青い夢の女
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映画の森てんこ森■映画レヴュー
青い夢の女 (2001)
MORTEL TRANSFERT (原題) / MORTAL TRANSFER (英題)
 映画『 青い夢の女 (2000) MORTEL TRANSFERT (原題) / MORTAL TRANSFER (英題) 』をレヴュー紹介します。

 映画『 青い夢の女 MORTAL TRANSFER 』を以下に目次別に紹介する。
■映画『 青い夢の女 MORTAL TRANSFER 』の解説及びポスター、予告編
 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。
■映画『 青い夢の女 MORTAL TRANSFER 』の映画データ
■映画『 青い夢の女 MORTAL TRANSFER 』の主なスタッフ
■映画『 青い夢の女 MORTAL TRANSFER 』の主なキャスト
■映画『 青い夢の女 MORTAL TRANSFER 』のスタッフとキャスト
■映画『 青い夢の女 MORTAL TRANSFER 』の<もっと詳しく>
 <もっと詳しく>は映画『 青い夢の女 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタバレ)です。※ご注意:映画『 青い夢の女 (2000) MORTEL TRANSFERT (原題) / MORTAL TRANSFER (英題) 』の内容やネタバレがお好みでない方は読まないで下さい。
■映画『 青い夢の女 MORTAL TRANSFER 』の結末
■映画『 青い夢の女 MORTAL TRANSFER 』の更新記録

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幸の鑑賞評価: 8つ星 
■映画『 青い夢の女 (2000) MORTAL TRANSFER 』の解説及びポスター、予告編
青い夢の女
青い夢の女

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■映画『 青い夢の女 MORTAL TRANSFER 』の解説

 映画『 青い夢の女 (2000) MORTEL TRANSFERT (原題) / MORTAL TRANSFER (英題) 』は、ジャン=ジャック・ベネックスの8年ぶりの長編映画で、ジャン=ピエール・ガノニョーの原作をもとにした、ブラック・コメディ・サスペンス。『 青い夢の女 』の原題の「 MORTEL TRANSFERT 」は、「死をもたらす転移( TRANSFERT <転移>は精神分析用語では、無意識の欲望が対象に現実化される過程のこと)」といった意味。監督自身は原題をそのまま邦題にも使って欲しかったらしい。邦題は『 青い夢の女 』となっている。
 ベネックス監督の映画に2回主演した唯一の俳優であるジャン=ユーグ・オングラード。「ベティ・ブルー/愛と激情の日々」から 15 年。私はインテグラル( 1992 )の方を観たが、それ以来、彼の作品を観ていなかったので、『 青い夢の女 』でかなりオジサンになっていてビックリした。
 『 青い夢の女 』では、精神分析医のミシェル・デュラン(ジャン=ユーグ・オングラード)は、自分の患者である美しい人妻オルガ(エレーヌ・ドゥ・フジュロール)の事で悩んでいた。オルガは盗みや暴力で快感を得る女性。そんな彼女の話は、何故かミシェルを眠くする。ある日、診療中に居眠りをしたミシェルの横のカウチには、オルガの死体が横たわっていた。
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com.
Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc.
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■映画『 青い夢の女 (2000) MORTAL TRANSFER 』の映画データ
 上映時間:122分
 製作国:フランス/ドイツ
 公開情報:アミューズ・ピクチャーズ
 フランス初公開年月:2001年1月10日
 日本初公開年月:2001年12月22日
 ジャンル:ドラマ/サスペンス
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■映画『 青い夢の女 (2000) MORTAL TRANSFER 』の主なスタッフ
○『 青い夢の女 』の製作総指揮: クリスティーヌ・ドゥジュケル
8人の女たち (2002) 8 FEMMES (原題) / 8 WOMEN (英題)
スイミング・プール (2003) SWIMMING POOL
スターは俺だ! (2004) PODIUM

○『 青い夢の女 』の撮影: ブノワ・ドゥローム
リプリー (1999) THE TALENTED MR. RIPLEY
イザベル・アジャーニの惑い (2002) ADOLPHE
スターは俺だ! (2004) PODIUM
ヴェニスの商人 (2004) THE MERCHANT OF VENICE

○『 青い夢の女 』の編集: イヴ・デシャン
コーラス (2004) LES CHORISTES / CHORISTS
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■映画『 青い夢の女 (2000) MORTAL TRANSFER 』の主なキャスト
●ジャン=ユーグ・オングラード as ミシェル・デュラン
テイキング・ライブス (2004) TAKING LIVES

●エレーヌ・ドゥ・フジュロール as オルガ・キュプレール
ザ・レース (2002) LE RAID (原題) / THE RACE (英題)
花咲ける騎士道 (2003) FANFAN LA TULIPE

●ジャン=ピエール・ベッケル as ジャック・プレスコ
犯罪の風景 (2000) SCENE DE CRIMES (原題) / CRIME SCENES (英題)
アメリ (2001) AMELIE POULAIN / LE FABULEUX DESTIN D'AMELIE POULAIN
ロング・エンゲージメント (2004) UN LONG DIMANCHE DE FIANCAILLES (原題) / A VERY LONG ENGAGEMENT (英題)

●リトン・リブマン as DJ
パリのレストラン (1995) AU PETIT MARGUERY
パリの確率 (1999) PEUT-ETRE
列車に乗った男 (2002) L' HOMME DU TRAIN (原題) / THE MAN ON THE TRAIN (英題)
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【『 青い夢の女 』のスタッフとキャスト】
監督: ジャン=ジャック・ベネックス Jean-Jacques Beineix
製作: ジャン=ジャック・ベネックス Jean-Jacques Beineix
    ラインハルト・クロス Reinhard Klooss
製作総指揮: クリスティーヌ・ドゥジュケル Christine De Jekel
脚本: ジャン=ジャック・ベネックス Jean-Jacques Beineix
撮影: ブノワ・ドゥローム Benoit Delhomme
美術: フィリップ・シッフル Philippe Chiffre
衣装: ファビエンヌ・カタニ Fabienne Katany
編集: イヴ・デシャン Yves Deschamps
音楽: ラインハルト・ワーグナー Reinhardt Wagner
音響: ピエール・ベフヴァ Pierre Befve
    ミカエル・クランツ Michael Kranz
    パトリス・グリゾレ Patrice Grisolet

出演: ジャン=ユーグ・オングラード Jean-Hugues Anglade ミシェル・デュラン
    エレーヌ・ドゥ・フジュロール Helene de Fougerolles オルガ・キュプレール
    ミキ・マノイロヴィッチ Miki Manolovic ヘラストラトス
    ヴァレンティナ・ソーカ Valentina Sauca エレーヌ・メイヤー
    ロベール・イシュル Robert Hirsch アーマンド・ズリボヴィッチ
    イヴ・レニエ Yves Renier マックス・キュブレール
    カトリーヌ・ムシェ Catherine Mouchet 数学教師
    ドゥニ・ポダリデス Denis Podalydes シャピロー警視
    ジャン=ピエール・ベッケル Jean-Pierre Becker ジャック・プレスコ
    リトン・リブマン Riton Liebman DJ

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ストーリー展開の前知識やネタバレがお好みでない方は、読まないで下さい。
■映画『 青い夢の女 (2000) MORTAL TRANSFER 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー

【青い夢の女 第01段落】  不思議な絵が飾られている、厳格なフロイト派のズリボヴィッチ博士(ロベール・イシュル)の診療室。椅子に深く腰をかけている老人は著名な精神分析医ズリボヴィッチ。彼の横では細身で黒髪の繊細そうな中年の男がカウチで横になり話をしている。その患者は同業者のミシェル・デュラン(ジャン=ユーグ・オングラード)である。精神分析医が精神分析医に罹っているとは可笑しな話であるが、ミシェルには悩みがあったのだ。それはミシェルの患者である美しく魅惑的な人妻オルガ・キュプレール(エレーヌ・ドゥ・フジュロール)のせいだった。エレーヌ・ドゥ・フジュロールは、ジャック・リヴェット監督の「恋ごころ」( 2001 )にも出演している、凄く綺麗な女優さんだ。暴力そのものに快楽を覚える狂気の女オルガは夫から受ける暴力についてミシェルに話すが、それは同情を買うためではなく、ミシェルの野獣性を挑発するためだ。そしてそんな彼女の話を聞くと、何故かミシェルは決まって居眠りしてしまう。そして彼女の夢を見る。

【青い夢の女 第02段落】  ことの始まりはミシェルの同級生であるシャピロー警視(ドゥニ・ポダリデス)からの電話。突然の警察からの呼び出しは、窃盗罪の疑いで逮捕されたオルガが、犯行時刻にミシェルに精神分析を受けていたというアリバイを主張したからだった。彼女は高級宝石店「バーンシュタイン」で4万フラン(約 60 万円/1フラン= 15 円換算として< 2002 年1月データ>)のダイヤを盗んだらしい。ミシェルの精神分析では話したことがなかったが、彼女には盗癖があった。告発を受けるフィクサーのマックス・キュブレール(イヴ・レニエ)の妻であるオルガの犯行に、警察も関心を寄せている。そのアリバイは真実ではなかったが、ミシェルは偽証してしまう。

【青い夢の女 第03段落】  警察での一件から、オルガはより強烈になった。いつものように黄色いポルシェに乗ってミシェルの診療所を訪れたオルガは、「興味を持ってくれてうれしいわ」と、自分の盗癖についてカウチに横になって語り始める。彼女に性的恍惚を感じさせる盗みは、夫との異常な関係とも深く関わっていた。夫マックスも暴力を愛する男だが、妻を殴るには理由が必要だ。政治家と付き合い、また裏社会での顔も持つ彼にとって、妻が泥棒であることはよくない。マックスはオルガの盗みを口実に彼女を殴った。それはオルガにとっての喜びだった。魔性の女"ファム・ファタール"であるオルガの話は、ミシェルを混乱させた。いつまでこんな日が続くのだろう。

【青い夢の女 第04段落】  ミシェルの不安どおり、オルガは彼の生活を一変させることになる。裏の商売で告発されたマックスは、抗うつ剤やウィスキーに頼るようになり、オルガへの暴力は激しさを増していた。しかし、オルガはそんな夫を挑発した。彼女の話が過激になるにつれ、眠気がミシェルを襲う。雪が静かに降り積もる中、彼女の言葉がミシェルを狂気の夢の中へと誘う。「今日、殺されると思った」「私がお金を盗んだというの」カウチの彼女の話は夢なのか現実なのか。ミシェルと同じ黒のスーツを着た男が、オルガに馬乗りになって彼女を殴る。オルガは痛みで一瞬顔をゆがめるが、喜んでいるのが分かる。男の暴力はひどくなり、彼女の首をしめた。オルガは息絶える。カウチにはオルガの死体、その横の椅子で眠るミシェル。青く薄暗い診療室中にミラーボールの光が回り、とても幻想的な映像である。

【青い夢の女 第05段落】  診療時間の終了を告げる時計のベルが鳴り、ミシェルが目覚めると、カウチの上でオルガが死んでいる。この瞬間から、ミシェルとオルガの死体との滑稽な格闘が始まる。この状況では警察はミシェルを殺人犯として逮捕するだろう。ミシェルは自分がオルガを殺した犯人かもしれないと悩み、事件の真相を知りたいと思う。今逮捕されるわけにはいかない。彼はシャピロー警視にかけようとした電話の受話器を置いた。

【青い夢の女 第06段落】  オルガの死体に翻弄されるミシェルと彼を取り巻く人々との関係もおもしろい。

【青い夢の女 第07段落】  4ヶ月前に知り合ったミシェルの彼女、画家のエレーヌ・メイヤー(ヴァレンティナ・ソーカ)は、美しく才能に溢れた女性。オルガとは別世界の魅力を持つ彼女との関係を大事にしたいと思っているミシェルだが、事件のお陰でデートをすっぽかしてしまったり、彼女と一緒のときにオルガの夢を見てしまったりと、なかなかうまくいかない。

【青い夢の女 第08段落】  オルガ以外のミシェルの患者たちもやっぱり変わっている。自分の横になるカウチの下にオルガの死体があるとは知らずにミシェルの精神分析を受ける彼らだが、何かを微妙に感じている。生徒にウンザリしている女性数学教師(カトリーヌ・ムシェ)は、診療中に「暴力こそ喜びへの道」という囁き声を耳元で聞き、それ以来オルガと同じものに快感を覚えるようになる。自分の男性としての能力に自信が持てないお蔭で女性を憎む傾向にあるハゲ男ジャック・プレスコ(ジャン=ピエール・ベッケル)は、以前から密かにリッチで美しいオルガに憬れていた。カウチに寝転がった彼は、オルガの匂いがすると言って、ミシェルをドキリとさせる。彼らにオルガの死体が見つかっては大変と、必死になってカウチの下にオルガの死体を隠したり、何でもない彼らの言葉に驚いたりと、ミシェルの奮闘がコミカルに描かれる。

【青い夢の女 第09段落】  路駐されたままのオルガの黄色いポルシェの横にいる路上生活の男(ミキ・マノイロヴィッチ)もミシェルにとっては気がかりな存在だ。オルガの死後、親しげにミシェルに話しかけてくるようになったその男は、オルガの死について何か知っているのだろうか。彼の言葉が疑心暗鬼なミシェルの心を動揺させる。その路上生活者がミシェルに話すには、昔彼は教育機関の人事や給与計算をする仕事についていたらしいのだが、宝くじに大当たりしてしまったことで、人生が変わってしまったのだそうだ。暖炉付きのアパートを買ったが、寒さを凌ぐために仕事の書類を暖炉で燃やしクビになった。それでも寒さを凌ぐため、今度は銀行から 1500 万フラン(約2億 2500 万円)を引き出し、燃やした。

【青い夢の女 第10段落】  男は精神病院で4年間暮らすことになった。可笑しな履歴を持つその路上生活者は、人のよさそうな人間のようだが…。動かなくなったミシェルのキャデラックのバッテリー交換をすすんで手伝ってくれる。ミシェルはお礼としてお金を渡そうとするが、男は断る。その代わりに自分を診てくれるように言う。どうしてそんなことを言うのだろう。ミシェルは心落ち着かない。また、おもしろいことに、ミシェルはズリボヴィッチ博士の許に通い、精神分析を受け続けている。医師には守秘義務があるので、ミシェルは警察に言えないことでもすべて博士に話す。博士はミシェルと同じように居眠りをしてしまうこともあるのだが…。

【青い夢の女 第11段落】  自分の考えを取り留めなく話すからだろうか、ミシェルは自分自身のトラウマに気付く。ミシェルは自分の父親が好きではない。フロイト理論のエディプス・コンプレックスだ。医師になったのも金物屋の父を見返すためだったかもしれない。幼い頃、父と母の性愛の現場を見てしまったミシェルはショックを受ける。自分の部屋のベッドにうつぶせると、狼の遠吠えが聞えてくる。狼の夢というのは「両親の性愛を見た子供のトラウマ」を表すらしい。幼いミシェルは現実逃避するように急速に眠りへと向かう。

【青い夢の女 第12段落】  ミシェルがオルガの話を聞いて眠くなったのは、きっとこのときの体験のトラウマなのだろう。ミシェルは父をいつも母と一緒にバカにしていた。目覚めて台所へ行ったとき、自分の仲間だったはずの母が父に抱きついているのを見て、裏切られたとミシェルは感じた。ある日、父がくれた青いキリンのぬいぐるみの首がもがれていた。ミシェルは自分がやったとは思っていない。しかし、ミシェルは母にこっぴどく叱られた。幼いミシェルにとって、首なしキリンは不気味で何故か魅惑的だった。ミシェルはそのキリンをお菓子の箱に入れ、サクレクール寺院の木の根元に埋めた。オルガも埋めてしまえばいい。

【青い夢の女 第13段落】 オルガは夫マックスから大金 700 万フラン(約1億 500 万円)を盗んでいたようだ。マックスはオルガの精神分析医であるミシェルがその大金に絡んでいると疑った。マックスに脅されたミシェルは、彼との約束でその次の日、 16 区にあるキュブレール邸へと向かった。ミシェルは約束の時間よりも1時間早く到着し、オルガに教えてもらっていた暗証番号で豪邸の中に入る。マックスは誰かと口論しているようだ。そして銃声!ミシェルは慌てて豪邸を出た。その翌朝、シャピロー警視からの電話で目覚めたミシェルは、マックスが死んだことを知る。

【青い夢の女 第14段落】  警察は、マックスの暴力に耐えかねたオルガが、夫から大金を盗んで逃亡していると考えているようだ。ミシェルの診療所のカンボジア人家政婦から証言を得、警察はミシェルがオルガの愛人だと思っている。家政婦は必死でオルガの死体に蘇生術を施していたミシェルを目撃して、二人の関係を勘違いしていたのだ。オルガを匿っているか彼女の犯行を何らかの形で手伝ったと疑われているミシェル。オルガの死体を早く捨てないと。見つかれば金目当ての犯行だとされてしまう。

【青い夢の女 第15段落】  深夜、人通りがなくなってから、ミシェルはオルガの死体を自分のキャデラックに運ぶ。その間のミシェルの奮闘振りも笑いを誘う。エレベーターで遭遇する盲目の男、道路を通りかかった自転車の男は、何故かワグナーの「ワルキューレの騎行」を口笛で吹いていて、ミシェルの大作戦の可笑しさを演出する。寒さで凍る道路で滑って転んだり、凍った道路を利用してオルガの死体を滑らせたりと四苦八苦した結果、やっとのことでトランクに死体を入れることに成功するが、まだまだ困難は続く。バッテリーが切れて車が動かなかったり(別の日に路上生活の男と一緒にバッテリー交換してOK)、街の泥棒にトランクをこじ開けられたり(泥棒は驚いて走り去る。泥棒だから警察に通報なんてしない)、死体を車で運ぶ途中に鍵が壊れたトランクが勝手に開いてしまったり。

【青い夢の女 第16段落】  ミシェルは、その昔女性を何人も絞殺した神父の墓にオルガの死体を入れることにした。死姦癖のある患者から以前もらった鍵で、墓地の中に入る。墓地でもミシェルはイカれた人物に出会う。ダッチワイフを持って墓地を徘徊するDJ(リトン・リブマン)である。リトン・リブマンは「パリの確率」でも、コミカルな役で映画のアクセントとなっていたが、この映画でもかなり強烈で面白い。お墓の中に落ちてしまったミシェルの叫び声の所為で、オルガの死体をDJに見つけられてしまうが、心配ご無用である。彼はミシェルがオルガに死に化粧を施してやるのを見て、大感激してしまうような大変態である。ミシェルを死姦愛好者だと思ったのだろう。ミシェルが自分より上手だと感じたDJは、親切にオルガをお墓の石室に入れるのを手伝ってくれた。

【青い夢の女 第17段落】  ミシェルはズリボヴィッチ博士のカウチで横になり、いつものように話し続けていた。散らかった診療室を掃除した時、ミシェルは自分の診療所の合鍵を見つけた。ミシェルは思った。オルガを殺したのはマックスだ。診療所の患者の出入りに詳しい路上生活の男から、オルガの診療中にマックスが診療所に来ていたことを聞いたことがある。マックスは精神分析で自分のことを辱めるオルガの発言を聞き、そのこともオルガを殴る理由にしていたのだろう。もちろんそれはオルガも了承済みだ。だから合鍵を作った。二人とも性の話になると居眠りしてしまうミシェルの性癖を知っていたのだ。精神分析の話から、オルガが盗んだ 700 万フランについて聞き出すために、あの日もマックスは診療所にやって来ていたのだろう。そして彼女の話を聞いて、抑えきれずオルガに暴力を奮い、思わず殺してしまった…。

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◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。
 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say !


【青い夢の女 第18段落】  いきなりズリボヴィッチ博士はミシェルに銃を向ける。金の在りかをミシェルから聞き出そうとするが、そんなことミシェルは知るわけがない。すると、博士は諦めたように銃を落とした。博士は事の顛末を話し始める。博士の診療所があるのはマックスのお陰だった。しかし、まだお金に困っていた博士は、資金提供を断られ、マックスを殺害した。あるパーティーで博士が異常な二人の夫婦愛を見たのが、彼らの関係の始まりだった。妻は手におえないと、博士にオルガの精神分析を依頼したマックスも異常だ。オルガの精神分析を頼んだのは、そうすればまた妻を殴る理由が出来るから。そんな二人の狂った愛情関係を知りつつも、博士はオルガの診療を続けていたが、耐えられなくなり、博士はミシェルの診療所にオルガを送り込んだ。オルガがミシェルのところへ行くようになってからも、彼女は博士を訪れた。それで彼女の話から、博士はオルガがミシェルと共謀してお金を盗んだと思っていたのだ。博士は、精神分析医とその患者の両方を診るという経験に魅了されていた。自分が大金を手に入れる状況を支配していると錯覚していたのだ。「もしいつか 700 万フランを手に入れたら、有効なことに使え」と、最後に博士は意味深にミシェルに伝える。

【青い夢の女 第19段落】  ミシェルはサクレクール寺院の庭からキリンのぬいぐるみを掘り起こした。ずっと青だと思っていたキリンは、緑色だった。翌朝ミシェルがぬいぐるみの首を縫い合わせている時、ラジオでズリボヴィッチ博士の自殺が報じられた。

【青い夢の女 第20段落】  警察に呼ばれたミシェルは、事件の参考人として聴取を受けていた変態DJと再び出会い、ドキリとする。しかし、DJはミシェルを敬愛しているので、一緒に死体をお墓に入れた人物がミシェルだとは言わない。博士が警察に書いた手紙のお陰で、事件はほぼ解決していた。ミシェルの精神分析で彼が何をしたか知り尽くしていた博士は、ミシェルがしたことをすべて自分がしたことにしていた。オルガを愛したせいで、4日間オルガの死体と暮らし、DJと一緒に墓地に埋葬した。シャピロー警視から説明を受けるミシェルは、驚いている振りをして話を聞く。これで一件落着? 700 万フランはどこに消えた?

【青い夢の女 第21段落】  夜、ミシェルが診療所に戻ると、路上生活の男がミシェルを待っていた。彼は自分を診て欲しいとミシェルに頼む。彼の真剣な様子に、ミシェルは仕方なく彼を中へ入れてやる。男はオルガと知り合いで、それなりに親しかったそうだ。ある日、オルガの裸を見せられ、彼女に暴力をふるうように言われたが、彼は怖くて出来なかった。そんな彼にオルガは性的な問題があると言い、ミシェルの精神分析を勧めたのだそうだ。オルガの死を知った男は、故人の意思を尊重するため、精神分析を受けることにしたのだと言う。診療代のことは心配ないと、男はいつも持っているカートのジッパーを開けた。「 700 万でいかが?」札束が溢れ出た。驚くミシェル。ミシェルは沢山の札束の中から、一回の精神分析分だけを抜き取った。自分が持っていてはまた燃やしてしまう、オルガから預かったお金を有効に使いたいと、男は全額受け取ってくれるようにミシェルに頼むが、ミシェルは前払いでは受け取らないと断る。足で札束の押し問答をする二人だが、「診療は長くかかる」というミシェルの言葉に安心した男は納得する。

【青い夢の女 第22段落】  橋の上でミシェルはエレーヌを待っていた。遅れてやってきた彼女に、彼は「バーンシュタイン」で買った指輪を渡す。感激するエレーヌにミシェルは、墓地の鍵を渡し、川へと投げ捨ててくれるように頼む。鍵がポチャンと川に落ち、これで本当の一件落着。愛し合う二人の背景には、夜のエッフェル塔が美しく輝く。

【青い夢の女 第23段落】  やっぱり、前払いで 700 万フランをもらっておいた方がよかったんじゃない?ズリボヴィッチ博士は、ミシェルのこの行為まで見越して忠告を与えているところがスゴイかも。優秀な精神分析医はそこまで人の行動を見通すことが出来るのか。

【青い夢の女 第24段落】  ミシェルとの最後の別れのシーンで、博士は"死のダンス""叫び"という言葉を口にする。その言葉に、「レオナルド・ダ・ヴィンチが人体解剖を学び、死体を切り開いたように、私は魂を切り裂こう」と言ったエドヴァルド・ムンク( 1863 - 1944 )の作品を思い出した。「生命のダンス」「叫び」はムンクの有名な作品。

【青い夢の女 第25段落】  「生命のダンス」は愛と死に対するムンクの個人的なイメージを描いた未完の連作「生命のフリーズ」の"愛の芽生え"と呼ばれる部分に属する。この絵では、曲がりくねった海岸線と決して動きを止めることのない海を背景に踊っている人々、左右に無垢の少女、黒衣の女が描かれている。中央に描かれたカップルの女性は、強烈な性的誘惑のシンボルである。オルガも、マックス、博士、ミシェルの危険な欲望を刺激し誘惑する女性だ。オルガの誘惑は死と結びついている。男達のその欲望が転移( TRANSFERT )した結果、オルガは死んでしまったということなのだろう。" MORTEL TRANSFERT "ってことね。オルガと"生命のダンス"ではなく、"死のダンス"を踊ったと言う博士。彼女のような女性とは、"生命のダンス"は踊れない。また、高齢の博士が自ら人生の幕を引くためのダンスだったのかもしれない。

【青い夢の女 第26段落】  "狼の夢"が表すのはこの世は狼どものジャングルという象徴だ、という考えを持つミシェルに、その"叫び"を聞くのが君の仕事だと、博士はミシェルを激励する。その二人の横に大きな絵画が飾られてある。十字架にかけられたキリストのようなポーズをとる女性の後ろに、ムンクの「叫び」のような顔をした黒い人が描かれている。この映画には、けっこう絵画が出てくる。博士の診療室にはこの絵のほかにも不思議な絵が飾られているし、映画の初めと終わりのオイオイって感じの絵とか。ミシェルの彼女エレーヌの絵は、実はベネックス監督の作品だそうだ。監督のカラーである青色の大きな前衛的絵画である。多才な監督は、昔は医師を目指していたそう。どうして医者にならなかったのかという学生の質問に、「…数学がひどく苦手だったことが決め手になりました。…」と答える監督に、親近感をおぼえマス。

【青い夢の女 第27段落】  まるで水中にいるようなゆったりとした色合いの「ベネックス・ブルー」と呼ばれる透明な青色の世界がとてもキレイなシーンもあった。オルガの死体の横でミシェルが居眠りをしているシーンや、ミシェルの夢の中に出てきたキュブレール邸の部屋<青い部屋に赤いカーテン、ブランコをこぐマックスと床に倒れているオルガの死体>のシーン。人物の心象を表しているような色づかいにも、監督の色へのこだわりが覗える。オルガの黄色いポルシェやミシェルから盗んだ黄色のペン、青いハイヒール、ミシェルの赤い靴下、キリンのぬいぐるみの青から緑への変化等々。これらの色は心理学的に何を表しているのだろうか。フランス人らしからぬミシェルのアメ車、キャデラックにも一体どんな意味があるのだろうと色々興味が沸いてくる。心理学に詳しかったらナー。けど、まあ、ベネックス監督が「…難しく考える必要はない。気楽にこのセッションを楽しんでもらいたい」と映画について語っているので、この辺で。

以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず8210文字/文責:幸田幸

参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集
       http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
      The Great Artists 16 ムンク
      新スタンダード仏和辞典
      OBJECTIF CINEMA公式サイト(仏語版)
       http://www.morteltransfert.com/mt-apps/fr/introduction_f/
■映画『 青い夢の女 MORTEL TRANSFERT / MORTAL TRANSFER 』の更新記録
2002/10/10新規: ファイル作成
2005/03/15更新: ◆一部テキスト追記と書式変更
2005/09/05更新: ◆データ追加
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幸田 幸
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