パリのレストラン | |
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映画の森てんこ森■映画レヴュー | |
パリのレストラン (1995) | |
AU PETIT MARGUERY | |
映画『 パリのレストラン (1995) AU PETIT
MARGUERY 』をレヴュー紹介します。 映画『 パリのレストラン (1995) AU PETIT MARGUERY 』を以下に目次別に紹介する。 ■映画『 パリのレストラン 』の解説及びポスター、予告編 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。 ■映画『 パリのレストラン 』の映画データ ■映画『 パリのレストラン 』のトリビア ■映画『 パリのレストラン 』のスタッフとキャスト ■映画『 パリのレストラン 』の<もっと詳しく> <もっと詳しく>は映画『 パリのレストラン 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタばれ)です。※ご注意:映画『 パリのレストラン (1995) AU PETIT MARGUERY 』の内容やネタばれがお好みでない方は読まないで下さい。 ■映画『 パリのレストラン 』のローラン・ベネギ監督 ■映画『 パリのレストラン 』の前書き ■映画『 パリのレストラン 』の登場人物 ■映画『 パリのレストラン 』のラスト・シーン ■映画『 パリのレストラン 』の更新記録 >>「映画解説・レヴュータイトル一覧表」へ(画面の切り替え) |
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幸の鑑賞評価: 8つ星 | |
■映画『 パリのレストラン (1995) AU PETIT MARGUERY 』の解説及びポスター、予告編 | |
パリのレストラン |
■映画『 パリのレストラン (1995) 』の解説 映画『 パリのレストラン (1995) AU PETIT MARGUERY 』は、『 星降る夜のリストランテ (1998) LA CENA 』同様ハートウォーミングな人情ものだ。映画『 パリのレストラン 』では、30 年近く続いた小さなパリのフランス料理レストラン“プチ・マルグリィ”は今日で閉店。愛する店を手放す悲しみで胸が一杯だが、厨房で働く仲間や訪れる客にはいつものように振舞おうとする、パリのレストラン“プチ・マルグリィ”の店の主人イポリット(ミシェル・オーモン:『 ルビー&カンタン (2003) TAIS-TOI! (原題) / RUBY & QUENTIN (英題) 』等)とジョセフィーヌ(ステファーヌ・オードラン:『 バベットの晩餐会 (1987) BABETTE'S FEAST 』等)夫婦。ローラン・ベネギ監督の長編映画第2作『 パリのレストラン 』ではパーティに集まった人々―息子夫婦、その友人たち、常連客―の感情や主人家族の思い出を織り交ぜ淡々とパリのレストラン“プチ・マルグリィ”の最期の日を描く。映画『 パリのレストラン 』にノスタルジックな雰囲気が漂うのは、監督のお父さんも料理人で、その父親をモデルにこの映画の原作が書かれたからだろう。この映画『 パリのレストラン 』に次々と出てくる美味しそうなフランス料理は、監督が引退なさっていたお父さんを説得して調理してもらったもの。この映画『 パリのレストラン 』が公開されていた頃は、この映画に出ていたお料理を出していたフランス料理レストランが日本にあったそうデス。食べてみたかったナ! |
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。 Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com. Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc. |
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■映画『 パリのレストラン (1995) AU PETIT MARGUERY 』の映画データ | |
上映時間:95分 製作国:フランス 公開情報:セテラ=アスク講談社 フランス初公開年月:1995年11月8日 日本初公開年月:1996年11月2日 ジャンル:ドラマ |
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■映画『 パリのレストラン (1995) AU PETIT MARGUERY 』のトリビア | |
「映画の森てんこ森」には『 パリのレストラン 』のような群像劇映画のレヴューは: 『 マグノリア (1999) MAGNOLIA 』 『 ゴスフォード・パーク (2001) GOSFORD PARK 』 『 フル・フロンタル (2002) FULL FRONTAL 』 『 8人の女たち (2002) 8 FEMMES (原題) / 8 WOMEN (英題) 』 『 靴に恋して (2002) PIEDRAS (原題) / STONES (英題) 』 『 ラブ・アクチュアリー (2003) LOVE ACTUALLY 』等があります。 |
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【『 パリのレストラン 』のスタッフとキャスト】 | |
監督: ローラン・ベネギ Laurent Benegui
製作: シャルル・ガッソ Charles Gassot 原作: ローラン・ベネギ Laurent Benegui 脚本: ローラン・ベネギ Laurent Benegui ミシェル・フィールド Michel Field オリヴィエ・ダニエル Olivier Daniel 撮影: リュック・パジェス Luc Pages 音楽: アンジェリーク・ナション Angelique Nachon ジャン=クロード・ナション Jean-Claude Nachon 出演: ミシェル・オーモン Michel Aumont イポリット ステファーヌ・オードラン Stephane Audran ジョセフィーヌ ジャック・ガンブラン Jacques Gamblin バルナベ アニエス・オバディア Agnes Obadia マリア アラン・フロマジェ Alain Fromager アガメムノン クレール・ケーム Claire Keim ミレヌ アラン・ベージェル Alain Beigel ダニエル(男) ロランス・コート Laurence Cote ダニエル(女) オリヴィエ・ピー Olivier Py オスカー ピエール=ル・ラジョ Pierre-Loup Rajot ペール リトン・リーブマン Riton Liebman 1960年のイポリット マリー・ビュネル Marie Bunel アン=フランソワ ジェラルド・ラローシュ Gerald Laroche ポール トマ・シャブロル Thomas Chabrol トマ シャルル・シュナイダー Charles Schneider ジュリアン アントワーヌ・クザン Antoine Cousin タタヴ マリー=ロール・ドゥニャック Marie-Laure Dougnac リディ ミミ・フェリクシンヌ Mimi Felixine ビムトゥ ジョスラン・キヴラン Jocelyn Quivrin リケ(料理人) ヴァンサン・コロンブ Vincent Colombe パオロ(料理人) ▲TOPへ |
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<もっと詳しく> | |
ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。 |
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■映画『 パリのレストラン AU PETIT MARGUERY 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー 【映画『 パリのレストラン 』のローラン・ベネギ監督】 ローラン・ベネギ監督は映画学校には通わずに映画監督になったという、独学の映画製作者である。彼は初めお医者さんになりたかったらしいが、医学研究が面白くなくなった(うまくいかなくなった?)ときに、作家という芸術的なキャリアをまずは追求しようと、大学をやめた。医師になりたかったフランスの映画監督と言えば、ジャン=ジャック・ベネックス Jean-Jacques Beineix 監督(『 青い夢の女 (2000) MORTEL TRANSFERT 』等を監督)もそうだった。そして1989年 に予てから興味のあった映画の脚本とラジオの台本を書くことに取り掛かった。その後数年で、ベネギ監督は 12 本の短編映画の脚本と3つの小説を書き上げ、 1990 年に『 Un type bien 』で監督デビューを果たした。映画の学校に行かなかったことがかえってよかったと監督自身は語っている。 ▲TOPへ 【映画『 パリのレストラン 』の前書き】 【パリのレストラン 前書き 第01段落】 本作『 パリのレストラン (1995) AU PETIT MARGUERY 』はベネギ監督の長編2作目で、自分の友人や、両親に起こったことを書いた、彼の半自伝的小説に基づいている。ベテラン・シェフであった監督のお父さんも、この映画のシェフ、イポリット(ミシェル・オーモン)と同じように、癌のために仕事をやめなければならなくなった。また、登場人物を多くし、その異なった価値観や心情を探り、それぞれの若い人々の肖像を引き出したいという監督の望みを満たすには、レストランという場所がピッタリだったようだ。観客は、登場人物の誰かを気に入ったり或いは嫌いになったりできるし、自分もそのテーブルに招待されているような気になれる。そう監督が考えたように、映画にはパリに暮らす様々な若者が登場する。 【パリのレストラン 前書き 第02段落】 "プチ・マルグリィ"はまさに国際都市パリのミニチュア。様々な人種、階層が集う。映画の中では人種差別や階級差別が問題としてではなく、パリの今ある姿として描かれている。回想シーンが巧くストーリーの中に取り込まれ、映画全体にノスタルジックな雰囲気が漂うホンワカ系の映画なのだが、ベネギ監督のそういった問題へのシビアな視線も感じられるのだ。それはフランス映画の性質なのかもしれない。芸術は真実なわけだから、芸術である映画の中でも真実を描かなければならないということなのかもしれない。リュック・ベッソン Luc Besson 製作の『 YAMAKASI ヤマカシ (2001) YAMAKASI 』は、移民側の立場に立った映画だったので、そういうシビアな視線は感じられなかったけど、クリストフ・ガンズ Christophe Gans 監督の『 ジェヴォーダンの獣 (2001) LE PACTE DES LOUPS 』では、マーク・ダカスコス Mark Dacascos 演じるマニの微妙な扱われ方に、フランス映画だなぁと思ったものだ。逆に、そこら辺に触れていない映画には、批判も起こるようだ。ノスタルジックなパリを描いた、ジャン=ピエール・ジュネ Jean-Pierre Jeunet 監督の『 アメリ (2001) LE FABULEUX DESTIN D'AMELIE POULAIN 』は、"移民がきれいに排除された復古的、右寄りの映画"という批判があったみたい。フランスでは絶大な人気を誇る、モロッコ系のフランス人俳優ジャメル・ドゥブーズ Jamel Debbouze 演じるルシアンが移民系だと思っていた(モロッコはフランスの保護国だったことがあるので、移民扱いではないのかも?)ので、私は何故かわからないんだけど。 【パリのレストラン 前書き 第03段落】 なんといってもこの映画の魅力は、食欲を刺激するフランス料理である。フォアグラのオードブル、前菜(アントレ)、肉料理又は魚料理、チーズ、デザートのケーキ、コーヒーなどの飲み物。アップになったグリルされたお肉や、焼きあがったケーキのスポンジの映像は、匂いまでわかるような気がした。そんなお料理を口にしてみたいものだが、フランスに行きたしと思えど、フランスはあまりに遠いので、自分で似たようなものを作れたらいいなぁ。ちょっと料理学校にでも行ってみようかなぁ、なんてガラにもないことを思ってしまった。すぐに映画に影響されてしまう私。パーティに出席したのは、多種多様な人種・職種を持つ若者たちだが、レストランのテーブルを囲んでいる間だけは、おいしい料理の下に平等である。 【パリのレストラン 前書き 第04段落】 映画は、なぜ店を閉店するのかという理由や、沢山の登場人物の交友関係や心情について、ストーリーが進行するにつれて徐々に観客の理解が深まっていくように構成されている。だから、ウカっとしていると、一体誰がジュリアンだったっけ?なんて、混乱してしまうところも無きにしも非ずである。だから2回くらい見ると、この俳優のこの演技にはそういう意味が含まれているのか、なんてことが再発見でき、おもしろい。登場人物を紹介しよう。パーティーの出席者たちの選んだアントレ(前菜)を分かる限り書きます。その次に出る料理は子供以外は皆肉料理であり、色々な美味しそうなお肉が登場する。 ▲TOPへ 【映画『 パリのレストラン 』の登場人物】 《パリのレストラン 登場人物@》 イポリット・イレルギ(ミシェル・オーモン) "プチ・マルグリィ"の職人堅気なオーナー・シェフ。店の売却を相談する不動産屋(?)に、子供の頃、兄弟で一番チビでワルだった自分は虐めに来る奴に投げつけるためにいつも石を持っていたと話すイポリットは、もしかしたら移民の子供なのかもしれない。料理は田舎のホテルで 14 歳から始めたそうだ。 そんな叩き上げの料理人であるイポリットは、客からの苦情にも、強気の姿勢で対応する。レストラン最後の日に初めてやってきたお客の言語学者が、フィレ肉が腐っていると文句をつけてきたとき、イポリットはそのお客のお皿の肉を隣の席の老女に食べてもらって味を確認してもらった。後で分かるのだが、このときイポリットが自分で味見をしなかったのは、癌の進行で自分ではすでに味がわからないからだった。今の彼は料理を長年の勘に頼って作っていたのだ。老女は、お肉はとても美味しいと答えた。それでも言語学者は引かない。あれがフィレ肉だとは思えないと言い出した。怒ったイポリットは、厨房から牛肉の大きな塊を担いで持ってきて、「教育はないが、肉は分かる」とテーブルに投げつけた。そして言語学者の口を開けさせ、彼の歯が腐っていることを皆の前で証明した。イポリットの勝ちである。トンでもないお客の言語学者は、連れの女性に引っ張られて帰っていった。もちろん料金は頂いた。 長年勤めてきたカビリア(アルジェリアの北東部)からの移民の老人に対しても、閉店にあたって労をねぎらうような言葉はないが、彼が再出発するまで家賃と給料を支払うという行動がイポリットのやさしさを表している。口が巧くない昔かたぎの料理人であるイポリットは、見習いシェフのパオロ(ヴァンサン・コロンブ)とリケ(ジョスラン・キヴラン)にも厳しい言葉を投げつけるが、彼の本質の優しさを二人は理解しているだろう。 1960 年のイポリットを演じていたのは、リトン・リーブマン。 1964 年 1 月 29 日にベルギーのブリュッセルで生まれたこの俳優さんが私は結構気に入っている。でも、『 パリの確率 (1999) PEUT-ETRE 』『 青い夢の女 (2000) MORTEL TRANSFERT 』の2作でしか彼のことを知らない。最近では『 Edouard est marrant (2002) 』という監督・出演作があるようで、海の向こうでは活躍されているようなんだけど、もっと色々な作品で彼を観てみたいものだ。 《パリのレストラン 登場人物A》 ジョセフィーヌ(ステファーヌ・オードラン) イポリットの妻で、バルナベの母。彼女は画家になる夢を捨て、夫と一緒に 1960 年に開店した"プチ・マルグリィ"を盛り立ててきた。この映画の女性は、殆ど皆しっかり者である。女性が強いというのも、お国柄なのかな。 イポリットと妊娠中のジョセフィーヌが迎えた最初のお客様は、ピアという老人。初めのお客が男だと店が繁盛すると冗談を言うその老人は、"プチ・マルグリィ"の前にそこにあったレストランの常連らしい。以前と同じ場所を自分のためにリザーヴしてくれれば、毎日一番にやってくるという約束通り、彼は死ぬまで"プチ・マルグリィ"で昼食と夕食を食べたようだ。 20 年後の 1980 年、死期が近づいているピア氏は、"プチ・マルグリィ"に来ても、何も食べられない。彼の口にフォークで食事を運ぼうとするジョセフィーヌに、自分の晩年を明るくしてくれたと、プールボの絵を遺すと話す。 死を身近に感じるイポリットは、ジョセフィーヌに一度の浮気を告白する。そのことはすでに知っていたが、何も言わず彼女は聞き流す。そして 1981 年の大統領選に勝利したミッテラン大統領が、熱烈な反戦・平和主義者であったフランスの社会主義の祖といわれるジャン・ジョレスのお墓に一輪のバラを捧げたニュースが、テレビで放送されていた日を思い出すのだった。イポリットがシャモニーで出会ったスイス人の若い女性が、彼を訪ねて店にやって来た。その時、夫はベッドでラブラドル・リトリーバの子犬と一緒に眠っていた。ジョセフィーヌがイポリットの妻だと気付かず、その若い女性は二人の出会いについて話し始める。蜘蛛が嫌いなその女性の為に、イポリットは蜘蛛を潰してくれたのだそうだ。自分の身を明かしたジョセフィーヌは、もしまた自分の夫に近づくようなことがあれば、蜘蛛をパンツに入れてやると言って、その若い女性を追い返した。妻は強し! 《パリのレストラン 登場人物B》 バルナベ(ジャック・ガンブラン) シェフの息子であるバルナベは、店を継いで欲しいという父の意向に沿わずに、作家の道を選んだ 30 代の男性。店に出なければならない母ジョセフィーヌに、一緒に遊んでくれるようにせがんだり、忙しい両親のもとで、子供時代は寂しい思いもしたようだ。また、仕事一徹の父イポリットは厳しかった。1968年、五月革命で学生達がデモ行進する中、友人と一緒にローラースケートで遊ぶバルナベは、店のガラスに突っ込んで血みどろに。しかし、父は息子の体を心配せず、店のガラスの前で遊ぶなと打つ。 彼が父親の為にボールペンでノートに清書した処女作は、2週間厨房に置かれていたが、流しに落ちて、白いページにボールペンの跡が残るだけになってしまい、そのノートも今はどこにあるか分からない。そのことが父子のわだかまりになっているようだ。しかし、二人は断絶しているわけではない。レストランを愛してきた父が癌に冒され、仕事をやめなければならなくなった今、バルナベの心は父への愛情で一杯である。父の上着への寄せ書きに、"Papa, je t'aime.(パパ、愛してるよ。)"と、襟の下にこそっと書くバルナベ。幼い頃からの思い出のしみ込んだレストランの閉店パーティへの出席を、最初は躊躇していた彼だが、結局はやってよかったと思うようになる。 《パリのレストラン 登場人物C》 マリア(アニエス・オバディア) バルナベの陽気な奥さん。パーティの様子をホーム・ビデオで撮影する彼女は、フランス人版のいい人って感じ。私はこの人のノリは好きではないけど。彼女が食べた前菜料理はエビのグラタン。パイ生地のようなものに、グラタンが包まれているそのアントレは、エビ好きの私にはとても美味しそうに思えた。たぶん夫のバルナベも同じアントレを選んでいたと思う。 《パリのレストラン 登場人物D》 ポール(ジェラルド・ラローシュ) バルナベの学生時代からの友人。子供心を失っていない人なので、幼い息子のタタヴ(アントワーヌ・クザン)は彼のことをポールと呼び捨てにしている。バルナベの母ジョセフィーヌは、密かに息子の友達である彼のことを気に入っている。 彼のアントレは、チェコ産のカエルだ。 《パリのレストラン 登場人物E》 アン=フランソワ(マリー・ビュネル) ポールのお医者さんの妻。夫が子供っぽい為に、職業が示すようにしっかり者の彼女は、父親の役も母親の役もこなさなければならない。というか、そうせずにはいられない。だから、息子タタヴは彼女のことはちゃんとママと呼ぶ。しかし、息子が父親に示すような愛情を自分に対しても持って欲しいと彼女は思っている。何でも完璧であって欲しいと思っている高学歴な女性にありがちなジレンマを持つ彼女は、独りでキリキリしている。 だから、自由奔放に生きる黒人女性ビムトゥ(ミミ・フェリクシンヌ)のことが嫌いなのだ。家族で乗っている車を運転するアン=フランソワは、後部座席にいる息子のお陰でバックが見えず、バンパーを他の車に引っ掛けてしまう。それを見ていたビムトゥに「子供がいると大変ね」(彼女が子供に関する発言をするのには、理由がある)と話し掛けられた彼女はムッとする。「イヤな女!」という母親の独り言に、タタヴは「それって人種差別?」と尋ねる。息子の発言にちょっと動揺する彼女の心の奥底には、そういった気持ちも少しはあるのかなと思った。それは、差別というほどのものではなく、人生観の違い、肌の違いといった、自分とは違うものへの嫌悪感なのだろう。 学生時代の 1980 年、ポールの勧めと医学生であった彼女の監修で、兵役(フランスでは 2000 年まで 18 〜 24 歳の男性全員に 10 ヶ月の兵役義務が課されていたそうだ)から逃れる為にバルナベは、レストラン内で癲癇(てんかん)の発作の振りをした。そのとき倒れたバルナベが、メレンゲがお皿一杯に盛られた料理を運んできたイポリットにぶつかり、その料理を注文していた日本人の会社員グループに料理がぶち撒かれてしまう。 1980 年と言えば、日本がバブリーだった頃。「日本製品がフランスを侵略している」 71 %、「日本人はアリのように働く」 53 %という当時のフランス世論を反映して、日本人を蟻だと言った、フランス初の女性首相(エディット・クレッソン:在職 1991 - 1992 )もいたくらいだから、やはり日本人は好かれていないのだろう。 彼女が選んだアントレは、テリーヌ(何のテリーヌかはわからない)。 《パリのレストラン 登場人物F》 アガメムノン(アラン・フロマジェ) 死体置き場で死体の処置をしている彼は、自分の体に染み付いた仕事場の匂いをいつも気にしている。抱き合って挨拶をする女性に、へんな匂いと言われるのが、ちょっと可哀想。名前がアガメムノン(ギリシア全軍を率いてトロイア戦争を戦ったミュケナイの王の名前)というくらいだから、ギリシア系なのだろうか。頭をツルツルのスキンヘッドにしていて、冬なのに白いTシャツ姿である。 《パリのレストラン 登場人物G》 ビムトゥ(ミミ・フェリクシンヌ) 奔放に生きる黒人女性。妻帯者のオスカー(オリヴィエ・ピー)とのたった一晩の関係で、彼女は妊娠してしまった。パーティの夜、一応オスカーに事実を伝え、彼から産んで欲しいと言われるが、現実主義の彼女は産まないと決心している。ビムトゥは、マリアの勧めで女医のアン=フランソワに相談し、彼女から医師の紹介を受ける。紹介するのは "プチ・マルグリィ"が閉店すればもう会うこともないからだというアン=フランソワの言葉は悲しいが、それが現実だろう。 彼女のアントレは、エスカルゴ。私はエスカルゴを食べたことがないので、どんな味がするのかとても興味がある。 《パリのレストラン 登場人物H》 トマ(トマ・シャブロル) 学校の体育教師である彼は、博学なようで、ソムリエなみにワインに詳しい。バルナベが連れてきたホームレスのペール(ピエール=ル・ラジョ)から、息子の友達に手を出しているような冗談を言われるトマだが、口髭をはやした彼は本当にそんな感じでホモっぽい。ペールのジョークは真実を言い当てていたのかも。彼のアントレは、ニシンのポテト添え。 《パリのレストラン 登場人物I》 ミレヌ(クレール・ケーム) ソバージュのロングヘアが綺麗な彼女は、バイクを運転するという男勝りな一面もあるが、幼い時から親しんでいる"プチ・マルグリィ"の閉店に心を痛めている心やさしい女の子。"プチ・マルグリィ"のウェイトレスの経験があるので、パーティの間も、レジを手伝ったり、出席者にブランデーやコーヒーを作って上げたりと、甲斐甲斐しく働く。仲のいい兄ジュリアンの勤める銀行がこのレストランを買い取り、その跡地にできる銀行支店の副支店長に彼が就任することに、やりきれない思いを感じている。"プチ・マルグリィ"の見習シェフのパオロや、ずっと店で働いているカビリアからの移民の老人も、可愛い彼女のことが好き。レストランで働くミレヌを彼らが厨房から見て仕事がはかどらないので、イポリットが厨房の扉の丸い窓に板をはったのは、 1989 年のことであった。 彼女が食べたアントレは、マスのムース。それはシェフのお得意料理の一つで、ジョセフィーヌの説明によると、マスの切り身に卵とクリームを混ぜて蒸し、ザリガニのクーリ(トマト、果物、野菜などを裏ごしして液体状にしたもの)で包んだものらしい。どんな味がするのかなぁ。 《パリのレストラン 登場人物J》 ジュリアン(シャルル・シュナイダー) ミレヌの兄ジュリアンも、自分がレストラン跡地の銀行の副支店長になることに罪悪感で胸が一杯だ。そんな彼をふざけてビデオに撮ろうとしたマリアに、グラスに入ったワインをかける一幕もあるくらいに、ジュリアンの胸は痛い。また、彼の胸には別の痛みもあるようだ。彼は妹のミレヌを愛しているのだ。もちろんミレヌはそのことを知らないと思う。 《パリのレストラン 登場人物K》 オスカー ビムトゥから妊娠の話を聞いた彼は、一瞬たじろぐが、妻リディ(マリー=ロール・ドゥニャック)と巧くいっていない様で、ビムトゥに子供を産んで二人で育てようと言う。しかし、その申し出はビムトゥに拒絶される。その夜、二人の仲に感づいた妻リディとレストランの外で話し合い、雪の中の寒い気温と妻に問い詰められる心労で彼は倒れこんでしまう。そんなオスカーをリディは抱きしめ、夫婦の仲は良くなったようだ。ポールと同様に、料理にがっつく彼も子供っぽい人なのだろう。パーティが終わった後、オスカーを拒絶したビムトゥだが、仲良く帰っていく夫婦を見て、ちょっと切なそう。結局、下層民が損をしてしまう世の中なのだ。 《パリのレストラン 登場人物L》 リディ オスカーの妻である彼女は学校教師。「新聞ばかり見ているのが仕事だ」と、夫オスカーのことを言っていたので、オスカーは新聞記者か何かかな? 《パリのレストラン 登場人物M》 ダニエル(男)(アラン・ベージェル) アガメムノンの元カレ。アガメムノンはまだ未練があるようだが、彼にはもう妻(女)がいる。確か上述のクレッソン女史は"アングロサクソンにはホモが多い"という発言でも顰蹙(ひんしゅく)を買ったという記憶があるが(もしそうじゃなかったらゴメンナサイ)、この映画の若い登場人物9人のうち3人がそうである(あった)ようなのだから、ラテン民族の国フランスにもかなり多いみたい。実際私が旅行に行ったときの日本人バスガイドさんもそう言っていた。まぁ、恋愛は自由なので、そういった事はどうでもいいことだと思うけど、一応感想として書いておく。 彼のアントレは、帆立貝。おいしそう。 《パリのレストラン 登場人物N》 ダニエル(女)(ロランス・コート) ダニエル(男)の新妻。夫の元カレのアガメムノンに会いたくない彼女は、パーティに出席したくないが、偶々レストランの外でトマと会ってしまい、参加することに。また、スーパーのレジ係りをしている彼女は、フォアグラも食べたことがなく、高学歴な人が多い出席者たちに対する劣等感がある。もちろん学校教師のトマやリディにも彼女を見下す気持ちが見受けられる。 イポリットの上着にみんなで寄せ書きをするとき、周囲に馴染めない彼女はそれを拒否した。夫ダニエルはそんな彼女を説得しようとするが、自分の知らない夫の友人たちと和んでいる夫に、寂しく腹立たしい気持ちで妻ダニエルは外に飛び出す。しかし、彼女の後を追ったアガメムノンから夫ダニエルを導いてやってくれと慰められ、機嫌を直す。雪の中を、Tシャツ姿のアガメムノンとノースリーブのセーターを着たダニエル(女)は腕を組んで歩く。 出席者の半数が帰った頃に、彼女はジョセフィーヌに閉店の理由を尋ねた。主人は嗅神経上皮腫で、嗅覚がなくなり、シェフを続けられなくなったというジョセフィーヌの話に感動した彼女は、さっきまでかたくなに寄せ書きを拒んでいたのだが、イポリットの上着にサインをする。人の死ほどの大きな出来事がないと、階級意識は飛び越えることができないのかもしれない。根深いなぁと思った。 彼女のアントレは、ミレヌに勧めてもらった、マスのムースと、夫とシェアした子羊の鞍下肉(セル・ダニョー)。 《パリのレストラン 登場人物O》 ペール "プチ・マルグリィ"近辺をテリトリーにしているホームレス。彼の母もホームレスだったみたいで、生粋の浮浪者だ。そんな彼の言葉は哲学に満ちている。アントレには温かいフォアグラを頼み、寝床の駅が閉まるからと、デザートの前に(もったいない!しかし、何にも拘らないホームレスだからかも。解脱者の域に達している!?)すっかり酔っ払って帰っていった。 ・・・ ▲TOPへ ◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say ! 【映画『 パリのレストラン 』のラスト・シーン】 パーティが終わり、バルナベたちが"プチ・マルグリィ"を出るとき、イポリットは息子に彼の処女作のノートを返した。イポリットは水でボールペンの字が消えてしまったノートをずっと持っていたのだ。イポリットとジョセフィーヌはいつものように店の後片付けをし、愛犬のラブラドル・リトリーバと一緒に二階の自分たちの部屋に上がっていった。店のネオンが消えるのを、外で雪合戦をしていた若者たちが寂しく眺めた後、彼らはそれぞれの家路につくのだった。 以上。 <もっと詳しく>からスペースを含まず9199文字/文責:幸田幸 参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集 http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm IMDb allcinema ONLINE Nostalgia.com CinemaClock.com AlloCine : Cinema http://frenchfilms.topcities.com/nf_Au_petit_Marguery_rev.html http://www.alphalink.com.au/~pjh/a011ben.htm |
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■映画『 パリのレストラン (1995) AU PETIT MARGUERY
』の更新記録 2003/01/18新規: ファイル作成 2005/03/12更新: ◆一部テキスト追記と書式変更 |
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幸田 幸 coda_sati@hotmail.com |
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