安楽死
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 安楽死@映画の森てんこ森(シャイな幸の独り言)
トーク・トゥ・ハー
安楽死、『トーク・トゥ・ハー』から『ザ・シー・インサイド(原題)』へ
2004年11月07日日曜日 「シャイな幸の独り言」トップへ
 「安楽死」について少し勉強した。テーマが「安楽死」となると、私の年代で「死」を余り意識したことがなく、自分の「死」について考えるのは怖くて、考えようとした途端頭がフリーズするような気がする。況(ま)してや、「安楽死」となると、全く考えも及ばない。それで人生の例題でもある映画を通じて「安楽死」について学んでみることにする。

 映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』では、マルコの恋人で、トロスで牛に襲われて昏睡状態に陥った女闘牛士のリディア。看護師ベニグノが 4 年間看護し続けて一方的な愛を実行する、昏睡状態の女性アリシア。(二人とも脳死のような状態だが、厳密に言うと「生命維持装置によって人工的に心臓や肺は動いている」わけではなく、生命維持装置をつけないで、ただ眠っているので脳死ではないのかも。詳しくは分からないけど、映画の中では確かリディアの場合は大脳皮質が破壊されていると言っていたので、大脳死かな...?※そもそも、「脳死」という概念は、臓器移植を可能にするために作られたものである。「脳死」参照。)
 もし、彼女たちが裕福でなかったら、病院の個室で完全看護を受けることが出来なかったら一体どうなるのだろうかと考えてみた。リディアとアリシアは二人とも植物人間状態(タイトル左画像参照/画像は sonyclassics.com より引用)で当然意思表示は出来ないので、家族のものが「安楽死」を選ぶのだろうか?いや選べるのだろうか?それは殺人になるのだろうか?「安楽死」は倫理的、医学的、法的にもデリケートな問題である。

 「安楽死」と「尊厳死」の定義や区別、そしてその歴史と事件や法整備、生命の倫理や医学的問題点など、私は全くの無知なので考えるにも判断基準を持たない。ただ、日進月歩する医学にシンクロして更に進む高齢化社会には、人間が人間たる尊厳を全うした死をどのようにして迎えるのかという問題が歴然と存在し、人間は自らの生死について真摯に考え、自分で決める権利を持つべきだということだけは分かる。

 映画『 モンタナの風に抱かれて (1998) THE HORSE WHISPERER 』 では、瀕死の状態の愛馬ピルグリムに、獣医は安楽死を薦める。足を痛めた競走馬が安楽死を免れて、ふたたび立ち直り競走馬として復活する『 シービスケット (2003) SEABISCUIT 』。友人の弁護士に、出張後の日曜日に安楽死の手伝いを約束させるライムが主人公の映画『 ボーン・コレクター (1999) THE BONE COLLECTOR 』。これらの映画は本題に導くためのステップとして「安楽死」を話題にしている。
 そして、真っ向から「安楽死」を問題提起した社会派ドラマは、薬学研究所に勤める女性が、ガンに侵された恋人に望まれて安楽死させ、裁判にかけられてしまう映画『 裁きは終りぬ (1950) JUSTICE EST FAITE (仏題) / JUSTICE IS DONE (英題) 』。恐怖のSF最新超大作と紹介されている映画『 ソイレント・グリーン (1973) SOYLENT GREEN 』では、安楽死を選んだ老人の体験する安楽死用施設、現代人が直面するだろう問題を提起している。最近では、「安楽死」ありきで映画が組み立てられていると思われる映画『 みなさん、さようなら (2003) LES INVASIONS BARBARES (原題) / THE BARBARIAN INVASIONS (英題) 』。更に現時点では未公開で、アメリカでは2004年12月17日に限定公開される映画『 ザ・シー・インサイド (原題) (2004) MAR ADENTRO (西題) / MARE DENTRO (伊題) / THE SEA INSIDE (英題) 』のテーマは、正に「安楽死」だ。

 この『 ザ・シー・インサイド (原題) (2004) MAR ADENTRO (西題) / MARE DENTRO (伊題) / THE SEA INSIDE (英題) 』を取り上げてみると、『 ザ・シー・インサイド(原題) 』は、『 アザーズ (2001) THE OTHERS 』のアレハンドロ・アメナバール Alejandro Amenábar 監督の作品で、9月11日(日本時間12日未明)第61回ベネチア国際映画祭で審査員大賞(銀獅子賞)と最優秀男優賞を獲得した。
ザ・シー・インサイド(原題)
ザ・シー・インサイド(原題) (2004)
MAR ADENTRO (原題)
THE SEA INSIDE (英題)

http://www.mar-adentro.com/
 映画『 ザ・シー・インサイド(原題) 』は、原題はスペイン語で「Mar Adentro マール・アデントロ」で英語題は「Out to Sea」だったが後に国際英語題は「The Sea Inside ザ・シー・インサイド」となった。この映画は、25歳のときにダイビングの事故で首から下が麻痺し不随になり、ベッドで寝たまま30年間にわたって自己の死ぬ権利と安楽死(尊厳死)を訴えて、逝ったラモン・サムペドロ Ramón Sampedro の実話である。ラモン・サムペドロは、世界中の安楽死を主張する人々のヒーローとも言えるシンボル的存在でもある。映画では主人公ラモン・サムペドロをハビエル・バルデム Javier Bardem (『 コラテラル (2004) COLLATERAL 』)が演じている。この映画『 ザ・シー・インサイド(原題) 』でハビエル・バルデムは主演男優賞を受賞している。
 アレハンドロ・アメナバール監督は「人は、自分の人生を自分で決める権利を持つべきだ」と話している。

 「安楽死」と「尊厳死」はどう異なるのか、私は知らなかったが、ネット辞書で調べてみると、<■あんらく-し【安楽死】 Euthanasia 助かる見込みがない病人を苦痛から解放する目的で、延命のための処置を中止したり死期を早める処置をとること。また、その死。安死術。オイタナジー。■そんげん-し【尊厳死】death with dignity 助かる見込みの全くないままに長期間にわたって植物状態が続いたり、激しい苦痛に悩まされ続けている患者に対し、生命維持装置などによる人為的な延命を中止し、人間としての尊厳を維持して死に至らしめること。>と三省堂大辞林(国語辞典)にある。

 また、日本尊厳死協会のホームページを見ると
 http://www.songenshi-kyokai.com/dwd01.htm
<尊厳死とは患者が「不治かつ末期」になったとき、自分の意思で延命治療をやめてもらい安らかに、人間らしい死をとげることです。安楽死とは違います
"Dying with dignity" is different from "Euthanasia".
 尊厳死と混同しがちですが、安楽死は第三者が苦痛を訴えている患者に同情して、その患者を「死なせる行為」です。それに対して尊厳死は不治かつ末期の患者本人の「死に方」のことで、「死なせる」こと(殺すこと)とは違います。>とある。

 もっと詳しく、他のサイトも引用して「安楽死」を勉強してみる。
 フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia)』によると、<安楽死(あんらくし)とは、末期がんをはじめとした「治療不可能」かつ「苦痛の強い」疾患の患者を救済するため、医師などが積極的あるいは消極的手段によって死に至らしめる事。>とある。
 さらに、<QOL向上の唯一の手段が死亡でしかない場合の最終手段であると言える。医療の目的を病人の治療とするならば安楽死は医療の目的と正反対と言うことになるが、病人の苦痛を取り去ることを目的と考えるなら立派な医療行為と解釈することもできるものである。

【積極的安楽死と消極的安楽死】
 安楽死は、大別すると「積極的安楽死」と「消極的安楽死」に分けられる。

【積極的安楽死】
 薬物を投与するなどの積極的方法で死期を早めること。いわば医療の名の下に行われる自殺幇助ということになり、社会からの心理的抵抗は大きい。また、日本を含む多くの国では刑事犯罪として扱われる。
【消極的安楽死】
 無意味な延命治療、努力をしないで死に致しめること。尊厳死を保つ意味からも合理的で社会的に認知されており、実際の医療現場でもひろく行われる。自然に死を迎えるという意味でナチュラルコースとも。
 例として、呼吸の停止した患者に人工呼吸器を取り付け、その後取り外すのは積極的安楽死となる。最初から人工呼吸器を取り付けない(心肺蘇生法を施さない)のは消極的安楽死である。ほぼ同等の行為でありながら片方は認められない行為となるため、救命・延命をどこまで行うかは事前によく検討して合意を形成しておく必要性が高い。
>とある。
 他に調べると、引用は差し控えるが、「尊厳ある死・安楽死の概念と区分」が以下のサイトで勉強できた。
 http://www.sal.tohoku.ac.jp/~shimizu/euthanasia/euth-def.html

 因みに、法律的に安楽死を認めている国は、オランダ(2001年「安楽死法」可決。) 、ベルギー、アメリカ(オレゴン州 - 1994年「尊厳死法 (Death with Dignity Act)」成立)がある。


 序に、大辞林(国語辞典)で「脳死」についても調べてみた。
【脳死】
のうし 【脳死】
脳幹を含めた全脳機能が完全に失われ再生不能となった状態。脳死をもって「人間の死」とみなす見解もあるが、一致をみない。
→脳幹死
 生体機能の維持を行う脳幹の機能が停止すること。
→大脳死
 精神作用など高レベルの機能をつかさどる大脳の機能が停止すること。
→全脳死
 脳の全機能が停止すること。

 また、ドイツ哲学と倫理学で有名な上村芳郎先生の「村のホームページ/倫理の公民館」のページ(http://www.ne.jp/asahi/village/good/BrainDeath.htm)では、脳死と臓器移植と題して、脳死とは何か?、脳死と心臓死、大脳死と全脳死、判定基準;竹内基準(厚生省基準)、問題点等が、詳しく述べられている。

 フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia)』にも以下のように詳細に脳死の解説がある。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B3%E6%AD%BB
【脳死】
脳死(のうし、brain death)とは、ヒトの脳幹を含めた脳すべての機能が不可逆的に(回復不可能な段階まで)廃絶した状態のことである。
 古来、人間の死とは何かは自明のことであったため、医学的に厳密に定義することはさほど重要ではなかった。一般に、脳、心臓、肺すべての機能が停止した場合(三兆候説)と考えられており、医師が死亡確認の際に呼吸、脈拍、瞳孔反射の消失を確認することはこれに由来している。
 しかし医療技術の発達により、脳の機能が完全に廃絶していても(そのため自発呼吸も消失していても)、人工呼吸器により呼吸と循環が保たれた状態が出現することとなった。個体として死んでいるとは確言できないが、人物として人格はすでに失われた状態である。これを脳死と呼ぶが、近年二つの観点から脳死を人の死と認めるべきかどうかが問題となっている。
1 脳死判定

1.1 脳死判定の前提条件
1.2 除外条件
1.3 判定基準

脳死判定
 診察・検査結果などから明らかに脳死であろうと判断される状態は臨床的脳死と呼ばれる。しかし、臓器移植などの目的で脳死を法的に示す必要のある場合は手順に則った脳死判定が行われる。このような目的がないときに脳死判定をすることはできない。なぜなら、判定基準は呼吸器をはずして自発呼吸を確認するなど患者を死亡させかねない項目を含んでいるからである。なお、日本国における法的な脳死の定義については、臓器の移植に関する法律第6条の規定による。

1.1 脳死判定の前提条件
深昏睡である(意識障害参照)
原疾患が確実に診断されており、回復の見込みがない

1.2 除外条件
6歳未満の小児
急性薬物中毒
低体温
代謝・内分泌障害
妊産婦
完全両側顔面神経麻痺
自発運動、除脳硬直、除皮質硬直、痙攣

1.3 判定基準
脳死判定は移植に関係のない、脳死判定の経験のある2名以上の医師で行い、6時間後にも同所見であることが必要である。

深昏睡 JCS300またはGCS3
瞳孔固定 両側4mm以上
脳幹反射の消失・・・対光反射、角膜反射、網様体脊髄反射、眼球頭反射、前庭反射、咽頭反射、咳嗽反射(失明、鼓膜損傷などでこれらが施行できない場合は脳死判定はできない)
平坦脳波 刺激を加えても最低4導出で30分以上平坦
自発呼吸の消失 100%酸素で飽和したのち呼吸器を外し、動脈血中二酸化炭素分圧が60mmHg以上に上昇することを確認
2回目の判定が終了した時刻を死亡時刻とする。

参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集
       http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
      「TALK TO HER」オフィシャルサイト
       http://www.sonyclassics.com/talktoher/
      「MAR ADENTRO (THE SEA INSIDE)」オフィシャルサイト
       http://www.mar-adentro.com/
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
      日本尊厳死協会
       http://www.songenshi-kyokai.com/
      フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia)』
      安楽死
       http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E6%A5%BD%E6%AD%BB
      脳死と臓器移植 「村のホームページ/倫理の公民館」(上村芳郎先生)
       http://www.ne.jp/asahi/village/good/BrainDeath.htm
      フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia)』
      脳死
       http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B3%E6%AD%BB
      生命倫理学資料/安楽死
       http://www3.kmu.ac.jp/legalmed/ethics/theme1.html
      安楽死関連年表
       http://www.let.kumamoto-u.ac.jp/takahashi/issue/nenpyou
/nenpyou.htm

Text by Sati
coda21「映画の森てんこ森」幸田幸。
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