潟(ラグーナ)の島々に避難した。彼らは自分達の政府を樹立し、 12 の主だった島々の人民の指導者によって率いられた。名目上、東ローマ帝国 the Eastern Roman Empire の支配下にあったのだが、実質的にヴェネチアには自治権があった。 697 年にヴェネチア人は共和国としてヴェネチアを組織し、ドージェ(元首。映画では総督という字幕がついていた。ピーター・アイアーの役。)を選出した。

【娼婦ベロニカ ヴェネチアの歴史とイントロ 第02段落】  次の世紀においては国内の意見の衝突は政府の方針の妨げになったが、国外からの侵略の脅威がヴェネチア人を団結させた。 836 年のサラセン人による攻撃と 900 年のハンガリー人による攻撃は撃退された。 991 年、ヴェネチアはサラセン人と戦うよりはむしろ彼らイスラム教徒と交易を行う政策を始め、通商条約を締結した。十字軍とその結果として生じたアジアとの貿易が発展したお陰で、ヴェネチアは東方貿易の巨大な商業中心地としての地位を確立する。

【娼婦ベロニカ ヴェネチアの歴史とイントロ 第03段落】  1204 年、ヴェネチア共和国はビザンチン帝国 the Byzantine Empire からの分離により利益を得、地中海地域において政治的に最も強大な権力を持つようになった。富裕な貴族の成長により、彼らによる政治的支配が試され、 13 世紀の終わりには共和国国会(マジョール・コンシーリオ)の改革がなされ、貴族階級が政治を独占することになる。しかし、ヴェネチアの貴族には当時の他国の貴族が持つような特権は無く、彼らが持つ特権は国政への参加のみであったそうだ。ヒーローを求めない現実主義のヴェネチアは、巧みに宗教の介入を避け、君主の出現を阻んだ。そういう当時としては進んだ自由な考えが、この映画のラストにも繋がっていると思う。

【娼婦ベロニカ ヴェネチアの歴史とイントロ 第04段落】  13 世紀と 14 世紀、ヴェネチアは、ライバルであったイタリアの自治都市ジェノア〔ジェノヴァ〕 Genoa との一連の戦争に関わり、 1378-1381 年の戦いで、ジェノアはヴェネチアの優位性を認めなければならなくなる。 15 世紀後半までにヴェネチアは近隣諸国を領土に納め、キリスト教世界において主要な海軍力を持つ都市国家となった。

【娼婦ベロニカ ヴェネチアの歴史とイントロ 第05段落】  しかし、 15 世紀中ごろ、トルコ軍の侵略が始まり、ヴェネチアの繁栄が終わりを告げることになる。それ以来、諸外国や他のイタリアの国々からの攻撃に直面し、ヴェネチアの力は衰えた。そして 1497-1498 年、ポルトガルの航海士ヴァスコ・ダ・ガマ Vasco da Gama が喜望峰 Cape of Good Hope を回るインド航路を発見し、その衰退を加速させた。 1508 年、神聖ローマ帝国 the Holy Roman Empire 、ローマ教皇 the pope 、フランス France 、スペイン Spain 等がカンブレー同盟 the League of Cambrai を結んでヴェネチアに対抗し、ヴェネチアの領土を分割した。ヴェネチアは 1516 年に機敏な外交手腕によってイタリアの領土を回復するが、二度と政治的権力を持つことは無かった。

【娼婦ベロニカ ヴェネチアの歴史とイントロ 第06段落】  1797 年にヴェネチア共和国はナポレオン・ボナパルト Napoleon Bonaparte ( 1769-1821 )によって征服され、およそ 1000 年の歴史に幕を閉じた。ナポレオンはその領土をオーストリア Austria に引き渡した。 1805 年、オーストリアはイタリアのフランス領の国にヴェネチアを明渡すように強いられたが、 1814 年に奪還。一年後、ヴェネチアとロンバルディア Lombardy 〔 Lombardia 〕はオーストリアの支配するロンバルディア・ヴェネチア王国として組織される。 1848 年、ヴェネチア人はイタリア人政治家ダニエーレ・マニン Daniele Manin の下でオーストリアに抵抗し、革命政府を樹立する。しかし、一年後にオーストリアの勢力が回復。 1866 年、7週間戦争 the Seven Weeks' War の後、ヴェネチアは新しく建設されたイタリア王国の一部となる。現在はイタリア共和国 the Republic of Italy のヴェネト州 Veneto の州都となっている。

【娼婦ベロニカ ヴェネチアの歴史とイントロ 第07段落】  『 マーシャル・ロー (1998) THE SIEGE 』『 恋におちたシェイクスピア (1998) SHAKESPEARE IN LOVE 』等を製作したエドワード・ズウィック、『 交渉人 (1998) THE NEGOTIATOR 』『 ブロンド・ライフ (2002) LIFE OR SOMETHING LIKE IT 』『 デアデビル (2003) DAREDEVIL 』等を製作し、『 真夏の夜の夢 (1999) WILLIAM SHAKESPEARE'S A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM 』『 運命の女 (2002) UNFAITHFUL 』等を製作総指揮したアーノン・ミルチャンが製作というハリウッドが描いた、沈みゆく落日であった 16 世紀後半のヴェネチア。ハリウッド映画なので英語で主人公の名前がヴェロニカ・フランコと発音されていたが、イタリア語ではヴェロニカ・フランカと言うみたい。

【娼婦ベロニカ ヴェネチアの歴史とイントロ 第08段落】  経済や政治、学問や芸術が発達していた当時のヴェネチアだが、女性のルネサンスはまだまだだったようだ。娘たちは家で一応の読み書きを習うだけで、一般的に当時のヴェネチア女性は教養が低かった。ヴェネチアで教養の高い女性というと、この映画の主人公ヴェロニカの職業である"コルティジャーナ"という一種の高級芸者なのだ。"コルティジャーナ"とは元々"宮廷の女"という意味らしい。美しい容姿に、音楽や文学といった才能もある彼女達の仕事の内容にはもちろんそういうこともあるが、重要視されたのは、教養ある会話を交わすことだったみたい。ヴェネチアで詩人であった女性たちは、皆コルティジャーナだった。ヴェロニカ・フランカもそうである。

【娼婦ベロニカ ヴェネチアの歴史とイントロ 第09段落】  ヴェネチア共和国の歴史において、女性で政治的影響力を持った人は一人もいないそうだが、だからと言ってこの映画で描かれていたように、女性は国家や家の為に結婚し、一生縛られて暮らす可哀想な存在でもなかったように思う。確かに未婚女性については不自由だったようで、高貴であればあるほど自由が制限された。最高に悲惨なのは結婚できなかった娘で、彼女たちは尼僧院しか行く場所が無かった。映画の中で、持参金がないお陰でマルコと結婚できなかったヴェロニカが尼僧院に行くシーンがあるが、当時は持参金節約の犠牲となった娘が大勢尼僧院に送り込まれたそうだ。そのせいもあって、尼僧院でのスキャンダルは絶えなかったらしい。

【娼婦ベロニカ ヴェネチアの歴史とイントロ 第10段落】  一方、結婚をしたヴェネチア女性は、ビジネスの街に暮らしているので、同時代の他国の女性より公式の場に出る機会が多かったらしい。忙しい夫は家を開けることが多いし、接待は彼女達の重要な仕事だった。ということで、オシャレにも力が入る。映画ではベアトリーチェやジュリアといった既婚女性は黒いジミ臭いドレスを着ていたが、当時、ヴェネチア女性のかなり胸の開いたドレスは有名だったそうだ。また、ヴェロニカがコルティジャーナを目指して体をより美しくしているシーンで、頭部をくりぬいた幅広の帽子を被っているのがあったが、それは髪を陽にさらしてブロンドにする方法みたい。(映画のヴェロニカは元々金髪だったけど。)当時のヴェネチア女性はヨーロッパ中の女性のファッション・リーダーみたいな存在だった。

【娼婦ベロニカ ヴェネチアの歴史とイントロ 第11段落】  また、18 世紀に完成した制度らしいが、それ以前からヴェネチアには"カヴァリエレ・セルヴェンテ(奉仕する騎士)"という女性にとっては嬉しい公認の制度があったそうだ。仕事で忙しいヴェネチアの男たちは、妻を放っておく弊害を考え、若い貴族の男性に妻をエスコートする無料奉仕をさせた。この若い男性たちは、女性特有の雑多な疑問に助言を与えたり、外出時には付き添い、一緒にトランプなどのゲームも楽しんだりするそうだ。そして、どこまでそれが守られたかは分からないが、夫人が寝室に入るのを待って退出したそうである。

【娼婦ベロニカ ヴェネチアの歴史とイントロ 第12段落】  映画では、娼婦という職業を持つ主人公を現代人の眼から見てヒロインとして成り立たせる為に、悲惨に描かれている当時のヴェネチアの結婚生活であるが、海外でガッポリ儲けてきてくれる忙しい夫を持つヴェネチアの妻たちにとっては、「亭主元気で留守がいい」状態で結構楽しい生活なのでは?なんちゃって!

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▽ストーリー(※以下では、英語の映画だったので、ヴェネチアはヴェニス、コルティジャーナはコーティザンと英語読み表記しています。)
【娼婦ベロニカ 第01段落】  1583 年、ヴェニス。煌びやかでセクシーなドレスを着たコーティザン courtesan (高級娼婦)達が数隻のゴンドラに乗って運河を通り、ヴェニスの民衆を歓喜させている。ヴェニス版の花魁道中(おいらんどうちゅう…江戸時代、遊郭で、花魁が新造〔しんぞ〕・禿〔かぶろ〕などを従えて引手茶屋まで客を迎えに行ったこと。また、江戸吉原で正月や八月一日、京都島原で四月二一日などに遊女が盛装して郭〔くるわ〕の中を練り歩いたこと。<「大辞林」より>)といった感じだ。

【娼婦ベロニカ 第02段落】  外の騒々しい音が聞こえる中、部屋の中ではテーブルを囲んで女の子達がお裁縫をしている。その中で、長い金髪に白い肌が美しい、ヴェロニカ・フランコ Veronica Franco (キャサリン・マコーマック)だけは、膝に本を置いてこっそり読書をしている。当時、女性は男性の所有物に過ぎなかった時代。読書は女性には禁じられていた。にも拘らず、本を読み、暑さのせいだろう、ドレスのスカートを膝まで捲り上げている彼女は、利発でおきゃんな女の子のようだ。

【娼婦ベロニカ 第03段落】  彼女は体調が悪い振りをして、友人ベアトリーチェ・ヴェニエ Beatrice Venier (モイラ・ケリー)を連れ、コーティザンたちのお祭りを観に外へ出た。運河に集まった男達たちに向かって、ゴンドラに乗ったコーティザンが愛嬌を振りまく。ヴェロニカは、その男達の中で一際目立っている、ベアトリーチェの兄マルコ・ヴェニエ Marco Venier (ルーファス・シーウェル)が、コーティザンと熱いキスを交わすのを、好奇心と憧れの混じった視線で見つめた。一方、ローマから戻ってきたばかりのマルコも、自宅前で成長した妹の友人を見た時、その美しさに心奪われた。

【娼婦ベロニカ 第04段落】  これはもう恋の予感。その夜、ゴンドラに乗ったマルコはヴェロニカの部屋の下で、マンドリンの弾き語り。喜び急いで彼のゴンドラに向かうヴェロニカ。その日から2人の楽しい恋人の日々か始まるのだが…。ベアトリーチェの結婚式。ヴェロニカは、マルコがローマで見つけてきたというベアトリーチェの結婚相手を見て驚いた。いくらヴェニス総督のいとこでローマ法王の親友で宮廷に顔が利くとしても、花婿が老人だなんて話にならない。ヴェロニカはまだまだ結婚に夢を見ている少女なのだ。

【娼婦ベロニカ 第05段落】  花嫁の両親ピエトロ・ヴェニエ Pietro Venier (ジェローン・クラッベ:『 エバー・アフター (1998) EVER AFTER 』『 理想の結婚 (1999) AN IDEAL HUSBAND 』等に出演)とロウラ・ヴェニエ Laura Venier (ジョアンナ・キャシディ)に導かれ、年若い花嫁と年老いた花婿が皆に見守られて寝室に入ると、結婚式はお開きに。ヴェロニカに視線を送るマルコに、彼の父親ピエトロが「本気になるな。」と耳打ちをする。ヴェニスの名家の嫡男であるマルコも、妹と同様に家の繁栄の為に結婚しなければならない。美しくてもヴェロニカにはヴェニエ家の必要とする地位と家柄とお金がない。マルコは気持ちの高ぶるヴェロニカに真実を打ち明けた。傷ついたヴェロニカはマルコの許を去る。

【娼婦ベロニカ 第06段落】  ベッドで泣き伏す娘ヴェロニカに、母親パオラ・フランコ Paola Franco (ジャクリーン・ビセット)がマルコを取り戻す方法が一つあると話した。それはコーティザンになること。そして母は嘗て自分が最高のコーティザンであったことを初めて娘に打ち明けた。フランコ家は父親がヴェロニカの結婚の持参金をお酒で飲みつぶしてしまったため、経済状況が悪かった。それで兄のセラフィーノ・フランコ Serafino Franco (ダニエル・ラペーン)も出世できずにいる。家を支えるのは、ヴェロニカしかいない。

【娼婦ベロニカ 第07段落】  しかし、理想主義の若い娘であるヴェロニカには、母の申し出は到底受け入れられない。拒否反応を示し、修道女になるほうがマシだと言うヴェロニカだが、実際にパオラに修道院に連れて行かれると、自分には無理であることを悟る。ヴェロニカは母に従った。最初は母に反発しながら、男性の気を引く身のこなしを伝授されるヴェロニカだったが、コーティザンが女人禁制の図書館に入れ、当時では世界一教養のある女性であることを知り、徐々に考えが変わっていく。

【娼婦ベロニカ 第08段落】  そんな娘の心の動きを察知した母パオラは、頭を使って欲望をそそるのが、高級娼婦が高級たる所以だとヴェロニカに教えた。パオラは、マルコを想う様にして、お客にはこの世に彼しかいないと思わせるようにとヴェロニカに伝授。この教えは、ヴェロニカのお祖母さんからパオラが受けついだもの。ヴェロニカの母方の先祖は高級娼婦の家系だったのだ。妖艶な近寄り難いヴィーナスにして、時には従順な女性という男性の憧れの女性になるため、身のこなしから絵画や音楽、ダンスなどの教養を徹底的に学ぶヴェロニカ。流石3代目(?)のヴェロニカは、どんどんそれらを吸収していく。

【娼婦ベロニカ 第09段落】  いよいよデビューの日がやって来た。パオラと一緒にゴンドラでヴェニスの名士が集まるサロンに煌びやかなドレスで姿を現したヴェロニカ。当時の高級娼婦の衣装を再現するのは、『 真夏の夜の夢 (1999) WILLIAM SHAKESPEARE'S A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM 』等のガブリエラ・ペスクッチ Gabriella Pescucci 。このシーンのドレスは普通っぽいが、スカートが短くなった如何にもなドレスもあり、昔の娼婦はこんな格好をしていたんだと面白かった。

【娼婦ベロニカ 第10段落】  他のコーティザンに比べて一際美しいヴェロニカにはすぐに客がついた。初めてのお客はランベルティ大臣 Minister Ramberti (サイモン・ダットン)。別れ際パオラはヴェロニカに言う。「愛してはダメ。逆に支配されてしまう。」大臣に連れられヴェロニカが入った広間には、ヴェニスの総督 The Doge (ピーター・アイアー:『 フロム・ヘル (2001) FROM HELL 』『 マリー・アントワネットの首飾り (2001) THE AFFAIR OF THE NECKLACE 』等に出演)、マルコの伯父であるヴェニスの提督、ドメニコ・ヴェニエ Domenico Venier (『 イナフ (2002) ENOUGH 』『 メラニーは行く! (2002) SWEET HOME ALABAMA 』等に出演)等のヴェニスのお偉方が高級娼婦たちと楽しんでいる。

【娼婦ベロニカ 第11段落】  ヴェロニカはそこでマルコと再会した。美しく着飾り、以前よりも輝いているコーティザンとなったヴェロニカに、マルコはまた近づこうとする。しかし、"支配"されてはいけないので、ヴェロニカは彼に隙を与えなかった。ランベルティ大臣と親しく話をしているヴェロニカを見て、嫉妬の炎が燃え上がったマルコは、ヴェロニカと自分のいとこのマッフィオ・ヴェニエ Maffio Venier (オリヴァー・プラット:『 妹の恋人 (1993) BENNY & JOON 』等に出演)を御歴歴の面前で即興詩の対決をさせる。マルコの腰巾着、マッフィオはパッとしない貧しい詩人。頭の回転の良いヴェロニカは見事に返答し、皆から喝采を浴びる。

【娼婦ベロニカ 第12段落】  昨夜の活躍により、ヴェニスのハイソな男性たちは皆ヴェロニカに夢中になる。もちろんマルコもその一人だが、やはりヴェロニカは彼にはつれない。昨夜のお相手のランベルティ大臣はもちろん、艦隊提督のフランチェスコ・マルテネンゴ Francesco Martenengo (グラント・ラッセル)等もヴェロニカのお得意となる。そして彼女の最も有力なパトロンとなったのは、マルコの伯父のドメニコ・ヴェニエ。病に冒されているドメニコの足を、嫌がることなくヴェロニカが介抱したことがきっかけだ。ヴェロニカのお陰でフランコ家も裕福になり、仕事場の寝室も豪華に改装された。

【娼婦ベロニカ 第13段落】  ヴェロニカへの恋心を捨てることができないマルコだったが、ついに彼も結婚する時がやって来た。父親がロンバルディア Lombardia を領有し、伯母が法王の姪という良家の娘ジュリア・デ・レッツェ Giulia De Lezze (ナオミ・ワッツ)がマルコのお相手だ。ヴェニスのためにマルコはジュリアと愛のない結婚をした。良妻賢母にと育てられてきたジュリアは、マルコにヴェロニカを忘れさせることはできなかった。一方、マルコの結婚に心揺れるヴェロニカは、その思いを詩に託す。その結果、ドメニコの援助で詩集を出版することになる。

【娼婦ベロニカ 第14段落】  しがない詩人のマッフィオはこのヴェロニカの出世を妬ましく思った。マッフィオも美しいヴェロニカを愛していたが、自分には彼女を手に入れるほどの甲斐性はない。愛情が嫉妬に変化した彼は、ヴェロニカが庭園で詩集の出版を発表したとき、彼女を酷く侮辱した。しかし、ヴェロニカも負けてはいない、ウィットのきいた言葉でマッフィオに対抗。お酒で自制心を失っていたマッフィオはヴェロニカが持つ詩集を剣で真っ二つに切った。マルコが叱責し、マッフィオはヴェロニカに謝ったが、今度はヴェロニカが収まらない。マルコの剣を抜き取って、マッフィオに即興詩の対決を挑んだ。

【娼婦ベロニカ 第15段落】  最初は余興のお遊びだったのが、広い庭園で剣を交えながら詩のやり取りをしていくうちに、そうはいかなくなってきた。ヴェロニカの剣を握ってしまったマッフィオの手から血が出た時、詩を忘れて剣の真剣勝負となる。こうなったら断然ヴェロニカの不利かと思ったら、相手は酔っ払い。逃げるヴェロニカを追ってマッフィオはゴンドラに乗ったが、バランスを失い転倒。ヴェロニカは彼に剣を突きつけた。勝負あり!ところが、マッフィオは、マルコ達に助け起こされる時にヴェロニカにパンチを食らわす。怒ったマルコはヴェロニカの代わりにマッフィオを殴り倒した。口から血が出たヴェロニカがゴンドラを降りると、周りの男たちから拍手が上がった。

【娼婦ベロニカ 第16段落】  家に戻り、自分を優しく労わってくれたマルコを想って、沈むヴェロニカ。そんな彼女のもとにマルコが現れる。二人は堰を切ったように愛し合った。しかし、夜も深まり、もうすぐお客である司教がやってくる時間。ヴェロニカは家族を養わなければならないので、愛は誓えないとマルコに話した。彼女を独占したいマルコは援助を申し出るが、ヴェロニカは断った。ヴェロニカはマルコを愛していながらも、彼に妻がいることを受け入れることができない。

【娼婦ベロニカ 第17段落】  夜半頃、ヴェニスの街に鐘が鳴り響いた。スルタンの艦隊がマルタ沖にやって来たのだ。ヴェニスの政治家たちは庭園に集まり、状況を確認。その中には、女性で国政決定の場に出ることを許されたコーティザンであるヴェロニカの姿もある。彼女を見つめるマルコを、父ピエトロが諌めた。夫マルコに女性の影を感じた妻ジュリアがピエトロに相談したようだ。しかし、恋に燃えるヴェネチア男を止めることはできない。マルコはヴェロニカを追った。

【娼婦ベロニカ 第18段落】  マルコの真摯な気持ちに心打たれたヴェロニカは、二人の状況を受け入れ、マルコへの愛を貫くことにした。ヴェロニカはお客の予約を全部キャンセルし、「男を愛せば、捨てられる。」と言う母親を置いて家を出た。彼女はマルコが用意した城で彼と一緒に暮らした。しかし、そんな2人の幸せな日々に、戦争が影を落とす…。

【娼婦ベロニカ 第19段落】  キプロスに終結しているトルコ軍の脅威に対して、ヴェニスはフランス艦隊の援護を必要としていた。そのフランスのアンリ王 King Henry (ジェーク・ウェバー)がヴェニスを訪れた。ヴェニスは何としてもこの年若いフランスの国王に援軍の約束を取り付けなければならない。アンリ王がヴェニスに要求した接待は、その有名なコーティザン。しかも沢山いるヴェネチアン・ビューティーの中から王が選んだのは、ヴェロニカだった。ヴェロニカは後ろの方に隠れていたのだが、やっぱりその美しさは王の目にとまってしまった。マルコを愛するヴェロニカは戸惑いながらも、お国のためにフランス王の寝室へ上がった。

【娼婦ベロニカ 第20段落】  こういう場合って、王様の泊まっているお城の寝室に、高級娼婦が泊まりに行くのかなぁと思っていたのだけど、王様が高級娼婦の家に泊まりに来るみたい。ヴェロニカは自宅の豪華な寝室でアンリ王を接待する。ところが、若い王様は倒錯趣味。ヴェロニカの顔にナイフを突きつけた。でも大丈夫。コーティザンとして天賦の才能を持つヴェロニカは、王の悲しみを理解し、一晩の快楽を彼に提供することができた。気持ちが満たされたアンリ王は、戦艦 100 隻の援軍を約束。ヴェニス全体が、国を救ったコーティザンとしてヴェロニカを称えた。しかし、マルコは納得がいかない。彼はヴェロニカに許しを与えないまま、戦場の海へと行ってしまった。

【娼婦ベロニカ 第21段落】  夫を戦場に送り出したヴェニスの妻たちは、戦況を訊くため、ヴェロニカを呼び出した。ヴェロニカが訪れた部屋には、自分のお客たちの妻がズラリと座っている。彼女たちは、キプロスがどこにあるのかも、何のために戦争をしているのかも分からない。その上、正妻である自分達が妾のヴェロニカに、夫の安否を尋ねなければならないなんて、屈辱だったに違いない。プライドからマルコの無事を尋ねることができないジュリアは、夫達が何故ヴェロニカの許に通うのかと怒りを露わにし、ヴェロニカを蔑んだ。カチンときたヴェロニカはコンポートのバナナを取り上げ、バナナのという意味のラテン語(当時の共通語)を教え、此れ見よがしにそれを頬張った。ヴェロニカのプライドも高い。しかし、退出を促がされたにも拘らず、ヴェロニカは去り際にジュリアにマルコの無事を教えてあげるのだった。

【娼婦ベロニカ 第22段落】  夜、昼間の出来事で思うところのあった友人ベアトリーチェは、ヴェロニカを訪ね、一緒にゴンドラに乗っていた。ヴェニスと家の為に結婚して子供を儲けたベアトリーチェは、ヴェロニカの自由な人生に憧れていた。自分の娘をコーティザンに育てて欲しいと無謀な頼みをする彼女に、ヴェロニカは街の場末の光景を見せた。そこには輝きを失った高級娼婦たちの悲惨な生活がある。しかし、当時の女性の自由の代償がどれほどのものか実感できないベアトリーチェは、神と国家に従うだけの悔いの残る人生は地獄よりも残酷だと言い切った。

【娼婦ベロニカ 第23段落】  戦争による疲弊とペストで、ヴェニスの繁栄は失われた。嘗ては見向きもされなかった狂信的な修道士が街のオピニオン・リーダーとなり、ヴェニス衰退の悪徳の原因として、コーティザンは迫害を受けるようになる。戦争から戻って来たばかりのマルコは、ヴェニスの荒廃ぶりに驚いた。病が街全体を覆い、広間では公開処刑されたコーティザンの姿。不安に駆られたマルコはすぐにヴェロニカの家を訪ねた。すると、彼女の家にはペスト患者がいることを示す×のマークと黒い布が。マルコが感染の恐怖を顧みず、家の中に入ろうとすると、ヴェロニカが洗濯物を持って外に現れた。以前とは違って、彼女は地味な黒いドレスを纏い、面窶(おもやつ)れしていたが、マルコはヴェロニカへの愛を確信した。二人は抱き合い、お互いの無事を喜んだ。

【娼婦ベロニカ 第24段落】  ヴェロニカの家のペスト患者は母パオラだった。パオラはヴェロニカに許して欲しいと告げ、この世を去った。母親の遺体をゴンドラに移したヴェロニカに民衆が襲い掛かる。マルコは剣を振りかざしてヴェロニカを守った。ところが、すぐにまたヴェロニカに不運が襲い掛かる。コーティザンの彼女は、宗教裁判に掛けられることになったのだ。マルコはヴェニスの評議員であるのだが、教会に口出しすることはできない。ヴェロニカは牢獄に入れられた。

【娼婦ベロニカ 第25段落】  ヴェニスが戦争と疫病に見舞われたのは神の怒りだとした当時の人々は、ヴェニスを堕落させた魔女としてコーティザンをスケープゴートにした。力を失ったヴェニスは、教会に抵抗することができない。嘗てヴェロニカを庇護した男たちは、誰も彼女を助けようとはしなかった。人々にやじられ、唾を掛けられて裁判に出廷するヴェロニカ。フランスからの援軍を得た時に、ヴェロニカを国の恩人と称えたのとは大違いだ。教会側の尋問官は、ヴェロニカに恨みを持つマッフィオ。ヴェロニカへの不毛の愛に疲れた彼は、狂信的な修道士に導かれ、キリスト教に帰依していた。彼の酷い尋問にマルコは異議を申し立てるが、もちろん聞き入れられる訳が無い。裁判の初日はヴェロニカに圧倒的不利に終わり、判決は翌日に言い渡されることに。

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◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。
 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say !


【娼婦ベロニカ 第26段落】  マルコはヴェロニカの牢獄を訪ね、死刑を免れる為に罪を認めることを勧めた。しかし、自分を魔女だと認めることは、ヴェロニカにとってはこれまでの人生を否定することだ。生活の為に仕方なく始めた仕事だったが、当時の女性にとっては、コーティザンは男性と同じような権利を得ることのできる唯一の職業。確固たるポリシーを持って仕事をしていたヴェロニカは、ルネサンスの所謂キャリア・ウーマンかも。彼女は癒しを与えることのできるこの職業を恥じてはいなかった。本当に愛するマルコに対しては、本妻ではなく、愛人であることを悩んだりするが、だからこそ自分の誇りを失いたくは無かった。ヴェロニカはマルコの提案を断った。

【娼婦ベロニカ 第27段落】  翌日の裁判でヴェロニカは罪を認めると告白した。ヴェロニカの罪は、持参金が無い為に愛する男性と結婚できなかった自分が、母親の勧めでコーティザンとなり、権力に諂(へつら)い多くの男性とベッドを共にしたこと、妻の従順ではなく、娼婦の自由を選んだが、最愛の人を見つけ、今も彼を愛し続けていること。そしてヴェロニカは男尊女卑の世の中を批判する。教会の裁判官は、途中ヴェロニカに告白を止めさせようとするが、マルコは法と正義の下にヴェニスの総督に告白を続けることを要求した。総督は教会の顔を立てながら、マルコの要求を認める。

【娼婦ベロニカ 第28段落】  自分の人生を後悔しないと言い切ったヴェロニカを、裁判官は魔女と呼んだ。判決が下されようとした時、マルコはヴェロニカの共犯者だと告白した。兄の勇気ある行動に心撃たれたベアトリーチェも、「都の女は皆魔女よ。」と傍聴席から立ち上がる。確かにベアトリーチェやジュリアのような高貴な女性も結婚という名のもとに、国家や家の為に身売りしたようなものだ。マルコは、傍聴席にいるヴェロニカを愛した男たちに共犯者であることを認め、立ち上がるように鼓舞した。事態を収拾するため、裁判官はヴェロニカに共犯者の名前を教えれば、命を助けると言う。彼女はマルコの思いを無視し、自分には共犯者はいないと供述。傍聴席のヴェロニカのお客たちも立ち上がろうとしない。

【娼婦ベロニカ 第29段落】  唯一人罪を告白するマルコが引っ立てられようとしたとき、ランベルティ大臣が静かに立ち上がった。するとフランチェスコ・マルテネンゴ艦隊提督が続き、次々と傍聴席から多くの男達が起立した。マルコがヴェニスの司教にも起立を仄めかすと、困った司教は隣に座る裁判官に、ヴェロニカの裁判は勇み足だったのではと進言。呆れる裁判官に、娼婦を裁けば教会の名が汚れると、総督がフォロー。ヴェロニカの件はヴェニスに託されることになった。湧き上がる法廷で、ヴェロニカとマルコは緊(ひし)と抱き合った。

【娼婦ベロニカ 第30段落】  高級娼婦の時代は終わった。詩人ヴェロニカ・フランコは自宅を宗教裁判の犠牲者に開放し、生涯マルコへの愛を貫いたそうだ。

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▼感想
【娼婦ベロニカ 感想 第01段落】  原題の「 DANGEROUS BEAUTY (危険な美女)」や日本語題の「娼婦ベロニカ」は、ちょっと映画の主旨とは違うものを想像させる題名になっている。オーストラリアでは「 A DESTINY OF HER OWN (彼女自身の運命)」、イギリスでは原作の題名である「 THE HONEST COURTESAN (本物の高級娼婦)」が題名になっている。各国で題名が色々異なるのは、その内容が誤解されることがあるからだろう。アメリカや日本の題名は、まだ価値観のしっかりしていない子供が観ない様にとの配慮ではないかと思う。結婚という制度の欺瞞や、妻をほったらかして愛人との愛を貫く男性が良い様に描かれているのは、子供には難ありだろう。

【娼婦ベロニカ 感想 第02段落】  アメリカでの題名は、日本ではサンドラ・ブロック Sandra Bullock (『 トゥー・ウィークス・ノーティス (2002) TWO WEEKS NOTICE 』『 ヤァヤァ・シスターズの聖なる秘密 (2002) DIVINE SECRETS OF THE YA-YA SISTERHOOD 』等に出演)主演の『 デンジャラス・ビューティー (2001) MISS CONGENIALITY 』『 デンジャラス・ビューティー2 (2005) MISS CONGENIALITY: ARMED AND FABULOUS 』とカブッている。偶然だろうけど。

【娼婦ベロニカ 感想 第03段落】  結婚を契約だと娘に話すパオラをジャクリーン・ビセットが演じるのは、なんか納得。 1960 年代から美貌の女優として有名なビセットは、ロマンスの相手には事欠かないようなのだが、結婚しない女性だ。彼女もパオラのような結婚観を持っているのかなぁ。彼女は 10 代の頃、硬化症と診断された母親を看病し、両親が離婚した時は病気の母親を支える為に働きに出たそうだ。(因みに彼女の初めての仕事は、チャイニーズ・レストランのウェイトレス。) この経験が自分を強くしたとビセットは語っている。映画の中で、パオラが美貌では自分に及ばないとヴェロニカに言う台詞があるが、確かにそうだと若い頃のビセットの写真を見て思った。

【娼婦ベロニカ 感想 第04段落】  しかし、主演のキャサリン・マコーマックももちろんキレイ。この映画は彼女が一番美しく観える映画じゃないかなぁ。美人で知的で官能的というヴェネチアの高級娼婦は、ある意味、芸術品みたいなものだったのかなと思う。美しい女性は国の宝なのだから、料金を頂いて、一般公開しようということなのかも。それにしても世の中は美人が得なようにできている。

以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず13207文字/文責:幸田幸
参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集
       http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
      MSN Learning & Research - Venice (Italy)
      http://encarta.msn.com/encnet/refpages/refarticle.aspx?refid=761562189
      新潮社(著)塩野七生「海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年 上」
■映画『 娼婦ベロニカ 』の更新記録
2003/05/30新規: ファイル作成
2005/03/09更新: ◆一部テキスト追記と書式変更
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幸田 幸
coda_sati@hotmail.com
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