ジェヴォーダンの獣
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ジェヴォーダンの獣 (2001)
LE PACTE DES LOUPS (原題) / BROTHERHOOD OF THE WOLF (英題)
 映画『 ジェヴォーダンの獣 (2001) LE PACTE DES LOUPS (原題) / BROTHERHOOD OF THE WOLF (英題) 』をレヴュー紹介します。

 映画『 ジェヴォーダンの獣 』を以下に目次別に紹介する。
■映画『 ジェヴォーダンの獣 』の解説及びポスター、予告編
 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。
■映画『 ジェヴォーダンの獣 』の映画データ
■映画『 ジェヴォーダンの獣 』の主なキャスト
■映画『 ジェヴォーダンの獣 』のスタッフとキャスト
■映画『 ジェヴォーダンの獣 』の<もっと詳しく>
 <もっと詳しく>は映画『 ジェヴォーダンの獣 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタばれ)です。※ご注意:映画『 ジェヴォーダンの獣 (2001) LE PACTE DES LOUPS / BROTHERHOOD OF THE WOLF 』の内容やネタばれがお好みでない方は読まないで下さい。
■映画『 ジェヴォーダンの獣 』ジェヴォーダンの獣の伝説
■映画『 ジェヴォーダンの獣 』のストーリー
■映画『 ジェヴォーダンの獣 』出演のヴァンサン・カッセル
■映画『 ジェヴォーダンの獣 』出演のモニカ・ベルッチ
■映画『 ジェヴォーダンの獣 』の結末
■映画『 ジェヴォーダンの獣 』の感想(ネタばれご注意)
■映画『 ジェヴォーダンの獣 』の更新記録

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幸の鑑賞評価: 8つ星 
■映画『 ジェヴォーダンの獣 BROTHERHOOD OF THE WOLF』の解説及びポスター、予告編
ジェヴォーダンの獣
ジェヴォーダンの獣
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■映画『 ジェヴォーダンの獣 (2001) 』の解説

 映画『 ジェヴォーダンの獣 (2001) LE PACTE DES LOUPS (原題) / BROTHERHOOD OF THE WOLF (英題) 』は、「トリコロール/赤の愛」のサミュエル・ル・ビアン、『 ロゼッタ (1999) ROSETTA 』のエミリー・ドゥケンヌ、ジェレミー・レニエといったフランスの実力派若手俳優たちと、『 クリムゾン・リバー (2000) THE CRIMSON RIVERS / LES RIVIERES POURPRES 』のヴァンサン・カッセル、『 マレーナ (2000) MALENA 』のモニカ・ベルッチ、テレビシリーズ「クロウ」のマーク・ダカスコス等の競演が見所の、フランス史上最大の謎として語り継がれている事件の映画化。『 ジェヴォーダンの獣 』の監督は、日本の侍映画とマカロニ・ウエスタンを愛してやまないというクリストフ・ガンズ。本作『 ジェヴォーダンの獣 』にも随所にその嗜好が現れている。「大盗賊」に出演しているジャン=ポール・ベルモンドのイメージに近いという理由で監督に起用された主演のサミュエル・ル・ビアンは、とてもチャーミング。ジャン=ポール・ベルモンドのような大俳優になってね。(前にも同じこと書いたなぁ
 『 ジェヴォーダンの獣 』のストーリー...ルイ 15 世の治世下のフランスは中南部の山岳地帯ジェヴォーダンで、謎の動物に女性や子供ばかりが襲われる事件が発生した。 100 人以上が獣に惨殺されたこの事件の真相は…?『 ジェヴォーダンの獣 』では一体どんな獣が出てくるのかワクワクする。
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com.
Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc.
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■映画『 ジェヴォーダンの獣 BROTHERHOOD OF THE WOLF』の映画データ
 上映時間:138分
 製作国:フランス
 公開情報:ギャガ=ヒューマックス
 フランス初公開年月:2001年1月31日
 日本初公開年月:2002年2月2日
 ジャンル:アクション/サスペンス/ファンタジー
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■映画『 ジェヴォーダンの獣 BROTHERHOOD OF THE WOLF』の主なキャスト
●サミュエル・ル・ビアン as フロンサック
ザ・コード (2002) LA MENTALE (原題) / THE CODE (英題) 』=
ザ・ルール (原題) (2002) THE RULES (英題) / LA MENTALE (仏題)

●ヴァンサン・カッセル as ジャン=フランソワ
エリザベス (1998) ELIZABETH 』
ジャンヌ・ダルク (1999) JOAN OF ARC / THE MESSENGER: THE STORY OF JOAN OF ARC
クリムゾン・リバー (2000) THE CRIMSON RIVERS / LES RIVIERES POURPRES
シュレック (2001) SHREK 』の声優
リード・マイ・リップス (2001) SUR MES LEVRES (原題) / READ MY LIPS (英題)
ブルーベリー (2004) BLUEBERRY
スパイ・バウンド (2004) AGENTS SECRETS (原題) / SECRET AGENTS / SPY BOUND
オーシャンズ12 (2004) OCEAN'S TWELVE

●モニカ・ベルッチ as シルヴィア
ドラキュラ (1992) BRAM STOKER'S DRACULA
アンダー・サスピション (2000) UNDER SUSPICION
マレーナ (2000) MALENA
ミッション・クレオパトラ (2002) ASTERIX & OBELIX: MISSION CLEOPATRE (原題) / ASTERIX & OBELIX: MISSION CLEOPATRA (米題) 』のフランス語バージョンの声優
ティアーズ・オブ・ザ・サン (2003) TEARS OF THE SUN
マトリックス リローデッド (2003) THE MATRIX RELOADED
シンドバッド 7つの海の伝説 (2003) SINBAD: LEGEND OF THE SEVEN SEAS
マトリックス レボリューションズ (2003) THE MATRIX REVOLUTIONS
パッション (2004) THE PASSION OF THE CHRIST
ブラザーズ・グリム (2005) THE BROTHERS GRIMM
スパイ・バウンド (2004) AGENTS SECRETS (原題) / SECRET AGENTS / SPY BOUND

●エミリー・ドゥケンヌ as マリアンヌ
ロゼッタ (1999) ROSETTA
灯台守の恋 (2004) L'EQUIPIER (仏題) / THE LIGHT (英題)
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【『 ジェヴォーダンの獣 』のスタッフとキャスト】
監督: クリストフ・ガンズ Christophe Gans
製作: サミュエル・ハディダ Samuel Hadida
    リシャール・グランピエール Richard Granpierre
脚本: クリストフ・ガンズ Christophe Gans
    ステファーヌ・カベル Stéphane Cabel
撮影: ダン・ローストセン Dan Laustsen
音楽: ジョセフ・ロドゥカ Joseph LoDuca

出演: サミュエル・ル・ビアン Samuel Le Bihan フロンサック
    ヴァンサン・カッセル Vincent Cassel ジャン=フランソワ
    モニカ・ベルッチ Monica Bellucci シルヴィア
    エミリー・ドゥケンヌ Émilie Dequenne マリアンヌ
    ジェレミー・レニエ Jérémie Rénier トマ・ダプシェ若公爵
    マーク・ダカスコス Mark Dacascos マニ
    ジャン・ヤンヌ Jean Yanne モランジアス伯爵
    ジャン=フランソワ・ステヴナン Jean-François Stévenin アンリ・サルディス
    ジャック・ペラン Jacques Perrin トマ・ダプシェ公爵(老人) 
    ヨハン・レイセン Johan Leysen  ボーテルヌ
    エディット・スコブ Edith Scob Mme De Morangias モランジアス伯爵夫人
    ベルナール・ファルシー Bernard Farcy ラフォン地方長官

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ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。
■映画『 ジェヴォーダンの獣 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー

 まず、本作『 ジェヴォーダンの獣 』の「テキストによる映画の再現」レヴューに入る前に、ジェヴォーダンの獣の伝説について触れてみる。

【映画『 ジェヴォーダンの獣 』 ジェヴォーダンの獣の伝説】

【映画『 ジェヴォーダンの獣 』 ジェヴォーダンの獣の伝説 第01段落】  1764 年から 1767 年にかけて、その獣は確かにジェヴォーダン( Gevaudan )に存在した。ジェヴォーダンは、フランス南部ランドック・ルシヨン地方( Languedoc-Roussillon 旧地方図ではランドック地方である)の北部ロゼール県( Lozere )の一地域である。 La Bete(フランス語の獣)が3年間ロゼールを荒らしまわり、主に女性と子供の 100 人以上の犠牲者を出した。

【映画『 ジェヴォーダンの獣 』 ジェヴォーダンの獣の伝説 第02段落】  異常に興奮した少女によると、その動物は、泡を吹き出した黒い口から突き出た2本の牙を持ち、とても広い胸、巨大な頭、角のようにも見える短い真っ直ぐした耳、グレイハウンド犬のような鼻をしていたそうだ。並外れてうすい尻尾は長く、頭の上から尻尾の先まで黒い縞模様があった。また、人の手の少なくとも三倍以上はある巨大な鉤爪を持っていた。赤くキラキラする目はまるで悪魔のようだった。

【映画『 ジェヴォーダンの獣 』 ジェヴォーダンの獣の伝説 第03段落】  その惨劇は国家の関心事となり、ジェヴォーダンの権力者たちは防御を固めるため、軍の設置を要請した。宮廷は軍隊を組織したが、全ての行いは無駄に終わった。

【映画『 ジェヴォーダンの獣 』 ジェヴォーダンの獣の伝説 第04段落】  1765 年1月、ランドック地方、マンド( Mende ロゼールの県庁所在地)からのに加え、国王ルイ 15 世からも当時としてはかなりの額の賞金が、獣を仕留めた者に与えられた。

【映画『 ジェヴォーダンの獣 』 ジェヴォーダンの獣の伝説 第05段落】  1765年2月、恐ろしい状況が続いたため、王は狼ハンターとして有名な Denneval をジェヴォーダンに派遣した。しかし、 Denneval は役に立たなかったので、国王軍中尉であるアントワーヌ・ド・ボーテルヌが後任となった。獣の追跡調査や狩が行われたが、結局何にもならなかった。獣の正体は謎のままだった。

【映画『 ジェヴォーダンの獣 』 ジェヴォーダンの獣の伝説 第06段落】  1765 年9月、アントワーヌ・ド・ボーテルヌは大きな狼を捕まえた。惨劇はやみ、ジェヴォーダンにしばしの休息が訪れた。しかし、 1766 年に再び獣は現われた。 1767 年 6 月 18 日、ダプシェ公爵によって行われた捜索の間に、ジャン・シャステルがついに獣を捕らえた。 こうしてジェヴォーダンの獣の伝説は生まれた。

【映画『 ジェヴォーダンの獣 』 ジェヴォーダンの獣の伝説 第07段落】  Aubrac と Margeride の間にあるロゼール県の北部地域を襲った獣は何だったのだろうか。もし殺害の日付と同様に獣の正体においても教会の記録が信頼できるものであるなら、獣はよりミステリアスで超自然的な力に似たものに近いだろう。

【映画『 ジェヴォーダンの獣 』 ジェヴォーダンの獣の伝説 第08段落】  しかし、目撃者の報告は果たして信頼できるものなのだろうか。誰か(この事件の場合は子供が多い)が見たものと自分が見たと思うものの区別をどのようにしてつけるのだろうか。なぜ狼たちが生息するこの地方なのだろう。狼の度重なる襲撃だったのだろうか。説明のつかないことの答を超自然的なものに求めてしまうことは、科学が発達した現代においても起こることである。当時の人々なら尚更そうだろう。アンシアン・レジームが崩壊の一途をたどり、フランス革命を予感する時代に起こった惨劇は、人々の興味を掻き立てるようだ。獣の正体には諸説あるようである。私は女子供が狙われたということから、単に性的障害を持つ快楽殺人者の仕業ではないかと思ったりもしてしまうが。もちろん映画『 ジェヴォーダンの獣 』は私のくだらない推測よりももっとドラマティックで面白い。時代物のスペクタルが大好きな私にとっては、最高にワクワクする 138 分だった。

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【映画『 ジェヴォーダンの獣 』のストーリー】

【ジェヴォーダンの獣 第01段落】  フランス革命の最中、民衆による処刑を控えたトマ・ダプシェ公爵(ジャック・ペラン)は、自室で過去を振り返っていた…。

【ジェヴォーダンの獣 第02段落】  1764 年、フランス中南部の山岳地域ジェヴォーダンに初めて獣が現われた。 100 人以上の女性と子供たちが襲われ、見るも無残な姿となった。しかし、何故か男性や上流階級の人々が襲われることはなかった。運良く助かった者達の証言から、その獣は銃を恐れない、狼よりも強大な動物で、黒い縞がある体の背中にはトゲがあることが分かっている。ジェヴォーダンの獣の噂はパリまで届き、当時の国王ルイ 15 世は真相究明と獣退治のために新大陸帰りの優秀な王室博物学者のグレゴワール・ド・フロンサック(サミュエル・ル・ビアン)をジェヴォーダンに送り込んだ。彼はアメリカ先住民モホーク族のマニ(マーク・ダカスコス)を連れ立っていた。アメリカで英国軍からフロンサックを救ったというマニは、フロンサックの兄弟のような存在だ。そして格闘技のできる謎のインディアン、マニはやけに強かった。マニ役のマーク・ダカスコスは、両親も武道のチャンピオンで、自身もカンフーのヨーロピアン・チャンピオンの経歴を持つという、ホンモノだ。同じくクリストフ・ガンズ監督で世界各国でカルト映画となった日本漫画の実写映画化「クライング・フリーマン」( 1995 )では主役を演じている。雨が降りしきるジェヴォーダンに到着早々、獣退治で派遣されていた兵士達に苛められているジプシーのような老人とその娘を華麗な技で助けるマニ。日本の時代劇を思わせるシーンだ。魔女と呼ばれていたその娘に、マニは心奪われるのだが…。

【ジェヴォーダンの獣 第03段落】  フロンサックとマニのジェヴォーダン滞在中の宿は、若公爵と呼ばれていたトマ・ダプシェ(ジェレミー・レニエ)の城だ。当時はトマの祖父が領主だ。好奇心旺盛な青年トマは、大都会パリからの客人を喜んだ。フロンサックにヴォルテールについて尋ねようとするトマは、啓蒙思想に関心があるようだ。ジェヴォーダンには、ダプシェ公爵以外にも、モランジアス伯爵夫妻(ジャン・ヤンヌ、エディット・スコブ)、その息子の右腕のないジャン=フランソワ(ヴァンサン・カッセル)、ラフォン地方長官(ベルナール・ファルシー)、サルディス神父(ジャン=フランソワ・ステヴナン)などの上流階級たちがいた。獣の噂は遠くローマ法王の耳にも届いているようで、法王がジェヴォーダンに使いを送り、獣が悪魔の仕業でないか調べさせているという噂もあるようだ。しかし、獣が上流階級の者たちを狙ったことがないからか、獣を捕まえることを諦めてしまっているのか、ジェヴォーダンに住む当の本人達には切迫した感情はないようにも見える。フロンサックは兄弟のマニと同様に、このジェヴォーダンで恋に落ちた。そのお相手はモランジアス伯爵の愛娘マリアンヌ(エミリー・ドゥケンヌ)だ。美しく聡明なマリアンヌは高嶺の花だとトマから忠告を受けるが、フロンサックはお構いなしにアプローチ。獣狩りにマリアンヌを誘う。

【ジェヴォーダンの獣 第04段落】  モランジアス伯爵夫人のエディット・スコブは、「ヴィドック」で娼館の女将シルヴィア役で最近見たばかり。怪しげな役がピッタリの雰囲気のある女優さんである。マリアンヌ役のエミリー・ドゥケンヌは、 1981 年生まれと若いが、「ロゼッタ」で 1999年のカンヌ国際映画祭主演女優賞を獲得したというツワモノである。「TAXi」「TAXi2」でのマルセイユ警察署長ジベールのベルナール・ファルシーが、真面目な悪役ラフォン地方長官役で出演。" L'operation NINJA! "と言いそうで、なんかおかしかった。

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【ジェヴォーダンの獣 第05段落 ヴァンサン・カッセル@】  カッコよかったのは、何と言ってもヴァンサン・カッセル!目が離れていて変な顔なんだけど(ごめんなさい!)、彼の高くて刺さりそうなほどとんがった鼻にもうメロメロである。もちろん、主演の若手俳優サミュエル・ル・ビアンも私好みだったけど(日本語版オフィシャルサイトで彼のインタヴュー映像を見て、ウットリしたもんサ。へへ。) ヴァンサン・カッセルの出演作品は『 エリザベス (1998) ELIZABETH 』『 ジャンヌ・ダルク (1999) JOAN OF ARC / THE MESSENGER: THE STORY OF JOAN OF ARC 』『 クリムゾン・リバー (2000) THE CRIMSON RIVERS / LES RIVIERES POURPRES 』『 シュレック (2001) SHREK 』『 リード・マイ・リップス (2001) SUR MES LEVRES (原題) / READ MY LIPS (英題) 』『 ブルーベリー (2004) BLUEBERRY 』『 オーシャンズ12 (2004) OCEAN'S TWELVE 』等があるが、ジャン=フランソワのような複雑なキャラクターを演じる彼はどれも素敵だった。

【ジェヴォーダンの獣 第05段落 ヴァンサン・カッセルA】  魅力的な中産階級の男を演じてキャリアを積んだ、フランスの有名俳優ジャン=ピエール・カッセルの息子として、 1966 年 11 月 23 日にパリのモンマルトルで生まれたヴァンサン・カッセルは、 17 歳のときにサーカス学校へと通い、概して演技を避けて数年間を過ごしたそうだ。それは俳優の父とジャーナリストの母がヴァンサンに映画ビジネスに入って欲しくなかったからだった。しかし、フィリップ・ド・ブロカ監督の 1991 年作品「 Les Cles du paradis 」で小さな役を得て、結局は映画へ身を投じることになる。『 ジェヴォーダンの獣 』の来日記者会見でヴァンサン自身が語っているように、サーカス学校で学んだことは演技にも活かされているそうだ。これまた私が大好きな俳優であり監督のマチュー・カソヴィッツ(『 アメリ (2001) AMELIE POULAIN / LE FABULEUX DESTIN D'AMELIE POULAIN 』にはハマッた!)とヴァンサンはコラボすることが多い。彼らの初めての共同作業は、「 Metisse 」( 1993 )というロマンティック・コメディ作品。カソヴィッツが 1995 年カンヌ国際映画祭の監督賞、 1996 年のセザール賞に輝いた「憎しみ」や、フランスでベストセラーとなった同名小説の映画化「クリムゾン・リバー」、そしてニコール・キッドマン主演の「バースデイ・ガール」( 2002 )ではお互い俳優として共演している。

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【ジェヴォーダンの獣 第05段落 モニカ・ベルッチ】  奥様は本作でも共演の、世界一美しい女性として名高いモニカ・ベルッチ。夫婦という二人の関係を知ってこの映画を見ると、思わずクスっとしてしまうシーンがあると思う。 Citta di Castello というイタリアの小さな村で育ったベルッチは、 1968 年 9 月 30 日生まれ。 父親はトラック運送会社のオーナーらしい。 18 歳のときに、ペルージア大学に入学した彼女は、授業料を支払うためにモデルの仕事を始めた。2年後に大学を辞めてミラノに移った彼女は、モデル事務所のエリートと契約。もちろん超美しい彼女はモデルとして大活躍し、テレビ・映画などに出演するようになる。イタリアで数本の映画に出演した後、フランシスコ・フォード・コッポラ監督の目にとまった彼女は、『 ドラキュラ (1992) BRAM STOKER'S DRACULA 』でアメリカ映画に初出演する。ドラキュラ城でキアヌ・リーヴスを誘惑する女ヴァンパイアの一人だった彼女は、あまり印象に残っていないのだけれど、トルナトーレ監督の『 マレーナ (2000) MALENA 』に出演の彼女には感激した。この映画のシルヴィアもすごくいい味だしている。2003年に公開予定の『 マトリックス (1999) THE MATRIX 』の続編『 マトリックス リローデッド (2003) THE MATRIX RELOADED 』『 マトリックス レボリューションズ (2003) THE MATRIX REVOLUTIONS 』、『 ティアーズ・オブ・ザ・サン (2003) TEARS OF THE SUN 』『 パッション (2004) THE PASSION OF THE CHRIST 』『 ブラザーズ・グリム (2005) THE BROTHERS GRIMM 』への出演と、これから益々活躍が期待される。ヴァンサン・カッセルは彼女とは『 アパートメント (1996) L' APPARTEMENT 』『 ドーベルマン (1997) DOBERMANN 』『 アレックス (2002) IRREVERSIBLE 』でも共演している。離婚の噂などが流れているけど、二人とも私のお気に入りなので、いつまでも夫婦でいてもらいたいナ。

【ジェヴォーダンの獣 第06段落】  獣を仕留めた者に王から賞金が出たためか、フランス最大となった狩には、各地から腕に覚えのある者が集まった。マニは再び例のジプシー女と出会うが、彼女は男を挑発する悪い女で、自分に気のある二人の男をマニにけしかけた。その二人の男は金属製の長い爪のような武器を持ち、ちょっと風変わりな服装をしている。戦うマニは、強く、全然負けない。女格闘家二人もマニに挑むが、歯がたたない。人だかりの中、騒ぎを見ているフロンサックも余裕の表情だ。しかし、マニの背後から爪の武器を持った男が襲いかかろうとしたとき、銃声が響く。マリアンヌの兄ジャン=フランソワが卑怯なその男を撃ったのだ。男は恨めしそうにジャン=フランソワを見て、腕を抑えて去っていった。右腕のないジャン=フランソワは、自分のために特別に作らせた銃と、獣を仕留めたのが自分だとわからせるための銀の銃弾を、フロンサックに自慢する。哲学者や医師の知識も持ち合わせている新大陸アメリカ帰りの博物学者フロンサックに、アフリカでライオンに襲われ右腕を失ったというジャン=フランソワは対抗意識があるようだ。その対抗意識下には彼の特別な感情があるのだが…。

【ジェヴォーダンの獣 第07段落】  マリアンヌが馬に乗って狩に現われた。高慢な女への口説きのテクニックで、フロンサックはわざとマリアンヌの気分を害し、彼女が狩の群れからはなれて馬を走らせるように仕向ける。二人(マニも一緒だけど)で遠出する状況を創り上げる、賢いフロンサック。マリアンヌとフロンサック、マニが辿り着いた場所は、嘗てテンプル騎士団の砦だったという神秘的な場所。そこに狩のために群れからはぐれた白い狼がやって来る。気丈なマリアンヌはその狼を銃で撃とうとするが、フロンサックが彼女の銃口を持ち上げ、弾をそらさせる。なぜなら、狼はマニのトーテム(未開社会の氏族, 部族などが自分たちと特別の血縁関係にあると考えて神聖視する動物『カタカナ語辞典』三省堂)だからだ。この狩では多くの狼が殺されたが、フロンサックは無意味だと考えていた。被害者の遺体に残った獣の噛み跡を彼が調査した結果、獣は狼よりもずっと大きな動物だと思われるからだ。

【ジェヴォーダンの獣 第08段落】  フロンサックは心からマリアンヌを愛していたが、トマに紹介してもらった娼館で知り合った、謎めいたイタリアの美女シルヴィア(モニカ・ベルッチ)に肉体的な慰めを得ていた。フロンサックにお客以上の気持ちを持つシルヴィアは、嫉妬心からか、マリアンヌに心奪われているフロンサックに、フィレンツェ女は朝に毒、夜にその解毒剤を夫に飲ませるという夫管理の方法を教える。シルヴィアからもらったワインを片手にギックリするフロンサックに、「私達は夫婦じゃないもの」とシルヴィアは話す。しかし、いくらマリアンヌが一番好きだといっても、シルヴィアの客にジャン=フランソワがいることを知って、フロンサックはちょっぴり動揺。シルヴィア曰く、ジャン=フランソワは彼女に触れることは一切ないらしい。

【ジェヴォーダンの獣 第09段落】  寒い冬の夜、上流階級達が教会で礼拝をしているとき、農民の男が現われた。子供二人がムシェ山で行方不明になったことを知らせにきたのだ。獣に襲われたにちがいない。吹雪の中、フロンサック達は子供たちの捜索に出かける。フロンサックが獣に襲われた少年の凍える死体の中に金属の牙を発見した時、マニは狼の導きでウサギ穴に隠れていた少女を救出する。その夜、獣の被害者達の病院として使われている古い修道院で、マニは自分のブレスレットの中に入った薬を、瀕死のその少女に与える。そのお陰で意識を取り戻した少女は、フロンサックに自分の見たことを話す。少女によると、獣は何者かの指図を受けているようなのだ。

【ジェヴォーダンの獣 第10段落】  獣の真相の手がかりを得たフロンサックだったが、国王からの帰還命令が出る。マリアンヌに会うため、フロンサックはモランジアス伯爵邸を訪れるが、中へ入れてもらえない。職業柄、絵が得意なフロンサックだが、そのことが仇となった。ジャン=フランソワに中へ入れてもらったフロンサックだが、以前贈ったマリアンヌの肖像画と、娼館で描いたシルヴィアの裸の絵を、マリアンヌから返される。シルヴィアの絵はジャン=フランソワが手に入れたのだろう。マリアンヌに弁解しようとするフロンサックに、「別の時代なら生きては帰さん」とすごむジャン=フランソワ。フロンサックは「時代は変わる」と言い返すが、ジャン=フランソワは言う、「ジェヴォーダンでは変わらない。」

【ジェヴォーダンの獣 第11段落】  教会で祈りを捧げるマリアンヌのもとにシルヴィアが現われる。「フロンサックが愛したのはあなたしかいない…」とシルヴィアはマリアンヌに耳打ちし、またすぐに教会を出て行った。ジェヴォーダンを去り、港で新たな旅の準備に取り掛かっているフロンサックのもとに、トマがもう一度助けて欲しいとやって来る。断るフロンサックだったが、トマから渡されたマリアンヌからの手紙を読むと、喜んでマニと一緒にジェヴォーダンに戻ることにするのだった。

【ジェヴォーダンの獣 第12段落】  ジェヴォーダンに戻ると、フロンサックはマリアンヌに会うため、彼女が指示した場所に向かった。フロンサックは一軒の農家に入り、マリアンヌと再会する。そこは彼女の乳母の家だ。すでにその家は獣に狙われていた。母親と兄ジャン=フランソワの拘束から逃れたいとマリアンヌがフロンサックに話していると、地下室で大きな物音がし、乳母の夫を殺した獣が床を突き破って現われた。獣は人々の証言のように、物凄く強大で、背中にトゲがある鎧のようなものを被っているようだ。フロンサックは獣と戦おうとするが、その物凄いパワーに全く手も足も出ない。獣はマリアンヌに近づくが、なぜか彼女を襲おうとはしない。そこへ遠くから口笛の音。その音を聞いた獣は猛スピードで去って行った。

【ジェヴォーダンの獣 第13段落】  フロンサックは、獣は邪悪な意図を持つものの道具であると気付く。「啓蒙主義に忠実な王を獣が罰しに来る」ということが書かれた本の著者が黒幕に違いない。フロンサック、マニ、トマの三人は準備を整え、獣退治に出かける。馬に乗って草原を行くシーンは、西部劇を思わせる。夜、トマはフロンサックから新大陸での話を聞きたがった。フロンサックにとっては、アメリカでの体験はあまり思い出したくないものだ。なぜならフランスは卑劣な手を使ったお陰で、新大陸での覇権に敗れ去ったからだ。その卑劣な方法とは、疫病を先住民の間で流行らせ、弱った彼らを虐殺するというものだった。モホーク族の中では司祭のような役割だったマニは、通訳としてフロンサックと働いていたが、そんな人道外れる作戦を行ったフランス軍の隊長を殺した。当然だ。それにしても、もし新大陸アメリカを制覇したのがフランスだったなら、歴史はどんな風に変わっただろう。世界の公用語は英語ではなく、フランス語だったのだろうか。

【ジェヴォーダンの獣 第14段落】  その夜、マニは精霊に祈りを捧げ、狼が獣を三人の前に追い込んだ。色々な罠を仕掛け、獣を捕らえようとしたが、できなかった。その上、トマが獣に腕を噛まれてしまう。フロンサックはトマを手当てするため、城に戻ることにするが、マニは深い傷を負ったと思われる獣を追う。

【ジェヴォーダンの獣 第15段落】  マニは獣を追って、怪しげな廃屋にある洞窟のような猟場の中に入った。「可哀想に、わしが治してやるからな」という、以前助けてやったジプシーの老人の声が洞窟の奥から聞える。マニは以前狩の時に戦った金属製の爪の武器を持った男達に襲われる。次々と男達を倒すマニだったが、自分に襲い掛かってきた例のジプシー女にハッとした瞬間に、何者かによって背後から銃で撃たれる。拷問を受けたマニは、森の中に捨てられ、白い狼が見守る中、息絶えた。変わり果てたマニを見つけたフロンサックは、悲しい叫び声を上げるのだった。そしてマニの遺体を連れ帰り、きれいにした。マニの体から銀の銃弾を取り出したフロンサックは、犯人を知る。その夜、休むことなく、フロンサックはマニの仇討ちに出かける。

【ジェヴォーダンの獣 第16段落】  怒りに燃えたフロンサックはめちゃ強い。マニ以上だ。その猟場である廃屋には、例の本がたくさんある。また、動物の骨やアフリカチックな像がある怪しげな部屋もある。敵に大打撃を与えたフロンサックは、まだ仇討ちは完了していなかったが、マニの部族の慣習に従って夜明け前に遺体を荼毘に付すために、一旦城に戻った。そんな彼をサルディス神父が訪ね、ジェヴォーダンから去るように命令するが、まだ仇討ちを完了していないフロンサックは勿論受け入れない。

【ジェヴォーダンの獣 第17段落】  フロンサックはラフォン地方長官の命令で逮捕され投獄されてしまう。そんな彼をシルヴィアが訪ねる。面会禁止の犯罪者に会いに来られるなんて、一体彼女は何者?シルヴィアは看守にフロンサックへ食べ物を与えさせ、獣の正体を聞く。獣はトゲの鎧をつけた、調教された動物だとフロンサックが教えると、シルヴィアは二年前にサルディスからローマ法王に極秘の手紙が届いたことを話す。啓蒙思想を憎み、神の言葉を狂信的に信仰する秘密結社を結成したサルディスは法王に脅しをかけたのだ。ここで映画の原題である「 LE PACTE DES LOUPS 」の" LE PACTE "という言葉が初めて出てくる。PACTEは辞書で調べてみると、条約とか協約という意味で載っていたが、この映画では「 LE PACTE DES LOUPS 」は「狼の結社」ということだと思う。その話を聞いているフロンサックはだんだん気分が悪くなってくる。シルヴィアが与えさせた食事には毒が入っていたのだ。「あなたは知りすぎたわ」とシルヴィアは倒れたフロンサックに告げ、牢獄を出て行く。(ここで、フィレンツェ女の夫管理法を思い出さなくてはならない)・・・

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◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。
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【ジェヴォーダンの獣 第18段落】  フロンサックが逮捕されたことを知ったマリアンヌはラフォン地方長官を訪ね、面会を申し出るが、断られる。「陛下に報告する」と言って部屋を出ようとしたマリアンヌに、長官はフロンサックが死んだことを告げる。フロンサックの遺体を確認したマリアンヌは絶望する。その夜フロンサックは埋められたが、シルヴィアが手下の男二人を連れて墓を掘り起こさせる。

【ジェヴォーダンの獣 第19段落】  「陛下に報告する」と地方長官を脅したマリアンヌを脅威に感じたサルディス神父は、彼女を亡き者にしようと、毒入りの飲み物を、フロンサックの死で悲しみに打ちひしがれる彼女のもとに運んでくる。サルディスが部屋から出たあと、グラスを取ったマリアンヌをジャン=フランソワが止める。妹マリアンヌへの愛情に苦悩するジャン=フランソワは、二人で逃げようと彼女に迫る。マリアンヌが拒絶するのは右腕のせいだと思った彼は、「これを知っているのはサルディスだけだ」と服を脱ぎ、実際は失っていなかった右腕を彼女に見せる。彼のその伸びた爪の手は獣を操る者の手だ。かなりおかしくなっているジャン=フランソワは、マリアンヌを無理やり自分のものにしてしまう。

【ジェヴォーダンの獣 第20段落】  テンプル騎士団の砦の遺跡で、狼の仮面をつけたサルディスたちが儀式を行っている。獣を餌にして彼らは国王との取引を考えているようだ。そこにフロンサック登場!秘密結社の人々を逮捕するため、彼は国王の兵士達を引き連れていた。逃げようとしたジプシー女は、なんだか「必殺仕事人」を思わせる、トゲのついた扇でシルヴィアに殺される。ジャン=フランソワとフロンサックは一対一の対決を行う。ジャン=フランソワの動物の骨でできた武器は変わっていて、骨の継ぎ目が伸びる仕組みになっている。その武器のお陰でフロンサック不利に進んでいた戦いだったが、結局フロンサックが勝つ。「マリアンヌ、見ろ…我々は永遠に一体だ」と叫び、ジャン=フランソワは死ぬ。逃亡したサルディスはマニの精霊である狼たちに襲われて殺された。

【ジェヴォーダンの獣 第21段落】  シルヴィアはジャン=フランソワが本当に死んでいるかナイフを刺して確かめた後、自分と一緒に来て、法王に謁見を賜らないかとフロンサックを誘う。フロンサックが断ろうとすると、シルヴィアは彼の口を指で塞ぎ、フロンサックの存在が任務を忘れさせてくれたと告白して去って行く。私がフロンサックだったら、シルヴィアについて行きたいけどなぁ。

【ジェヴォーダンの獣 第22段落】  一人ジェヴォーダンを歩くフロンサックのもとに、マリアンヌが危篤であることを知らせにトマがやってきた。フロンサックは急いでトマの城に保護されたマリアンヌのところへ向かい、ベッドでぐったりとしている彼女にブレスレットに入った薬を与える。

【ジェヴォーダンの獣 第23段落】  トマとフロンサックは、ジャン=フランソワの隠れ家にいる獣にとどめを刺しに行った。すでに以前の傷で瀕死の状態であった獣は、ジプシーの老人によって看病されていた。フロンサックはトゲの鎧の隙間から優しく獣を撫でてから殺した。アフリカからジャン=フランソワが持ち帰った動物が産んだ子の中から、一番強いものだけを生かして育てたのが、ジェヴォーダンの獣となったと、ジプシーの老人が教えてくれた。

【ジェヴォーダンの獣 第24段落】  ジェヴォーダンの獣は死んだ。また、獣を生んだ時代も去りつつある。若い頃、トマは領主としての責任から、一緒に行こうというフロンサックとマリアンヌの誘いを断った。民衆が見守る中、処刑台に向かう、年老いたトマは、新しい世界へと旅立つ船上のフロンサックとマリアンヌのことを思っていた。マニの遺灰を海へと返した二人は、きっと幸せにしているだろう。啓蒙思想を理解する知的な青年だったトマが、啓蒙思想に刺激を受けて起こったフランス革命によって殺される運命にあったのは、皮肉な話である。

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【映画『 ジェヴォーダンの獣 』の感想】

【映画『 ジェヴォーダンの獣 』の感想 第01段落】  映画で描かれたジェヴォーダンの獣の正体は、ジャン=フランソワの歪んだ獣のような性向によるものでもあったと思う。(別にどうしても快楽殺人につなげていったわけではないんだけど)幼い頃からマリアンヌを妹以上に愛し続けてきた彼は、ずっとその思いに苦しんできた。マリアンヌを忘れるために海軍へと入隊し、アフリカにも渡ったのだろう。しかし、妹への思いは払拭できず、純粋な青年であった彼は他の女性に走ることができなかったと思う。右腕の存在を知られたくなかったからかもしれないが、シルヴィアと肉体関係を持たずに、彼女を見ているだけだったことから、もしかしたら性機能にどこか異常があったのかもしれない。そうした彼の悶々とした思いは、邪悪な企みを持つ神父サルディスによって悪用されてしまった。サルディスに操られるままに、ジャン=フランソワはきっと異常なまでの熱心さでアフリカから連れてきた動物の子を調教したろう。そして、その獣でジェヴォーダンの女子供を襲っていく内に、性的な快楽を得ていたのではないだろうか。もしジャン=フランソワがマリアンヌへの思いにとらわれることがなかったなら、きっとフロンサックのような博愛精神溢れるマルチで明朗快活な男性になっていただろう。だからマリアンヌは昔の兄の面影を感じるフロンサックを愛したのではないかと思うのだ。

【映画『 ジェヴォーダンの獣 』の感想 第02段落】  人里はなれた山村の、こうしたドロドロとしたお話は日本の横溝正史チックでもある。また、ローマ法王の密使であったシルヴィアや、不思議な武器を操るジャン=フランソワ、山岳地帯の秘密結社には、日本の忍びの者を感じた。監督のクリストフ・ガンフはかなり日本の映画や時代劇に影響を受けているのだろうなぁ。来日記者会見のインタヴュー記事を読んだが、監督は日本の観客に自分の映画がどのように受け止められるのかということに関心があるようだった。日本の観客の一人として答えさせていただくと、かなりおもしろかったよ!

以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず12037文字/文責:幸田幸

参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集
       http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
      AlloCine : Cinema
      Beast of Gevaudan
      公式サイト(仏語版)
       http://www.lepactedesloups.com/
■映画『 ジェヴォーダンの獣 BROTHERHOOD OF THE WOLF』の更新記録
2002/11/11新規: ファイル作成
2004/07/12更新: ◆テキスト一部とリンクおよびファイル書式
2005/03/15更新: ◆一部テキスト追記と書式変更
2005/08/26更新: ◆データ追加
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幸田 幸
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