ホテル・ニューハンプシャー | |||||||||||||||||||||||||||
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映画の森てんこ森■映画レヴュー | |||||||||||||||||||||||||||
ホテル・ニューハンプシャー (1984) | |||||||||||||||||||||||||||
THE HOTEL NEW HAMPSHIRE | |||||||||||||||||||||||||||
映画『 ホテル・ニューハンプシャー (1984)
THE HOTEL NEW HAMPSHIRE 』をレヴュー紹介します。 映画『 ホテル・ニューハンプシャー THE HOTEL NEW HAMPSHIRE 』を以下に目次的に紹介する。 ■映画『 ホテル・ニューハンプシャー (1984) 』のポスター、予告編および映画データ ■映画『 ホテル・ニューハンプシャー THE HOTEL NEW HAMPSHIRE 』の解説 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。 ■映画『 ホテル・ニューハンプシャー THE HOTEL NEW HAMPSHIRE 』の主なスタッフ ■映画『 ホテル・ニューハンプシャー THE HOTEL NEW HAMPSHIRE 』の主なキャスト ■映画『 ホテル・ニューハンプシャー THE HOTEL NEW HAMPSHIRE 』のトリビア ■映画『 ホテル・ニューハンプシャー THE HOTEL NEW HAMPSHIRE 』のスタッフとキャスト ■映画『 ホテル・ニューハンプシャー THE HOTEL NEW HAMPSHIRE 』の<もっと詳しく> <もっと詳しく>は映画『 ホテル・ニューハンプシャー 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタバレ)です。※ご注意:映画『 ホテル・ニューハンプシャー (1984) THE HOTEL NEW HAMPSHIRE 』の内容やネタバレがお好みでない方は読まないで下さい。 ■映画『 ホテル・ニューハンプシャー THE HOTEL NEW HAMPSHIRE 』の結末 ■映画『 ホテル・ニューハンプシャー THE HOTEL NEW HAMPSHIRE 』の更新記録 >>「映画解説・レヴュータイトル一覧表」へ(画面の切り替え) |
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幸の鑑賞評価: 8つ星 | |||||||||||||||||||||||||||
■映画『 ホテル・ニューハンプシャー (1984) 』のポスター、予告編および映画データ | |||||||||||||||||||||||||||
ホテル・ニューハンプシャー ポスターはwww.rottentomatoes.com/ より引用させて頂きました。
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●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。 Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com. Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc. |
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■映画『 ホテル・ニューハンプシャー (1984)
THE HOTEL NEW HAMPSHIRE 』の解説 『 ホテル・ニューハンプシャー 』は、現代アメリカ文学の巨匠ジョン・アーヴィング著で映画と同名の小説「 The Hotel New Hampshire (邦題:ホテル・ニューハンプシャー)」(新潮文庫版 / [訳]中野 圭二)の映画化である。ジョン・アーヴィングは、『 ホテル・ニューハンプシャー 』の他にも 『 ドア・イン・ザ・フロア (2004) THE DOOR IN THE FLOOR 』 『 ガープの世界 (1982) THE WORLD ACCORDING TO GARP 』等でも知られ、 『 サイダーハウス・ルール (1999) THE CIDER HOUSE RULES 』では 2000 年アカデミー脚色賞に輝いている。 『 ホテル・ニューハンプシャー 』は、ホテル・ニューハンプシャーのオーナーとなった大家族の度重なる不幸(特に「死」が何度も出てくる)と、それを乗り越える人間のパワーを、長時間、色々な出来事が起こって展開していく。『 ホテル・ニューハンプシャー 』ではそういう悲劇が山ほどあるのにコミカルな運びなのは、人間の本来持つ克服力の賞賛であろう。悪いことの後にいい事が来て、また悪いことが、と「人間万事塞翁が馬」のごとく力強く進んでいくのだ。 『 ホテル・ニューハンプシャー 』のジョディ・フォスターは若かったけど主役の存在感抜群、ロブ・ロウは何というナイーヴでハンサムさ、ナスターシャ・キンスキーも光っている、セス・グリーンがこんな幼かったとは・・・。 ▲TOPへ ■映画『 ホテル・ニューハンプシャー (1984) THE HOTEL NEW HAMPSHIRE 』の主なスタッフ 『 ホテル・ニューハンプシャー 』はなにしろ二十年以上も前の映画なので、現在でも活躍しているスタッフはあまり見つからなかった。知っている作品に携わっているのは: ○『 ホテル・ニューハンプシャー 』の編集: ロバート・K・ランバート 『 ハッカビーズ (2004) I HEART HUCKABEES / I LOVE HUCKABEES 』 『 サスペクト・ゼロ (2004) SUSPECT ZERO 』 『 バレットモンク (2003) BULLETPROOF MONK 』 『 マーダー・ライド・ショー (2003) HOUSE OF 1000 CORPSES 』 ○『 ホテル・ニューハンプシャー 』の音楽: ジャック・オッフェンバック 『 ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション (2003) LOONEY TUNES: BACK IN ACTION 』 『 ムーラン・ルージュ (2001) MOULIN ROUGE! 』 『 タイタニック (1997) TITANIC 』 ▲TOPへ ■映画『 ホテル・ニューハンプシャー (1984) THE HOTEL NEW HAMPSHIRE 』の主なキャスト ●ロブ・ロウ as 次男ジョン@ホテル・ニューハンプシャー 『 ハッピー・フライト (2003) VIEW FROM THE TOP 』 『 オースティン・パワーズ ゴールドメンバー (2002) AUSTIN POWERS IN GOLDMEMBER 』 『 オースティン・パワーズ (1997) AUSTIN POWERS: INTERNATIONAL MAN OF MYSTERY 』 ●ジョディ・フォスター as 長女フラニー@ホテル・ニューハンプシャー 『 ロング・エンゲージメント (2004) UN LONG DIMANCHE DE FIANCAILLES (原題) / A VERY LONG ENGAGEMENT (英題) 』 『 アンナと王様 (1999) ANNA AND THE KING 』 『 羊たちの沈黙 (1990) THE SILENCE OF THE LAMBS 』 『 タクシードライバー (1976) TAXI DRIVER 』 ●セス・グリーン as 三男エッグ@ホテル・ニューハンプシャー 『 Be Cool/ビー・クール (2005) BE COOL 』 『 スクービー・ドゥー2 モンスター パニック (2004) SCOOBY-DOO 2: MONSTERS UNLEASHED 』 『 パーティ★モンスター (2003) PARTY MONSTER 』 『 オースティン・パワーズ ゴールドメンバー (2002) AUSTIN POWERS IN GOLDMEMBER 』 『 アメリカン・スウィートハート (2001) AMERICA'S SWEETHEARTS 』 『 オースティン・パワーズ (1997) AUSTIN POWERS: INTERNATIONAL MAN OF MYSTERY 』 ▲TOPへ ■映画『 ホテル・ニューハンプシャー (1984) THE HOTEL NEW HAMPSHIRE 』のトリビア 映画『 ホテル・ニューハンプシャー 』の原作の著者ジョン・アーヴィング John Irving ( 1942/03/02 - )は米国ニューハンプシャー州エクセター Exeter, New Hampshire で生まれた。だからこの原作も映画も『 ホテル・ニューハンプシャー The Hotel New Hampshire 』なのだ。ニューハンプシャー州は米国北東部ニューイングランド地域 New England の一部。映画『 ホテル・ニューハンプシャー 』に登場する飼い熊の名は「メイン州 State o' Maine 」と、やはりニューイングランド地方のメイン州の名がついている。どうして映画『 ホテル・ニューハンプシャー 』に熊なんか出てくるのかと思ったら、ジョン・アーヴィングの処女作が「熊を放つ」というくらい、熊が好きなんだ! ジョン・アーヴィングは学問をいっぱい修めている。地元エクセターで文学の指導を受けた後、ピッツバーグ大学 University of Pittsburgh で勉強し、ニューハンプシャー大学 University of New Hampshire を卒業した。そしてアイオワ作家研究会 Iowa Writer's Workshop で将来の受賞者となる面々と更なる勉強に勤しむ。アイオワ州というのは、映画『 ホテル・ニューハンプシャー 』に登場する祖父アイオワ・ボブの名でもある。次にジョン・アーヴィングはオーストリアのウィーン Vienna, Austria に留学して勉強を続けた。だから、映画『 ホテル・ニューハンプシャー 』で途中から舞台がウィーンになっているのだと謎が解けた。 ジョン・アーヴィングは26歳から作家のキャリアを始めて、 「 Setting Free the Bears (1968) 熊を放つ 」 「 The Water-Method Man (1972) ウォーターメソッドマン 」 「 The 158-Pound Marriage (1974) 158ポンドの結婚 」 「 The World According to Garp (1978) ガープの世界 」 「 The Hotel New Hampshire (1981) ホテル・ニューハンプシャー 」 「 The Cider House Rules (1985) サイダーハウス・ルール 」 「 A Prayer for Owen Meany (1989) オウエンのために祈りを 」 「 Trying to save Piggy Sneed (collection, 1993) ピギー・スニードを救う話 」 「 A Son of the Circus (1994) サーカスの息子 」 「 A Widow for One Year (1998) 未亡人の一年 」 「 The Fourth Hand (2001) 第四の手 」等を執筆し、映画化で脚本した『 サイダーハウス・ルール (1999) THE CIDER HOUSE RULES 』では 2000 年アカデミー脚色賞受賞を果たしている。 |
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【『 ホテル・ニューハンプシャー 』のスタッフとキャスト】 | |||||||||||||||||||||||||||
監督: トニー・リチャードソン Tony Richardson (Directed
by) 製作: ニール・ハートレイ Neil Hartley (producer) ピーター・クローネンバーグ Pieter Kroonenburg (producer) デヴィッド・J・パターソン David J. Patterson (producer) ジム・ビーチ Jim Beach (co-producer) ビル・スコット Bill Scott (associate producer) ノーマン・トゥエイン Norman Twain (associate producer) 製作総指揮: グラハム・ジェニングス Grahame Jennings (executive producer) ケント・ウォルウィン Kent Walwin (executive producer) ジョージ・ヤネッフ George Yaneff (executive producer) 原作: ジョン・アーヴィング John Irving (novel "The Hotel New Hampshire") 脚本: トニー・リチャードソン Tony Richardson 撮影: デヴィッド・ワトキン David Watkin (Cinematography by) 編集: ロバート・K・ランバート Robert K. Lambert (Film Editing by) 音楽: レイモンド・レパード Raymond Leppard (music arranger) ジャック・オッフェンバック Jacques Offenbach (Non-Original Music by) 出演: ロブ・ロウ Rob Lowe as John Berry 次男ジョン ジョディ・フォスター Jodie Foster as Frannie Berry 長女フラニー ポール・マクレーン Paul McCrane as Frank Berry 長男フランク ボー・ブリッジス Beau Bridges as Mr. Win Berry 父ウィン リサ・ベインズ Lisa Banes as Mrs. Mary Berry 母メアリー ジェニファー・ダンダス Jennifer Dundas as Lilly Berry 次女リリー セス・グリーン Seth Green as 'Egg' Berry 三男エッグ ウィルフォード・ブリムリー Wilford Brimley as Iowa Bob 祖父アイオワ・ボブ ナスターシャ・キンスキー Nastassja Kinski as Susie the Bear スージー・ザ・ベア アマンダ・プラマー Amanda Plummer as Miss Miscarriage ミス流産 マシュー・モディーン Matthew Modine as Chip Dove/Ernst ダブ/エルンスト ウォーレス・ショーン Wallace Shawn as Freud フロイト ジョエリー・リチャードソン Joely Richardson as Waitress ウェイトレス ▲TOPへ |
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<もっと詳しく> | |||||||||||||||||||||||||||
ストーリー展開の前知識やネタバレがお好みでない方は、読まないで下さい。 |
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■映画『 ホテル・ニューハンプシャー 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー 【ホテル・ニューハンプシャー 第01段落】 『 ホテル・ニューハンプシャー 』の舞台は第二次世界大戦の直前、米国メイン州の海辺のホテル・アーバスノット Hotel Arbuthnot-by-the-Sea 。ウィン・ベリー(ボー・ブリッジス:『 ザ・エージェント (1996) JERRY MAGUIRE 』等に出演)は学生で、ホテルのアルバイトをしていた。ここでドイツ人夫婦が宿泊して静寂を乱したりして、ユダヤ人のフロイト(ウォーレス・ショーン: 『 メリンダとメリンダ (2004) MELINDA AND MELINDA 』 『 ホーンテッドマンション (2003) THE HAUNTED MANSION 』 『 おまけつき新婚生活 (2003) DUPLEX 』等に出演)は祖国オーストリアのウィーンに帰ることになった。 【ホテル・ニューハンプシャー 第02段落】 フロイトは、小柄な大人しい熊アール Earl の曲芸の見世物をして生計を立てていたが、ウィーンへの帰国に際して熊の同行は困るので、ホテルで仲良かったウィンにその熊を譲る。そしてウィンへのアドヴァイスとして、思ったことはどんどん実行するように言って去っていった。これで勇気づけられたウィンは、恋しいメアリー(リサ・ベインズ:『 コーリング (2002) DRAGONFLY 』等に出演)に直ぐプロポーズして結婚した。 【ホテル・ニューハンプシャー 第03段落】 これから十数年が経って、ウィンとメアリー夫婦は五人の子供に恵まれている。それに、ウィン・ベリーの老いた父親であり子供達の祖父のアイオワ・ボブ(ウィルフォード・ブリムリー:『 コクーン (1985) COCOON 』等に出演)も健在だ。犬の「ソロー Sorrow (悲しみという意味)」は真っ黒なラブラドル・リトリーバー Labrador retriever で、家族の一員。熊は、森で一家とちょっと離れた隙に、野生の熊と間違えられて少年に撃たれて死んでしまった(「死 その1」)。特に可愛がっていた父ウィンは悲しむが、後は引かない。 【ホテル・ニューハンプシャー 第04段落】 長男はフランク(ポール・マクレーン: 『 ショーシャンクの空に (1994) THE SHAWSHANK REDEMPTION 』 『 ER 』TV シリーズ(1997-2003)で医師ロバート・ロマノ Dr. Robert Romano 役)という高校の上級生くらい。フランクは弟ジョンと違ってハンサムではなくて、同性愛者、ホモである。ホモということは高校でも知られていて、級友たちに苛められてもいる。 【ホテル・ニューハンプシャー 第05段落】 長女はフラニー(ジョディ・フォスター)で、しっかりした性格の高校生。ジョディ・フォスターはこの頃はとってもふっくらとしていて、数年後の『 羊たちの沈黙 (1990) 』や二十年以上も経った現在の彼女のスリムさからは想像できないような、むしろ豊満な高校生なのである。そういうナイスバディで美人で気が強いから、男子はフラニーに気があるというか、狙っている。 【ホテル・ニューハンプシャー 第06段落】 次男はジョン(ロブ・ロウ)という、姉フラニーより一歳くらいしか年下でない高校生。ロブ・ロウはアラン・ドロン Alain Delon に似ていると言われていたように、本当にハンサムの見本みたいな若者だ。ジョンは女性は未経験で、実は実姉のフラニーを愛しているし、フラニーの方でも弟ジョンを愛している。そのことはお互いにはっきりと相手に伝えてあり、姉弟と承知の上で大好きなのは隠さない。 【ホテル・ニューハンプシャー 第07段落】 次女のリリー(ジェニファー・ダンダス:大人になってからは『 チェンジング・レーン (2002) CHANGING LANES 』等に出演)は背が伸びない小人症。中学生くらいなのだろうが、小学生の身長のまま成長が止まっている。顔立ちは大人びて、文学好きな少女である。母親はそんなリリーにたくさん食べて大きくなりましょうと励ましているが、リリーにとっては致命的なコンプレックスで、初対面の人ごとに、私、小人症なのと自分からいつも言うくらいだ。 【ホテル・ニューハンプシャー 第08段落】 三男で末っ子のエッグ(9歳のセス・グリーン)は小学下級生くらいのやんちゃ坊主。個性的な俳優に育った大人のセス・グリーンしか知らなかったけど、こんな幼い頃から映画界で活躍していたのだ。エッグというのは愛称だが、自分は卵から生まれたからエッグなのだと思っている。彼は無邪気な元気いっぱいの男の子である。 【ホテル・ニューハンプシャー 第09段落】 こういう大家族を抱え、父ウィンは高校の教師をしている。しかし、待遇やら生徒の問題やら抱えて、別の人生を生きたいと急に思うようになった。そのことは、その高校でフットボールのコーチである祖父アイオワ・ボプにも伝え、直ぐに行動に移す。ウィンは、妻が昔通っていた女子校が現在は廃校になっているのを買い取って、一家が揃って毎日を暮らせるようにホテル経営をすることに決めたのである。学生時代のホテルでのアルバイト時代からホテル経営に憧れていたようだ。民家からだだっ広いホテルへと大家族は引越ししてきた。 【ホテル・ニューハンプシャー 第10段落】 でも荒れ果てているから修理が大変。みんな協力して改造・改装していく。元々学校だったからか、テーブルの周りの椅子は床に固定されているが。で、見違えるように綺麗になったその建物は、「ホテル・ニューハンプシャー」と命名された。オープニングは結構賑やかに開催されて、プロのバンドや歌手も華を添える。レストラン部ではウェイトレス(ジョエリー・リチャードソン: 『 マリー・アントワネットの首飾り (2001) THE AFFAIR OF THE NECKLACE 』 『 パトリオット (2000) THE PATRIOT 』等に出演)も雇って忙しく働く。 【ホテル・ニューハンプシャー 第11段落】 ベリー家の子供達も、大きいのからちびっ子まで、両親に協力してホテル業を手伝い、まさに一家団結のほほえましい姿である。長男フランクはフロントを手伝い、次男ジョンは薪割りや掃除、女の子たちは雑用、末っ子エッグは薪割りやゴミ捨て等だ。でも、兄妹喧嘩もする。殊にフラニーは気が強いから平気で殴り合いの喧嘩にもなる。こうして五人のきょうだいはホテル・ニューハンプシャーを我が家として育っていった。 【ホテル・ニューハンプシャー 第12段落】 雨の日に精力を持て余した次男ジョンがランニングをしていると、ウェイトレスの年上の女性がジョンにアタックしてきた。今度、雨が降ったら私の部屋に来て、と。そして遂にジョンの初体験の日になる。それから自分のホテル内で、ジョンとその女性とは何度もベッドを共にして、ジョンは女性というものに慣れてくる。でも、姉フラニーを愛しているのは変わらない。それに、兄姉たちだって、そんなジョンを冷やかしつつ、面白がって彼女の部屋に送るのだ。いたって明るい。ジメジメしていない。 【ホテル・ニューハンプシャー 第13段落】 あるハロウィーンの日、以前から男子に目をつけられていた長女フラニーは、レイプされてしまった。相手は数人で、男子生徒ダブ(マシュー・モディーン: 『 トランスポーター2 (2005) LE TRANSPORTEUR 2 / THE TRANSPORTER 2 』 『 ル・ディヴォース/パリに恋して (2003) LE DIVORCE 』 『 ノッティングヒルの恋人 (1999) NOTTING HILL 』等に出演)が中心だ。それを知った弟ジョンは、‘愛する’姉を救おうと、友人のアフリカ系アメリカ人の青年に助けを請う。 【ホテル・ニューハンプシャー 第14段落】 そして奴らを追っ払ったが、フラニーはレイプされた後だ。青年はそんなフラニーを励まし、慰める。犯人のダブたちは謹慎処分にしかならない。それをベリー一家は憤るが、それもいつまでもくよくよしないでフラニーは明るく立ち直っていく。その頃、ホテルなのに飼い犬が腸の病気だと置いておけないということになり、祖父が病気の老犬ソローを車で保健所へ処分してもらいに連れて行った(「死 その2」)。ソローを一番可愛がっていたフラニーはどんなに悲しむだろうと皆で言うけど、この悲しみも大きく描かない。 【ホテル・ニューハンプシャー 第15段落】 むしろ、ソローはこの映画『 ホテル・ニューハンプシャー 』にこれからも何度も‘登場’するのである。その二、三日後、長男フランクはソローの遺体が焼却される直前にホテル・ニューハンプシャーの裏庭まで持って帰ってきた。硬直したワンちゃんって、映画では稀なシーン…。もうすぐクリスマスだから、ソローを剥製(はくせい)にして残しておこうという考えなのである。末っ子エッグは、ソローを綺麗にしてあげようと、洗って乾かそうと頑張る。 【ホテル・ニューハンプシャー 第16段落】 ホテル・ニューハンプシャーでのパーティで、ジョンを好きな女子生徒とジョンがベッドインしようということになった。身支度をしにバスルームに入ったその女性生徒は卒倒してしまう。バスタブに、あのソローの真っ黒で硬直した死体が横になっていたのだ。これは、エッグがソローを洗ってやって火で乾かそうとしたら燃え移ったので、驚いて水に漬けたからだと判明した。 【ホテル・ニューハンプシャー 第17段落】 おじいちゃんのアイオワ・ボブはソローを処分しに連れて行った本人なので、謂わばソローを死なせたわけだ。それで、悪夢に取り付かれている。ベッドの横でソローが怒って歯をむき出しているという悪夢だ。その数日後、祖父に肉体づくりのトレーニングをしてもらっている次男ジョンの傍らで、祖父が読み物をしていると、拍子で物入れの戸が開いて、剥製になったソローが顔を出した。それを見た祖父アイオワ・ボブはショックから心臓麻痺で即死(「死 その3」)。 【ホテル・ニューハンプシャー 第18段落】 この辺りから、ホテル・ニューハンプシャーの経営状態は悪化し、そこにウィーンから手紙が届いた。父ウィンの若い時のアルバイト先ホテル・アーバスノットで知り合った、あのユダヤ人フロイトからである。フロイトはウィーンに熊のいるホテルを購入していて、来て手伝って欲しいという便りだった。ここで父ウィンの、夢をどんどん追って前進するという性癖がまた出て、これも即決した。一家はこのホテル・ニューハンプシャーを売却してウィーンまでの旅費に当てる。ジョンのベッドのお相手の女性は泣いて別れを惜しむ。 【ホテル・ニューハンプシャー 第19段落】 雨の寒い日。一家はちょっとした荷物を提げてホテル・ニューハンプシャーを出発した。ただし、二班に別れて行動する。先行は、父と長男と次男と長女と次女。この大きい五人が先に行って段取りを整えてから、母と末っ子が後で行くという形にしたのだ。そして母と末っ子エッグが後日、飛行機に乗っていると、何としたことか、機は大西洋に墜落してしまい、二人は事故死してしまった(「死 その4・5」)。エッグが大事にしていてウィーンまで持って行こうとしていたソローの剥製も、波打ち際に打ち寄せられている。 【ホテル・ニューハンプシャー 第20段落】 母と末っ子が急死して残された家族五人は嘆くけど、それも深刻に見せない。一家はどんどん次の事に意識を移らせていく積極志向として設定しているのだ。さて、フロイトのウィーンのホテルは、ベリー一家が想像していたものとは全く異なっていた。アメリカ式のモダンで清潔で便宜が全て整っているというホテル形式ではなく、ヨーロッパによくある旧式の狭いホテルである。それに加えて、このホテルは売春婦たちと過激派グループのアジトでもある。売春婦たちは陽気で、若いジョンたちをからかったり。 【ホテル・ニューハンプシャー 第21段落】 また、フロイトはあの後、ナチス Nazis による虐待で失明されていた。でも、目が見えなくてもそれなりに気丈に快活に暮らしている。さて、熊のいるホテルと手紙に書いていたが、熊はクマでも、クマの縫い包みを着た人間のクマだった。フロントの女性で、アメリカ出身の若い女性、熊のスージーことスージー・ザ・ベア(ナスターシャ・キンスキー:『 めぐり逢う大地 (2000) THE CLAIM 』等に出演)である。スージー・ザ・ベアは厭世観と対人恐怖症の混ざったような心に悩みのある女性なので、熊の縫い包みを脱げないでいるのだ。このホテルもホテル・ニューハンプシャーという名になった。 【ホテル・ニューハンプシャー 第22段落】 そのホテルに駐留している過激派一味の中に、エルンスト(マシュー・モディーン二役)という男がいて、長女フラニーのレイプしたダブとそっくりだとジョンもフラニーも感じる。フラニーはダブを憎んでいながら本当はちょっと好きだったかも、なんていう複雑な思いに駆られている。そうだからか、フラニーはその革命家エルンストに関心を持って近づき、エルンストの方でもアメリカ娘フラニーに近寄る。そしてフラニーは肌を大きく見せる下品なドレスに身を包んで、エルンストとベッドイン。そして未知の体験をして嬉しそうだ。そんな姉フラニーにジョンは内心嫉妬し、危ない男だから近寄らないように言うのが精一杯だった。 【ホテル・ニューハンプシャー 第23段落】 この過激派には、ミス流産(アマンダ・プラマー: 『 死ぬまでにしたい10のこと (2003) MY LIFE WITHOUT ME 』 『 KEN PARK (2002) KEN PARK 』 『 GO!GO!L.A. (1998) L.A. WITHOUT A MAP 』等に出演)というおかしなあだ名の地味な女性がいた。男性とは未経験だというのでつけられた皮肉な名である。ミス流産は、ベリー一家の次女リリーを可愛がって、本を読んで聞かせる。F・スコット・フィッツジェラルド F. Scott Fitzgerald ( 1896/09/24 - 1940/12/21 )著の「華麗なるギャッツビー(グレート・ギャッツビー) The Great Gatsby 」だ。リリーは文学少女だから彼女から諸に影響を受ける。その本から、次から次へ自分の夢を突き進んでいく父親はギャッツビーと同じだなと感じるのだ。 【ホテル・ニューハンプシャー 第24段落】 ある日、ミス流産はベリー家の次男ジョンに、自室に来て‘全て’をしてほしいと懇願してきた。聞くと、エルンストや自分達はテロリストで、明日、ウィーンのオペラ座 Vienna Opera House を爆破する予定なのだと。そして自分は爆弾を身体に括りつけて車に乗ってオペラ座にぶつかっていく役目なのだと。だから死ぬ前に‘全て’を体験したいのだと。そんな哀れなミス流産にジョンは体験させてあげて、何か心に秘めて部屋を出て行った。それを見たテロリスト仲間はミス流産を撃ち殺す(「死 その6」)。 【ホテル・ニューハンプシャー 第25段落】 エルンストらテロリスト達はホテルのロビーにベリー一家とフロイトやスージー・ザ・ベアを並べて、オペラ座襲撃の命令を下す。自爆係だったミス流産は殺害してしまったので、ベリー一家の誰かがその役目をしろというのだ。すると、機転を利かしたフロイトは自分がその役を買って出た。そしてホテル前に爆薬を積んで駐車していた車を叩いて爆発させ、自らの命を犠牲として爆破を阻止した(「死 その7」)。父ウィンは爆発で失明してしまったが、勢いづいたベリー一家の子供達はテロリスト達を相手に暴れてやっつけた。こうしてオペラ座を爆破から救ったベリー一家は、オーストリアの大統領(ジェラルド・アイルズ Gerald Iles )から表彰された。 【ホテル・ニューハンプシャー 第26段落】 実は、このウィーンのホテル経営は芳しくないし綺麗じゃないし、たむろしている連中がよろしくないので、子供たちはアメリカへ帰国したがっていた。でも収益が少なくて帰国費用を捻出できず実現できないのだと父ウィンは事情を説明していたのだった。それが、このオペラ座爆破を未遂にした立役者として有名になったことと、文学少女の次女リリーが執筆したベリー家についての私小説が大ヒットしたという幸運が重なって、一家は晴れてアメリカに帰国することが出来た。スージー・ザ・ベアもアメリカ人であるし、ジョンが彼女の心を開いていく努力をしていたので、一緒に米国に連れて帰る。 【ホテル・ニューハンプシャー 第27段落】 大金持ちになったベリー一家は、ニューヨーク New York City に到着した。ベストセラー作家としてリリーは一大センセーションを浴びる。長兄フランクはリリーのマネージャーに。そして姉フラニーは妹の小説の映画化の主役を演じ女優となった。そしてこの一家と旧知のアフリカ系アメリカ人青年と結婚する。次男ジョンは、盲人となった父ウィンの志を継いで、メイン州にホテルを購入した。父と一緒にまたホテルを営んでいくのだ。話は前後するが、子供時代から恋し合っていた姉フラニーと弟ジョンは、遂に一線を越えて愛し合った。何時間も、笑いながら、幸福そうに。近親相姦だというのにちっとも湿っぽくない。 【ホテル・ニューハンプシャー 第28段落】 リリーの提案で、以前にフラニーをレイプしたダブに復讐することにもなった。ダブをホテルに呼び寄せ、フラニーはダブの為に心身が狂ったように見せかけて、ホテルのメイドや熊に扮した兄弟達がダブを逆レイプしようという策略である。でもお尻丸出しで怯えるダブを見て、フラニーはもう吹っ切れて帰らせてやる。そしてジョンは、姉と結ばれて思いっきり幸せな思いを遂げたので、もうこれも吹っ切れた。ジョンはウィーンから一緒に帰国したスージー・ザ・ベアを優しく労わって、熊の縫い包みを頭から取り去らせることもできた。顔に自信がないと声を翳らすスージーを、とっても綺麗だと褒めて、二人は結ばれた。・・・ ▲TOPへ ◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say ! 【ホテル・ニューハンプシャー 第29段落】 記者会見でリリーの第二作は失敗ではないですかと意地悪な質問も受けていたリリー。それはリリー本人が認めていることだった。リリーはことのほか繊細な神経の持ち主である。だからこそ文学少女なのだ。自分のことは自分が一番よく知っている。父やきょうだい達はそれぞれ皆、色々乗り越えて前進していくが、リリーだけはちょっと違う。小人症という悩みを抱えて、それを処女作に書き著して成功した今、もうこれ以上の生きる意味はリリーにとってなかったのだ。「大きくならないで御免なさい。 Sorry, I'm not big enough. 」とタイプライターに書き遺して、リリーは階上の窓から飛び降り自殺してしまった(「死 その8」)。 【ホテル・ニューハンプシャー 第30段落】 ベリー家の残ったメンバーは結局、失明したがまだ明るい父ウィンと、ゲイの長男フランクと、スージーと一緒になった次男ジョンと、結婚して女優になった長女フラニー。彼らの口にしてきたことは「開いた窓は見過ごせ。 Keep passing the open windows. 」つまり危ない目は避けて通れ。父は何度も新しいことに進んでは失敗し、フラニーはレイプという最悪な目に遭ったし、犬や熊という可愛がっている動物の死も、最愛の家族の死(祖父・母・三男・次女)も経てきた。けれど、彼らは強い。どんなことがあってもへこたれない。死だけは取り戻せないけど、死以外の物事は乗り越えていけるのだ。 【ホテル・ニューハンプシャー 第31段落】 ラストシーンで、新しいホテル・ニューハンプシャーを前にして彼らは「人生すべてお伽話 Everything is a fairy tale, 」だねと言い合う。自殺したリリーは背が伸びて幸福そう(これも明るい空想シーン)。ホテルの緑滴る広い庭で、可愛い熊の「ステイト・オ・メイン State o' Maine (メイン州という意味)」が曲芸をしている。真っ黒なラブラドル・リトリーバーのソローは(空想で)庭を駆け回っている…。悲劇がこんなにも多いのにどこまでも明るい彼らとホテル・ニューハンプシャーの空。因みに、このホテルにせよ諸々のシーンのロケーションは全て、カナダのケベック州 Quebéc, Canada で行われた。近年ではケベックは 『 白いカラス (2003) THE HUMAN STAIN 』や 『 シークレット・ウインドウ (2004) SECRET WINDOW 』等の撮影でも使われている風光明媚な所である。 以上。 <もっと詳しく>からスペースを含まず8445文字/文責:幸田幸 参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集 http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm IMDb allcinema ONLINE Nostalgia.com CinemaClock.com John Irving - Wikipedia, the free encyclopedia http://en.wikipedia.org/wiki/John_Irving The Hotel New Hampshire - John Irving is God http://www.geocities.com/irvingophile/Hotel.html The Hotel New Hampshire by John Irving http://www.randomhouse.com/catalog/display.pperl?isbn=9780345400475&view=rg |
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■映画『 ホテル・ニューハンプシャー 』の更新記録 2005/07/03新規: ファイル作成 2005/08/26更新: ◆データ追加 |
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幸田 幸 coda_sati@hotmail.com |
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