パリの確率
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映画の森てんこ森■映画レヴュー
パリの確率 (1999)
PEUT-ETRE
 映画画『 パリの確率 (1999) PEUT-ETRE 』をレヴュー紹介します。

 映画『 パリの確率 PEUT-ETRE 』を以下に目次別に紹介する。
■映画『 パリの確率 PEUT-ETRE 』の解説及びポスター、予告編
 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。
■映画『 パリの確率 PEUT-ETRE 』の映画データ
■映画『 パリの確率 PEUT-ETRE 』の主なキャスト
■映画『 パリの確率 PEUT-ETRE 』のスタッフとキャスト
■映画『 パリの確率 PEUT-ETRE 』の<もっと詳しく>
 <もっと詳しく>は映画『 パリの確率 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタばれ)です。※ご注意:映画画『 パリの確率 (1999) PEUT-ETRE 』の内容やネタばれがお好みでない方は読まないで下さい。
■映画『 パリの確率 PEUT-ETRE 』の結末
■映画『 パリの確率 PEUT-ETRE 』の感想と少子化問題について(ネタばれご注意
■映画『 パリの確率 PEUT-ETRE 』の更新記録

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幸の鑑賞評価: 8つ星 
■映画画『 パリの確率 (1999) PEUT-ETRE 』の解説及びポスター、予告編
パリの確率
パリの確率

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■映画画『 パリの確率 PEUT-ETRE 』の解説

 映画『 パリの確率 (1999) PEUT-ETRE 』は、「猫が行方不明」( 1995 )、「家族の気分」( 1996 )で国際的な賞を授与され、フランスを代表する監督の一人となったセドリック・クラピッシュ(『 スパニッシュ・アパートメント (2002) L'AUBERGE ESPAGNOLE (原題) / SPANISH APARTMENT (英題) 』等)の少子化問題を考えるSFコメディ。『 パリの確率 』ではフランス映画界の名優ジャン=ポール・ベルモンドと次世代を担う若手俳優ロマン・デュリスが共演。『 パリの確率 』でベルモンドがデュリスを「パパ〜」と呼ぶのが、なんとも可笑しい。
 1999 年 12 月 31 日。失業、不景気、大気汚染…。こんな時代に子供をつくるなんてありえない。そんな重荷を背負うより、世の中もっと楽しいことがある。新年を祝うSFコスプレ・パーティーを楽しもうとする 24 歳のアルチュール(ロマン・デュリス:『 イザベル・アジャーニの惑い (2002) ADOLPHE 』等)。そんな現代の若者である彼が、タイム・スリップし、未来の自分の息子アコ(ジャン=ポール・ベルモンド)と出会って…。『 パリの確率 』はこのように奇想天外な展開となる。
 砂に埋もれた 2070 年の『 パリの確率 』のパリは、詩的で美しく、おもしろかった。「スターウォーズ エピソード1」と同じロケ地で、セットの建物が一つ残っていたので使わせてもらったそうだ。
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
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■映画画『 パリの確率 (1999) PEUT-ETRE 』の映画データ
■『 パリの確率 (1999) PEUT-ETRE 』のデータ
 上映時間:109分
 公開情報:キネティック
 フランス初公開年月:1999年11月10日
 日本初公開年月:2000年12月9日
 ジャンル:SF/コメディ
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■映画画『 パリの確率 (1999) PEUT-ETRE 』の主なキャスト
『 パリの確率 』主演のロマン・デュリス
  1974 年 5 月 28 日生まれのロマン・デュリスは、セドリック・クラピッシュ監督の「青春シンドローム」( 1994 )で主演デビュー。本作は「猫が行方不明」に続くクラピッシュ監督作品への出演である。フランスのブラッド・ピットという感じの風貌はOK!共演のジャン=ポール・ベルモンドのような大俳優になってね。
 「映画の森てんこ森」にあるロマン・デュリス出演映画の解説・レヴュー:
リトル・トム (2001) LE PETIT POUCET (原題) / TOM THUMB (英題)
スパニッシュ・アパートメント (2002) L'AUBERGE ESPAGNOLE (原題) / SPANISH APARTMENT (英題)
イザベル・アジャーニの惑い (2002) ADOLPHE
ル・ディヴォース/パリに恋して (2003) LE DIVORCE
ルパン (2004) ARSENE LUPIN
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【『 パリの確率 』のスタッフとキャスト】
監督: セドリック・クラピッシュ Cedric Klapisch
脚本: セドリック・クラピッシュ Cedric Klapisch

出演: ジャン=ポール・ベルモンド Jean-Paul Belmondo アコ
    ロマン・デュリス Romain Duris アルチュール
    ジェラルディン・ペラス Geraldine Pailhas リュシー/ブランディーヌ
    ジュリー・ドパルデュー Julie Depardieu ナタリー
    ヴァンサン・エルパズ Vincent Elbaz フィリップ
    エレーヌ・フィリエール Helene Fillieres ロズモンド
    マチュー・ジェネ Mathieu Genet ユリス
    オリビエ・グルメ Olivier Gourmet ジャン=クロード
    リトン・リブマン Riton Liebman マチュー
    セドリック・クラピッシュ Cedric Klapisch 食料品屋

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<もっと詳しく>

ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。
■映画『 パリの確率 (1999) PEUT-ETRE 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー

【パリの確率 第01段落】  1999 年 12 月 31 日。夜。雨。
 「ウーズ!」(小指を上げてする挨拶)が合言葉のフランス版「スター・トレック」のようなヘンなSFドラマをベッドの上でぼんやり見ているアルチュール(ロマン・デュリス)。マチュー(リトン・リブマン:
パリのレストラン (1995) AU PETIT MARGUERY
青い夢の女 (2000) MORTEL TRANSFERT (原題) / MORTAL TRANSFER (英題)
列車に乗った男 (2002) L' HOMME DU TRAIN (原題) / THE MAN ON THE TRAIN (英題) 』等)からの留守電が入る。今夜は、フィリップ(ヴァンサン・エルパズ)が開く新年を祝うためのSFコスプレ・パーティーに出かけるのだ。テレビを消し、料理をし始める。フライパンに火をつけて、バターを落とし…と、ちょっと先のことなら誰にだって予測がつく。でも、もっと先のことは?

【パリの確率 第02段落】  女友達二人/ロズムンド(エレーヌ・フィリエール)とナタリー(ジュリー・ドパルデュー:
ロング・エンゲージメント (2004) UN LONG DIMANCHE DE FIANCAILLES (原題) / A VERY LONG ENGAGEMENT (英題)
スターは俺だ! (2004) PODIUM 』等、ジュリー・ドパルデューは、
カミーユ・クローデル (1988) CAMILLE CLAUDEL
1492・コロンブス (1992) 1492 CONQUEST OF PARADISE
仮面の男 (1998) THE MAN IN THE IRON MASK
ヴィドック (2001) VIDOCQ
ミッション・クレオパトラ (2002) ASTERIX & OBELIX: MISSION CLEOPATRE (原題) / ASTERIX & OBELIX: MISSION CLEOPATRA (米題)
シティ・オブ・ゴースト (2002) CITY OF GHOSTS
ブランシュ (2002) BLANCHE
微笑みに出逢う街角 (2002) BETWEEN STRANGERS
恍惚 (2003) NATHALIE... 』
ルビー&カンタン (2003) TAIS-TOI! (原題) / RUBY & QUENTIN (英題)
パリ警視庁:オルフェーヴル河岸36番 (仮題) (2004) 36 QUAI DES ORFEVRES 』等のフランス映画界の大御所ジェラール・ドパルデューの娘)とパーティーに出かける準備をしている、アルチュールの恋人リュシー(ジェラルディン・ペラス)。銀色のキラキラした超ミニのワンピースを着た彼女は、化粧をしながら今夜は子供をつくると張り切っている。彼女はミレニアム・ベイビーを狙っているのだ。

【パリの確率 第03段落】  そんな彼女の思惑など全く知らないアルチュールは、さっき見ていたSFドラマの殿下のような赤と黒のコスチュームを着て「ウーズ!」とパーティーに現われた。おっと、フィリップと衣裳がカブってしまったのが、ちょっと残念。玄関で記念のポラロイド写真を撮ってもらう。未来の戦士ということで、銃に似せて改造したドライヤーを持つ連れのマチューは、女の子が一杯だとウキウキ。パーティー会場はフィリップの両親のアパルトマンである。フィリップの父親は「物を壊すんじゃないぞ」と息子に念を押し、夫婦で正装して出かけて行った。まさに西洋人家庭である。両親が出かけると、薬でハイになろうとする兄フィリップに対して、妹のクロチルドは部屋が粗雑に扱われないかとちょっとピリピリ。どんどん人が集まり、新年が近づくに連れてパーティーは盛り上がって行く。

【パリの確率 第04段落】  新年へのカウント・ダウンが始まる中、アルチュールとリュシーはトイレでことに及んでいた。最中にリュシーから「子供が欲しい」と告白されたアルチュールは、エクスタシーの極限で彼女から離れる。計画が台無しになり怒ったリュシーに一人取り残されたアルチュール。すると天井からパラパラと砂が落ちてくる。不思議に思って天井をあけ、上階を覗いて見ると、砂だらけの部屋が…。皆のところに戻ったアルチュールだが、さっき見た光景が気になり、マチューの懐中電灯つきのドライヤーを持って、探検に行く。こういう時って、普通独りで行くかなと思うけど、結構映画の主人公は勇気があるのか独りで行ってしまう。上階の部屋は砂だらけで、誰もいない。何故だか存在する木の梯子を上って、どんどん上を目指すアルチュール。ついに屋根裏部屋に出たが、そこはたくさんの黒いツボが積み上げられている。それらをよじ登って、天窓から外を見ると…。

【パリの確率 第05段落】  なんと!パリが砂に埋まっている。建物の屋根の部分だけが砂にうずもれずに顔を出している状態だ。明るい日のもと、ラクダや馬車、人々が行き交っている。一体ここはどこなんだ?砂の上に降り立ったアルチュールは、人々が集まっている市場に足を運んだ。雰囲気的にはアラブや北アフリカのようだが、白人が多くみんなフランス語を話している。変わり果てているが、やっぱりパリなんだろう。呆然と市場を眺めながら歩くアルチュールを見つめる老人。その老人はアルチュールに声をかけ、一杯飲もうと強引に誘った。彼はなにやらとても感激しているようだ。テーブルにつくと、老人はアルチュールに一冊のアルバムを見せた。そのアルバムにはさっきパーティーで撮って貰ったポラロイド写真や、自分とリュシーと二人の間に生まれたと思われる赤ちゃんの写真、数年後の自分の家族の写真など、これから起こる未来の写真が貼ってあった。アコというその老人から、自分が彼の父親だと聞かされ、あまりの衝撃に気を失って倒れるアルチュール。

【パリの確率 第06段落】  アコの家に連れてこられたアルチュールは、自分の子孫達から大歓迎される。アラブや北アフリカで見られるような、日干し煉瓦で作られた住宅に大家族。アコの家族は、一族一緒に住んでいるようで、ダチョウの養殖で生計を立てているようだ。アルチュールは自分よりずっと年上に見える自分の娘のマドレーヌにも会う。もうすっかり頭の中はパニック状態のアルチュールに、アコが「自分の責任に目を向け、息子の話を聞け」と重大発表を宣言。アコが靴下を脱ぐと、なんと彼の足のふくらはぎが消えかかっていた。アルチュールはまたまたショックで倒れる。

【パリの確率 第07段落】  本来 1999 年大晦日の夜のアルチュールとリュシーの性交渉で生まれるはずのアコだったのに、アルチュールが行為を完結しなかったために、 2070 年のアコに存在の危機が訪れているのだ。なんだかおかしな設定だけれども、「説明と合理の世界は存在や生命の世界ではない」(『嘔吐』サルトル)ということなのかも。アコたち子孫は「生きたい」とアルチュールを説得しようとするが、アルチュールは逃げ出してしまう。慣れない砂に埋もれたパリで、やっとのことでパーティーが行われていたアパルトマンの屋根を見つけたアルチュールだったが、先回りしていたアコたちに捕まえられ連れ戻される。

【パリの確率 第08段落】  今度は逃げないように縛られてイスに座らされたアルチュールに、子孫達が子供を持つことの意味を説こうとする。しかし、どの言葉もアルチュールの心には響かない。アコはそんなアルチュールを友人マチューのところへ連れて行く。年老いた嘗ての友人に会えば、考えが変わるかもしれないと思ったのだろう。マチューは砂漠のずっと向こうに住んでいるので、二人はグライダーのような乗り物のタクシーに乗って行く。赤い羽根の不思議な乗り物が砂漠を飛ぶシーンは幻想的で美しかった。アコの話によると、マチューの奥さんが変わっていた(なんで“変わっている”かは後でわかる)ので、二人の間には子供がいず、マチューは残念がっていたそうだ。

【パリの確率 第09段落】  赤いテントのマチューの家に辿り着いたアコとアルチュール。アルチュールは皺くちゃになったマチューに対面するが、なんとマチューは死んでいた。偶然の出来事だったのだが、ショックのアルチュールは怒って、パーティーに戻ると言って彼方まで広がる砂漠を歩いて戻って行く。アコも彼の後を追い、二人で砂漠を歩く。友人の死を見て不安になったアルチュールは、自分の生死についてアコに尋ねる。なんとアルチュールは 46 歳の若死にだったそうだ。死因やその状況などを聞き出そうとするアルチュールだが、アコからパパはビビっていると言われ、カチンときて怒ってケンカをしてしまう。なぜだか老人なのに息子のアコのほうが強いみたい。アルチュールに馬乗りになって殴ろうとするが、結局殴らない。アルチュールから離れたアコは「今更どう話したらいいわからない」と呟く。アルチュールが死んだのは、アコが 21 歳のとき。幼い頃から父親から無視されていると感じていたと話すアコに、アルチュールの心が揺らいだのか、また二人で砂漠を歩き、なんとかパリの中心地まで戻ってきた。

【パリの確率 第10段落】  馬力のタクシーに乗せて、疲労で動けなくなったアコを家まで連れ帰ったアルチュール。前より消えているアコの足を見た彼は、他の家族に「考える」と言って、ベランダに上がる。ベッドに寝転がったアルチュールは、リュシーとそっくりな女性の姿に驚く。彼女は自分の曾孫のブランディーヌ(ジェラルディン・ペラス)だ。若くして子供を作るなんて決められないと、彼女はアルチュールに同情的な意見だ。そこにブランディーヌの弟のユリス(マチュー・ジェネ)がアルチュールの危険を知らせに来る。自分の腕も消えてきていることに気付いた、アコの息子のジャン=クロード(オリビエ・グルメ)が逆上し、銃を持ってアルチュールを殺すと息巻いているのだ。ジャン=クロードに発砲されたアルチュールは、ブランディーヌとユリスと一緒に逃げる。

【パリの確率 第11段落】  アルチュールとブランディーヌを逃がしたユリスは、父親のジャン=クロードに怒られて頬を打たれ、ジャン=クロードも父親のアコにアルチュールに発砲した事で怒られて頬を打たれる。膨れっ面のユリスに、銃で脅して何とかするしかないとアコに反論するジャン=クロード。父と息子とはそんなものである。まぁ、何はともあれ、アルチュールを探し出すことが先決だ。家族総出でアルチュール探しを行う。

【パリの確率 第12段落】  アコはアルチュールを捜すため、 2000 年のパーティーに姿を現した。リュシーと出会ったアコは、彼女とダンスをし、感激で思わず泣いてしまう。アコに恋をしたリュシーの友達のロズモンドからお酒を勧められ、ゴキゲンな気分になるアコ。

【パリの確率 第13段落】  なんかちょっと奇妙な 2070 年のパリの若者達の盛り場へとブランディーヌに連れてこられたアルチュールだが、状況を知らせにやって来たユリスと一緒に、 2000 年のパーティーに戻るため、自分が出てきたアパルトマンへと向かう。ユリスのバイク(ロバにバイクのハンドルをつけた乗り物)に乗って、アパルトマン付近までやってくるが、銃を携えたジャン=クロードがアパルトマンの前で見張っている。機転を利かせたユリスが、アルチュールを見つけたとジャン=クロードたちをおびき寄せている間に、アルチュールはアパルトマンをよじ登り、 2000 年へと戻っていった。

【パリの確率 第14段落】  パーティーへと戻ったアルチュールは、ロズモンドと一緒に盛り上がっているアコを見つける。アルチュールは羽目をはずしているアコの頬を打ち、叱り付ける。若者が老人を叱っているという奇妙な光景に驚くリュシーに「いいんだ」と言いながら、アルチュールは酔っ払ったアコを連れ出そうとする。そんな時、別の階からやってきたジャン=クロードが玄関から中へと入ってこようとしていた。一応中には招待客しか入れないので、締め出されてしまう。だんだんパーティーは様相が変わってきた。新年にかこつけて招待もされていないのにやって来る見知らぬ客、壊れる家の調度品、クロチルドはこの状態を何とかしようと、音楽をとめてパーティーの参加者に「招待されていない人は帰って」と訴える。そんな時、ジャン=クロードは銃を発砲して玄関のドアを壊して倒す。音楽が途絶えても盛り上がろうとするパーティーの参加者たちには、銃声なんて耳に入らない。踊り続ける。そんな乱痴気騒ぎの中、「生きたいんだ!」と叫び訴えるアコ。ジャン=クロードも「俺もだ。早くバアちゃんとヤレ!」とアルチュールに叫ぶ。困惑顔のアルチュール。危険なジャン=クロードは後からやって来た他の家族達に未来へと連れ去られるが、アコがブチキレる。「生きるんだ!生きるぞ!」とカーテンを破り、窓を割る。そんな彼に「帰ってよ!」と怒るクロチルド。アルチュールはアコをかばってクロチルドに言い返す。自分をかばってくれた父の行為に、アコはなんだか嬉しそう。“カッコいい”過去に好奇心一杯のユリスが、とめていた音楽を流すと、みんな一気に盛り上がる。クロチルドが「もう出てってよ」とアルチュールを突き飛ばすと、「親父にひどいこと言うな」とアコは彼女をほうり投げ、別の客が持っていた衣裳の一部のハンマーを振り回し、壁などを壊しまくる。我に返ったアコをアルチュールはトイレに連れて行き、未来へと返す。

【パリの確率 第15段落】  リュシーから「その気がないなら待つわ」と言われたアルチュールは、未来に戻り、自分の一族にやはり子作りは延期すると言う。今の経済力では子供たちが苦労する。教育やおもちゃなどの基本的なものも与えることができない。アルチュールの結論を静かに聞くアコたち。恨まないでと、アルチュールは過去に戻る。・・・

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◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。
 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say !


【パリの確率 第16段落】  パーティーが終わり…。辺りが明るくなり、次々と帰っていく参加者たち。まだ余韻さめやらない感じで、踊っている人もいる中、クロチルドはメチャメチャになった部屋を片付けていた。兄のフィリップはまだ薬が抜け切らない。マチューはずっと一緒に踊っていたダイナマイト・ボディな女性を必死で口説いている。パーティーが終わった後は、二人で熱く過ごせる人がいないといけない。年下好みのナタリーに誘われたユリスは彼女について行くことに。アルチュールはもちろんリュシーと帰る。ナタリーの車で送ってもらったロズモンドは、意中の人だったアコがいなくなってしまったからか、イイ女なのにもかかわらず独りぼっちである。

【パリの確率 第17段落】  「気狂いピエロ」のポスターの貼ってあるアルチュールの部屋。ベッドに横たわるリュシーの体の曲線を見ながら、アルチュールは砂漠を思い出し、そこを歩いているアコを思う。アコは消え、彼の服が風に舞う。アルチュールは決心した。

【パリの確率 第18段落】  ユリスはナタリーの部屋で初体験。至福の思いのユリスであったが、彼の足は消えかかっていた。マチューはというと、別の意味での初体験。ゾッコンの彼女は実は男だったのだ。「ファイヤー!」

【パリの確率 第19段落】  家に戻っていたフィリップとクロチルドの両親。あまりの惨状に驚く両親に、「パパ 、 21 世紀を迎えたんだから、心機一転して始めようよ。新たな門出ってとこかな」と話すフィリップ。子供を持つことは大変である。

【パリの確率 第20段落】  一作業終え、屋根裏部屋の窓辺にたたずむアルチュールとリュシー。「男なら名前はアコだ…いいだろ?」と言うアルチュールにリュシーは答える。「たぶんね(原題の PEUT-ETRE の意味)」砂が少し降ってきたのに気付いたアルチュール。 2000 年1月1日。朝。晴れときどきちょっぴりの砂。パリが砂に埋まる日がもうすぐやって来るのかもしれない。

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【映画『 パリの確率 』の感想と少子化問題について】

【映画『 パリの確率 』の感想と少子化問題について 第01段落】  資本主義やテクノロジーに批判的なクラピッシュ監督のアイデアが基本となっているこの映画で描かれた未来は、過去に遡っている。砂のパリには、自動車みたいなのも走っていたけど、馬やラクダが交通手段。アコの家族も昔のような大家族で、一家の一大事に家族会議を開き、家族みんなで解決策を考える。そんな未来の若者ユリスは、砂にうずもれる前の過去のパリをカッコいいと思っている。未来には憬れていないようだ。「大切なのは物質的なことじゃなくて、人間らしさや人生の質といった“本当の進歩”なんだ」と、共同脚本のアレクシ・ガルモはインタビューで答えている。 2070 年の砂のパリは、現在よりテクノロジーでは劣っているが、精神的には進化しているということなのだろう。

【映画『 パリの確率 』の感想と少子化問題について 第02段落】  現代人が精神的に最も退化していることを表している現象が、少子化。というのが、この映画の考え方なのかな。ヨーロッパ諸国や日本を中心に少子化が進んでいる。特に日本では、少子化がもたらす労働人口の減少や社会保障負担の増加が、今後の経済成長などに与える影響が懸念され、その対策に政府が本格的に取り組もうとし始めている。しかし、一方、イギリス、ドイツ、オランダ、スウェーデン、デンマークなどでは、日本が問題にしているような少子化対策としての政策がないそうだ。

【映画『 パリの確率 』の感想と少子化問題について 第03段落】  例外なのがフランスで、人口減少に苦しんだ過去の記憶からフランスでは人口問題が重要であるようで、出産奨励的な政策がとられている。児童手当が上記のヨーロッパ諸国よりも高額に設定されており、第二子からの支給となっている上、多子世帯ほど金額が少しずつ増える仕組みになっている。その甲斐があったからなのか、現在フランス大使館のホームページには、「ヨーロッパ平均を上回る出生率」と誇らしげに書かれてある。フランスの 2000 年の特殊合計出生率は 1.89 人で、 1990 年代後半から緩やかに上昇中だ。何かとアメリカに対抗意識のある国なので、アメリカの 2.13 人( 2000 年)を超えたいのかな?ちなみにアメリカには児童手当制度はないみたい。フランスの人口増加への意欲の高さが、この映画の背景にあるのかもしれない。

【映画『 パリの確率 』の感想と少子化問題について 第04段落】  アルチュールが子供を作ることを拒んだ理由、つまり映画の中で描かれていた少子化の原因は、不景気といった経済的な問題や、責任を背負い込みたくないという若者の意識、環境問題からくる未来への不安といったものだった。少子化という媒体を通した文明批判の映画としてこの映画を捉えるならそれでいいが、少子化そのものを問題提起したい映画だったならば、女性の就学率の向上・社会進出に伴う晩婚化という視点も盛り込むべきだと思う。この映画では、リュシーがどういう女性なのかが私にはあまりはっきりとわからなかった。 2000 年の記念?に子供を作りたいと思っているが、アルチュールとケンカをしたくないので「その気がないなら待つわ」と自分の意志を簡単に諦めてしまう、結構男性本位の女性のようにも思えるし、フラフラしているアルチュールを何とか牽引していこうとするしっかり者の女性にも思える。アルチュールとリュシーは住まいを別にしている(?)ようだったが、ヨーロッパの先進国の若者たちはまず結婚の前に同棲をし、そして生活を確かめた上で結婚に至るというケースが多いみたい。結婚をしてから子供を産むということが多いようなので、平均出産年齢が高くなっている。

【映画『 パリの確率 』の感想と少子化問題について 第05段落】  フランスでは 1990 年代初めより結婚件数は減少し、未婚カップル(ユニオン・リーブル union libre )が年々増えている。 2000 年のフランスの平均出産年齢は 29.4 歳である。この映画のアルチュールは 24 歳だが、リュシーは何歳かわからない。アルチュールより年上な気もするけど、同じ年くらいのカップルなら、フランスの平均よりも出産年齢が若くなる。若いうちに産んでおけ、という映画のメッセージなのだろう。ジャンヌ・ダルク、ボーヴォワール、エディット・ピアフ、マリー・キュリー(ポーランド人だけど)、ココ・シャネルなど、思い出すフランス人女性は皆強い人たちだ。 25 歳から 49 歳の女性の4分の3が働いているという状況の中、育児休業制度の取得者の 95 %は女性で、フランスでは固定的な性別役割分担が行われているようだ。フランス女性は強いゆえに、育児に仕事に頑張っているということなのだろう。そう考えると、リュシーはやっぱりしっかり者かな。

【映画『 パリの確率 』の感想と少子化問題について 第06段落】  女性の社会進出度合いが高い国では、出生率も高いという傾向があるそうだ。女性の労働力率( 15 歳以上の人口に占める就業者と就業希望者の率)が高いデンマーク、スウェーデン、アメリカは、出生率の比較的大きな回復を経験している。女性の労働力率の低いスペイン、イタリアなどのヨーロッパ地中海沿岸諸国は出生率も低い。勿論日本も女性の労働力率の低い国の一つである。デンマークやスウェーデンでは、個人主義の伝統に則った公正・平等、自立などの社会的な原則原理に基づいた政策が行われており、育児休業制度の取得者の約 10 %(デンマーク)から 30 %(スウェーデン)が男性と、職場面でも家庭面でも男女共同参画が進んでいる。「少子化対策として何もしていない。女性の労働力を労働市場に出すために 70 年代に保育園、幼稚園を増設した。結果的にみれば、少子化対策になったのかもしれない」という、デンマークの社会省担当者の発言から、北欧の国々の意識レベルの高さが窺われる。

【映画『 パリの確率 』の感想と少子化問題について 第07段落】  主要なヨーロッパの国々の特殊合計出生率を見てみよう。イギリス 1.68 人( 1999 年)、フランス 1.89 人( 2000 年)、ドイツ 1.36人( 2000 年)、オランダ 1.53人( 1996 年)、スウェーデン 1.54 人( 2000 年)、デンマーク 1.75 人( 1996 年)となっている。ドイツが他国に比べて低くなっているが、その要因として東西ドイツ統一による生活の激変と、ナチスによる人口政策のトラウマでこの問題を議論しにくいという風潮があるそうだ。しかし 1994 年に 1950 年以降の最低の 1.24 人を記録してから、低水準ではあるが微妙に上昇してきているかもしれない。統一後のドイツが安定してきたことを表しているのだろうか。それぞれ特色はあるが、これらのヨーロッパの国々では概して家族関係や子育てを大切にする家族政策が重視されていて、男性の育児参加を促進しようとする傾向にある。

【映画『 パリの確率 』の感想と少子化問題について 第08段落】  ドイツと同じように敗戦国としての戦争経験から「産めよ、増やせよ」と出産を奨励することは憚られていた日本も 2000 年の出世率は 1.36人 である。前年の過去最低記録 1.34 人より上昇はしているが、単に第二次ベビー・ブーマーが適齢期となってきているからなだけで、その割りに低い出生率が数値上昇を喜べない。世界一の長寿国( 79 歳< 1996 年 ATLAS >)、世界第7位の人口( 1億 2729 万人< 2001 年 10 月総務省HP>)を誇る日本は、上記のヨーロッパの国々に比べて、少子化・高齢化の規模が大きく、その分不安も大きいと思う。また、総人口に対する年少人口( 0 〜 14 歳の人口)の割合( 14.4 %)が老年人口( 65 歳以上の人口)の割合( 18.0 %)より下回っていることも問題だ。( 2001 年 10 月総務省HP)平均寿命が 78 歳で世界2位(外務省HP世界雑学ランキング)となっているスウェーデンは、総人口は 890 万人( 1999 年)と北欧最大の人口規模を誇る国だが、それでも東京都の人口より少なく、神奈川県より若干多い程度だ。 1996 年の年少人口の割合は 18.8 %、老年人口は 17.4 %と、年少人口の方が僅かではあるが上回っている。いつも諸外国の先例を見て、国策を考えてきた日本にとって、他の国が体験したことのない超高齢化社会を迎えるにあたって、アタフタするのは当然のことかもしれない。この映画を偶々観た事で、少子化問題についてネットを覗き、ヨーロッパの先進国の政策をほんのちょっと調べてみたが、子供の数をとやかく言うよりは、自立した男女の関係が築ける社会をつくることが大切だと感じた。

以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず10114文字/文責:幸田幸

参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集
       http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
      UK NOW
      少子化情報ホームページ
      99/06/22 第83回人口問題審議会総会議事録
      MAMAたちの知恵袋 社会 少子化
      少子化問題についてのひとりごと
      Mainichi INTERACTIVE
      総務省HP
      厚生労働省HP
      フランス大使館HP
      公式サイト
       http://www.kinetique.co.jp/paris/
■映画『 パリの確率 (1999) PEUT-ETRE 』の更新記録
2002/09/13新規: ファイル作成
2004/07/14更新: ◆テキスト一部とリンクおよびファイル書式
2005/03/15更新: ◆一部テキスト追記と書式変更
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幸田 幸
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