ジェリー
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 ジェリー@映画の森てんこ森(シャイな幸の独り言)
ジェリー
ジェリーって?
2004年07月30日金曜日 「シャイな幸の独り言」トップへ
 映画『 ジェリー (2002) GERRY 』を調べ、解説を書きながら、一体どんな映画だろう?と興味をもった。『 ジェリー 』はあの『 エレファント (2003) ELEPHANT 』のガス・ヴァン・サント監督だ。それで配給会社を調べるとやはりエレファント・ピクチャーとギャガ・コミュニケーションズだ。プレスヴィデオを観せてもらった。以下は、鑑賞前の『 ジェリー 』の解説ファイルにリンク(画面切替え)してある。映画『 ジェリー 』の鑑賞後の「感想」は目次の後に書く。

■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の主なスタッフ
■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の視覚効果
■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の音楽
■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』のあらすじ
■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の二人のジェリー
■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』のポスター、予告編および映画データ
■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』のスタッフとキャスト
■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の<もっと詳しく>
 <もっと詳しく>は映画『 ジェリー 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタばれ)です。※ご注意:映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の内容やネタばれがお好みでない方は読まないで下さい。

■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の感想
 話の流れ上当然ネタばれを含みますので、十分ご注意下さい。ATTN: Please stop reading here because my review reveals the movie content.

【映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の映画評いろいろ】
* 散策を好むひとに・・・この映画を観るにはそれなりの勇気と好奇心が求められる...型通りのシナリオや登場人物に飽きた人にとって『ジェリー』は標識のない道で、新鮮な空気を吸える空間を提供してくれる。映画の用法(ナレーション、コンテ、ドラマツルギー)から自由になった「エレファント」の監督は、もはや一本の映画ではなく、ある一つの体験を提案しているのだ。大切なのはそれを愛することではない、その体験を生きることである。[ 「Premier」より抜粋 ]

* 「ジェリー」から「エレファント」へ--刺激的な反転 [ 映画評論家 北小路隆志より抜粋 ]

* この映画の解釈は好きなようにすればよいのです... [ 「カイエ・デュ・シネマ」2003年5月号より抜粋 ]

* 非日常的な出来事は日常の中に存在する。脆弱な人間・二人のジェリーの過酷な営みを見つめる自然は、容赦なく美しい。映画「ジェリー」はいい擬似体験だった。 映画「ジェリー」こそ現代の体験型寓話だ。 [ 「幸田幸 映画の森てんこ森」より抜粋 ]

* 悲劇的な皮肉、大いなる明快。アメリカ映画で、この2本のような新しいタイプの映画を続けざまに観たのは何年ぶりだろう。 「ジェリー」と「エレファント」のヒロイズムをたたえるべき時が来た。 [ 「カイエ・デュ・シネマ」 ]

* 「ジェリー」は、決して定まらないある方向を示す不思議な傑作だ。 [ 「ル・モンド」紙 ]

* ある映画体験... ガス・ヴァン・サントは醜悪さに陥ることなく、イメージを見事に劇化して我々を虜にする。苦難によって損なわれた友情の物語を、さり気なく語ってくれるのだ。 [ 「レゼコー」誌 ]

* 「エレファント」の直前に撮影されたこの作品は、並外れた形式美を呈しながら、驚くほど残酷である。 [ 「20minutes(ヴァン・ミニュート、20分)」 ]

* 奇妙なまでに魅力的な映画。ピュアな1本。 [ 「フィガロスコープ」誌 ]

* これは空想的な、実存についての映画。かつ寓意的な思索に向かって開かれている夢の映画だ。 [ 「テレラマ」誌 ]

* ガス・ヴァン・サントはその体験と観客を限界まで追いつめる。 [ 「ル・カナール・アンシェネ」誌 ]

* 崇高な映画... 叙事詩であり、現代詩である。 [ 「レザンロキュプティブル」誌 ]

* それは砂漠で撮影された、ひとつの荘厳な体験だ... [ 「TETU」誌 ]

■映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の感想
 話の流れ上当然ネタばれを含みますので、十分ご注意下さい。ATTN: Please stop reading here because my review reveals the movie content.

 「ジェリー」と聞くと私は子供の頃、TVの再放送で観た「トムとジェリー TOM AND JERRY <TV> (1940〜1967)」のネズミの「ジェリー」を思い浮かべる。そして映画製作者として超有名なジェリー・ブラッカイマー Jerry Bruckheimer (『 キング・アーサー (2004) KING ARTHUR 』『 バッドボーイズ2バッド (2003) BAD BOYS 2 BAD 』『 パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち (2003) PIRATES OF THE CARIBBEAN: THE CURSE OF THE BLACK PEARL 』『 カンガルー・ジャック (2003) KANGAROO JACK 』『 ヴェロニカ・ゲリン (2003) VERONICA GUERIN 』『 9デイズ (2002) BAD COMPANY 』『 パール・ハーバー (2001) PEARL HARBOR 』等)と、先日ガンで亡くなった映画音楽家の大御所 ジェリー・ゴールドスミス Jerry Goldsmith (『 ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション (2003) LOONEY TUNES: BACK IN ACTION 』『 トータル・フィアーズ (2002) THE SUM OF ALL FEARS 』『 ラスト・キャッスル (2001) THE LAST CASTLE 』『 インビジブル (2000) HOLLOW MAN 』『 追跡者 (1998) U.S. MARSHALS 』、古くは「オーメン」「チャイナタウン」「猿の惑星」「エイリアン」「ランボー」「スタートレック」「氷の微笑」「L.A.コンフィデンシャル」等) の「ジェリー」だ。どれも「ジェリー」の英語綴りは “Jerry” だが、本作『 ジェリー 』とは “Gerry” で異なる。

ジェリー
ジェリー
 本作『 ジェリー (2002) GERRY 』のプロットは、男同士の親友(どういうわけか、マット・デイモン Matt Damon とケイシー・アフレック Casey Affleck の二人の役柄ともジェリーという名前)がふとしたことで、道に迷い、砂漠をさ迷い歩き、結果一人だけが生還するという単純なものだ。これは実は、実話を基にしているプロットなのだ。このような単純なプロットでどんな話が組み立てられるのだろうか?どんなメッセージを投げかけてくるのだろうか?

 この映画『 ジェリー (2002) GERRY 』の監督は、この映画の後に『 エレファント (2003) ELEPHANT 』を監督したガス・ヴァン・サントだ。彼の持つ崇高な映画哲学は、幸には分からないが、この『 ジェリー 』と『エレファント 』は作風が全く違うように思う。ただ、どちらも日常の生活の中のちょっとした、自分や他人の、誤解や思い込みや判断ミスが、結果として重大な事態になるということだ。非日常的な出来事や大事件は日常の中に存在するのだ。そして時として自分の理解を超えた行為が自分から生み出されるのだ。
 TVアニメ、ネコとネズミの人気コンビ「トムとジェリー TOM AND JERRY 」(再放送)では、毎回追いかけっこをする。そしていつもと言って良い程トムはジェリーに負けている。私は頓馬(とんま)なトムを応援していたわけでもなく、賢いジェリーを贔屓(ひいき)にしていたわけでもない。ただ追いかけっこが面白かったのだ。リビング・キッチン・ベッドルームなど家中駆け回る。屋外でも何処でも場所を選ばず勢いよく走り回る。ただその動きが面白かっただけだと今になって思う。
 本作ガス・ヴァン・サント監督の『 ジェリー 』を観ていて、「トムとジェリー」の追いかけっこをなぜか連想した。映画では二人のジェリーがただただ歩く。おそらく観客はどうなるか想像もつかない。映画を見慣れた人も、劇的な結末を予想する人も、映画が進むにつれて、二人のジェリーと一緒になって、いや傍観してかも知れないが、前に何があるか分からないまま、しかし気になりながら進もうとする。歩き初めの頃は二人に会話もある。しかし次第に寡黙になり、歩くことに専念して黙々と進む。三日間とぼとぼと歩き、やがて体力を消耗して・・・。

 幸はこの『 ジェリー 』ほどの体験はしたことがないが、西オーストラリアのピナクルズへのハイキング、そして限られた時間内でのパースの市内観光32箇所巡りは、炎天下、記録的な摂氏41度という猛暑の中で歩き回った経験がある。この時は流石、観光スポットの写真もそこそこに早く終わりたい!と思って進むだけだった。勿論ピナクルズの場合は同じツアーの同行者との会話は全くない。最初はすごいな〜!やこのハエ、五月蝿いな!等持ったタオルで体をバチバチと叩いたり、笑い声がしていた。しかし20分過ぎた頃から、私だけでなく、夫婦や友人同士もツアーの途中から全く声が聞こえなくなり、汗ばむ口元や背中が、ハエにたかられっ放し。そんなことも気も留めなく私はただただピナクルズの黄色い砂と尖塔だけが頭に焼き付いていた。砂にめり入るスニーカーのズックズックも聞こえなくなるくらいに体力が消耗してきたのだ。無言だ。

 アニメもトムが追いかけ、ジェリーが逃げ回るシーンにはBGMがあっても二匹は無言で会話がない。アニメはジェリーの賢い勝ちでお終いになるが、私は猫が好きだったので、猫のトムがやり込められるのには余りハッピーエンドに終わって良かったとかホッとしたとかいう記憶がない。後になってから、見方によればトムのほうに分(ぶ)があると思ったこともある。
 本作『 ジェリー 』もそうだ。何という終わり方だろうか。判断や評価は映画を観るものに委ねられている。映画を観てからあれこれと映画の粗探しをするよりは、この『 ジェリー 』という映画は、「イソップ物語」のような現代の寓話だと捉えると分かりやすい。観た後、だからどうなの?と問いただしてみるのも一つの見方だが、映画の中で体感する異空間や疑似体験を楽しむのも映画の一つの見方であることは誰も否定しない。

 その意味では、先日観た『 16歳の合衆国 (2003) THE UNITED STATES OF LELAND 』もそうだ。暑い太陽の下では人の思考は鈍り、潜在的な何かが沸騰するように、突発的に過激な行動を誘発する。本作『 ジェリー (2002) GERRY 』はやはり砂漠の暑さの中で、二人のジェリーが方向感覚を失い、幻覚症状を起こし、意識が朦朧とする中で生き延びるため、ただひたすら道を求めて歩く。そして次第に何のために歩いているのかも忘れているかのように立ち止まっては、また思い出したかのように前に前に一歩でも進もうとする。ついに二人は倒れる。二人のジェリーが倒れている場所は、車の走る道路からほんの数百メートルであることも気づかないほど精神がフリーズしているのだ。

 二人のジェリーが歩き続けるブッシュの道、岩場、砂漠などの広大な自然は、彼らの思惑と存在の認識に関係なく容赦なく存在する。その自然は、恐竜から微生物、勿論人間も含めて生命のあるなしに関わらず、あらゆるものを引き受けて包括してきた。若い二人ジェリーがその容赦ない自然と向き合って対峙しようとするには、ネコのトムのように愚か過ぎた。マット・デイモンのジェリーがケイシー・アフレックのジェリーに何を見せてやりたかったのかは分からない。日ごろ友人に対して真にどうなのかも分からない。用意したものは 350ml ばかりのミネラルウオーターだけ。ハイキングコースなので迷子になることなど考えてみなかったのだろう。ふざけてブッシュの道なき道を進み、いつの間にか迷子になり、砂漠に迷い込み、ことの重大さに気づいていくうちに、暑い日差しの中で自我すらも失くしていく・・・。自然は美しく姿を変えて観るものを魅了していく。脆弱な人間・二人のジェリーの過酷な営みを見つめる自然は、容赦なく美しい。

 私は、アメリカの広大な砂漠を自分自身で運転して走ったこともなければ、途中でガス欠にもパンクもしたこともない。アメリカの身近な自然には人間の理解能力を遥かに超えた美しさや凄さや怖さがある。私は二人のジェリーのように、行き当たりばったりで進み、大雑把な判断をしては又進むようなことはしたくないと思っているが、私の日常生活の中でも自分の気づかないところでそうしているのかも知れない。そう思うと、実際に命を賭けて自然と対峙したこともなければ、将来したくもないことになる。そんな幸にはこの映画はいい擬似体験、経験だった。非日常的な出来事は日常の中に存在する。映画「ジェリー」こそ現代の体験型寓話と云えるかもしれない。

 そういえば、私たちの使っているパソコンですら摂氏37度以上では誤作動して迷走するらしい。幸のノートパソコンもデスクと底面が熱くなると調子が悪くなりフリーズする。ノートパソコンもハードディスクの命を賭けて自然と対峙しているのかしら。

 この日本の異常な暑さの中、頭が沸騰しないように・・・。これをお読みの訪問者の方へ、是非この映画に挑戦して体験してみてください。


参考資料:「ジェリー」資料(エレファントピクチャー)
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
※ポスターはNostalgia.com、画像はエレファント・ピクチャーに使用許諾を得ています。
Text by Sati
coda21「映画の森てんこ森」幸田幸。
coda_sati@hotmail.com
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