ジェリー | |||||||||||||||||||||||||||
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ジェリー (2002) | |||||||||||||||||||||||||||
GERRY | |||||||||||||||||||||||||||
映画『 ジェリー (2002) GERRY 』をレヴュー紹介します。 映画『 ジェリー (2002) GERRY 』を以下に目次的に紹介する。 ■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』のポスター、予告編および映画データ ■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の解説 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。 ■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の主なスタッフ ■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の視覚効果 ■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の音楽 ■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』のあらすじ ■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の二人のジェリー ■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』のスタッフとキャスト ■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の<もっと詳しく> <もっと詳しく>は映画『 ジェリー 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタバレ)です。※ご注意:映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の内容やネタバレがお好みでない方は読まないで下さい。 ■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』のエッセイ「7/30 ジェリー」 ■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の更新記録 >>「映画解説・レヴュータイトル一覧表」へ(画面の切り替え) |
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幸の鑑賞評価: 8つ星 | |||||||||||||||||||||||||||
■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』のポスター、予告編および映画データ | |||||||||||||||||||||||||||
ジェリー
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●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。 Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com. Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc. |
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■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の解説 映画『 ジェリー (2002) GERRY 』は 2004/05/05 の時点で邦題が分からなかったので「ジェリー」としておいたら、そのまま『 ジェリー 』と決定した。『 ジェリー 』は出演者がたった二人という珍しい作品。マット・デイモンとケイシー・アフレックだ。それに、『 ジェリー 』の監督が『 エレファント (2003) ELEPHANT 』のガス・ヴァン・サントだと聞けば、何かクセがありそうだなとピンと来る。映画『 ジェリー 』は、人間の忍耐力を試すわけでもなく、二人の友情を深めるといった軟弱なプロットでもない。それに、映画の始まり方からして普通じゃない。タイトルも、出演者やスタッフ名も何のクレジットも出てこないのだ。 ▲TOPへ ■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の主なスタッフ 映画『 ジェリー 』の監督・脚本・編集ガス・ヴァン・サントも『 ジェリー 』製作のダニー・ウルフとジェイ・ヘルナンデスも『 ジェリー 』撮影のハリス・サヴィデスも『 エレファント (2003) ELEPHANT 』のスタッフだ。映画『 ジェリー 』は 2002 年のトロント国際映画祭 Toronto International Film Festival で視覚賞をガス・ヴァン・サントが受けた。それに、 2003 年ニューヨーク映画批評家協会賞 New York Film Critics Circle Awards では、『 ジェリー 』撮影のハリス・サヴィデスが NYFCC 撮影賞に輝いている。『 ジェリー 』は砂漠が舞台なので、ハリス・サヴィデスによる撮影は幻想的で美しいと評判である。 ▲TOPへ ■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の視覚効果 映画『 ジェリー 』は視覚効果にも大したスタッフが揃っている。 『 ギフト (2000) THE GIFT 』 『 フロム・ヘル (2001) FROM HELL 』 『 タイムマシン (2002) THE TIME MACHINE 』 『 運命の女 (2002) UNFAITHFUL 』 『アンダーカバー・ブラザー (2002) UNDERCOVER BROTHER 』 『 ブルークラッシュ (2002) BLUE CRUSH 』 『 トリプルX (2002) XXX 』 『 ネメシス/S.T.X (2002) STAR TREK: NEMESIS 』 『 ブルース・オールマイティ (2003) BRUCE ALMIGHTY 』 のシド・ダットンやビル・テイラーや、 『 コーリング (2002) DRAGONFLY 』 『 ザ・コア (2003) THE CORE 』 『 X−MEN2 (2003) X-MEN 2 』 『 ワイルド・スピードX2 (2003) 2 FAST 2 FURIOUS 』 のマミー・マッコールらの『 ジェリー 』での働きは大きい。 ▲TOPへ ■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の音楽 映画『 ジェリー 』の音楽には 『 ヘヴン (2002) HEAVEN 』 『 スウェプト・アウェイ (2002) SWEPT AWAY 』 のアルヴォ・ペルトというエストニアのミュージシャンを起用。それに加え、台詞が殆どないというこの『 ジェリー 』では、音響が大きくモノを言っているようだ。『 ジェリー 』音響には、 『 ジェヴォーダンの獣 (2001) LE PACTE DES LOUPS (原題) / BROTHERHOOD OF THE WOLF (英題) 』 『 ハムナプトラ2/黄金のピラミッド (2001) THE MUMMY RETURNS 』 『 サラマンダー (2002) REIGN OF FIRE 』 『 エデンより彼方に (2002) FAR FROM HEAVEN 』 『 ル・ディヴォース/パリに恋して (2003) LE DIVORCE 』 『 マインドハンター (2004) MINDHUNTERS 』のレズリー・シャッツや、 『 ケミカル51 (2002) THE 51st STATE (原題) / FORMULA 51 (米題) 』 『 アリ (2002) ALI 』 『 アララトの聖母 (2002) ARARAT 』 『 スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする (2002) SPIDER 』 『 オースティン・パワーズ ゴールドメンバー (2002) AUSTIN POWERS IN GOLDMEMBER 』 『 レッド・ドラゴン (2002) RED DRAGON 』 『 リジー・マグワイア・ムービー (2003) THE LIZZIE MCGUIRE MOVIE 』 『 セイブ・ザ・ワールド (2003) THE IN-LAWS 』 『 ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン (2003) THE RUNDOWN 』 『 タイムライン (2003) TIMELINE 』 『 テイキング・ライブス (2004) TAKING LIVES 』 の小山ゴローさんという日本人技術者の名も上がっている。 ▲TOPへ ■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』のあらすじ 映画『 ジェリー 』では、マット・デイモンとケイシー・アフレックは、出演だけでなく、脚本・編集でもガス・ヴァン・サントと共同だ。この主役二人、マット・デイモンとケイシー・アフレックは、二人とも配役名をジェリーという。二人は米国南西部の砂漠地域の観光用トレイル(トレール・行程・進路)を、ハイキング程度のいたって軽装で歩き始める。マット・デイモンの方のジェリーが、ケイシー・アフレックのジェリーに、トレイルの最後にある‘ある物’を見せてあげたいからだった。しかし、二人はすぐにトレイルから外れてしまう。 二人のジェリーは、初めは道を外れて迷子になっても本気に困らず、冗談を言って済ませてきた。運命の輪 Wheel of Fortune というロールプレイング・ゲームやコンピュータ・ゲームのことを話題にして、ちっとも緊迫感は持たなかった。しかし、本当に砂漠のド真ん中で迷子になったと自覚した時から、立ち往生し、脱水症状を示し、歩き回り、事態は重大になってくる。ロケは、米国のデスバレー国立公園 Death Valley National Park, California と、アルゼンチン北西部アンデス山脈近くの砂漠地帯サルタ Salta, Argentina という地域で行なわれたという。 二人のジェリーは殆ど台詞がない。たまに喋っても発音が不明瞭で聞きづらいものだそうだ。そして、自分達の名前ジェリーという語を、動詞にも名詞にも形容詞にも“Gerry”と言って使うのだ。だからタイトルが『 ジェリー (2002) GERRY 』というのだろう。砂漠の潅木、山々とクレバス、砂丘、不毛の岩地といった灼熱地獄。どこを向いても荒野。雲ひとつない快晴の空。ここで二人のジェリーの二日が過ぎていく。物語はない。ただ、ジェリー達が砂漠で迷子になって忍耐するのを、観客も一緒になって忍耐する、という風変わりな映画らしい。それ以上のことは、観た人が自分で何か感じ取ってください、というタイプだろうか。 遂にケイシー・アフレックの方のジェリーが反応する。ここで一体何が起こるのだろうか? ▲TOPへ ■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の二人のジェリー では、映画『 ジェリー 』の二人のジェリー役について。先ず、脚本・編集・出演のマット・デイモンは 『 リプリー (1999) THE TALENTED MR. RIPLEY 』 『 オーシャンズ11 (2001) OCEAN'S ELEVEN 』 『 スピリット (2002) SPIRIT: STALLION OF THE CIMARRON 』 『 ボーン・アイデンティティー (2002) THE BOURNE IDENTITY 』 『 コンフェッション (2002) CONFESSIONS OF A DANGEROUS MIND 』 『 ふたりにクギづけ (2003) STUCK ON YOU 』 『 世界で一番パパが好き! (2004) JERSEY GIRL 』 『 ボーン・スプレマシー (2004) THE BOURNE SUPREMACY 』 『 オーシャンズ12 (2004) OCEAN'S TWELVE 』 『 シリアナ (2005) SYRIANA 』 等で超売れっ子のハリウッドスター。共演のケイシー・アフレックとは日常生活でも友人であるが、兄のベン・アフレック Ben Affleck との方が親友である。『 グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち (1997) GOOD WILL HUNTING 』は親友同士で共演のマット・デイモンとベン・アフレックが共同脚本を書き、二人は 1997 年のアカデミー賞脚本賞に輝いた。 映画『 ジェリー 』のやはり脚本・編集・出演の三役を務めるケイシー・アフレックは、ベン・アフレック(『 恋におちたシェイクスピア (1998) SHAKESPEARE IN LOVE 』 『 パール・ハーバー (2001) PEARL HARBOR 』 『 チェンジング・レーン (2002) CHANGING LANES 』 『 トータル・フィアーズ (2002) THE SUM OF ALL FEARS 』 『 デアデビル (2003) DAREDEVIL 』 『 ジーリ (2003) GIGLI 』 『 ペイチェック 消された記憶 (2003) PAYCHECK 』 『 世界で一番パパが好き! (2004) JERSEY GIRL 』) の三歳違いの弟だ。ケイシーの方は 『 アメリカン・パイ3: ウェディング大作戦 (2003) AMERICAN WEDDING 』の第1・2弾 『 アメリカン・パイ (1999) AMERICAN PIE 』 『 アメリカン・サマー・ストーリー (2001) AMERICAN SUMMER STORY / AMERICAN PIE 2 』や 『 オーシャンズ11 (2001) OCEAN'S ELEVEN 』 『 オーシャンズ12 (2004) OCEAN'S TWELVE 』 に出演だけど、そんなにまだブレイクしていないかな。 ケイシー・アフレックの親友はホアキン・フェニックス Joaquin Phoenix ( 『 グラディエーター (2000) GLADIATOR 』 『 サイン (2002) SIGNS 』 『 ブラザー・ベアー (2003) BROTHER BEAR 』 『 ヴィレッジ (2004) THE VILLAGE 』 『 炎のメモリアル (2004) LADDER 49 』)で、その妹のサマー・フェニックス Summer Phoenix という女優さんと三年来の恋人関係。 2003 年のクリスマスにケイシー・アフレックとサマー・フェニックスは婚約して、幸がこの解説を書いている頃、赤ん坊が生まれるのだそうだ。おめでとうございます! てなわけで、ハリウッドの大物スター達は周囲が皆セレブの集まりなのですネ。 |
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【『 ジェリー 』のスタッフとキャスト】 | |||||||||||||||||||||||||||
監督: ガス・ヴァン・サント Gus Van Sant (Directed
by) 製作: ダニー・ウルフ Dany Wolf (producer) ジェイ・ヘルナンデス Jay Hernandez (associate producer) 脚本: ケイシー・アフレック Casey Affleck (written by) マット・デイモン Matt Damon (written by) ガス・ヴァン・サント Gus Van Sant (written by) 撮影: ハリス・サヴィデス Harris Savides (Cinematography by) 編集: ケイシー・アフレック Casey Affleck (Film Editing by) マット・デイモン Matt Damon (Film Editing by) ガス・ヴァン・サント Gus Van Sant (Film Editing by) 視覚効果: シド・ダットン Syd Dutton (Visual Effects) ビル・テイラー Bill Taylor (Visual Effects) マミー・マッコール Mamie McCall (Visual Effects) 音楽: アルヴォ・ペルト Arvo Part (Original Music by) 出演: ケイシー・アフレック Casey Affleck as Gerry マット・デイモン Matt Damon as Gerry ▲TOPへ |
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<もっと詳しく> | |||||||||||||||||||||||||||
ストーリー展開の前知識やネタバレがお好みでない方は、読まないで下さい。 |
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以下は、映画『 ジェリー 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタばれ)です。 映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の感想は、「シャイな幸の独り言」ファイル(画面切替)のエッセイ「7/30 ジェリー」を作成して紹介しています。・・・ここをクリック 【 ジェリー 第01段落】 映画『 ジェリー 』は突然始まる。タイトルも、出演者やスタッフ名も何のクレジットも出てこない。 【 ジェリー 第02段落】 黄色い大地に囲まれた一本道を一台の車が走っている。道路も景色も乾ききった乾燥地帯。映画『ジェリー 』の初めの四分の一ほどはアルゼンチン北西部アンデス山脈近くの砂漠地帯サルタ Salta, Argentina でロケが行なわれた。あっ、道路沿いに馬が二頭ほどいた。曲がりくねった道路には木の柵があり、路面も土かと思うくらい埃まみれだから、町からとっても遠い地域なのだと推測できる。車はひたすら走る。静かな静かなBGMが遠慮がちに流れている。やっとフロントガラスから、乗っている二人の若い男性が確認できた。運転しているのはジェリー(ケイシー・アフレック)、助手席はジェリー(マット・デイモン)。二人とも無言である。狭い空間で無言でもいられるということは、非常に親しい友人同士であることを物語っていよう。 【 ジェリー 第03段落】 日差しがきつい。車はやっと停車した。ジェリー(ケイシーの方)は車を降りてもロックしない。短時間ですぐ戻る段取りなのだろう。ジェリー(マットの方)は一度ドアを閉めてからまた開けて、かがんで飲料水のペットボトルの小瓶二本を取り出す。一本はジェリー(ケイシーの方)に渡した。潅木の繁る道路脇に入っていくと、「 WILDERNESS TRAIL (荒野の小道)」という地味な標識が立っている。二人は無言で潅木の間の赤茶けた大地を歩き始めた。ちょっとしてから初めてセリフが。「ジェリー、道はこっちだ。」というくらい、小道と言っても分かりにくい名ばかりの道だ。 【 ジェリー 第04段落】 小用をたしていると、三人の親子連れがすぐ上の小道を散策していて、お互い軽く挨拶。そこの小道なら、「観光ルート」になっているので、いたって安全な遊歩道である。ここまでで道程の半分くらいだということで、ジェリー(マットの方)は迂回路をあえて選んだ。潅木が点々と繁り、その間を縫って大地を進んでいく。だから、ここは道なんてないのだ。映画内でも、何のためにこの「荒野の小道」で車を止めたか何の説明もない。ジェリー(マットの方)が、‘何か’を、親友であろうジェリー(ケイシーの方)に見せてあげようとしているらしいということが推測できるだけだ。荒野の小道の穴場とか、荒野の小道の先にある古代の恐竜の化石とか、砂漠の綺麗な景色とか、ドライブの途中にちょっとハイキングとか。 【 ジェリー 第05段落】 二人はご機嫌で颯爽と歩を進めていく。爽やかで気持ちいいね、なんて余裕で。二人の装いはカジュアルな軽装だ。ジェリー(マットの方)は黒い長袖のTシャツの上に青い半袖Tシャツを重ね着している。ジェリー(ケイシーの方)は黄色い星が中央にあるデザインの黒い長袖のTシャツに、薄グレイのヨットパーカーを腰に巻いている。開放感からか、急に駆け出して嬉しそう。でも、もう疲れてしまった。こんな迂回路(というよりも、ただの荒野)はやめて、さっきの普通の小道のルートに戻ろう、ということになる。でも、あれ?という顔のジェリー(マットの方)。こんな所、通ったっけ?こんな景色だったっけ?ジェリー(ケイシーの方)も、不確かな顔つきだ。 【 ジェリー 第06段落】 方向が分からなくなっても、さっきの地点に戻っているつもりで歩く二人。突然TV番組のことを話し始めるジェリー(ケイシーの方)。運命の輪 Wheel of Fortune というロールプレイング・ゲームでのおかしな問答の様子やコンピュータ・ゲームの話題で盛り上がって、二人は軽く笑いながら早足で歩いている。まだ緊張感はない。しかし、周りは潅木だらけで、おまけに向こうに赤茶けた丘陵か山脈まで見えている。こんな筈じゃなかった・・・。立ち止まって、四方のどこも同じに見える景色をじっと見つめ、二人は途方に暮れて無言である。 【 ジェリー 第07段落】 マット・デイモンとケイシー・アフレックは、二人とも配役名をジェリーというのだが、タイトルの『ジェリー GERRY 』というのは、彼らの名前だけを指しているのではないのだと映画『ジェリー 』を観て分かった。この二人は「ジェリー gerry 」という造語をしばしば使う。「しくじった」とか「ドジ」とか「失敗の」「間違った」とか、普通の英語で言えば「エラー error 」のような意味の言葉である。それを動詞にも名詞にも形容詞にも使って短い会話に入れる。「ジェリっちゃった」「お前のジェリーのお蔭で」というような言い回しで使っていた。この「ドジ」=「ジェリー gerry 」の最たるものが、荒野の小道の正しいルートを取らずに勝手に迂回してしまった事実なのだ。だから、タイトルの『ジェリー GERRY 』は、この「人生最大の誤り」というニュアンスでつけられたのかもしれない。 【 ジェリー 第08段落】 さて二人は歩き続けるうちに広大な荒地に迷い込んでいた。それをカメラは遠景からとらえ、果てしなく広がる荒野と、蟻(アリ)のようにちっぽけな二人のジェリーの姿を効果的に見せる。空は太陽が照り付けていたのが、夕刻が迫ると暗い雲が覆ってくる。結局、この日は短時間で車に戻るつもりが野宿となった。枯れ枝で焚き火をして暖をとる。頭は熱くて背中は寒いと言っていたから、砂漠は夜は寒いのだ。それにしても焚き火の火をよくつけられたなぁと思ったら、二人はタバコをしょっちゅう吸っているので、ライターかマッチを持ち合わせていたのだ。禁煙が奨励され常識化されている現今で、この映画は珍しく喫煙を大っぴらに見せている。夜も更け、焚き火に当たりながら、ジェリー(ケイシーの方)は「テーベの征服 Conquest of Thebes 」の歴史的な話を一人称で語っている。 【 ジェリー 第09段落】 翌朝も快晴だ。二人のジェリーは二手に分かれて丘に登ることにした。高い丘に登れば道路とかが見えるかもしれないからだ。でも何も見えない。また二手に分かれて次の丘をそれぞれ偵察する。でも結果は同じ。だんだんイライラが募ってくる。何しろこんな暑い灼熱地獄を、水なし食料なしで丸一日過ぎたのだから。それにしても、車から降りた時に持った小さな瓶の水を飲むシーンはなかった。アッという間に水はなくなってしまったのだろう。二人は集合地点の間違いから、初めて口喧嘩した。ヘトヘトなのに丘に登れば体力は余計に消耗する。だからイライラ。でもジェリー(マットの方)は、重ね着していた青いTシャツをターバンにして頭を覆っているのでマシだと言っている。ジェリー(ケイシーの方)は、どうしたことか、昨夜まで持っていたヨットパーカーをこの時点では失くしている。 【 ジェリー 第10段落】 この丘と渓谷のシーンで、ジェリー(ケイシーの方)がジェリー(マットの方)を探そうとして登った高い岩の上で、立ち往生する。6メートルくらいの長方形の岩で、勢いで登ったはいいけど降りられなくなったのだ。まるで子猫が高い木から降りられなくなったように。ジャンプしか方法はなく、下にいるジェリー(マットの方)は土をかき集めて少しでも岩場をソフトなクッションにしてやる。土を集めるものも、ターバンにしていたTシャツだ。こうなると何でも道具になるのだ。果たして、3階くらいの高さから、ジェリー(ケイシーの方)はふんわりと無事に飛び降りることが出来た。この岩のシーンは延々と数分は続く。これはカットでなくて一続きのフィルムで撮った、映画『ジェリー 』のこだわりの一つだそうだ。 【 ジェリー 第11段落】 二人は再び歩き始める。ジェリー(マットの方)はターバンをしている。ジェリー(ケイシーの方)はターバンはないので、頭がまともに日光に焼かれている。ここで差が出るのネ。暫くして獣の足跡を見つけて、それを辿れば水場がある筈だと期待するけど、行った先は完全な砂漠となってしまった。ものも言えず、ただただ前進する二人の横顔のアップがしばらく続く。顔は赤らみ、髭は伸びて、怒ったような硬い表情で下を向いて早足で歩き続ける。この時はまだ二人並んでいた。その後は、ジェリー(ケイシーの方)が十メートルくらい離れて、遅れていく。また丘に登るが何も見えない。ただただ続く不毛の荒野に、はるか向こうの山々。映画『ジェリー 』の大半は米国カリフォルニア州のデスバレー国立公園 Death Valley National Park, California がロケ地である。雄大な自然が拝める。 【 ジェリー 第12段落】 頭を抱えてしゃがみ込むジェリー(マットの方)。「あの山も越えるの?」と力なく問うジェリー(ケイシーの方)の声に、「泣くのはやめろよ」とジェリー(マットの方)。雲が厚く黒く覆い、それが比喩しているかのような憔悴のジェリー(ケイシーの方)は「くそったれ! Fuck you! 」、答える方も「お前こそ。」 暗い中を二人の歩く影が朧(おぼろ)に見える。水なし、栄養物なしで、どんなに過酷なことだろう。明るくなると、東西南北の地理関係を大地に描いてみる。 30 時間も北北西に進んでいるみたいだ、北に行けばハイウェイ(公道)に出られるのだが、とか、太陽の方向を目印にしているだけだから誤差も出る。座り込んだケイシー・アフレックを、カメラは 360 度ゆっくり回転して彼の端正なマスクを嘗め尽くす。ここも長いシーンだ。「歩いても平気だよ。水があるし、水を見つけて車の場所も分かったんだ」と呟くジェリー(ケイシーの方)は、この頃から熱中症と脱水症状で幻想を見るようになっているのだ。二日目も空虚に終わった。夜、焚き火。 【 ジェリー 第13段落】 三日目の朝。日の昇らない暗いうちから歩く二人。何も食べず水もなくて、どんなに苦しいだろう。ここは一面続く白砂の砂漠だ。このラストの方のロケ地は、ユタ州ソールトフラット Salt Flat, Utah だそうだ。その輝く白色に、トルコ石のような色の空との対比が美しすぎる。しかしその自然こそが怖いのだ。灼熱の太陽の下、ジェリー(ケイシーの方)の足取りが殊のほかおぼつかなくて遅遅としている。半歩ずつしか進めていないようだ。数メートル以上先を行くジェリー(マットの方)はターバンを被っているからまだ大丈夫である。ジェリー(ケイシーの方)はとうとう止まってしまった。そしてしゃがみ、砂地に腰を下ろしてしまった。ジェリー(マットの方)も戻ってそばに行き、二人して仰向けに横たわる。半分意識を失っているかのようだ。・・・ ◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say ! 【 ジェリー 第14段落】 と、その時、ジェリー(ケイシーの方)が「ハイキングの感想は?」と出し抜けに訊く。そして「楽しいぜ」と自ら返事し、「もうだめだ…。」ジェリー(ケイシーの方)は腕をジェリー(マットの方)の方に必死に伸ばし、身体も彼の方に寄せていこうとあがいている。脱水症状の究極はこうなのだ。体を起こすことすらできない。それを見たジェリー(マットの方)は、身を寄せてきた相棒の身体の上に覆いかぶさった。二人、脚や手を絡めて何かしている。(この時、死にゆく友人を抱きしめてあげるのかと思った。)あっ、殺したんだ! ジェリー(ケイシーの方)の首を絞めた。苦しそうなジェリー(ケイシー・アフレック)を‘殺してあげた’のか、どう表現したらいいのか判断できない。とにかく、一人は死んだのだ。この後、雲が湧き出て流動する様が早回しで撮られ、その幻想美は映画『ジェリー 』の映像の中で最高だった。 【 ジェリー 第15段落】 しかし、何と言う皮肉であろう。その地点はハイウェイからほんの数百メートルの所だったとは。陽炎が立ち昇る向こうの方に、車が数台通行しているのがかすかに見えてきた。ジェリー(マットの方)は死んで横たわる親友を残して、フラフラと立ち上がり、走る車を目指して歩いていく。この映画『ジェリー 』は、砂漠で二人が迷い一人が死亡したという実話に基づいているそうで、その事故では、迷子になっていたのはハイウェイからたった 300 メートルだったそうだ。それをこの映画はブッシュの繁る地域、山々、丘陵、岩場、クレバス、砂丘、不毛の岩地というように、もっと膨らまして演出し、ラストで実話の状況と似させている。 【 ジェリー 第16段落】 放心状態で車上の人となったジェリー(マット・デイモン)。拾ってもらった車の後部座席の横には男児が大人しく座っている。運転するのはその父親である。車はまた黄色の大地のど真ん中の道路を走っていく。ジャズ様式の冒頭とエンディング。映画の始まりはタイトルも何も表示がなかったが、エンド・ロールは流石に出てきた。 【 ジェリー 第17段落】 映画『 ジェリー 』を観ている間、息が止まるほど緊張して疲れた。観ていて自分まで苦しくなるのだ。因みに、ケイシー・アフレックのジェリーの方が先に体力限界になったのは、少なくとも二つの原因がある。(1) マット・デイモンのジェリーは小太りなのに対し、ケイシー・アフレックのジェリーはスリムだったこと。 (2) ケイシー・アフレックのジェリーはヨットパーカーのような服をもう一枚持っていたのに失くして、ターバンを巻けなかったこと。夜、焚き火の時には着ていたのに、どうして翌朝捨ててしまった?のか不思議である。なお、登場人物は二人であるが、厳密に言えば、最初の散策中の三人の親子連れと、最後の車の父子の二人で、合計七人である。 以上。 <もっと詳しく>からスペースを含まず5693文字/文責:幸田幸 参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集 http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm IMDb allcinema ONLINE Nostalgia.com CinemaClock.com 公式サイト(英語版) http://www.gerrythemovie.com/asp/ 「ジェリー」資料(エレファントピクチャー) ※ポスターはNostalgia.com、画像はエレファント・ピクチャーに使用許諾を得ています。 |
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■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の更新記録 2004/05/05新規: ファイル作成 2004/07/12更新: ◆テキスト一部とリンクおよびファイル書式 2004/07/30更新: ◆鑑賞後、別ファイル読む映画試写会レヴューとして完成 2004/12/13更新: ◆一部テキスト追記と書式変更 2005/03/30更新: ◆データ追加 2006/01/09更新: ◆データ追加 |
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幸田 幸 coda_sati@hotmail.com |
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