フロム・ヘル
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フロム・ヘル (2001)
FROM HELL
フロム・ヘル
フロム・ヘル
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【『 フロム・ヘル (2001) FROM HELL 』の解説】
  映画『 フロム・ヘル (2001) FROM HELL 』を紹介します。映画『 フロム・ヘル (2001) FROM HELL 』は、1888 年にイギリスで起こった切り裂きジャックの連続殺人事件を題材にしたアラン・ムーアのグラフィック・ノベル「フロム・ヘル」( 1999 )をアレンとアルバートの双子のヒューズ兄弟が 2001 年に同名映画化した作品。『 フロム・ヘル 』主演のジョニー・デップ(『 ショコラ (2000) CHOCOLAT 』『 パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち (2003) PIRATES OF THE CARIBBEAN: THE CURSE OF THE BLACK PEARL 』等)自身は‘切り裂きジャック’オタクであるが、直観力の鋭いミステリアスなフレッド・アバーライン警部を演じている。いつも綺麗な顔立ちのジョニー・デップだが、この映画『 フロム・ヘル 』ではとくにカッコよく思えた。ハリー・ポッターのハグリット、ロビー・コルトレーンも、アバーライン警部を支えるピーター・ゴットレイ巡査部長を好演。刑事物サスペンスにはこういうキャラクターがあると光るな。ヘザー・グレアム(『 ブギーナイツ (1997) BOOGIE NIGHTS 』『 N.Y式ハッピー・セラピー (2003) ANGER MANAGEMENT 』等)は、やつれた娼婦の役だから仕方がないけど、ちょっとやつれすぎかなぁと思った。でも可愛いことに変わりはない。
 映画『 フロム・ヘル 』の題材は、ヴィクトリア朝末期のイギリスを震撼させた切り裂きジャック。5人の娼婦が次々と猟奇連続殺人事件の被害者に。その事件を追うフレッド・アバーライン警部は、アヘン中毒だが幻覚で事件の真実を見ることのできる特殊能力を持つ。そんな彼が事件を探って行くと、意外な事実が明るみに…。
 因みにタイトルの『 フロム・ヘル 』は「地獄から」という意味だ。
映画『 フロム・ヘル (2001) FROM HELL 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタばれ)ご注意:『 フロム・ヘル (2001) FROM HELL 』の内容やネタバレがお好みでない方は読まないで下さい。
映画『 フロム・ヘル 』、切り裂きジャック Jack the Ripper
映画『 フロム・ヘル 』のストーリー
映画『 フロム・ヘル 』の感想(ネタバレご注意)
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■「映画の森てんこ森」内にあるサスペンス・ホラー映画レヴュー
ナインスゲート (1999) THE NINTH GATE
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“アイデンティティー” (2003) IDENTITY 』
マーダー・ライド・ショー (2003) HOUSE OF 1000 CORPSES
シークレット・ウインドウ (2004) SECRET WINDOW 』等があります。
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
■『 フロム・ヘル (2001) FROM HELL 』のデータ
 上映時間 124 分
 製作国 アメリカ
 公開情報 FOX
 初公開年月 2002/01/19
 ジャンル サスペンス/ホラー

 《公開時コピー》伝説を超える恐怖。
【『 フロム・ヘル 』のスタッフとキャスト】
監督: アルバート・ヒューズ Albert Hughes
    アレン・ヒューズ Allen Hughes
製作: ジェーン・ハムシャー Jane Hamsher
    ドン・マーフィ Don Murphy
製作総指揮: トーマス・M・ハメル Thomas M. Hammel
    アルバート・ヒューズ Albert Hughes
    アレン・ヒューズ Allen Hughes
    エイミー・ロビンソン Amy Robinson
コミック原作: アラン・ムーア
    エディ・キャンベル
脚本: テリー・ヘイズ Terry Hayes
    ラファエル・イグレシアス Rafael Yglesias
撮影: ピーター・デミング Peter Deming
音楽: トレヴァー・ジョーンズ Trevor Jones
歌 : マリリン・マンソン Marilyn Manson

出演: ジョニー・デップ Johnny Depp フレッド・アバーライン警部
    ヘザー・グレアム Heather Graham メアリ・ケリー
    イアン・ホルム Ian Holm ウィリアム・ガル卿
    ジェイソン・フレミング Jason Flemyng ネットリー
    ロビー・コルトレーン Robbie Coltraine ピーター・ゴットレイ
    スーザン・リンチ Susan Lynch リズ・ストライド
    レスリー・シャープ Lesley Sharp ケイト・エドウズ
    テレンス・ハーヴェイ Terence Harvey ベン・キドニー
    カトリン・カートリッジ Katrin Cartlidge アニー・チャップマン
    イアン・リチャードソン Ian Richardson チャールズ・ウォーレン卿
<もっと詳しく>
ネタばれ御注意!
 このレヴューは「テキストによる映画の再現」を目指して作文しています。よって、ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。
■映画『 フロム・ヘル (2001) FROM HELL 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー

 まず、本作『 フロム・ヘル (2001) FROM HELL 』の「テキストによる映画の再現」レヴューに入る前に、切り裂きジャックについて少し触れてみようと思う。

【映画『 フロム・ヘル 』、切り裂きジャック Jack the Ripper 】
 切り裂きジャック( Jack the Ripper )の事件が起こったのは、 1888 年の8月 31 日から 11 月9日にかけてである。スコットランド・ヤードの懸命の捜査にも拘らず、結局犯人は捕まらず、当時としては前例のない残虐な事件のためか、今もこんな映画ができるくらいの伝説となっている。人々の恐怖はマスコミにより煽動され、映画にも出てきたように警察を嘲笑する手紙が数通届いた。誰が犯人なのか。どうして殺人が急にやんだのか。それは謎に包まれたままだ。

 有力な容疑者として考えられている人を挙げてみる。まずは、ヴィクトリア女王の一番年上の孫クラレンス公。この映画のアルバート・ヴィクター・エドワード殿下のことだと思う。彼は 1892 年のインフルエンザの大流行で亡くなったとされているが、切り裂きジャックの事件を研究する人たちの間では、死因は梅毒であるとか、王室の人が梅毒で死ぬなんてとんでもないので、王室の侍医が毒殺したとかということになっているらしい。そして、目撃者の語る犯人像に近いという男子校教師のモンターギュ・ジョン・ドルイット。この映画にも出てくる王室主席医師のウィリアム・ガル。黒魔術をしていたというジャーナリストのロズリン・ドンストン医師。FBIの行動科学科の元特別捜査官ジョン・ダグラス氏が、 1988 年 10 月にイギリスで放映されたTV番組「ジャック・ザ・リッパーの秘密の身元」で切り裂きジャックをプロファイルしたところによると、一番犯人らしいと思われた人物は、精神病院の入退院を繰り返していた貧しいポーランド移民アーロン・コミンスキーという男らしい。この映画では誰が犯人なのかは、下記のストーリーを読んでからか、実際に映画を観てからのお楽しみだが、映画なのでやっぱりドラマチックになるような犯人を選んでいる。プロファイラー幸的には、やっぱり元FBI特別捜査官の意見を取るかな。

【映画『 フロム・ヘル 』のストーリー】 

【フロム・ヘル 第01段落】  One day men will look back and say I gave birth to the twentieth century.  Jack the Ripper-1888
 後世の人々は語るだろう。20世紀を生んだのは私だと。  切り裂きジャック1888年

【フロム・ヘル 第02段落】  1888年、ヴィクトリア朝末期のロンドンはイースト・エンドにある貧民街ホワイトチャペル地区。ロシアやポーランドから迫害を逃れてやってきたユダヤ人の多い地区でもある。ガス灯のともるその街角に、8歳のときアイルランドからイギリスに渡ってきた赤毛の美しい娼婦、メアリ・ケリー(ヘザー・グレアム:
ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間 (1992) TWIN PEAKS: THE LAST SEVEN DAYS OF LAURA PALMER
ブギーナイツ (1997) BOOGIE NIGHTS
オースティン・パワーズ:デラックス (1999) AUSTIN POWERS: THE SPY WHO SHAGGED ME
フロム・ヘル (1994) FROM HELL
N.Y式ハッピー・セラピー (2003) ANGER MANAGEMENT 』等)が立っている。この時代の女性にはもちろん人権などなく、特に貧しい女性の場合は人間として扱ってもらえない。メアリや彼女の5人の娼婦仲間たち、その他大勢の娼婦達は、いくらお客をとっても町のギャングのニコル組に吸い上げられ、その日の暮らしがやっとの状態だ。まさに生き地獄。

【フロム・ヘル 第03段落】  彼女達の中のラッキー・ガール、アン・クルックが赤ん坊のアリスを抱いて、朝の身づくろいをするメアリたちのところにやって来た。富豪の男アルバートに見初められたアンは、彼との間に子供も設け、幸せに暮らしているようだ。絵を売りにフランスに行っていた夫が戻ってくるのを温かく迎えるために、赤ん坊をメアリたちに預けにきたのだ。ショバ代を払わなければならないので、赤ん坊を預かるのは無理だとメアリが言うと、アンはアルバートからお金を工面すると請合ってくれた。少し希望の光が見えかけたと思っていた矢先、メアリは仲間のマーサと一緒に、アンとアルバートが何者かに別々の馬車に乗せられ、クリーヴランド通りの彼らのアパートから連れ去られるのを目撃する。何が彼らに起こったのだろう?あの男達は何者?何か物凄い危険なことに違いない。メアリは赤ん坊をアンの両親のところに預けに行くため、マーサと別れた。そして伝説の切り裂きジャックの惨劇が始まる。

【フロム・ヘル 第04段落】  アヘン窟にピーター・ゴットレイ巡査部長(ロビー・コルトレーン:
『 007/ゴールデンアイ (1995) GOLDENEYE 』
007/ワールド・イズ・ノット・イナフ (1999) THE WORLD IS NOT ENOUGH
アリス・イン・ワンダーランド/不思議の国のアリス (1999) ALICE IN WONDERLAND
フロム・ヘル (1994) FROM HELL
ハリー・ポッターと賢者の石 (2001) HARRY POTTER AND THE SORCERER'S STONE / HARRY POTTER AND THE PHILOSOPHER'S STONE
ハリー・ポッターと秘密の部屋 (2002) HARRY POTTER AND THE CHAMBER OF SECRETS
ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 (2004) HARRY POTTER AND THE PRISONER OF AZKABAN 』等)が二人の警官を引き連れてやってきた。

【フロム・ヘル 第05段落】  アヘン常習者のフレッド・アバーライン警部(ジョニー・デップ:
プラトーン (1986) PLATOON
シザーハンズ (1990) EDWARD SCISSORHANDS
妹の恋人 (1993) BENNY & JOON
GO!GO!L.A. (1998) L.A. WITHOUT A MAP 』
ナインスゲート (1999) THE NINTH GATE
スリーピー・ホロウ (1999) SLEEPY HOLLOW
ショコラ (2000) CHOCOLAT
『 ロスト・イン・ラ・マンチャ (2001) LOST IN LA MANCHA 』『 ブロウ (2001) BLOW 』
フロム・ヘル (2001) FROM HELL
パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち (2003) PIRATES OF THE CARIBBEAN: THE CURSE OF THE BLACK PEARL
レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード (2003) ONCE UPON A TIME IN MEXICO
シークレット・ウインドウ (2004) SECRET WINDOW
チャーリーとチョコレート工場 (2005) CHARLIE AND THE CHOCOLATE FACTORY 』等、※ジョニー・デップについてもっと詳しくはこちら...。04/06/26リンク更新)を連れ出すためだ。ゴットレイ巡査部長はアバーライン警部を軽蔑してはいない。アヘンで紛らわしたい心の傷が警部にあることを知っていたし、労働者階級にも拘わらず若くして今の地位にある警部の能力に信頼をおいているからだ。アバーライン警部には幻覚を通して真実を見ることができる能力があった。アヘンの幻覚から目覚めた時、アバーライン警部は巡査部長に尋ねた。「ペチコートは血まみれか?」警部は幻覚の中で、貧民街ホワイトチャペルで起こる惨たらしい殺人を目撃していた。

【フロム・ヘル 第06段落】  被害者の娼婦、マーサ・タブラムはノドを切る前に陰部を切除されて殺された。検死医が遺体の説明をせずに去ってしまうほどの残酷さだ。しかし、彼女はアバーライン警部が幻覚で見た女性ではなかった。また同じような事件が起こるに違いない。

【フロム・ヘル 第07段落】  メアリ達はパブ「テン・ベルズ」で、アンとアルバートのことやマーサのことを話し合っていた。アンたちのことは推測の仕様がないが、マーサはギャングのニコル組の仕業だと彼女達は思っていた。早く彼らにお金を払わないと、自分達も同じ目にあうかもしれない。彼女達はいつもより多く客をとることに決めた。その決意が自分たちの死を早めることも知らずに。

【フロム・ヘル 第08段落】  通りで次の被害者ポリーが見つかった。周囲に血しぶきが無く、昨夜は雨だったにも拘らず服が濡れていないことから、アバーライン警部はどこか別の場所で殺されたと推測する。それに幻覚から犯人は複数犯に違いない。遺体の下に、当時は高価だったブドウの軸が見つかった。遺体の口からはアヘンとブドウのにおいがする。こんな高価なものがこの地域の住民や娼婦の手に入るのか?この事件では、犯罪者と言えば下層貧民だとする従来の考え方を変えなければならないかもしれない。この遺体を見て、若い検死医は気絶し、ベテランのほうも気持ち悪くて見ることもできない。この遺体は前のとは違う。入念で緻密な殺され方は初めてのケースだ。その上、臓器が持ち去られている。

【フロム・ヘル 第09段落】  アバーライン警部は警視総監チャールズ・ウォーレン卿(イアン・リチャードソン)に報告するが、いくら猟奇的でも貧民街で起こる娼婦の殺人事件に総監は真剣でない。逆に娼婦の掃除に役立つとまで言う。そして上流階級を疑おうとするアバーライン警部の考えは受け入れず、彼の特殊能力を聞き知っている総監は、証拠もなしに捜査を進めてはいけないと釘をさすのだった。

【フロム・ヘル 第10段落】  殺された娼婦の仲間から話を訊き出そうと、ポリーの葬儀に現れたアバーライン警部とゴットレイ巡査部長。しかし、娼婦達は二度の悲惨な事件を止めることができなかった警察に非協力的だ。それに彼女達にとっては、犯人はニコル組だと明らかだった。正式に警察に証言してしまうと、報復されるかもしれない。何故こんな簡単なことが警察にわからないのか。気丈なメアリは、「…あんたが役立たずなのは何故?頼りないったら」とアバーライン警部に言い捨てて去る。しかし、二人はお互いにどこか惹かれあっているのを感じる。

【フロム・ヘル 第11段落】  イースト・エンドの安アパートの一室で休む娼婦達。アニー(カトリン・カートリッジ)が、アンたちをさらったのは役人かもしれない、と言い出す。なぜなら彼らはヒゲも剃って身なりもよかったから。役人批判なら新聞は飛びついてくる。このネタを売ってお金を手に入れようとアニーは提案するが、メアリは警部に相談しようと言う。そんなことを話し合っているときに、家主が現れ、1人分の家賃で4人もいると怒り、彼女達を追い出す。こうなったら危険でも夜の街に立って商売するしかない。彼女のうちの誰かがまた殺される。

【フロム・ヘル 第12段落】  邸宅の一室で、蓄音機から流れる不気味な音楽を聞きながら、血の滴る肉を食べる紳士がいる。グラスにはアヘンが注がれる。その部屋の壁には画家ウィリアム・ホガーズが描いたかなりエグい絵である「 The Rewards of Cruelty 」( 1751 )。その邸宅の外で御者のネットリー(ジェイソン・フレミング)が、主人の出発をまんじりともしない様子で待っている。白い手袋、シルクハットにマントと完璧な装い、ナイフセットを入れた医療用バッグを持って紳士は馬車に乗って出かけた。そのナイフセットの箱には、コンパスと定規のフリーメーソンのマークが付いている。

【フロム・ヘル 第13段落】  ホワイトチャペル地区でネットリーが声をかけたのは、アニー。ネットリーは自分の主人がアニーを欲しがっていると言葉巧みにアニーを誘い、ブドウで彼女をつった。高価な食べ物に喜んだアニーは、金持ちの客に違いないといそいそと馬車に乗る。馬車の中でブドウとアルコールを口にしたアニーは、これから自分を待ち受けている運命も知らずに、すっかりデキあがってしまっている。馬車を降り、ネットリーの指示通りに通路の奥へと入っていった。良心の呵責に耐えかねるようなネットリーの顔。ナイフを突き刺す音が聞える。

【フロム・ヘル 第14段落】  アニー・チャップマンの惨い死体の周りには、捜査にあたる警察、新聞記者が集まっている。そして建物の窓から不安そうな面持ちでその光景を眺めている住民たち。なかなか犯人が捕まらないことに、住民の警察への不満も高まっている。アバーライン警部は幻覚で彼女が殺されるのを見ていた。アニーもブドウを餌に捕らえられ、手口はポリーと時と同じだが、殺害方法はより残虐になっている。内臓は肩や首に巻かれ、取られた内臓も多い。この入念で精密な殺人は儀式だ。彼女の足元には五角形にコインが並べられていた。アニーを哀れに思った彼は、彼女のまぶたを閉じさせてその上にコインを置いた。「コインの迷信ですか」と尋ねるゴットレイ巡査部長に、「船賃だ。死者の国に渡る船の船頭に渡す。もし渡さないと、あの世に行けず、永遠にさまよう。」とアバーライン警部は答える。

【フロム・ヘル 第15段落】  医学に心得のある者の犯行だと睨むアバーライン警部は、総監に外科医に相談してみたいと進言するが却下される。しかし、彼は総監には従わなかった。慈善基金募集事業でアバーライン警部は紳士・淑女の好奇、驚嘆、嫌悪の視線にさらされるエレファント・マン、ジョン・メリックの姿を見る。その後のレセプションで、ロンドン一の外科医であるフェラル博士に捜査への協力を申し出る。しかし、エリート主義に凝り固まっている博士は、知的階級に疑いの目を向けているアバーライン警部に、東洋人やユダヤ人、社会主義者などを追うべきだと嫌味たっぷりに断る。アバーライン警部に助け舟を出してくれたのは、王室の侍医であるウィリアム・ガル卿(イアン・ホルム:
炎のランナー (1981) CHARIOTS OF FIRE 』< 1982 年アカデミー助演男優賞ノミネート、 1981 年カンヌ国際映画祭助演男優賞受賞>
『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL
ロード・オブ・ザ・リング (2001) THE LORD OF THE RINGS: THE FELLOWSHIP OF THE RING
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 (2003) THE LORD OF THE RINGS: THE RETURN OF THE KING
デイ・アフター・トゥモロー (2004) THE DAY AFTER TOMORROW
アビエイター (2004) THE AVIATOR 』等)。半年前に脳性発作で倒れた彼は、右手に麻痺が残っているため今は外科医をしていないが、アバーライン警部の質問に答えてくれた。そして、警部がお酒に混ぜられたアヘンの匂いを嗅ぎ取り、殺された娼婦達がアヘン剤を与えられていたと推測したことから、彼がアヘン中毒者であることを知ったウィリアム卿は頭痛薬と強壮剤を処方してくれた。切り方が左から右であることから犯人は右利きであること、そして人体に精通した者であるとガル卿はアバーライン警部に教えた。

【フロム・ヘル 第16段落】  殺害場所は、ホワイトチャペル地区の地図上に五角形になるように点在しているように思われた。ウィリアム卿の助言で犯人が教養のある人物だということに確信を持ったアバーライン警部は、次の殺害現場になると思われる地域で、ユダヤ人、屠畜人に加えて立派な紳士と思える人も不審な点があれば職務質問するように警官たちに命令する。

【フロム・ヘル 第17段落】  アバーライン警部は「テン・ベルズ」でメアリに食事をおごり、彼女達の周りで変わったことが起きていないか訊き出そうとしていた。警部はメアリとこの事件についての幻覚を見ていたのだ。仕事ではあるが、目の前でメアリが食事にがっつくのを見るのは、嬉しいものがある。警部は自分の特殊な能力のことをメアリに話す。彼の予言によると、メアリは海辺の家で子供たちに囲まれて暮らすようになるらしい。

【フロム・ヘル 第18段落】  メアリからアンとアルバートの事を聞いたアバーライン警部は、その失踪に公安部のベン・キドニー(テレンス・ハーヴェイ)が関係していると感じる。公安部に手を出せば、必ず仕返しがくるとゴットレイ巡査部長は反対するが、結局は警部の強い気持ちに負けてしまった。キドニーと約束があると嘘をつき、公安の特別支部への侵入に成功したアバーライン警部は、資料室を調べ‘クリーヴランド通り’についての公安部の資料を見つける。そこにはアンとその娘アリスのことが記載されていた。キドニーが公安の特別支部に戻ってきた。外で見張っていたゴットレイ巡査部長は、そのことを中にいる警部に知らせるために、「アイルランドに自由を!英国から独立を!」と叫び、火のついた樽をキドニーの方に転がした。爆発で辺りが騒然となったところを見計らって、アバーライン警部が外へ出てくる。もちろん建物内に避難したキドニーに怪我はなく、ハデな花火程度の火薬で起きた爆発だったので、アイルランド独立運動とは無関係なことは公安部もすぐにわかった。

【フロム・ヘル 第19段落】  公安部の特別支部に侵入したお陰で、アンはメリルボーン救貧院に、アリスは孤児院に入れられているということがわかった。アバーライン警部は一緒に行くと言って聞かないメアリとメリルボーン救貧院に入る。廃人となったアンがそこに閉じ込められていた。何を言っても彼女には分からないように見える。「(アリスの)父親は?」という警部の質問に、アンは、父親は王子で自分が女王だと繰り返して言う。

【フロム・ヘル 第20段落】  メアリによると、アンの夫は画家でアンと小さなカトリックの教会で結婚式を挙げたのだという。色々と話す内に、メアリに子供がいるかどうか訊かれたアバーライン警部は、妻と子供を出産でなくしてしまったことを話す。これが彼の心の傷だ。そしてふと気付いたように「見せたい絵がある」と、メアリを画廊に連れて行く。彼が見せたのは、ヴィクトリア女王とアルバート・ヴィクター・エドワード殿下の絵だ。メアリは殿下の絵を見て愕然とする。彼が自分達娼婦仲間を証人にアンと結婚をしたアルバートなのだ。

【フロム・ヘル 第21段落】  アルバート殿下が切り裂きジャックではと推論を立てたアバーライン警部は、ウィリアム卿を訪ねた。彼は国家機密事項をアバーライン警部に教えてくれた。アルバート殿下は梅毒にかかっている。それで、病気で手に震えがあり、体力を失っている彼にはあんな殺人はできないと言う。それに殿下には解剖学の知識は皆無だ。では、一体誰が切り裂きジャックなのか?

【フロム・ヘル 第22段落】  ロンドンの地下では、秘密結社フリーメーソンの入社の儀式が行われていた。これからフリーメーソンに入ろうとしているのはフェラル博士だ。その様子を上から3人の男が見ている。警視総監、ハーシャム卿、公安のキドニーだ。中の一人が言う。「ウィリアム卿は警部に取り込まれたのでは?」否定するキドニー。フリーメーソンと切り裂きジャック事件は関連があるのだろうか。

【フロム・ヘル 第23段落】  テン・ベルズでメアリは仲間のケイト・エドウズ(レスリー・シャープ)にアルバートの秘密のことを話していた。そこにレズっぽいリズ・ストライド(スーザン・リンチ)が知り合ったベルギー出身の娼婦アダと一緒にやって来る。メアリの娼婦仲間はもうケイトとリズしか生き残っていない。リズにもアルバートのことを話そうとしていたとき、アバーライン警部がメアリと話すためにやって来た。警部の姿を見て嬉しそうに微笑むメアリ。二人は外で話す。

【フロム・ヘル 第24段落】  アバーライン警部は事件の解決するまでの2、3日の間、仕事をやめて欲しいとメアリに頼む。働かなければ、日々の暮らしが成り立たないと反対するメアリに警部はお金を渡し、3日後テン・ベルズで伝言を受け取るように言う。警部が自分を愛してくれていると思ったメアリは、「私の故郷の村を見せたいわ…」と涙をホロリと流し彼にキスをしようとするが、「よせ」と拒否される。乙女心が傷ついたメアリは、「見返りだと?商売と違うわ…」ともらったお金を捨てて去ろうとする。押さえきれずにアバーライン警部は彼女を引き寄せ、キスをする。

【フロム・ヘル 第25段落】  仲間達と一緒に安アパートにいるメアリ。リズはアダと一緒に踊って上機嫌だったが、執拗にアダに迫って断られ、怒って部屋を出て行ってしまう。次の被害者はリズだった。しかし、人目に付いてしまったため、儀式を完了させることなく死体をそのままにして犯人は去る。連続殺人犯は、自分の想像を完全に具現化するために殺害を続ける。そしてその想像はよりエスカレートしていき、次の殺人までの期間はだんだん短くなっていく。切り裂きジャックはその夜のうちに次の殺人を犯した。被害者はリズを心配して捜しに出たケイトである。夜のホワイトチャペルを捜査のために歩いていたアバーライン警部は、今どこかで殺人が起きていることを感覚的に察知する。急いでその場所を探そうとするが、「殺人などでっち上げろ」と公安の仕返しに遭う。頭突きを受け気絶した警部が気づいたときには、もう人々が「今度はマイスター・スクエアだ」と騒いでいた。

【フロム・ヘル 第26段落】  マイスター・スクエアの殺害現場には、切り裂きジャックからのメッセージが残されていた。壁にチョークで書かれた ‘ユダヤ人に文句があるか’という稚拙な文字。ユダヤ人という綴りが間違っている。 Jews が Juwes となってしまっている。アバーライン警部がその文字をカメラで撮影させようとした時、警視総監が現れ、その文字を記録に残すことを禁じ、消させた。ユダヤ人が危険な目に会うというのが、文字を抹消する総監の理由だが、警部には納得がいかない。もしユダヤ人なら文字を間違えるはずがないし、この Juwes という文字は別の何かを意味している。これは教育のある者の仕業だ。警部は総監の行為を証拠隠滅だと非難し、停職処分を受けてしまう。・・・

◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。
 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say !


【フロム・ヘル 第27段落】  アヘンを吸い幻覚を見るアバーライン。フリーメーソンのシンボルマークなどが浮かんでくる。そこには五角形も含まれている。そしてナイフを前に絶叫するメアリの姿。もうアンとアルバートの結婚式を目撃した娼婦はメアリしか残っていない。そして次々に浮かぶ事件に関連のある人物達の顔。一体誰が犯人なんだ?幻覚から醒めた警部は図書館にフリーメーソンについて調べに行く。調べて行くうちに答えが見つかったアバーラインは、ウィルソン卿を訪ねる。

【フロム・ヘル 第28段落】  切り裂きジャックはウィルソン卿だ。彼は世継ぎの健康を守る名誉ある王室の侍医だ、しかし、その世継ぎの健康は娼婦によって損なわれてしまった。そこで彼女達を憎んだ彼は、彼女達に復讐を決行したのだ。フリーメーソンの一員であるウィルソン卿は、フリーメーソンの書物に書かれる創始者を裏切った者に対する処刑の方法で彼女達を殺害した。アバーラインの話を聞きながら、切り裂きジャックに変身したウィルソン卿の瞳は真黒だ。声もいつもの調子と違う。「後世の人々は語るだろう。 20 世紀を生んだのは私だと。」と堂々と言ってのける。アバーラインは最後の標的メアリを救うため、「 20 世紀は見させない」とそんな彼に銃口を向ける。しかし、そこに現れたキドニーに襲われ、発砲する前に気絶してしまう。ウィルソン卿はメアリのところへ向かうため、馬車に乗り込んだ。一方、アバーラインはフェラル博士とキドニーが乗る馬車に捕らえられていた。しかし、何とか二人をやっつけて助かる。急いでメアリの許へと走るが、間に合うのか?ベッドで眠っている女性に襲い掛かるウィルソン卿。そしてナイフで左から右に首を切る。鞄に入った色々な道具を使いながら、体中を切り裂くウィルソン卿に耳に幻聴が聞える。まるで解剖の授業を行っているようである。彼はかなり精神をやられているようだ。取り除いた心臓をやかんに入れ暖炉にかけると、ウィルソン卿は人々からの賞賛を受ける幻覚を見る。

【フロム・ヘル 第29段落】  アバーラインがメアリの部屋に辿り着いたときには、もう警察が捜査を始めており、人々が群がっていた。無残な死体を見て逆上した彼は警視総監につかみかかる。手を下したのはウィルソン卿だが、彼一人だけの犯行なのではない。フリーメーソン自体が王家のスキャンダルを防ぐためにした行動だ。総監の指にはまるフリーメーソンの指輪を奪って地面に叩きつけるアバーライン。そんな彼に総監は職務復帰と昇進を告げる。怒ったアバーラインは総監の首をしめるが、ゴットレイ巡査部長に止められる。総監はアバーラインの動きはいつも監視すると言い、指輪を拾って去っていった。職務復帰したアバーラインは、部屋に入って遺体の横で呆然となるが、髪の色が赤毛のメアリと違うことに気付く。この死体はメアリのものじゃない。死体はアダのものである。アバーライン警部はテン・ベルズに預けられたメアリからの手紙を読む。彼女はアリスを引き取ってアイルランドの故郷の村に戻った。「…早く会いたいわ。愛をこめて。メアリ」

【フロム・ヘル 第30段落】  王家からの依頼を受けて今回の事件を起こしたウィリアム卿であったが、その結果精神のバランスを崩してしまった。そんな彼を王室もフリーメーソンも見放した。ウィリアム卿はアンがされたのと同じように、廃人にされてしまい、精神病院に閉じ込められた。

【フロム・ヘル 第31段落】  ゴットレイ巡査部長はアバーライン警部にメアリのところへ行くように言う。しかし、アバーラインには監視がついている。彼がメアリに会いに行き、もし彼女が生きていることが奴らに知れれば大変だ。奴らは容赦しないだろう。だから、アバーラインはロンドンに残って奴らを監視する人生を選択する。メアリからの手紙を燃やす。

【フロム・ヘル 第32段落】  月日がたち、ゴットレイ巡査部長がアヘン窟にアバーライン警部を捜しに行くと、彼はそこで息絶えていた。海辺の家で成長したアリスと一緒に暮らすメアリの幻覚を見ながら死者の国へと向かったアバーラインが、さまよってしまうことがないように、ゴットレイは彼のまぶたの上に彼が手に持っていたコインを置いた。悲しい。

【映画『 フロム・ヘル 』の感想】
 私は一時期連続殺人についての本を読むのにわりとハマったことがある。元FBI特別捜査官や精神科医が書いた本には、何故犯人がそんな犯罪をしてしまうようになったのかという理由が書かれていて、人間のまた別の本質を見るようでとても興味深かった。その点から行くと、この映画のウィリアム・ガル卿は、何故そこまで残虐にしたのかというところに説得力が欠けていたと思う。自分の名誉への固執が第一の理由のように感じたのだが、そんなものが猟奇殺人の押さえがたい衝動になるだろうか。脳性発作のための幻覚のせいなのかなぁとも考えられるけど、よく分からない。

 ミレニアム・エフェクト社が作成した死体など特殊メイクがリアルで、うぇーって感じもあったけど、ジョニー・デップの綺麗なお顔が解毒作用してくれていた。水も滴るいい男という表現があるが、水の滴った彼は本当にビックリするぐらい整った顔立ちだった。

以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず11337文字/文責:幸田幸

参考資料:IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
      「フロム・ヘル」日本語版オフィシャルサイト
      ジョン・ダグラス&マーク・オルシェイカー(著)「FBIマインド・ハンター」
(■解説とネタバレ:2002/11/07アップ ◆俳優についてリンク更新:2003/10/06)
■テキストとリンク一部およびファイル書式更新:2004/07/09
2005/03/30更新: ◆データ追加
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