星降る夜のリストランテ
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星降る夜のリストランテ (1998)
LA CENA
 映画『 星降る夜のリストランテ (1998) LA CENA 』をレヴュー紹介します。

 映画『 星降る夜のリストランテ LA CENA 』を以下に目次別に紹介する。
■映画『 星降る夜のリストランテ LA CENA 』の解説及びポスター、予告編
 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。
■映画『 星降る夜のリストランテ LA CENA 』の映画データ
■映画『 星降る夜のリストランテ LA CENA 』の監督
■映画『 星降る夜のリストランテ LA CENA 』のスタッフとキャスト
■映画『 星降る夜のリストランテ LA CENA 』の<もっと詳しく>
 <もっと詳しく>は映画『 星降る夜のリストランテ 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタばれ)です。※ご注意:映画『 星降る夜のリストランテ (1998) LA CENA 』の内容やネタばれがお好みでない方は読まないで下さい。
■映画『 星降る夜のリストランテ LA CENA 』の結末
■映画『 星降る夜のリストランテ LA CENA 』の感想
■映画『 星降る夜のリストランテ LA CENA 』の更新記録

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幸の鑑賞評価: 8つ星 
■映画『 星降る夜のリストランテ (1998) LA CENA 』の解説及びポスター、予告編
星降る夜のリストランテ
星降る夜のリストランテ
■映画『 星降る夜のリストランテ LA CENA 』の解説

 映画『 星降る夜のリストランテ (1998) LA CENA 』は、イタリア・ローマにある小さなレストランの一日を描いたエットレ・スコーラ監督作品。 1999 年モントリオール国際映画祭特別グランプリ受賞、イタリア映画記者組合が選出したナストリ・ダルジェント賞の最優秀助演男優賞に『 星降る夜のリストランテ 』の男性キャスト全員、また、最優秀助演女優賞にステファニア・サンドレッリが輝いた。
 『 星降る夜のリストランテ 』の舞台は、 14 テーブルしかないローマの小さなレストラン"アルトゥーロの店"。それぞれのテーブルにはそれぞれの人生ドラマがある。『 星降る夜のリストランテ 』では、カメラが各テーブルや厨房を行ったり来たりして、そのドラマを断片的に綴っていくことで、自分も"アルトゥーロの店"を訪れたような気分になれる。レストランに行って、他のお客さんをウォッチングすることってありますよね?そんな感じデス。『 星降る夜のリストランテ 』のヴィデオのスイッチを押せば、日本の温泉宿の女将みたいな女主人のフローラ(ファニー・アルダン:『 エリザベス (1998) ELIZABETH 』等に出演)があなたを温かく迎えてくれるでしょう。
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com.
Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc.
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■映画『 星降る夜のリストランテ (1998) LA CENA 』の映画データ
 上映時間:108分
 製作国:イタリア/フランス
 公開情報:アルシネテラン
 イタリア初公開年月:1998年11月27日
 日本初公開年月:2001年3月17日
 ジャンル:ドラマ/コメディ
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■映画『 星降る夜のリストランテ (1998) LA CENA 』の監督
 1931 年にイタリアのトレヴィーコで生まれたエットレ・スコーラ監督は、大学では法律を学んだが、 50 年代初期のコメディ映画の脚本に貢献し、 1954 年に脚本家として初めて映画にクレジット、『 もしお許し願えれば女について話しましょう (1964) SE PERMETTETE PARLIAMO DI DONNE 』で監督デビューを果す。殆どのシチュエーションがイタリアの実際のニュースや警察の報告書を元にしているという 1969 年の『 Il Commisario Pepe 』というコメディ風刺映画で、それ以後の彼の全映画に一貫して観られる、社会問題への深い取り組みが示されたそうだ。
 カンヌ国際映画祭では 1976 年に『 醜い奴、汚い奴、悪い奴<未> (1976) BRUTTI, SPORCHI E GATTIVI 』で監督賞、1980年に『 La Terrazza 』で脚本賞、1981年に『 パッション・ダモーレ (1980) PASSION D'AMOURE 』で栄誉賞を受賞、またベルリン国際映画祭では1984年に『 ル・バル (1984) LE BAL 』で銀熊賞を受賞と、数々の栄冠に輝くイタリア映画界のスゴイ監督みたい。
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【『 星降る夜のリストランテ 』のスタッフとキャスト】
監督: エットレ・スコーラ Ettore Scola
脚本: エットレ・スコーラ Ettore Scola
     フリオ・スカルペッリ Furio Scarpelli
     シルビア・コスラ Silvia Scola
音楽: アルマンド・トロヴァヨーリ Armando Trovaioli

出演: ファニー・アルダン Fanny Ardant フローラ
     マリー・ジラン Marie Gillain チェチリア
     ヴィットリオ・ガスマン Vittorio Gassman ペズッロ先生
     ジャンカルロ・ジャンニーニ Giancarlo Giannini 教授
     ステファニア・サンドレッリ Stefania Sandrelli イザベル
     リッカルド・ガッローネ Riccardo Garrone ディオメデ
     アントニオ・カタニア Antonio Catania マゴ・アダム 魔術師
     ロランド・ラヴェッロ Rolando Ravello エルネスト
     フランチェスカ・ダロージャ Francesca D'aloja アレッサンドラ
     ジョルジオ・ティラバッシ Giorgio Tirabassi フランチェスコ

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ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。
■映画『 星降る夜のリストランテ (1998) LA CENA 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー

【星降る夜のリストランテ 第01段落】  レストランには人生の全てが詰まっている。ローラン・ベネギ監督の『 パリのレストラン (1995) AU PETIT MARGUERY 』もそんな風だった。その映画では店じまいをするレストランの最後という特別な日を扱っていたが、本作では普段と変わりのない日常のレストランが描かれる。

【星降る夜のリストランテ 第02段落】  " Arturo al Portico アルトゥーロの店 "はイタリア・ローマにある小さなレストラン。女主人のフローラが到着すると、店内で従業員たちが腹ごしらえをし、厨房ではシェフがバースデイ・ケーキを作っている。なかなか職人堅気なシェフのようだ。きっとここのレストランの料理は美味しいのだろう。バイクで厨房の中に入ってきた給仕のウリアーノとシェフが言い合っているのを聞きながら、フローラは受付で赤い靴に履き替える。今日はフローラにとって特別な日なのだろうか?店の給仕たちには、トスカーナ出身の一見ワイルドな若者ウリアーノや、彼のことが気に入らない老人のディオメデ(リッカルド・ガッローネ)、詩や劇が好きなマウリツィオがいる。

【星降る夜のリストランテ 第03段落】  夕方の開店時、最初にやってきたのは常連客のペズッロ先生(ヴィットリオ・ガスマン)。人生の酸いも甘いも知った老人の彼は、今日もレストランの人々を観察しながら、楽しい夕食のひと時を過ごすつもりなのだろう。彼の後にも次々とお客がやって来る。少し悩んだ挙句に、ペズッロ先生はいつもと同じリゾットを注文する。

【星降る夜のリストランテ 第04段落】  おとなしそうな青年エルネストが予約無しで独りやって来た時、フローラが小さなテーブルを彼のために設置し、テーブルは全部で 15 になった。映像には映らない 16 番目のテーブルについた私が、他のテーブルと女主人フローラについて知ったことを、あなたにこっそりとお教えしましょう。

【星降る夜のリストランテ 第05段落】  日本人としてやはり目に付くのは、同じ東洋人の存在。店のイタリア人からすれば、その三人家族の東洋人は日本人なのだが、本当は韓国人である。遠いヨーロッパの国からすれば、日本も韓国も同じ国のようなものなのだろう。 2002 年のワールドカップは日韓共催だったけれど、ヨーロッパでは一つの国でやっていたと思っている人が多かったのではないかな。カルボナーラにケチャップをかけたり、何か目新しいことが起こるとすぐにカメラで写真を撮ったり、子供が食事中もずっとゲームボーイをしていたりと、何かとヘンなアジア人である。ヨーロッパの映画で私達が普通に扱われるようになるのはいつのことになるのだろうか。

【星降る夜のリストランテ 第06段落】  その日本人に見られている韓国人家族より一つ前のテーブルには、崩壊家族の再会があった。たぶん子供たちとの対話を望んだ父親のお膳立てだろう。しかし、仕事ばかりして家族を顧みなかった上に、別の女性と再婚している父親と、今はもう一人前の女性に成長したの娘のアレッサンドラ(フランチェスカ・ダロージャ)の会話はギクシャクしている。ところが、遅れて息子のフランチェスコ(ジョルジオ・ティラバッシ)がやって来ると、明るい彼の振る舞いにだんだん空気が和やかになっていく。家庭不和の為だろう、かつてヤク中毒だったフランチェスコは、社会復帰の為の福祉施設にいるようで、いい方向に向かっているようだ。

【星降る夜のリストランテ 第07段落】  その家族の横のテーブルには、キャリアウーマンタイプの女性。その女性の前のテーブルには、妊娠の疑いの為に、結婚について話し合っているカップルがいる。しかし、女性のほうが妊娠のために義務の結婚をするのはイヤだと言っている。そんな話を聞きながら、男性のほうは、目があったキャリアウーマンタイプの女性からの誘惑を感じている。キャリアウーマンの女性がトイレに向かったとき、すかさず男性は後を追った。トイレで二人は抱き合うが、そのキャリアウーマンは男性上位の社会にストレスを感じているのか、一気にその男性を突き放す行為をしてトイレを出て行った。茫然自失の男性が席に戻ると、恋人の女性は彼が自分の話を聞いてナーヴァスになっているのだと勘違いし、気持ちが燃え上がったようだ。その恋人たちは席を立ち、女性の家に向かった。男性に恨みを持っているのかと思いきや、そのキャリアウーマンは隣のテーブルのフランチェスコと仲良くなる。

【星降る夜のリストランテ 第08段落】  崩壊家族の前のテーブルには、演出家兼俳優の男が、自分が自己アレンジした「カラマーゾフの兄弟」の舞台について、俳優に語っている。演出家の男は、あまり出番の無い役に俳優を出演させるため、わざと誇張して話しているようだ。俳優は自分の台詞がほとんど無いので出演をずっと渋っている。しかし、ラストシーンの話を聞いて一気にその気になる。そのラストとは、俳優演じる被告席のキリストが、演出家兼俳優の男が演じる審問官にキスをするというもの。俳優が自分の役を絶賛するので、演出家兼俳優の男は端役だと思っていたキリスト役が良い様に思えてくる。二人で毎日交替に審問官役とキリスト役をしようと提案するが、すっかり自分の役が気に入った俳優は承知しない。しかし、俳優の出演が決まってよかった。

【星降る夜のリストランテ 第09段落】  演出家兼俳優たちの前のテーブルには、オバちゃんグループがいる。しかし、映画の中では彼女たちに関するエピソードが一つも無かった。日本の上映時間は 108 分となっているのだが、モントリオール国際映画祭のサイトでは 127 分となっている。もしかしたらその差の 19 分に彼女たちの話があったのかなぁ?それともその 19 分には東洋人がイタリア旅行をしたくなくなるような強烈なエピソードでもあったのだろうか?それとも他のストーリーが?完全版を観てみたいものだ。

【星降る夜のリストランテ 第10段落】  以上は厨房の左側にあるテーブルである。レストラン内左側の、厨房に一番近いところに店の受付があり、そこが一応フローラの場所である。その傍のテーブルは店主アルトゥーロの席で、病気になり店の運営を妻に任せている彼が、店内を眺めながら食事をする場所だ。二人の間には子供はいない。フローラは店を監視しながら、なんだか電話を待っているようである。無意識にやめたはずの煙草を口にしているフローラ。夫はそんな彼女に気付くが、何故かは分からない。

【星降る夜のリストランテ 第11段落】  フローラがかかってきた電話を取ると、それは彼女が待っていた相手からだった。彼女には夫以外にも愛する人がいるようで、その相手が彼女との新しい人生を望んでいるようなのだ。泣きそうなフローラを見たペズッロ先生は、彼女の受付へと足を運んだ。勘定を長年まけて貰っているのがしのびないと言うペズッロ先生に、フローラは本当に話したいことは何なのか訊く。彼女の状況をなんとなく察知している彼は婉曲的に話す。「食事を見れば、その人が分かる。…食卓の楽しみは共に生きること。あなたの職業は世界一だ。新しい幸福を得ようとすると、苦しみが始まるでしょう。」自分でも判っていた、恋の結末を他人から聞かされたフローラは、自分が生きる道を確信したようだ。明るくペズッロ先生に礼を言う。

【星降る夜のリストランテ 第12段落】  次は、レストラン内右側のテーブルに座るお客の様子を奥から順にお伝えしよう。厨房すぐ右横のテーブルに座るのは、ローラという黒髪の女性。その彼女のために次々と四人の男性客がやって来る。一人目はリーノというメガネをかけたスーツ姿の男、二人目は茶色のジャンパーを着た髭の男ヴィニーチョ、三人目はちょっととぼけた感じのアルド、四人目は保安警察の監督官パセリーだ。ローラには暴力亭主がいて、パセリー監督官とは、夫を暴行罪で訴えたときに知り合ったのだそうだ。リーノとヴィニーチョは顔見知りのようだが、次々と新しい男が現れるのに、ローラの男友達は困惑気味である。しかし、自分たちの関係を解決する為、ローラを中心にみんな大人しく席についている。

【星降る夜のリストランテ 第13段落】  五人が所狭しと座るテーブルの前には、母親とイジメられっ子の息子がいる。学位をとった息子のお祝いに、友人たちを招いたようなのだが、誰も訪れる気配がない。そのテーブルの斜め横に陣取っている常連客のペズッロ先生は、その母親にローラ達と同席するように提案する。一方はぎゅうぎゅう詰のテーブルから解放されて喜び、他方は虚しく空いた席が埋められて喜んだ。

【星降る夜のリストランテ 第14段落】  その前の席は、フローラが新たに設置した、暗い青年エルネストのテーブルである。レストランには、絵を売る画家や怪しげな魔術師(アントニオ・カタニア)といった、食事以外の目的の人もやって来る。孤独な青年エルネストは、テーブルに名刺を配って回る魔術師に引っかかった。はっきり言って見たままなのだが、エルネストは自分の性格を言い当てられ、マゴ・アダムというその魔術師に心酔してしまう。

【星降る夜のリストランテ 第15段落】  しかし、アダムは本当に魔術師なのだろうか。それとも、今まで似非(えせ)魔術師だったのが、エルネストとの出会いが彼を本物にしてしまったのだろうか。アダムはビックリするような力を発揮する。念力でアダムの意思が自分に伝わったことに驚いたエルネストは、アダムの出現が自分に活気を与えてくれるような気になり、誰にも内緒だった秘密を明かす。エルネストはカツラを取った。しかし、近くのテーブルから見ていたペズッロ先生の無反応を見て恥ずかしくなり、またハゲ頭にカツラを被った。それでも、エルネストはアダムが自分の人生を変えてくれる人だと思い、彼と意気投合する。

【星降る夜のリストランテ 第16段落】  ペズッロ先生から間仕切りを飛ばして前にあるテーブルには、不倫関係にある大学の哲学教授ジュリオ(ジャンカルロ・ジャンニーニ)とキュートなブルジョアの女子大生のチェチリア(マリー・ジラン)が座った。ランコムのイメージ・キャラクターの一人でもあるマリー・ジランは、透き通るような白い肌が美しい。チェチリアはわざとナプキンを落としてテーブルの下に屈み、教授のズボンを捲り上げて靴下止めを見る。ヘンにアツアツな二人である。しかし、チェチリアが教授の奥さんに宛てた長〜い手紙を読み始めたことから、そんな関係が崩れてくる。マリー・ジランのイタリア語は吹替えなのかな?同じくフランス女優のファニー・アルダンも吹替えっぽい。

【星降る夜のリストランテ 第17段落】  チェチリアの長〜い手紙を聞き終えた教授はイライラして怒り始め、給仕のディオメデに苦情を言いまくる。ジャンカルロ・ジャンニーニは『 ハンニバル (2001) HANNIBAL 』で可哀想な殺され方をする刑事役で観たが、本作では打って変わったコミカルな演技が面白い。教授にとってはチェチリアとの情事は、気分を若返らせる為の楽しいものであったが、今まで積み上げてきたものを御破算にするほどのものではなかった。彼は自分に哲学の理想を見て憧れているチェチリアを幻滅させる為、持論を撤回することを語って下司野郎を演じる。彼が語ったことは世の中の本質でもあるのだが、理想主義の女子大生の頭を混乱させた。チェチリアはトイレに行き、そこで偶々会ったペズッロ先生に頼みごとを二つする。一つは電話代をくれること、二つは自分の席に行ってコートや鞄などの荷物を取ってきてくれること。優しいペズッロ先生は快く引き受けた。チェチリアは元カレのルーカに電話をした後、店を出て行った。

【星降る夜のリストランテ 第18段落】  そんな教授のテーブルの前では、事業主の集いのような会席が行われていた。主賓席に男が一人と、二つの夫婦が向かい合わせに座っている。政治や経済の難しい話をする中、一方の夫婦の男がトイレに席を立った。すると、他方の夫婦の妻の携帯電話が鳴る。その電話はさっきトイレに立った男がかけているのだ。二人は不倫しているらしい。二人で外国に行こうなどと携帯で話す男は、かなりその女性に熱を上げているようだが、何も知らない夫や相手の妻の前で電話を受ける女性のほうは少し困惑顔である。二人の秘密の電話は終わり、また会食は続く。

【星降る夜のリストランテ 第19段落】  そんな欺瞞のテーブルの前には、ケバケバしい母親イザベラ(ステファニア・サンドレッリ)と地味な高校生の娘が座っている。母親と離れて寄宿学校で生活している娘は、今日自分の将来の計画を話すつもりなのだ。きっとその娘は、老いを恐れて胸を整形するような母親を反面教師として育ってきたのだろう。娘の計画は、修行尼となって寄宿学校に残ることだった。娘の世話を当てにしていた母親は納得がいかない。娘に決心を止めさせようと、別れた夫に携帯電話をかけるが、すでに夫はそのことを知っているようである。 19 歳の若さで世を捨てようという娘にショックの母親は、震える手で彼女のきつくひきつめられた髪をほどき、自分の真っ赤な口紅をつけた。娘は列車の時刻だと席を立ち、「大好きよ」と母の額にキスをしてレストランを後にした。自分勝手にしか人を愛せない母親は、テーブルで一人泣くのだった。

【星降る夜のリストランテ 第20段落】  玄関の扉を開けたところにあるテーブルでは、フローラの中学生?の姪シモーナの誕生日会が、同学年の友人を招いて開かれている。シモーナはフローラの妹マリーナの娘である。フローラとマリーナという名前は、日本だったら花子と海子って感じで、ちょっと女性漫才コンビみたいだったり? 娘を探しに"アルトゥーロの店"にやって来たマリーナは、そこで初めて娘の誕生日を思い出すという母親失格の女性である。母親が自分に関心が無いことを知っている娘シモーナにそのことを悟られないようにして、マリーナは厨房のフローラを訪ねた。

【星降る夜のリストランテ 第21段落】  幼い頃から皆に好かれ、順風満帆に生きてきた姉フローラに対して、出来損ないの妹マリーナは絶大なる劣等感を持っている。自分の精神分析医がフローラの質問をしすぎたからと、フローラに会った事もない分析医が彼女に恋していると思い込んで分析を止めてしまうほど、マリーナの劣等感は重症である。今日の娘の誕生日も、自分はすっかり忘れていたのに、フローラはしっかり覚えていてバースデイ・ケーキにろうそくをさしている。益々自分がいやになってくるマリーナ。そんな妹にフローラは、自分の苦しい恋物語を聞かせる。さっきの電話の男性の話だ。

【星降る夜のリストランテ 第22段落】  一年前に音楽会で知り合った、イタリア文化会館に勤めるその男性とは、最初は気楽な関係だった。しかし、彼はフローラに本気になり、今度ノルウェーのベルゲンというところに移動することになった自分と一緒に出発してくれるように彼女に頼んでいたのだ。その男性を愛しているフローラの苦悩を知ったマリーナは、姉に同情を感じる。

【星降る夜のリストランテ 第23段落】  店内の明かりが消され、ろうそくのともったバースデイ・ケーキがシモーナたちのテーブルまで運ばれた。暗がりの中、魔術師はエルネストの空中浮揚を成功させる。その様子を韓国人の男の子がポラロイドカメラでパチリと撮影。マリーナはフローラが用意したシモーナへのバースデイ・プレゼントを渡し、母としての株を上げた。姉の気の利いた行為にちょっとすねていたマリーナだったが、嬉しそうである。フローラからのシモーナへのプレゼントは音楽だ。女性のフルートとハープの奏者が二人現れ、美しい生演奏が店内を流れる。お客も給仕も料理人もその音楽に聞き惚れ、幸せな気分に浸った。

【星降る夜のリストランテ 第24段落】  店内は再び明るくなり、フローラはバースデイ・ケーキをサービスとしてお客たちに振舞って回った。涙でボロボロになった、娘に去られた母親イザベラのところにケーキを運んだとき、フローラは彼女に「綺麗な指輪ね」と声をかけた。この女性はさっき自分の赤い靴について尋ねてきたファッションに関心のあるお客。そして指輪を買うのは女性にとって楽しいひと時。観察力のある女主人の、悲しそうな女性客に対する絶妙の一言だ。そしてフローラはそのテーブルでケーキを食べた。娘と母の隔たりは大きいと話すイザベラに、絆を構築するには時間がかかると言うフローラ。そんなことを話しているうちに、イザベラの心は晴れてきたようだ。彼女はフローラが席を立った後、スタイルが気にかかるので食べないとしていたケーキを口に入れる。そしてコンパクトの鏡を見て、涙でクシャクシャになっていた自分の顔に驚くのだった。

【星降る夜のリストランテ 第25段落】  "アルトゥーロの店"は閉店時間になり、幸せな気分でお客たちは次々と帰っていった。

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◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。
 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say !


【星降る夜のリストランテ 第26段落】  ローラの暴力亭主が彼女を迎えに来ていた。男友達が沢山いるが、やっぱりローラにはその亭主が一番みたいだ。走り寄った夫に頭を打たれながら、彼女は帰っていった。残された四人の男たちは、ローラについて話し合うために皆でコーヒーを飲みに行くことにした。

【星降る夜のリストランテ 第27段落】  エルネストは魔術師に自分の部屋に泊まるよう誘った。はっきり言って行くあてのなさそうな魔術師アダムは、わざともったいぶってOKの返事をする。友人ができて嬉しいエルネストは、ふと庭のホウキに気付く。そうだ!二人でホウキに乗って帰ろう。二人ならきっと空を飛べるはず!エルネストとアダムは一緒にホウキにまたがって"アルトゥーロの店"の門から出て行った。本当に飛べるのだろうか?

【星降る夜のリストランテ 第28段落】  フローラにまた電話がかかってきた。電話を取ったマウリツィオから、相手の名前を聞いたフローラは、自分はもう帰ったと伝えるように言う。姉の決意を知らないマリーナがさっき厨房で聞いた話の相談に乗ろうとフローラに声をかけたが、その話は解決したのと彼女は明るく答えるのだった。

【星降る夜のリストランテ 第29段落】  店内では、アルトゥーロのテーブルで、フローラ、ペズッロ先生、ディオメデ、演出家と俳優たちがカード・ゲームに興じている。ペズッロ先生はゲームに熱くなってしまう性質らしい。

【星降る夜のリストランテ 第30段落】  日本人と間違えられている韓国人家族が店を出たとき、その息子がなんとなく空を見上げた。眠っていたところを起こされたので、夢と現実がゴッチャになっているのだろうか。食事中ずっとしていたゲームの画面の映像のように、ホウキに乗って空を飛ぶエルネストと魔術師の姿が、メガネをかけた少年の眼に入った。

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【星降る夜のリストランテ 感想】  美味しい食事と綺麗な音楽とちょっとした奇跡があれば、人生を楽しくやっていける。映画を観終わったあと、"アルトゥーロの店"でお腹一杯になった私は、そんなことを思いながらホンワカ気分で愛犬がすでに寝ているベッドにもぐりこむのです。映画の中で、レストランにいる人々がそれぞれ主役になったり脇役になったりする。さっき主役だった人が、すぐにまた別の人の背景となって、イタリア人らしくジェスチャー大きく食事をしていたりしているのが楽しかった。長年コメディを書きまくってきたスコーラ監督の技量を感じる一作だ。

以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず8078文字/文責:幸田幸

参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集
       http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
      http://www.kwcinema.kataweb.it/
      Yahoo!Italia
      モントリオール国際映画祭公式サイト
      Blockbuster.com
■映画『 星降る夜のリストランテ (1998) LA CENA 』の更新記録
2003/01/22新規: ファイル作成
2005/03/12更新: ◆一部テキスト追記と書式変更
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幸田 幸
coda_sati@hotmail.com
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