フル・フロンタル
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フル・フロンタル (2002)
FULL FRONTAL
 映画『 フル・フロンタル (2002) FULL FRONTAL 』をレヴュー紹介します。

 映画『 フル・フロンタル FULL FRONTAL 』を以下に目次的に紹介する。
■映画『 フル・フロンタル FULL FRONTAL 』のポスター、予告編および映画データ
■映画『 フル・フロンタル FULL FRONTAL 』の解説
 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。
■映画『 フル・フロンタル FULL FRONTAL 』のスタッフとキャスト
■映画『 フル・フロンタル FULL FRONTAL 』の<もっと詳しく>
 <もっと詳しく>は映画『 フル・フロンタル 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタばれ)です。※ご注意:映画『 フル・フロンタル (2002) FULL FRONTAL 』の内容やネタばれがお好みでない方は読まないで下さい。
■映画『 フル・フロンタル FULL FRONTAL 』の結末
■映画『 フル・フロンタル FULL FRONTAL 』の更新記録

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幸の鑑賞評価: 7つ星 
■映画『 フル・フロンタル (2002) FULL FRONTAL 』のポスター、予告編および映画データ
フル・フロンタル
フル・フロンタル

Links:  Official Web Site
Trailers:  Quick Time1.7Mb
上映時間 Runtime: 1:41
製作国 Country: アメリカ USA
製作会社
Production Company:
Miramax Films [us]
Monophonic Inc. [us]
Populist Pictures
Section Eight Ltd. [us]
全米配給会社 Distributer: Miramax Films [us]
全米初公開
Release Date:
2002/08/02
日本初公開
R. D. in Japan:
2003/12/20 予定
日本公開情報 : 東芝エンタテインメント
ジャンル Genre: コメディ/ドラマ/ロマンス/
Comedy / Drama / Romance
MPAA Rating 指定: Rated R for language and some sexual content.
日本語公式サイト
http://fullfrontal.jp/fullfrontal/index.html
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com.
Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc.
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■映画『 フル・フロンタル FULL FRONTAL 』の解説

 映画『 フル・フロンタル (2002) FULL FRONTAL 』は、ソダーバーグ監督が自ら家庭用ビデオを回して撮った、玄人好みの映画。
エリン・ブロコビッチ (2000) ERIN BROCKOVICH
オーシャンズ11 (2001) OCEAN'S ELEVEN
インソムニア (2002) INSOMNIA
コンフェッション (2002) CONFESSIONS OF A DANGEROUS MIND
ソラリス (2002) SOLARIS
オーシャンズ12 (2004) OCEAN'S TWELVE
愛の神、エロス (2004) EROS 』等のソダーバーグが遊び心を狙ってか、『 フル・フロンタル 』の制作費はたったの $2,000,000 ($1=¥ 120 換算で2億4千万円)という今時超低予算な作品だ。計算すると、最近の出演料が一作 $25,000,000 (約 30 億 円)という主演ジュリア・ロバーツのペイはないってこと?ソダーバーグ監督作品に出られるだけで幸せ、ということかな。
 映画『 フル・フロンタル 』は、“映画を愛する人達のための映画についての映画”がキャッチコピー。『 フル・フロンタル 』は、映画関係の登場人物七人の一日を追って、各人が抱えている問題を淡々と写していくおかしさとペーソスを描く。『 フル・フロンタル 』のタイトルの意味は、「正面前面ヌード( フル・フロンタル・ヌーディティ Full Frontal Nudity )」から。映画『 フル・フロンタル 』の思いもよらない後半の展開と、たった 18 日間で『 フル・フロンタル 』映画が撮影されたことと言い、何かと話題をさらう映画と言えるだろう。
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【『 フル・フロンタル 』のスタッフとキャスト】
監督: スティーヴン・ソダーバーグ Steven Soderbergh (Directed by)
製作: グレゴリー・ジェイコブズ Gregory Jacobs (producer)
    スコット・クレイマー Scott Kramer (producer)
製作総指揮: ボブ・ワインスタイン Bob Weinstein (executive producer)
    ハーヴェイ・ワインスタイン Harvey Weinstein (executive producer)
脚本: コ−ルマン・ヒュー Coleman Hough (written by)
撮影: スティーヴン・ソダーバーグ (as Peter Andrews)  (Cinematography by)
音楽: ジャック・ダヴィドヴィッチ Jacques Davidovici (Original Music by)
編集: セーラ・フラック Sarah Flack (Film Editing by)
配役: デブラ・ゼーン Debra Zane (Casting by)
 
出演: デヴィッド・ドゥカヴニー David Duchovny ビル/ガス Bill/Gus
    ブレア・アンダーウッド  Blair Underwood  ニコラス/カルヴィン Nicholas/Calvin
    ジュリア・ロバーツ Julia Roberts キャサリン/フランチェスカ Catherine/Francesca
    キャサリン・キーナー Catherine Keener リー  Lee
    デヴィッド・ハイド・ピアース David Hyde Pierce カール Carl
    エンリコ・コラントーニ Enrico Colantoni アーティ/エド Arty/Ed
    メアリー・マコーマック Mary McCormack リンダ Linda
    ニッキー・カット Nicky Katt ヒトラー役の役者 Hitler
    エリカ・アレクサンダー Erika Alexander ルーシー Lucy
    トレイシー・ヴァイラー Tracy Vilar ヘザー獣医 Heather
    エディー・マクリントック Eddie McClintock デヴィッド David
    ジャニュアリー・ジョーンズ January Jones トレイシー Tracy
    ブラッド・ピット Brad Pitt カメオ出演 Brad/Himself

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ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。
■映画『 フル・フロンタル 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー
 私は日本公開前に字幕スーパーなしの英語で観たので、わかる範囲でレヴューします。映画データについては調査した時点と公開される時点で異なる場合があります。本作の内容については、語学力と経験・常識不足のため、間違いや勘違いや適切でない表現があるかもしれません。どうかご理解賜りますようお願いいたします。また、リンクやメールをいただく場合はここを必ずお読みくださいますように。
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【フル・フロンタル 第01段落】  先ずメインキャラクターが肉声と共に一人ずつ紹介されていく。舞台はハリウッド。映画製作者ガス・デラリオ Gus Delario (デヴィッド・ドゥカヴニー)の誕生日パーティに出席する六人の、ロサンゼルス Los Angeles, Calif. でのたった一日の言行を追っていくストーリー。

 ◆カルヴィン・カミングズ Calvin Cummings (ブレア・アンダーウッド)。アフリカ系アメリカ人の 36 歳の男性。俳優。ひどいセックスなんてものはないと思っている。パーティにはガスに個人的に招待されている。

 ◆フランチェスカ・デイヴィス Francesca Davis (ジュリア・ロバーツ)。 33 歳の映画女優。自分の資産がどれだけあるのかも知らない。ガスに個人的に招待されている。

 ◆リー・ブリッジ Lee Bridge (キャサリン・キーナー)。翌日で 41 歳になる女性。映画会社の重役。自分の行動は完全に正常だと信じている。ガスに招待されたと勝手に解釈しているが、その他一名、にすぎない。

 ◆カール・ブリッジ Carl Bridge (デヴィッド・ハイド・ピアース)。 42 歳の雑誌記者及び脚本家。妻リーが自分のことをうんざりしていると気にしている。ガスの助手に招待された。

 ◆アーサー・ディーン Arthur Dean 愛称アーティ(エンリコ・コラントーニ)。40歳の男性。劇作家及びたまに役者。母にひどく虐待された。招待されておらず。

 ◆リンダ・シャープ Linda Sharp (メアリー・マコーマック)。 36 歳。リーの妹。マッサージ師。男性との関係は長くて三ヶ月しかもたない。ガスのパーティには姉リーに招待された。

【フル・フロンタル 第02段落】  この映画は、映画の中に別の映画が出てくる手法をとっている。その映画ではジュリア・ロバーツがキャサリンという役、ブレア・アンダーウッドがニコラスという役。それだから、出演者が Francesca Davis 、 Calvin Cummings 、製作 Gus Delario 、監督 Constantine Alexander という映画の中の映画のクレジットが出てくるという遊び。その後で、本物の映画の主演とタイトル JULIA ROBERTS / FULL FRONTAL が表示された。LAの空港ロビーに主演の二人が登場するが、マジで映画中の映画とは気付かずに幸は観ていた!

【フル・フロンタル 第03段落】  女優フランチェスカが劇中でキャサリン役に扮している時は、黒髪でセミロングのカットが斬新な、ジュリア・ロバーツの新しい可愛らしいイメージを受けた。ジュリア・ロバーツはご存知
プリティ・ブライド (1999) RUNAWAY BRIDE
ノッティングヒルの恋人 (1999) NOTTING HILL
エリン・ブロコビッチ (2000) ERIN BROCKOVICH
アメリカン・スウィートハート (2001) AMERICA'S SWEETHEARTS
オーシャンズ11 (2001) OCEAN'S ELEVEN
コンフェッション (2002) CONFESSIONS OF A DANGEROUS MIND
モナリザ・スマイル (2003) MONA LISA SMILE
クローサー (2004) CLOSER
オーシャンズ12 (2004) OCEAN'S TWELVE 』等でハリウッドを担う大女優となっている。それにしても、お顔が小さく、とがっていて、この世の者ではないように奇麗だナ〜。それにソダーバーグ監督作品が多い。"ソダーバーグ一家"の一員になっているのだろう。

【フル・フロンタル 第04段落】  この映画中の映画のシーンの間は、画像は一般の映画と同様にきめ細かくて鮮明。それ以外のシーンでは、ソダーバーグ監督が自らキャノンの家庭用ビデオを回して撮っている。だから、ビデオで素人が撮る"船酔い"現象はなかったけれど、画像はくっきりしていなくて、物凄くわざとぼやかしているシーンもある。ズームの仕方とか、角度の変え方とか、いかにも家庭用ビデオの使用者という味を出している。ソダーバーグ監督はこの『 フル・フロンタル 』以外でも撮影を担当しており、その場合は別名ピーター・アンドリュースとしている。監督・製作・撮影・原作・脚本・編集・俳優、と、まさに映画のために生まれてきたような映画人だ。

【フル・フロンタル 第05段落】  大スター達を出演させながら超低予算でこの映画を実践する為に、ソダーバーグは台本に同封して以下のリストをスター達に送りつけたそうだ。簡略に訳すと:(1)セットは実地のロケ地で。(2)セットまで自分で車で来ること。(3)食事は出さないから、済ませてくること。(4)衣装は自前。(5)ヘアとメークも自分で。(6)トレーラーは供給しない。(注:普通、ハリウッド俳優達は一人ずつに大型トレーラーを撮影現場に与えられる。化粧直しも食事もトイレも休憩も、プライバシーを保たれてできる。)控え場所はなるべく確保するように努めるが、確約は出来ないからトイレ等で苦労するかも。(7)アドリブ歓迎。(8)役に関してインタヴューされるからそのつもりで。(9)他人の役に関してもインタヴューされる。(10)出演したら楽しいゼ。━このうち問題点があればすぐに読むのを止めて、このシナリオを送り返すように、と。

【フル・フロンタル 第06段落】  『 フル・フロンタル 』の製作総指揮は、ワインスタイン兄弟。かの有名なミラマックス Miramax Films の創設者である。兄がハーヴェイ・ワインスタインで、
アイリス (2001) IRIS 』は兄だけだが、
リトル・ヴォイス (1998) LITTLE VOICE
恋におちたシェイクスピア (1998) SHAKESPEARE IN LOVE
マレーナ (2000) MALENA
ショコラ (2000) CHOCOLAT
ニューヨークの恋人 (2001) KATE & LEOPOLD
ビロウ (2002) BELOW
シカゴ (2002) CHICAGO: THE MUSICAL
コンフェッション (2002) CONFESSIONS OF A DANGEROUS MIND 』等のヒット作品のオンパレードは、一歳違いの弟ボブ・ワインスタインと共に製作したもの。因みに、 Miramax という会社名は、母親ミリアム Miriam と父親マックス Max からつけたという嘘のようなホントの話。

【フル・フロンタル 第07段落】  ロサンゼルス、金曜日。明るい日差しの立派な家のベッドルームで目を覚ますブリッジ夫妻。倦怠期かしら。妻リーは、もうこんな結婚生活を続けたくないと思っている。離婚届を出そう。そんな夫への手紙を残して、さっそうとキャリアウーマンのパンツスーツで出勤していく。リーは内心、俳優のカルヴィンに愛されたいと思っているのだ。

【フル・フロンタル 第08段落】  夫カールは雑誌記者及び脚本家で、現在はナレーションの仕事をしていて、帰宅すれば食べて寝るだけ、翌朝起きればすぐまた仕事へ、というハードな毎日で、尿は緑色をしているよ、と妻に言うが、妻は知らん顔。妻が自分に愛想をつかしているのではと不安げだが、自分は妻を愛している。カール役のデヴィッド・ハイド・ピアースは
トレジャー・プラネット (2002) TREASURE PLANET 』でドクター・ドプラー Doctor Doppler の声優だ。

【フル・フロンタル 第09段落】  リーの妹リンダは独身で、姉のブルネットと違い、プロンドっぽいブラウンの髪をしている。マンションに独り住いで、マッサージ師で自立している女性。若くはないけれど、姉ほどやつれていなく、女盛りといったところか。男性には興味あり。恋をしたくてたまらない。今日も、出勤する直前、マンションの向かいのバルコニーのマッチョな男をブラインド越しに覗いていた。マッサージは、ホテルの客室まで出向いて仕事するので、折り畳み簡易ベッドから道具一式をその都度かついで、車でその場まで乗っていく。リンダ役のメアリー・マコーマックは
光の旅人 K−PAX (2001) K-PAX 』等に出演。

【フル・フロンタル 第10段落】  劇作家のアーサーは、只今、小劇場で催すヒトラーの劇のことで頭がいっぱい。アーサー役のエンリコ・コラントーニは
ギャラクシー・クエスト (1999) GALAXY QUEST 』にも出ている。ヒトラー役の男優(ニッキー・カット)と劇についての捉え方などの討論をして、今夕のオープニングに備えて緊張して働いている。小劇場であるから、アーサー自身も客の入場チケットの確認の係もすれば、役者になって舞台に立ちもする。

【フル・フロンタル 第11段落】  ブラッド・ピットのポスター「 BRAD PITT TAKES A VOW (ブラッド・ピットは誓約する?修道生活に入る?)」の貼られた一室。いかにもハリウッドの映画関連の場という感じ。また、会議中にアップル Apple のマークが大きく写るブック型コンピュータも見せるので、これはこの映画がアップル(マッキントッシュ Macintosh computers /マック)で編集したので、アップルがスポンサーになっているのかもしれないと思った。

【フル・フロンタル 第12段落】  俳優カルヴィンは、女優フランチェスカと車で移動中に、アフリカ系アメリカ人俳優のことを喋ったりもする。デンゼル・ワシントン Denzel Washington (
マーシャル・ロー (1998) THE SIEGE
ボーン・コレクター (1999) THE BONE COLLECTOR
ジョンQ−最後の決断− (2002) JOHN Q
きみの帰る場所/アントワン・フィッシャー (2002) ANTWONE FISHER 』等に出演)とかクリス・ロック Chris Rock (
リーサル・ウェポン4 (1998) LETHAL WEAPON 4
ベティ・サイズモア (2000) NURSE BETTY
9デイズ (2002) BAD COMPANY 』等に出演)のことを。これもいかにも同業者の噂ばなしという雰囲気。

【フル・フロンタル 第13段落】  リーは映画会社では、新入りの俳優・女優の卵たちと一対一で面接する重役さん。地球儀のような透明ビニールボールを重役室に置いて、それを片身離さずに持っている、ちょっと変わった中年女性。デヴィッド(エディー・マクリントック:
クリスティーナの好きなコト (2002) THE SWEETEST THING 』等に出演)を面接したら、ちょっとご機嫌になったようだ。女優希望のトレイシー(ジャニュアリー・ジョーンズ:
バンディッツ (2001) BANDITS 』等に出演)には、淡々と、役名のつけ方を説明している。配役の名は、ミドルネーム、育った地域の名、ペットの名、の順でつけるのだそうで。映画ラストに近い他のシーンでも、映画関係者たちがそれをテーブルトークの話題にして盛り上がっていたから、これは案外本当かな、なんて信じちゃったりして。

【フル・フロンタル 第14段落】  リーは明日が 41 歳の誕生日なので、妹のリンダとレストランで落ち合っている。年齢を気にしているリー。妹にプレゼントをもらう。その頃、夫のカールは、雑誌社の社長に呼ばれていた。新しい記事の構想を練って意気揚揚としていたのに、まるで逆の顛末になるとは。社長はおかしな質問をカールにした:「帰宅して、冷蔵庫の瓶ビールを飲むのに、(1)グラスについでから飲むか?(2)瓶からそのまま飲むか?」 それに対し「(1)グラスについでから飲む」を選んだカールはクビになる。この雑誌社が欲しているのは(2)のタイプだと言われて。トホホ…。

【フル・フロンタル 第15段落】  俳優カルヴィンと女優フランチェスカは街でロケ中だ。サングラスをかけているから分かりにくいけど、ここで共演者として、ブラッド・ピットがカメオ出演で登場!ブラピは『 リバー・ランズ・スルー・イット (1992) A RIVER RUNS THROUGH IT 』
セブン・イヤーズ・イン・チベット (1997) SEVEN YEARS IN TIBET
スパイ・ゲーム (2001) SPY GAME
オーシャンズ11 (2001) OCEAN'S ELEVEN
コンフェッション (2002) CONFESSIONS OF A DANGEROUS MIND 』等で観ているし、
シンドバッド 7つの海の伝説 (2003) SINBAD: LEGEND OF THE SEVEN SEAS
トロイ (2004) TROY
Mr.&Mrs. スミス (2005) MR. AND MRS. SMITH 』等、まだまだ色々あるが、依然としてハンサム顔だから若々しいし、大スターという貫禄。このチープ映画『 フル・フロンタル 』では、ブラッド・ピットは"無料奉仕"なのだろう。

【フル・フロンタル 第16段落】  製作費が少なくても、出演俳優・女優はゴージャス。ジュリア・ロバーツは、劇中劇のシーンが終わると、ガバッと黒髪のカツラをとって、エリン・ブロコビッチ風にサングラスと、ブロンドヘアを引きつめアップにして太いヘアバンドで留めている格好に変身する。これで、映画中の映画の存在がはっきりしたというわけ。こういうふうに、映画製作者ガス・デラリオのパーティに出席する夕方までに、各自の言行(あってもなくても物語の筋には無影響。各人が悩んで生きて暮らしているという証拠だけ。)が雑然と延々と続いていく。観ている方としてはイライラしないこともない。群像劇というジャンルかな。

【フル・フロンタル 第17段落】  やっと転換するのは、デヴィッド・ドゥカヴニー扮するガスが登場する後半からかしら。始まりから既に3分の2ほど経っている。リンダは、映画プロデューサーのガスにマッサージを依頼されて、ホテルの一室に向かった。例によって、折り畳みベッド等の商売道具を担いでホテルに出動する。ホテルのマネージャーやメイドさんたちは、顔見知りとなっていてフレンドリーだ。デヴィッド・ドゥカヴニーはTVや映画の『 X−ファイル / THE X-FILES 』シリーズが代表作かもしれないが、
ズーランダー (2001) ZOOLANDER 』等の映画でもお馴染み。プリンストン大学 Princeton University とエール大学 Yale University での学業経験を捨てて映画界に入った、父親ユダヤ系・母親スコットランド系の俳優さん。でも苗字ドゥカヴニーは「精神の spiritual 」を意味するロシア語だそうだ。

【フル・フロンタル 第18段落】  ガスは浴衣を着て待っていた。寝台でうつ伏せにしてタオルをかけて、リンダはマッサージする。次に仰向けでマッサージしていると、ガスは"ある事"をリンダに頼む。 30 秒で 500 ドル($1=¥ 120 換算で6万円)という頼みに負けて、リンダは応じてしまう(ちょっと書きにくいデス…)。この後、彼女はガスのバースデーパーティに着ていくドレスを貸衣装屋で借りた。

【フル・フロンタル 第19段落】  リーはその頃、ガスへのプレゼントをセックスショップに行って買い求めた。すると、店員だと思った二人の男は強盗で、クレジットカード等を盗られてひどい目に遭う。夫カールからのケータイの連絡も繋がらない。その上、ガスのパーティへドレスアップしていく時間がなくなって、仕事着のパンツスーツのまま会場のホテルのロビーへ向かう羽目に。リンダは貸衣装で着飾って到着、姉のリーと合流した。俳優のカルヴィンも 7 時 30 分に到着、女優フランチェスカも到着。ロビーには招待客がぞくぞくと集まってきた。映画関係者たちの豪華な夕べが待っている。

【フル・フロンタル 第20段落】  妻リーがガスのパーティ会場に向かう頃、夫のカールは会社を辞めさせられて、記事や脚本をいっぱい詰めたダンボール箱を抱えて寂しく帰宅する。そして冷蔵庫の瓶ビールを手にして、一瞬考えて、やはりガラスのジョッキに注いでから飲んだ。社長にああ言われても、そういう性質は変えられない。そんな自分を分析し、ハッと思う。飼い犬のジャンゴ Jungo の姿がない!探すと、死にそうだ。かかりつけの獣医ヘザー(トレイシー・ヴァイラーは
ダブル・ジョパディー (1999) DOUBLE JEOPARDY 』等に出演)に電話して往診してもらう。ヘザーは女医で、慌てているカールに、冷静に状況を把握させると、犬は家人が留守の間に台所にあったブラウニー brownie (ピーナツ入りクッキー)を全部平らげてのびてしまったと判断できた。こうしてワンちゃんも無事に治って、ヘザー医師とカールはその後楽しげに会話している。妻リーは途中で電話したが、こういう具合でカールには電話が聞こえなかった。・・・

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◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。
 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say !


【フル・フロンタル 第21段落】  ガスのパーティ会場では、皆、ロビーからパーティ会場のテーブル席へ移動して、食前の会話を楽しんでいる。でも肝心のガスがちっとも姿を現さないので、カルヴィンは恋人ルーシー(エリカ・アレクサンダー)を隣席にして、数テーブルの客たちの暇つぶしのトークをしてやる。カルヴィンのそういう姿に刺激されてか、リーはお酒を飲みすぎて絡む悪態を見せて、一同をシラケさせる。こんなことをしていて 45 分も経った。マッサージ師としてガスに昼間に顔を合わせているリンダは、様子を見にガスの客室へ上がってみる。メイドさんに鍵を開けてもらって室内に入ったリンダが発見したのは…。

【フル・フロンタル 第22段落】  ガスは頭部にビニール袋を被った状態で、全裸で死んでいた…。だからタイトルの『 FULL FRONTAL 』なのかな?ちょっと分かりにくかったのだけど、ガスは女性を肉体的に相手にしないで自分でビニール袋を被って楽しむ嗜好があったのかも。 CinemaClock Ottawa の解説によると━リンダは愛されたがっている。カールは妻のリーを愛している。リーはカルヴィンに愛されたがっている。カルヴィンは劇中でキャサリンを愛していると発見する役のニコラスを演じている。キャサリンは女優フランチェスカであるが、真の愛を見つける。そしてガスは自分自身を愛する。━つまり、ガスはナルシスト(又はナルシシスト) narcissist ということかな。<ナルシシズム narcissism =自分の容姿に陶酔し、自分自身を性愛の対象としようとする傾向。自己愛。ギリシャ神話のナルキッソスにちなむ精神分析用語(大辞林国語辞典より)。>

【フル・フロンタル 第23段落】  ガスが死んで、ショックのリーは沈んで帰宅した。今朝には夫カールと離婚するつもりだったのに、強盗事件といい、ガスの死亡といい、非凡な事件が起こると、それどころではなくなるのが人間だと映画は言いたいらしい。電話も繋がらないまま帰宅して、夫が獣医ヘザーとお喋りしていて気付かないまま、黙って座って聞いていた。すると、夫は妻のことを愛していると獣医に話しているのが聞こえた。と同時に彼女の帰宅をカールと獣医は気付き、リーはガスが死んだことを伝えると、緊張が解けたように泣き出して夫に抱かれる。

【フル・フロンタル 第24段落】  翌日のロサンゼルス、土曜日。平和ムードで「誕生日おめでとう」とカールは妻リーに声をかける。この夫婦も危機を乗り越えたんだ。カルヴィンとフランチェスカの劇中劇のニコラスとキャサリンはハッピーエンド。独身のリンダは、ツーソン Tucson への飛行機で男性と知り合い、お互い気に入って週末を一緒に過ごすことに。その機内のシーンを撮影しているのを撮影して映画は終わっていく。でも、エンドロールが終わっても席を立たないで!ブラッド・ピット様が出てくるのデス。ソダーバーグ監督は、ブラッド・ピットに一目置いているようだ。敬意を表して、"格"が上の扱いみたい。

【フル・フロンタル 第25段落】  なお、タイトルは『 HOW TO SURVIVE A HOTEL ROOM FIRE (ホテル部屋の火事からの助かり方)』だったのが、撮影が 2001 年 11 月だった為、同時多発テロ事件の直後でタイトルを考慮し直して『 THE ART OF NEGOTIATING A TURN (転換期の切り抜け方)』ともなり、それらは米国のワーキングタイトルとして残っている。ソダーバーグやワインスタイン兄弟の他にも、編集のセーラ・フラックは
プール (2002) SWIMFAN 』、配役のデブラ・ゼーンは
アメリカン・ビューティー (1999) AMERICAN BEAUTY
コーリング (2002) DRAGONFLY
ロード・トゥ・パーディション (2002) ROAD TO PERDITION
キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン (2002) CATCH ME IF YOU CAN 』等で有名なスタッフだ。

【フル・フロンタル 第26段落】  ソダーバーグを親分に、映画人たちが自分達でお遊びするような作品だという印象を受けた。ソダーバーグがスター達に送りつけた上述の 10 条のリストだが、一つ書き漏れているのでは?「(11)ただし、出演料はありません。」 どうでしょうか?

以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず8701文字/文責:幸田幸

参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集
       http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
      FULL FRONTAL 公式サイト(英語版)
       http://www.fullfrontal.com/
      Full Frontal : Movie Description, Show times & Film Critics
      http://www.cinemamontreal.com/aw/crva.aw/p.cm/r.que/m.Montreal/
j.e/i.3727/s.0/f.Full_Frontal.html
      CinemaClock Ottawa
      http://www.cinemaclock.com/aw/crva.aw/c.F8F5EE/p.clock/r.ont/m.Ottawa/
j.e/i.3727/s.0/f.Full_Frontal.html

いつも参考にしておりますallcinema ONLINE さんには、2003年05月07日の時点で[ データ ]及び [ 解説 ]は出ていませんので、これをアップしました。Thanks to allcinema ONLINE.
■映画『 フル・フロンタル 』の更新記録
2003/05/07新規: ファイル作成
2004/12/26更新: ◆一部テキスト追記と書式変更
2005/07/02更新: ◆データ追加
2005/10/06更新: ◆追記
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幸田 幸
coda_sati@hotmail.com
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