トーク・トゥ・ハー | |||||||||||||||||||||||||||
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映画の森てんこ森■読む映画試写会■映画解説 | |||||||||||||||||||||||||||
トーク・トゥ・ハー (2002) | |||||||||||||||||||||||||||
HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) | |||||||||||||||||||||||||||
映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE
CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』を紹介します。 映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』を以下に目次的に紹介する。 ■映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』のポスター、予告編および映画データ ■映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』の解説 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。 ■映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』の主なスタッフ ■映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』の主なキャスト ■映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』のあらすじ ■映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』のトリビア ■映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』のスタッフとキャスト ■映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』の<もっと詳しく> <もっと詳しく>は映画『 トーク・トゥ・ハー 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタばれ)です。※ご注意:映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』の内容やネタばれがお好みでない方は読まないで下さい。 ■映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』の感想 ■映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』の更新記録 >>「映画解説・レヴュータイトル一覧表」へ(画面の切り替え) |
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幸の鑑賞評価: 9つ星 | |||||||||||||||||||||||||||
■映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』のポスター、予告編および映画データ | |||||||||||||||||||||||||||
トーク・トゥ・ハー
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●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。 Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com. Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc. |
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■映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE
CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』の解説 映画『 トーク・トゥ・ハー 』は、スペイン語の作品でありながら、アカデミー脚本賞を受賞するという快挙を成し遂げた。映画『 トーク・トゥ・ハー 』のタイトル“トーク・トゥ・ハー Talk to her. = 彼女に話しかけて”は英語も西語も同じだ。映画『 トーク・トゥ・ハー 』は、1999年度アカデミー賞、最優秀外国語映画賞を受賞した『 オール・アバウト・マイ・マザー (1998) 』のペドロ・アルモドバル監督(『 バッド・エデュケーション (2004) LA MALA EDUCACION (原題) / BAD EDUCATION (英題) 』等)の傑作。 映画『 トーク・トゥ・ハー 』の主人公は、ダンス・オペラの鑑賞の席で、偶々隣合わせに座った二人の男、ベニグノとマルコ。マルコの恋人で、女闘牛士のリディアが試合で牛に襲われて昏睡状態に陥った時、二人は再び病院で出会う。ベニグノは看護師で、もう 4 年間も一方的に大好きな昏睡状態の女性アリシアを看護し続けている。アリシアをマッサージし、肌が荒れないようにクリームを塗り、アリシアに意識があるようにトーク・トゥ・ハーするベニグノ。その一途な愛情は、さらに独り善がりに行き過ぎてしまい…。 映画『 トーク・トゥ・ハー 』の劇中でのカエターノ・ヴェローゾ CAETANO VELOSOの「ククルクク・パローマ CUCURRUCUCU PALOMA」ライブは、映画『 トーク・トゥ・ハー 』をより印象深くする。 ▲TOPへ ■映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』の主なスタッフ ○監督&脚本: ペドロ・アルモドバル 『 オール・アバウト・マイ・マザー (1998) TODO SOBRE MI MADRE (原題) / ALL ABOUT MY MOTHER (英題) 』< 1999 年カンヌ国際映画祭監督賞& 2000 年アカデミー外国語映画賞受賞> 『 デビルズ・バックボーン (2001) EL ESPINAZO DEL DIABLO (原題) / THE DEVIL'S BACKBONE (英題) 』(製作) 『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』< 2003 年アカデミー脚本賞受賞&監督賞ノミネート、 2002 年ヨーロッパ映画賞監督賞&脚本賞受賞> 『 死ぬまでにしたい10のこと (2003) MY LIFE WITHOUT ME 』(製作総指揮) 『 バッド・エデュケーション (2004) LA MALA EDUCACION (原題) / BAD EDUCATION (英題) 』等 監督のお母さん Francisca Caballero と下記の兄弟のアグスティンは、よく監督の映画にカメオ出演している。 ○製作&製作総指揮: アグスティン・アルモドバル ペドロ・アルモドバル監督の兄弟。 『 オール・アバウト・マイ・マザー (1998) TODO SOBRE MI MADRE (原題) / ALL ABOUT MY MOTHER (英題) 』< 1999 年ヨーロッパ映画賞作品賞受賞> 『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』< 2002 年ヨーロッパ映画賞作品賞受賞> 『 デビルズ・バックボーン (2001) EL ESPINAZO DEL DIABLO (原題) / THE DEVIL'S BACKBONE (英題) 』(製作総指揮) 『 死ぬまでにしたい10のこと (2003) MY LIFE WITHOUT ME 』(製作総指揮) 『 バッド・エデュケーション (2004) LA MALA EDUCACION (原題) / BAD EDUCATION (英題) 』(製作)等 ○音楽: アルベルト・イグレシアス 『 オール・アバウト・マイ・マザー (1998) TODO SOBRE MI MADRE (原題) / ALL ABOUT MY MOTHER (英題) 』 『 バッド・エデュケーション (2004) LA MALA EDUCACION (原題) / BAD EDUCATION (英題) 』等 ▲TOPへ ■映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』の主なキャスト ☆ハヴィエル・カマラ as ベニグノ 『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』< 2002 年ヨーロッパ映画賞男優賞ノミネート> 『 バッド・エデュケーション (2004) LA MALA EDUCACION (原題) / BAD EDUCATION (英題) 』等 ☆ダリオ・グランディネッティ as マルコ アルゼンチンの俳優さん。 ☆レオノール・ワトリング as アリシア スペイン人の父とイギリス人の母を持つ。 『 死ぬまでにしたい10のこと (2003) MY LIFE WITHOUT ME 』 『 バッド・エデュケーション (2004) LA MALA EDUCACION (原題) / BAD EDUCATION (英題) 』等 ☆ロサリオ・フローレス as リディア ☆ジェラルディン・チャップリン as カタリナ チャールズ・チャップリン Charles Chaplin の娘。若い頃はロンドンのロイヤル・バレー・アカデミー the Royal Ballet Academy に在籍。パリで踊っている時に、デヴィッド・リーン David Lean 監督に見出され、『 ドクトル・ジバゴ (1965) DOCTOR ZHIVAGO 』に出演。 ☆セシリア・ロス 『 オール・アバウト・マイ・マザー (1998) TODO SOBRE MI MADRE (原題) / ALL ABOUT MY MOTHER (英題) 』 『 ブエノスアイレスの夜 (2001) VIDAS PRIVADAS (原題) / PRIVATE LIVES (英題) 』等 ▲TOPへ ■映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』のあらすじ バレエ・ダンサーのアリシア(レオノール・ワトリング)は交通事故に遭い、 4 年もの間、植物状態のままオレンジ色の壁の病室で眠り続けている。 24 時間の完全介護を受けるアリシアの世話をする看護師の一人、ベニグノ(ハヴィエル・カマラ)は彼女にクリームを塗ってマッサージをし、髪を切り、話しかける。 女闘牛士のリディア(ロサリオ・フローレス)は牛に大脳皮質を破壊されて植物状態になり、アリシアの入院するクリニックへ。アルゼンチン人ジャーナリストである恋人のマルコ(ダリオ・グランディネッティ)は、悲しみにくれる。 孤独な二人の男ベニグノとマルコは、お互いに深い友情を感じる。しかし、ベニグノのアリシアへの一途な愛が、予期せぬ悲劇と奇蹟を生んでしまい…。 ▲TOPへ ■映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』のトリビア (^ー^*) アルモドバル監督作品の常連女優、セシリア・ロス Cecilia Roth とマリサ・パレデス Marisa Paredes がカエターノ・ヴェローゾ Caetano Veloso が歌うシーンに少しだけ登場する。 (^ー^*) 結婚式を行っている聖職者は、映画のプロデューサーであるアグスティン・アルモドバル(監督の兄弟)である。 (^ー^*) マルコのナイト・テーブルの上には、マイケル・カニンガム Michael Cunningham の小説「めぐりあう時間たち―三人のダロウェイ夫人」(『 めぐりあう時間たち (2002) THE HOURS 』の原作)のスペイン語の翻訳本がある。 (>_<) 血を流す牛は本物。マドリード Madrid のエコ団体は、動物虐待でペドロ・アルモドバル監督を告訴しようとした。エコ団体は、監督を攻撃するのではなく、そんなことを受け入れる社会を訴えるつもりだった。アルモドバル監督は、牛を殺す許可は所有者から得ており、エコ団体が何らかの宣伝をしようとしていると話した。 ※下記のトリビアは、映画『 トーク・トゥ・ハー 』のストーリーを少しネタバレしています。ご注意ください。 (^_^;) リディアが闘牛に襲われるシーンはいくつか撮り直しが必要だった。牛がダミーにダメージを与えずにいつもそれを飛び越してしまったからだ。 (^ー^*) リディア役のロサリオ・フローレスは、伝説的フラメンコ・ダンサーのローラ・フローレス Lola Flores ( 1923-1995 )とギタリストのアントニオ・ゴンザレス・‘エル・ペスカイア’ Antonio González 'El Pescaílla' ( 1926-1999 )の娘。映画の中で、リディアの訃報が載った新聞でも、彼女の父親の名前はアントニオ・ゴンザレス Antonio González だった。 ▲TOPへ ■映画『 トーク・トゥ・ハー 』の受賞とアカデミー脚本賞受賞作品映画解説&レヴュー 映画『 トーク・トゥ・ハー 』は、多くの賞を受賞している。 2002年アカデミー脚本賞(ペドロ・アルモドバル) 2002年LA批評家協会賞監督賞(ペドロ・アルモドバル) 2002年ゴールデン・グローブ外国映画賞(スペイン) 2002年ヨーロッパ映画賞 作品賞(監督:ペドロ・アルモドバル) 監督賞 ペドロ・アルモドバル 脚本賞 ペドロ・アルモドバル 2002年英国アカデミー賞 外国語映画賞 スペイン オリジナル脚本賞 ペドロ・アルモドバル 特に、脚本はアカデミー脚本賞はじめとして受賞が目立つ。以下は、「映画の森てんこ森」内にあるアカデミー脚本賞受賞作品映画解説&レヴューである。 『 ロスト・イン・トランスレーション (2003) LOST IN TRANSLATION 』 『 ゴスフォード・パーク (2001) GOSFORD PARK 』 『 アメリカン・ビューティー (1999) AMERICAN BEAUTY 』 『 恋におちたシェイクスピア (1998) SHAKESPEARE IN LOVE 』 『 ファーゴ (1996) FARGO 』 『 ユージュアル・サスペクツ (1995) THE USUAL SUSPECTS 』 『 ピアノ・レッスン (1993) THE PIANO 』 『 レインマン (1988) RAIN MAN 』 『 刑事ジョン・ブック/目撃者 (1985) WITNESS 』 『 炎のランナー (1981) CHARIOTS OF FIRE 』 (2004/11/06現在) |
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【『 トーク・トゥ・ハー 』のスタッフとキャスト】 | |||||||||||||||||||||||||||
監督: ペドロ・アルモドバル Pedro Almodóvar
(Directed by) 製作: アグスティン・アルモドバル Agustín Almodóvar (producer) 製作総指揮: アグスティン・アルモドバル Agustín Almodóvar (executive producer) 脚本: ペドロ・アルモドバル Pedro Almodóvar (Writing credits ) 音楽: アルベルト・イグレシアス Alberto Iglesias (Original Music by) 撮影: ハヴィエル・アグィレサローベ Javier Aguirresarobe (Cinematography by) 編集: ホセ・サルセド José Salcedo (Film Editing by) 美術: アントン・ゴメス Antxón Gómez (Production Design by) 衣装: ソニア・グランデ Sonia Grande (Costume Design by) 出演: ハヴィエル・カマラ Javier Cámara as Benigno Martín ダリオ・グランディネッティ Darío Grandinetti as Marco Zuluaga レオノール・ワトリング Leonor Watling as Alicia ロサリオ・フローレス Rosario Flores as Lydia González ジェラルディン・チャップリン Geraldine Chaplin as Katerina Bilova マリオラ・フエンテス Mariola Fuentes as Rosa ロラ・ドゥエニャス Lola Dueñas as Matilde アナ・フェルナンデス Ana Fernández as Lydia's Sister チェス・ランプレアヴェ Chus Lampreave as Concierge エリオ・ペドレガル Helio Pedregal as Alicia's Father アドルフォ・フェルナンデス Adolfo Fernández as Niño de Valencia パス・ベガ Paz Vega as Amparo ピナ・バウシュ Pina Bausch as Herself カエターノ・ヴェローゾ Caetano Veloso as Himself (song "Cucurrucucu Paloma") マリサ・パレデス Marisa Paredes as Guest at singer party (uncredited) セシリア・ロス Cecilia Roth as Manuela Coleman (uncredited) ▲TOPへ |
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ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。 |
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■映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE
CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー 【トーク・トゥ・ハー 第01段落】 白いスリップを着た二人の女性が目をつむって夢遊病患者のように踊る。舞台上には木の椅子が無造作に並べられている。髪の多い方の女性が舞台を横切って動くと、一人の男性が彼女の動く道を作るために椅子をどけていく。世界的なドイツの舞踊家・振付家ピナ・バウシュ Pina Bausch ( 1940- )のダンス・オペラ“カフェ・ミュラー( Cafe Muller )”の舞台だ。観客席には、小太りの青年と 40 代くらいの髪の薄いハンサム(?)な男が偶然隣り合わせている。美しく悲しいダンスに心打たれた 40 代くらいの男は涙を流している。 【トーク・トゥ・ハー 第02段落】 小太りの青年の名前はベニグノ(ハヴィエル・カマラ)。彼は「エル・ボスケ・クリニック El Bosque 〔日本語では森医院と訳す?〕」で看護師をしている。オレンジ色の小綺麗な病室に眠っているのは、美しく若い女性アリシア(レオノール・ワトリング)。ベニグノはアリシアのネイルケアをしながら、昨夜観たダンス・オペラの話をする。アリシアは植物人間なのだが、ベニグノはまるで彼女に意識があるかのように接している。ベニグノは、昨日買ったピナ・バウシュのサイン付き写真をアリシアに贈った。 【トーク・トゥ・ハー 第03段落】 その弾けるような美しい肉体が、アリシアが生きているという証なのだが、熟練した看護師のベニグノとロサ(マリオラ・フエンテス)は淡々と仕事を遂行する。患者が生理であることに気付くと、的確に処理をする。そんな風にするんだと、ちょっとビックリのシーン。二人の看護師に丁寧に洗浄されているアリシアの体は何にも反応しない。その眠れる病室の美女を介護している看護師には、もう一人マティルデ(ロラ・ドゥエニャス)がいる。夫に逃げられるという家庭の問題を抱えるマティルデは、ベニグノに夜勤を頼む。快く引き受けるベニグノ。 【トーク・トゥ・ハー 第04段落】 ダンスを見て涙を流した 40 がらみの男マルコ(ダリオ・グランディネッティ)は、アルゼンチン人ジャーナリスト。彼が見ているTVのインタヴュー番組のゲストは女闘牛士のリディア(ロサリオ・フローレス)だ。浅黒い肌に黒く長い縮れた髪がセクシーな細面(ほそおもて)の女性は、さすが男社会で生きているだけあって、気が強い。リディアは最近恋人に去られたばかり。その恋人は“バレンシアの神の子〔エル・ニーニョ〕”(アドルフォ・フェルナンデス)という闘牛士で、他の男闘牛士たちから敬遠されがちなリディアと、宣伝のために組み、リディアを利用して捨てたと世間では噂されている。その事についてインタヴュアーが執拗に質問をするので、リディアは激怒して番組の途中で帰ってしまう。そんなリディアに興味を持ったマルコは、彼女についての記事を書くことにする。 【トーク・トゥ・ハー 第05段落】 際どい闘牛をするリディアを、エル・ニーニョが彼のマネージャーと一緒に心配そうに見ている。マネージャー曰く、自分を捨てたエル・ニーニョの前で、まるで雄牛に引き裂かれたいと思っているかのような闘牛だ。どうやらエル・ニーニョはまだリディアを愛しているようだが、マネージャーが彼女との関係を宜しく思っていないみたい。闘牛後のバーで、マネージャーは、リディアにエル・ニーニョを心配させるような闘牛はするなと忠告する。リディアはマネージャーからエル・ニーニョの居場所を聞き出そうとするが、無駄だった。一部始終を見ていたマルコはリディアに話しかけ、マドリード Madrid まで彼女を送って行くことになる。バーを出るとき、リディアはエル・ニーニョに当てつけるように、マルコの腕をとった。 【トーク・トゥ・ハー 第06段落】 −リディアとマルコ− マルコの車は、ベンツのAクラス。車の中、マルコが自分が記者であり、リディアの闘牛ではなく、私生活について興味があると明かすと、リディアは憤慨し、取材を断る。怒って自宅に入っていったリディアだが、突然彼女の叫び声が響き渡る。恐怖に慄(おのの)いたリディアが家から走り出てきて、再びマルコの車に乗る。リディアの家の台所に蛇がいたのだ。マルコは勇敢にもリディアの家に入り、蛇退治。そして、蛇を野球のバットで叩き殺した後、流れてくる涙をハンカチで拭いた。蛇恐怖症のリディアは家に帰ることができず、マルコにユーロビルディング・ホテルへと送ってもらう。マルコに助けてもらい、それまでのリディアの怒りは無くなった。 【トーク・トゥ・ハー 第07段落】 ベニグノの部屋は改装中。彼のベッドの横には、眠っているアリシアの写真もある。いつものように出勤したベニグノは、夜勤のマルティデと交代し、ロサと一緒にアリシアの髪を洗う。それから、手慣れた手つきでアリシアの髪を切る。ロサは暑い夏だし手入れがラクなので、短くしようと提案するが、目覚めた時のためにと、ベニグノはアリシアの髪の長さを入院した 4 年前と同じ長さにそろえる。ベニグノはアリシアが覚醒する奇蹟を信じている。 【トーク・トゥ・ハー 第08段落】 数ヵ月後。大型のベンツの後部座席で手を繋いで一緒に座っているマルコとリディア。黒いサングラスをかけているリディアが、落ち着かない様子で、試合の後で話があるとマルコに告げる。ホテルの一室。マルコがリディアの姉(アナ・フェルナンデス)達と一緒に雑談をしていると、試合を控えて緊張した面持ちのリディアがやって来る。美しい衣装を一つ一つしっかりと身に付けていくにつれ、リディアは普段の自分から離れ、闘牛士〔マタドール matador 〕となっていく。その姿は神々(こうごう)しいまでの美しさだ。闘牛場。牛を待ち構えるリディアは首にかけた金のメダルにキスをする。膝をつき、表がピンク、裏が黄色のローブ〔カポーテ capote 〕を広げて牛が出てくる扉が開くのを待つ。リディアの息は荒い。扉の中では大きな雄牛が、荒々しく動き回っている。 【トーク・トゥ・ハー 第09段落】 その時がやって来た。雄牛はリディアに突進。観客の叫び声。その鋭い角でリディアを突き刺した雄牛は、別のカポーテに標的を変えて走っていく。担架で運ばれていくリディアを人が取り巻く。病院。マルコやリディアの姉は失意の表情。そこへエル・ニーニョがリディアの容体を心配して駆けつける。リディアの姉は、一年前に亡くなった父親を責めていた。嘗て闘牛士を目指していた父がリディアを闘牛士にしたからだ。 【トーク・トゥ・ハー 第10段落】 3 週間後。昏睡状態になったリディアは眠り続けている。リディアの姉は、悲嘆にくれたまま病院のリディアのもとから離れて家へと戻る。病室には、顔に痛々しいキズがまだ少し残っているリディアと、看護師の女性と、マルコの三人。突然、赤い花の花束を持って現れたエル・ニーニョを、マルコは厳しい目つきで見る。三ヶ月間アメリカへ渡ると言うエル・ニーニョは、リディアを残したまま去るのが気がかりなようだ。エル・ニーニョは、事故の日、リディアがマルコと話をしたか尋ねた。マルコは、自分が一方的に話しただけで、エル・ニーニョの話は長い間していないと憮然として答えた。しかし、エル・ニーニョはリディアの事故が自分のせいだと言って顔を伏せる。マルコは元カレの意見を否定し、自分のせいだと思いつめた表情になる。 【トーク・トゥ・ハー 第11段落】 マルコがそう思うのは、 MPB 〔ブラジルのポピュラーミュージック〕界の大御所カエターノ・ヴェローゾ Caetano Veloso ( 1942- )を招いてのホーム・コンサートがあった時の出来事のせいかもしれない。ラテン音楽のスタンダード・ナンバー♪ククル・ク・ク・パロマ( Cucurrucucú Paloma )♪を歌うカエターノの美しい高音の声に酔いしれる人々。感動の余りマルコは一人虚しさに襲われ、涙する。ちょうどカエターノが「未だに彼女が戻ってくるのを待っている」と歌った時、居た堪れなくなったマルコは、庭へと飛び出した。そんな彼を追って外に出たリディアは、マルコに尋ねた。蛇を退治したとき、涙を流したのは何故なのか。マルコは以前アフリカでも蛇を殺した時のことを話した。それは蛇に怯える前の恋人のためにしたこと。マルコの心の中にいる前の恋人の影に嫉妬したリディアは、悔しいと言って、マルコにキスをした。こうすれば忘れられると、マルコもリディアにキスを返した。 【トーク・トゥ・ハー 第12段落】 そんな過去の夢を見て、マルコはリディアの病室で目覚めた。きっとマルコは、いつまでも前の恋人に未練を残していることに、リディアが傷ついていたと思って、心苛(さいな)まれているのだろう。看護師達がリディアの世話をしている。マルコは主治医のベガ先生のところへ行こうと病室を出た。途中、ドアが開いたままの病室を何となく覗くと、見事な肢体を露(あらわ)にした若くて美しい女性が眠っている。アリシアだ。突然アリシアの目が開き、驚くマルコ。しかし、それはアリシアの意識が回復したのではなく、単なる反応に過ぎない。 【トーク・トゥ・ハー 第13段落】 マルコはベガ先生にリディアが何時まで意識不明のままなのか尋ねた。医学的には大脳皮質を破壊されたリディアが目覚めることはないが、希望を持つことは自由だと医師は答える。そういう奇蹟が起こった例は、過去にもあるらしい。 【トーク・トゥ・ハー 第14段落】 リディアの病室に帰る途中、マルコが再びアリシアの病室を見ると、看護師のベニグノと目が合った。ベニグノは病室の中に入るようにマルコを誘った。アリシアの部屋には、ベッドの傍らに写真や時計や本が置かれ、まるで彼女に意識があるかのような佇(たたず)まいだ。リディアの部屋とは違う。ベニグノは以前“カフェ・ミュラー”を観に行った際に、マルコと隣り合わせたことを話した。ベニグノはマルコが泣いていたことも知っていて、アリシアにもその事を話していたようだ。そんなベニグノの態度に戸惑いを感じたマルコは、アリシアの病室を出た。 【トーク・トゥ・ハー 第15段落】 その後すぐにアリシアの父で精神科医のロンセロ氏(エリオ・ペドレガル)が娘の病室のベニグノを訪ねて来た。念入りにアリシアの太腿をマッサージするベニグノに、不審な気持ちを抱くロンセロ氏。以前ベニグノがロンセロ氏の診察を受けたことがあり、その時の記録を目にしたことが、ロンセロ氏の突然の来訪の原因だ。ロンセロ氏はベニグノに性的傾向、つまり、男と女のどちらが好きか尋ねた。少し考えて、ベニグノは男の方に惹かれると答えた。 【トーク・トゥ・ハー 第16段落】 リディアの病室のベランダからアリシアの病室のベランダが見える。品のいい初老の女性がアリシアのお見舞いに訪れている。マルコは、その女性がベニグノも交えてアリシアとベランダで話をしているのを見た。もちろんアリシアがその会話に反応することはないが、 3 人は本当にコミュニケーションがとれている様に見えた。その初老の女性は、アリシアのバレエ教師のカタリナ(ジェラルディン・チャップリン)で、彼女はカバンから CD を取り出し、アリシアに音楽も聞かせた。カタリナが帰った後、マルコはすぐにアリシアの部屋に行った。マルコに対して親近感を持つベニグノは、自分とアリシアのことを話した。 【トーク・トゥ・ハー 第17段落】 −アリシアとベニグノ− ベニグノのアパートはアリシアが通っていたカタリナのバレエ教室のちょうど向かいにあった。 15 年間ずっとベニグノは母親の世話をして暮らしていた。 4 年前、ベニグノの母親が死んで 2 ヵ月後のことだ。ベニグノはいつものように自分の部屋の窓からバレエ教室でレッスンをしているアリシアをずっと見つめていた。レッスンの終わったアリシアが通りに出てきた時、財布を落とした。ベニグノは急いでその財布を拾いに行き、アリシアの後を追った。ベニグノを変態だと思ったアリシアは、彼に怒るが、財布を拾ってくれたと知り、笑顔に変わる。ベニグノはアリシアの家に着くまで彼女と一緒に話をして歩いた。アリシアが好きな事は、バレエをすること、観ること、そして旅行。映画を観るのも好きで、最近はサイレント映画にハマっている。ベニグノはアリシアが母親を幼い時に亡くしていることも知った。ベニグノにとって楽しい時間はすぐに過ぎた。車通りの多い道路を渡って、アリシアは高級そうなアパートの中に消えていった。ベニグノはすぐにアリシアの後を追って、彼女がそのアパートのどこに住んでいるのかを突き止めた。アリシアの父親は自宅で精神科医を営んでいるようだ。 【トーク・トゥ・ハー 第18段落】 ベニグノは家の窓からベレエ教室を眺めていたが、その日はアリシアは姿を現さなかった。アリシアに会いたくて居てもたってもいられなくなったベニグノは、アリシアの父であるロンセロ氏の精神科に予約を入れた。ベニグノは自分が精神的におかしいと思っていなかったが、ロンセロ氏が聞いたベニグノの思春期は特殊なものだった。 15 年間母の世話をしながら通信教育で看護や美容の勉強をしたこと、父親が母を捨ててスウェーデンかどこかで別の家庭を持っていること、少し孤独なこと、女性とも男性とも性的な関わりを持ったことがないこと。ロンセロ氏は来週又来るようにベニグノに言った。診察室から出たベニグノは、受付の女性がいないのをいいことに、シャワーの音に惹かれ、アリシアの部屋に入っていった。オレンジ色のきれいな部屋で、ベニグノはアリシアの髪留めを盗んだ。部屋から出たとき、ベニグノはシャワーの終わったアリシアと遭遇。一瞬怯えるアリシア。ベニグノは君に会いたかっただけとすぐにその場を去った。 【トーク・トゥ・ハー 第19段落】 雨の日。バレエ教室にアリシアの姿がない。ベニグノは、レッスンが終わってもないのに、緑色の傘を差したカタリナが慌てて通りに出て行くのを見た。ベニグノがアリシアと再会したのは、この病室。交通事故で植物状態になった娘のためにロンセロ氏が 24 時間の完全看護を望み、ベニグノを優秀な看護師だと判断した医師が推薦してくれたお蔭で、今ベニグノはここに居る。ベニグノはこの 4 年、アリシアが好きなことを代わりにしてその体験を彼女に話してあげていた。旅行以外のアリシアの好きなことは全部している。また、今、雑誌を参考にして、ベニグノは自分の部屋をアリシアの部屋のようにオレンジ色でシンプルな感じに改装中だ。ベニグノにとってこのアリシアを看護してきた 4 年間は人生で最も充実した時間だ。 【トーク・トゥ・ハー 第20段落】 アリシアとの関わりをマルコに話したベニグノは、リディアに意識がなくなった事実を受け入れられないマルコに、リディアに話しかけてあげるように勧めた。ベニグノによると、女性の脳は植物状態にあっても神秘的。優しく接し、大切な存在だと思わせてあげることが大切なのだそうだ。そんな話を受け入れることができないマルコはベニグノにどんな女性体験があるのか思わず訊いてしまう。母と過ごした 20 年とアリシアと過ごした 4 年だとベニグノは自信たっぷりに答えた。 【トーク・トゥ・ハー 第21段落】 看護師同士の噂で、ベニグノがホモであるという噂が流れている。ベニグノがアリシアにあまりにも親密であることを心配した女性看護師が、主治医のベガ医師に相談したところ、ベニグノはホモだから気にすることはないと言われたそうだ。ベガ医師はそのことをロンセロ氏から聞いた。一緒にアリシアを看護しているロサは、以前ベニグノがロンセロ氏から性的傾向について不躾(ぶしつけ)な質問をされたことを知っていた。ベニグノがホモだとウソをついたことを本人から聞いていたので、ロサは口さがない事を話す看護師達に友達の悪口を言われたように感じた。 【トーク・トゥ・ハー 第22段落】 ベニグノは“縮みゆく恋人”というサイレント映画を観た。その次の夜、ロサが風邪で休んだので、ベニグノは一人でアリシアの看護をする。マッサージをしてあげようと、アリシアの胸を開(はだ)けさせた。いつもしているベニグノにとっては普通の行為だが、昨夜の映画のせいで心乱れてしまう。 【トーク・トゥ・ハー 第23段落】 サイレント映画“縮みゆく恋人”---科学者のアンパロ(パス・ベガ)は世界を驚かすような薬を秘密に開発している。アンパロを愛する太目の男アルフレドは、自らの愛を示すため、安全性を確かめていない、できたばかりのその薬を飲んだ。アルフレドは日に日に縮んでいくようになってしまう。アンパロは解毒剤を開発すると躍起になったが、結局できなかった。小さな自分の姿を見てアンパロが心痛めるだろうと、アルフレドは内緒で 10 年も音信不通の母親の元に帰った。ところが、アンパロはアルフレドを探し出し、迎えに行く。アルフレドの母親の家から出てきたアンパロは一人きりのように見えるが、そのカバンの中にとっても小さくなったアルフレドがいた。その晩ホテルに泊まった二人。ベッドに横たわるアンパロは、小さな小さなアルフレドを押しつぶしたらと心配しながら目を閉じた。アルフレドはアンパロに掛けられたシーツを満身の力で引き落とす。素っ裸のアンパロの上に喜んでよじ登ったアルフレドは、あることを思いつく。アルフレドはアンパロの開かれた・・・〔ピーッ〕から、彼女の体の中に入る。永遠に。〔スゴイ直接的な表現方法に目が点になりました。〕 【トーク・トゥ・ハー 第24段落】 ベニグノは、映画のアルフレドのように、美しく眠り続けるアリシアの中に入りたいと強く願ってしまい…。 【トーク・トゥ・ハー 第25段落】 一ヵ月後。テラスで一緒に日向ぼっこをしているアリシアとリディア。意識のない二人だが、顔を横にして向かい合わせるようにして、隣同士で椅子の上に寝かされていると、まるで会話をしているようだ。ベニグノがそんな風にマルコに話すと、マルコはリディアが牛にやられて 2 か月経つと話していると呟いた。 【トーク・トゥ・ハー 第26段落】 マルコは前の恋人の結婚式の日のことを思い出した。マルコの前の恋人アンヘラはピチピチの若くて可愛い女の子だ。〔マルコとアンヘラが別れた時、一体彼女は何歳だったんだろう?〕壮麗なカトリックの教会で、白いウエディングドレスを着たアンヘラはとても美しく、花婿の青年ベンハミンと共に、新しい人生の門出で希望に満ちた表情をしている。そんな若い二人を見ていたマルコだが、参列者に紛れて教会の椅子に座っているリディアの存在に気付く。リディアは結婚式に感激して泣いていた。ホテルで会うはずだったのに、わざわ結婚式にやって来たリディアに、マルコはアンへラとはもう終わっていると話した。 【トーク・トゥ・ハー 第27段落】 ホテルへ向かう車の中、マルコは、前の恋人アンヘラとの関係をカエターノの歌を聴いた夜の時より詳しく話した。アンヘラは麻薬常習者だったらしく、マルコは彼女を麻薬から遠ざけるために、 5 年間世界を旅し、 7 冊の旅行ガイドを書いた。彼女が立ち直ると、マルコは彼女を両親の元に返し、彼女のために去った。愛していたのに別れたので、彼女への想いは未だにマルコの心の中にくすぶっている。感動すると、その気持ちを共有したい彼女のいない虚しさに襲われ、マルコは泣いてしまうのだ。饒舌に話すマルコに、試合の後で話しがあると言うリディア。第08段落の車のシーンだ。あの日リディアが事故に遭わなければ、試合の後で何を話すつもりだったのだろうか? 【トーク・トゥ・ハー 第28段落】 リディアの病室にまたエル・ニーニョがやって来た。エル・ニーニョは、ベニグノがアリシアにするように、自分が全治二ヶ月の足のケガを負ったことをリディアに話している。エル・ニーニョはマルコにあの試合の前に二人がよりを戻していたことを話した。アンヘラの結婚式での涙はエル・ニーニョのことを想って流したと、リディアは彼に話していたそうだ。エル・ニーニョは夜はここで泊まりたいとマルコに言った。マルコは出ていくしかなかった。マルコはアリシアの部屋へ行き、裸で眠るアリシアにまた独りぼっちになったと話しかけた。 【トーク・トゥ・ハー 第29段落】 そこにベニグノがやってきた。冗談でマルコがアリシアの胸を見ているとからかうと、アリシアの胸は日に日に大きくなっていると話した。マルコはリディアが自分を必要としなくなったので、また旅に出るとベニグノに伝えた。ベニグノにはマルコとリディアがこうなってしまう予感があったようだ。 【トーク・トゥ・ハー 第30段落】 ロサがアリシアの生理が遅れていることに気付いた。先月、ロサが風邪で休んだ日にナプキンをあてたとベニグノは言うが、そんなことはおかしい。もしかしたら 2 ヶ月も生理がなかったかもしれないことを、ベガ医師に報告しなければならない。 【トーク・トゥ・ハー 第31段落】 病院のレストランで一人で夕食を食べているベニグノ。そこへマルコがやって来た。ベニグノはマルコが執筆した旅行ガイドを貸してくれるように頼んでいたのだ。アリシアに好きな旅行を味あわせてあげるためだ。マルコはアリシアの病室に入れなかったとベニグノに話した。ベニグノはアリシアが感染症にかかり、自分も会うことができないと説明する。マルコの車で送ってもらうことになったベニグノは、病院の駐車場で、アリシアと結婚したいと思い詰めた顔で話した。マルコはベニグノの危険な考えに激怒した。アリシアとベニグノの関係は、ベニグノの一方的な一人芝居に過ぎず、アリシアは結婚の意思表示さえできない。マルコの強い反対に、ベニグノは納得がいかないようだ。 【トーク・トゥ・ハー 第32段落】 検査の結果、アリシアは何者かにレイプされ、妊娠していることが判明。病院で関係職員を招集しての会議が開かれる。生理についてウソの報告をしたベニグノに疑いがかかっている。ベニグノの隣に座っている男性看護師が、駐車場でベニグノがマルコにアリシアと結婚したいと話していたと証言し、みんなの疑いは確信に変わった。 ・・・ ◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say ! 【トーク・トゥ・ハー 第33段落】 8 ヶ月後。ヨルダンの浜辺にいたマルコは、新聞で 4 月 13 日にリディアが 33 歳で死んだことを知る。さっそくスペインの病院エル・ボスケに電話をかけたマルコだが、取り次ぎの女性からベニグノがもう病院にいないことを知らされる。そこでマルコはロサに電話をつないでもらった。ロサはマルコにベニグノがアリシアをレイプしたためにセゴビア Segovia の刑務所に入っていることを伝えた。信頼を裏切られたロサは、もうベニグノには会いたくなかったが、助けを必要としているベニグノを心配している様子だ。 【トーク・トゥ・ハー 第34段落】 すぐにスペインに戻ったマルコは刑務所へと向かうが、その日は面会日ではなく、その上、面会は在監者からの要請がないとできないとのことだった。マルコは新しい携帯電話の番号をベニグノに残した。刑務所のベニグノからマルコに電話がかかってきたとき、マルコはちょうど病院で事件について話しを聞き終えたところだった。アリシアは別の病院で入院している。 【トーク・トゥ・ハー 第35段落】 マルコが土曜日の面会日にベニグノに会いに行くと、ベニグノは少し髭も伸び、窶(やつ)れた面もちになっていた。ベニグノはアリシアに会えないのがかなり辛そうで、精神的に圧迫されているようだ。アリシアと自分の子供の様子を知りたがった。以前のような穏和な雰囲気は影を潜め、怒りっぽい感じになっている。ベニグノの今の弁護士がベニグノの部屋を貸し、それで弁護士費用を出そうとしているので、別の弁護士に変えて欲しいとベニグノはマルコに頼んだ。マルコは弁護士を替えることを約束し、ベニグノの部屋はマルコが借りることになった。自分のことを真剣に考えてくれる人の存在にふれ、少し落ち着いたベニグノは、夜になるとマルコの旅行ガイドを読み、マルコのことばかり考えると話した。特にベニグノの心に残っているのはキューバで、想像力が豊かなことだけが取り得だとマルコが書き表す人々が、まるで自分のようだと感じていた。 【トーク・トゥ・ハー 第36段落】 マルコはベニグノのアパートへ行った。管理人の老女は、詮索好きなお茶目なおばさん。ベニグノが起こした事件は、被害者のアリシアのために外部にいっさい漏れていないようで、管理人はベニグノが刑務所に入った理由を知らなかった。改装されたベニグノの部屋は、アリシアの部屋と同じようにオレンジ色の壁で、ベッドの近くの壁に眠っているアリシアの大きな写真が飾られている。窓から外を覗くと、向かいにバレエ教室が見えた。マルコは衝撃を受ける。アリシアがいるのだ。しかも眠ったままでない、はっきりと意識のあるアリシアが。杖を持ったアリシアは、リハビリのためにバレエ教室を訪れているのだ。 【トーク・トゥ・ハー 第37段落】 マルコはベニグノの弁護士を訪ねた。マルコはアリシアの子供が死産だったことを知った。弁護士は、ベニグノの精神状態が危険なので、アリシアの意識が回復したという真実は彼に話してはいけないと、マルコに口止めした。 【トーク・トゥ・ハー 第38段落】 雨の日。マルコはベニグノに面会した。ベニグノは弁護士からすでに子供とアリシアのことを聞いていた。もちろんアリシアが元気になっていることは知らない。子供が死んでしまったことにかなり落胆しているベニグノだが、アリシアが死なないでよかったと心底思っていた。独りぼっちのベニグノはたった一人の友人マルコを抱きしめたかった。同じように独りぼっちのマルコと、面会室のガラス越しに手を合わせ、二人で涙を流す。 【トーク・トゥ・ハー 第39段落】 マルコは、ベニグノが A&B (アリシアとベニグノ)と刺繍したシーツが掛けられたベッドの中。起き上がって窓辺に立ち、外を眺めていると、携帯電話に新着メッセージが届いた。ベニグノからだ。たとえ刑務所を出ても、一生施設暮らしで、もう二度とアリシアに会えない。アリシアの髪留めもない。絶望したいるベニグノは、アリシアのいない世界から逃げることにするとマルコに伝えた。マルコは急いで刑務所に向かった。でももう遅かった。刑務所に着くと、マルコは所長からベニグノが自分に宛てた手紙を渡された。そこには昏睡状態になれるだけの薬を飲んで、アリシアの世界へ行くと書かれていた。マルコは刑務所でのベニグノの持ち物と彼から没収されたものを引き取った。その中には、アリシアの髪留めがあった。 【トーク・トゥ・ハー 第40段落】 ベニグノのお墓の前。マルコはベニグノが最後の手紙で望んだように、真実を彼に語った。アリシアが元気になったこと、ベニグノのポケットにアリシアの髪留めを入れたこと、そして、ベニグノのお母さんとアリシアの写真も一緒に埋葬したこと。 【トーク・トゥ・ハー 第41段落】 ダンス・オペラを鑑賞しているマルコは、また涙を流している。途中の休憩時間。劇場のロビーに出てきたマルコは、そこでアリシアと出会う。観劇中から泣いているマルコが気になっていたアリシアは、マルコに大丈夫かと話しかける。アリシアと一緒に来ていたカタリナがそれに気付き、急いでアリシアを連れて行ってしまう。再びダンスが始まる少し前、カタリナは何をアリシアに話したのかマルコに尋ねた。マルコは何も話していないと答え、自分がバレエ教室の前に住んでいることやベニグノが死んだことを報告した。話すことは簡単だからまた話そうというマルコに、カタリナは言う。「何事も簡単ではないわ。私はバレエ教師だもの。」 【トーク・トゥ・ハー 第42段落】 舞台では魅力的なダンスが始まった。マルコが後ろを振り返ると、数席後ろのアリシアがマルコに微笑む。「マルコとアリシア」の章がこれから始まる。 ■映画『 トーク・トゥ・ハー 』の感想 映画『トーク・トゥ・ハー』は、現代のおとぎ話。アリシアは、森のお城ではなく森の病院で深〜い眠りにつく眠り姫。アリシアを演じたレオノール・ワトリングは、まさに純粋なお姫様役にピッタリな美しい顔立ちと、おとぎ話が持つエロティシズムを醸し出せる見事なボディを持ち、まさに適役だった。おとぎ話の眠り姫は、王子様のキスで目が覚める。王子様のキスは、性交を子供用にデフォルメしたものだというような文章を読んだことがあるけど、『トーク・トゥ・ハー』はそのものズバリだと思った。アリシアはベニグノの一途で一方的な愛による妊娠で目が覚めた。 しかし、王子様はベニグノではない。おとぎ話なのだから、王子様はやっぱりハンサムでなくっちゃ!ってことで、マルコだろう。私はマルコがハンサムだとは思わないけど、映画の中ではそう扱われていたし、最後の終わり方を観てもマルコが王子様だ。おとぎ話では、王子様は数々の苦難を乗り越え、お姫様のもとに辿り着く。孤独に襲われすぐに泣いてしまうマルコの“いばら”は、過去の恋人アンヘラとリディアとの別れだ。恋愛という苦難を乗り越え、マルコはアリシアのもとに辿り着く。彼が実際にアリシアを目覚めさせたわけじゃないけど、マルコとベニグノの孤独な心は同じだったということで、二人の心を同一視できるかなぁ? 映画『トーク・トゥ・ハー』が高い評価を受けたのは、おとぎ話のアレゴリーに加えて、人間の精神はどこにあるのか、何を持って死と言うのかという脳死や安楽死(尊厳死)の問題にもつながるテーマがあるからだろう。 昏睡状態のアリシアは、アリシアであってアリシアでない状態。しかし、ベニグノは意識のないアリシアをアリシアという一つの人格として受け入れている。独善的な愛情だったかもしれないけど、普通の看護を遙かに越えたレベルでアリシアを献身的に世話し、神秘的な彼女の脳に話しかけた。それは他の誰もが為しえなかったことだ。アリシアは自分が何者かもわからない状態にあるが、他者がアリシアはアリシアであり続けると信じることによって存在している。ルネッサンス時代のトマス・モアが安楽死や尊厳死について触れている『ユートピア』に曰く「不治の病に悩んでいるものがあれば、その人の枕元に座って色々な話をしてやるなど、あらゆる親切を尽くしてその心を慰めてやる。…」を実践し、そしてベニグノは一線を越えてしまったが、その愛情が奇蹟を呼んだ。 一方、ベニグノ自身は、自分の生き甲斐であるアリシアとその絆を失った時、つまり、自分が自分でなくなった時に、自分自身の手で人生を終えてしまう。 ベニグノはアリシアに「安楽愛」を行い、自らを「安楽死」させてしまったのだ。ベニグノの「生きている価値=人間の生命の価値=Quality of Life=QOL」はアリシアそのものであり、ベニグノは自分の死を理解した上で迎え入れることが出来たのなら、それは立派に「尊厳死」と言えるかもしれない。 覚醒したアリシアは、運命の王子様と出会う。彼女がマルコを見て、何かを感じたのは、昏睡状態の時の彼女の感覚器官のどこかが彼を捕らえていたからかもしれない。幸せを予感する映画のラストを観て、神秘に満ちた命を粗末に扱ってはいけないなと思った。 因みに、ベニグノのキャラクターは、アルモドバル監督の親友ロベルト・ベニーニ Roberto Benigni (『 ライフ・イズ・ビューティフル (1998) LA VITA E BELLA / LIFE IS BEAUTIFUL 』『 フェリーニ 大いなる嘘つき (2001) FELLINI: SONO UN GRAN BUGIARDO (伊題) / JE SUIS UN GRAN MENTEUR (仏題) / I'M A BORN LIAR (英題) 』『 ピノッキオ (2002) PINOCCHIO 』『 コーヒー&シガレッツ (2003) COFFEE AND CIGARETTES 』等)に基づいてるとか。ロベルト・ベニーニって一体どんな人? 以上。 <もっと詳しく>からスペースを含まず12683文字/文責:幸田幸 参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集 http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm IMDb allcinema ONLINE Nostalgia.com CinemaClock.com Yahoo! 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■映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE
CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』の更新記録 2004/11/06新規: ファイル作成 2004/11/06更新:◆解説とネタばれおよび俳優についてリンク 2005/02/23更新:◆ファイル変更 |
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