パピヨン
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映画の森てんこ森■映画レヴュー
パピヨン (1973)
PAPILLON
 映画『 パピヨン (1973) PAPILLON 』をレヴュー紹介します。

 映画『 パピヨン PAPILLON 』を以下に目次的に紹介する。
■映画『 パピヨン PAPILLON 』のポスター、予告編および映画データ
■映画『 パピヨン PAPILLON 』の解説
 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。
■映画『 パピヨン PAPILLON 』の主なスタッフ
■映画『 パピヨン PAPILLON 』の主なキャスト
■映画『 パピヨン PAPILLON 』の原作者アンリ・シャリエール
■映画『 パピヨン PAPILLON 』のスティーヴ・マックィーンについて
■映画『 パピヨン PAPILLON 』のスタッフとキャスト
■映画『 パピヨン PAPILLON 』の<もっと詳しく>
 <もっと詳しく>は映画『 パピヨン 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタバレ)です。※ご注意:映画『 パピヨン (1973) PAPILLON 』の内容やネタバレがお好みでない方は読まないで下さい。
■映画『 パピヨン PAPILLON 』の結末
■映画『 パピヨン PAPILLON 』の感想
■映画『 パピヨン PAPILLON 』の更新記録

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幸の鑑賞評価: 8つ星 
■映画『 パピヨン (1973) PAPILLON 』のポスター、予告編および映画データ
パピヨン
パピヨン
上映時間 Runtime: 2:31
製作国 Country: フランス/アメリカ
France / USA
製作会社
Production Company:
Allied Artists Pictures Corporation [us]
Corona-General
Solar Productions [us]
全米配給会社 Distributer: Allied Artists Pictures Corporation [us]
CBS/Fox [us] (laserdisc)
Columbia TriStar [us] (DVD)
Warner Home Video [us] (USA) (DVD)
Warner Home Video [us] (USA) (laserdisc)
全米初公開 Release Date: 1973/12/16
日本初公開 R. D. in Japan: 1974/03
日本公開情報 : 東和
ジャンル Genre: ドラマ/アドヴェンチャー
Drama / Adventure
MPAA Rating 指定: Rated R / USA:PG
日本語公式サイト 調査中
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com.
Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc.
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■映画『 パピヨン (1973) PAPILLON 』の解説

 映画『 パピヨン PAPILLON 』は、キング・オブ・クール King Of Cool と呼ばれたハリウッドの大スター、スティーヴ・マックィーンが演じる決して諦めない男の物語。アンリ・シャリエールの自伝的小説が原作の感動の一作だ。スティーヴ・マックィーンは本作『 パピヨン 』で 1974 年ゴールデン・グローブ賞ドラマ部門男優賞にノミネートされた。
 パピヨンはフランス語で蝶のこと。胸に蝶(パピヨン)の刺青があるので、パピヨンと呼ばれる男(スティーヴ・マックィーン)は、冤罪でフランス領ギアナの囚人流刑地に送られる。地獄の刑務所からの脱走を企てるパピヨンは、資金繰りを考えて偽札作りの名人ルイ・ドガ(ダスティン・ホフマン:『 レインマン (1988) RAIN MAN 』『 ムーンライト・マイル (2002) MOONLIGHT MILE 』『 ネバーランド (2004) FINDING NEVERLAND 』等)に近づくが、二人は苛酷な環境の中で友情を育んでいく。脱獄、逮捕、独房を繰り返しながらも、蝶の性を持つパピヨンは自由を追い求めて飛び立たずにはいられない…。

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■映画『 パピヨン (1973) PAPILLON 』の主なスタッフ

○『 パピヨン 』の監督・製作: フランクリン・J・シャフナー ( 1920-1989 )
 アメリカ人宣教師の息子であるシャフナー監督は東京生まれで、 5 歳の時に初めて故国の土を踏んだそうだ。
『 猿の惑星 (1968) PLANET OF THE APES 』
『 パットン大戦車軍団 (1970) PATTON 』< 1971 年アカデミー監督賞受賞>
『 海流のなかの島々 (1977) ISLANDS IN THE STREAM 』
『 ブラジルから来た少年 (1978) THE BOYS FROM BRAZIL 』等

○『 パピヨン 』の製作: ロベール・ドルフマン ( 1912-1999 )

○『 パピヨン 』の製作総指揮: テッド・リッチモンド

○『 パピヨン 』の原作者: アンリ・シャリエール Henri Chariere ( 1906-1973 )

【パピヨンの原作者 第01段落】  アンリ・シャリエールは、この映画『 パピヨン (1973) PAPILLON 』の原作となった自伝的小説『 PAPILLON (パピヨン)』の著者として主に知られている。小説『 PAPILLON (パピヨン)』は、シャリエールが南米のフランス領ギアナ 'Guiane' (French Guiana, South America) にある刑務所に収容されていた時の回想録だ。

【パピヨンの原作者 第02段落】   1931 年に投獄されてから繰り返した脱走と拿捕(だほ)の冒険から、最後にヴェネズエラ Venezuela に逃れるまでのことが詳しく描かれている。シャリエールは 1945 年にヴェネズエラの住民となり、結婚して首都カラカス Caracas にレストランを開いた。

【パピヨンの原作者 第03段落】  本『 PAPILLON (パピヨン)』のタイトルはシャリエールのニックネームで、彼の胸にある蝶(パピヨン)のタトゥーに由来している。記述の信憑性は疑問視されているが、記憶の小さな間違いを除いては全て真実であるとシャリエールは主張している。以下は『 PAPILLON (パピヨン)』に記されたシャリエールの人生の要約である。

【パピヨンの原作者 第04段落】  パリの暗黒街で金庫破りをしていたシャリエールは、売春斡旋屋ロラン・ル・プチ Roland le Petit 殺しの濡れ衣を着せられる。 1931 年 10 月 26 日、有罪となり、終身重労働の判決を受ける。短期間フランス北西部の町カーン Caen で投獄された後、フランス領ギアナの流刑地に送られる。 1933 年、シャリエールは 2 人の囚人と共に本土の病院からの脱走に成功し、トリニダード Trinidad およびキュラソー Curacao を経由し、コロンビアの Riohacha へと海岸に沿って航海する。

【パピヨンの原作者 第05段落】  ここでシャリエールらは捕まえられて入獄。シャリエールは単独でグアヒーラ Guajira に逃亡。ここでシャリエールは原住民の村に数ヶ月暮らし、滞在中に 2 人の妻を持つ。結局シャリエールはそこを出発して西に向かい、サンタマルタ Santa Marta で逮捕されて投獄。バランキージャ Barranquilla に移送される。

【パピヨンの原作者 第06段落】  数々の大胆な試みにも拘らず、シャリエールはこれらの刑務所から逃げることができず、 1934 年、ついにフランス領ギアナに引き渡される。脱獄のためにシャリエールはサン・ヨセフ島 the island of Saint-Joseph にある独房で 2 年間過ごす。釈放に際し、シャリエールはロワイヤル島 the island of Royale へ移送となり、密告者にここからの脱走を妨害される。脱獄未遂と密告者の殺害によりさらに 19 か月独房で過ごした後、狂気を装ったシャリエールはサン・ヨセフにある精神病院に移され、そこからの脱走を企てる。

【パピヨンの原作者 第07段落】  ついにシャリエールは悪魔島に送られた。シャリエールは崖から身を投げ、椰子の実の入った袋をイカダにし、ついに脱走に成功する。本土に着くと、シャリエールはジョージタウン Georgetown へボートで逃げる。ここからシャリエールと他の 5 人は海路でヴェネズエラへ行くが、そこで捕まえられ、エルドラド El Dorado で投獄される。シャリエールは 1945 年 10 月 18 日にやっと自由の身になった。

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○『 パピヨン 』の脚本・出演: ダルトン・トランボ ( 1905-1976 )
『 恋愛手帖 (1940) KITTY FOYLE 』< 1941 年アカデミー脚色賞ノミネート>
ローマの休日 (1953) ROMAN HOLIDAY 』< 1954 年アカデミー原案賞受賞>
『 黒い牡牛 (1956) THE BRAVE ONE 』< 1957 年アカデミー原案賞受賞>等

○『 パピヨン 』の脚本: ロレンツォ・センプル・Jr.

○『 パピヨン 』の音楽: ジェリー・ゴールドスミス ( 1929-2004 )
『 フロイド/隠された欲望 (1962) FREUD 』< 1963 年アカデミー作曲賞ノミネート>
『 いつか見た青い空 (1965) A PATCH OF BLUE 』< 1966 年アカデミー作曲賞ノミネート>
『 砲艦サンパブロ (1966) THE SAND PEBBLES 』< 1967 年アカデミー作曲賞ノミネート>
『 猿の惑星 (1968) PLANET OF THE APES 』< 1969 年アカデミー作曲賞ノミネート>
『 パットン大戦車軍団 (1970) PATTON 』< 1971 年アカデミー作曲賞ノミネート>
『 パピヨン (1973) PAPILLON 』< 1974 年アカデミー作曲賞ノミネート>
『 チャイナタウン (1974) CHINATOWN 』< 1975 年アカデミー作曲賞ノミネート>
『 風とライオン (1975) THE WIND AND THE LION 』< 1976 年アカデミー作曲賞ノミネート>
『 オーメン (1976) THE OMEN 』< 1977 年アカデミー作曲賞受賞&歌曲賞ノミネート>
『 ブラジルから来た少年 (1978) THE BOYS FROM BRAZIL 』< 1979 年アカデミー作曲賞ノミネート>
『 スター・トレック (1979) STAR TREK-THE MOTION PICTURE 』< 1980 年アカデミー作曲賞ノミネート>
『 ポルターガイスト (1982) POLTERGEIST 』< 1983 年アカデミー作曲賞ノミネート>
『 アンダー・ファイア (1983) UNDER FIRE 』< 1984 年アカデミー作曲賞ノミネート>
『 勝利への旅立ち (1986) HOOSIERS 』< 1987 年アカデミー作曲賞ノミネート>
『 氷の微笑 (1992) BASIC INSTINCT 』< 1993 年アカデミー作曲賞ノミネート>
『 L.A.コンフィデンシャル (1997) L.A. CONFIDENTIAL 』< 1998 年アカデミー音楽賞ノミネート>
『 ムーラン (1998) MULAN 』< 1999 年アカデミー音楽賞ノミネート>等

○『 パピヨン 』の撮影: フレッド・コーネカンプ
『 パットン大戦車軍団 (1970) PATTON 』< 1971 年アカデミー撮影賞ノミネート>
『 タワーリング・インフェルノ (1974) THE TOWERING INFERNO 』< 1975 年アカデミー撮影賞ノミネート>
『 海流のなかの島々 (1977) ISLANDS IN THE STREAM 』< 1978 年アカデミー撮影賞ノミネート>等

○『 パピヨン 』の編集: ロバート・スウィンク ( 1018-2000 )
ローマの休日 (1953) ROMAN HOLIDAY 』< 1954 年アカデミー編集賞ノミネート>
『 ファニー・ガール (1968) FUNNY GIRL 』< 1969 年アカデミー編集賞ノミネート>
『 ブラジルから来た少年 (1978) THE BOYS FROM BRAZIL 』< 1979 年アカデミー編集賞ノミネート>等

○『 パピヨン 』の美術: アンソニー・マスターズ ( 1919-1990 )
『 2001年宇宙の旅 (1968) 2001: A SPACE ODYSSEY 』< 1969 年アカデミー美術賞ノミネート>等

○『 パピヨン 』の衣装: アンソニー・パウエル
『 TRAVELS WITH MY AUNT (1972) 』< 1973 年アカデミー衣装デザイン賞受賞>
『 ナイル殺人事件 (1978) DEATH ON THE NILE 』< 1979 年アカデミー衣装デザイン賞受賞>
『 テス (1979) TESS 』< 1981 年アカデミー衣装デザイン賞受賞>
『 ポランスキーの パイレーツ (1986) PIRATES 』< 1987 年アカデミー衣装デザイン賞ノミネート>
『 フック (1991) HOOK 』< 1992 年アカデミー衣装デザイン賞ノミネート>
『 102 (2000) 102 DALMATIANS 』< 2001 年アカデミー衣装デザイン賞ノミネート>
ナインスゲート (1999) THE NINTH GATE 』等

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■映画『 パピヨン (1973) PAPILLON 』の主なキャスト

●スティーヴ・マックィーン ( 1930-1980 )as アンリ・‘パピヨン’・シャリエール @『 パピヨン 』
『 傷だらけの栄光 (1956) SOMEBODY UP THERE LIKES ME 』
『 マックィーンの絶対の危機(ピンチ) (1958) THE BLOB 』
『 拳銃無宿<TV> (1958) WANTED, DEAD OR ALIVE 』
『 荒野の七人 (1960) THE MAGNIFICENT SEVEN 』
『 大脱走 (1963) THE GREAT ESCAPE 』
『 マンハッタン物語 (1963) LOVE WITH THE PROPER STRANGER 』< 1964 年ゴールデン・グローブ賞ドラマ部門男優賞ノミネート>
『 砲艦サンパブロ (1966) THE SAND PEBBLES 』< 1967 年アカデミー主演男優賞ノミネート、ゴールデン・グローブ賞ドラマ部門男優賞ノミネート&世界でもっとも好かれた男優賞受賞>
『 ブリット (1968) BULLITT 』
『 華麗なる週末 (1969) THE REIVERS 』< 1970 年ゴールデン・グローブ賞ミュージカル/コメディ部門男優賞ノミネート&世界でもっとも好かれた男優賞受賞>
『 栄光のライダー (1971) ON ANY SUNDAY 』
『 栄光のル・マン (1971) LE MANS 』
『 ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦 (1972) JUNIOR BONNER 』
『 ゲッタウェイ (1972) THE GETAWAY 』
『 パピヨン (1973) PAPILLON 』< 1974 年ゴールデン・グローブ賞ドラマ部門男優賞ノミネート>
『 タワーリング・インフェルノ (1974) THE TOWERING INFERNO 』
『 トム・ホーン (1979) TOM HORN 』
『 ハンター (1980) THE HUNTER 』等
◆俳優について映画人(俳優・女優・監督など)のリストへ

スティーヴ・マックィーン Steve McQueen
Steve McQueen
"Sand Pebbles, The" Steve McQueen 1966 20th Cent. Fox
Photo Date: 1920
Photo by Ted Allan - All Rights Reserved, 1978 Ted Allan - Image courtesy MPTV.net

IMDbより使わせて頂いてます。
 スティーヴ・マックィーンは 1950 年代に現れた、典型的な新しいタイプの映画スターであった。そして 1960〜1970 年代の銀幕に君臨する。スティーブ・マックイーンが演じたのは、ありふれたタフ・ガイのように見せない拳の使い方を知るクールな一匹狼、思慮深く精力的な知識人、自らのルールとモラルで生きる反逆者など。スティーヴ・マックィーンは、ジェームズ・ディーン James Dean 、マーロン・ブランド Marlon Brando 、ポール・ニューマン Paul Newman (『 ロード・トゥ・パーディション (2002) ROAD TO PERDITION 』等)と並ぶ当時新種のアンチ・ヒーロー型スターの一人であり、それまでの概念をうち破ることに成功すると同時に、ハリウッドのドル箱スターの一人であった。

 テレンス・スティーヴン・マックィーン Terrence Steven McQueen は 1930 年 3 月 24 日インディアナ州インディアナポリス Indianapolis, IN で生まれた。スティーヴ・マックィーンの幼少期は幸せではなかった。父親と母親はスティーヴ・マックィーンが最初の誕生日を迎えるまでに別れ、スティーヴ・マックィーンはミズーリ Missouri の農場で暮らす大おじのところへ送られる。 9 歳になった頃、母親が再婚し、スティーヴ・マックィーンは母親と暮らすためにカリフォルニア California へ。 10 代の頃にはもう手に負えない悪ガキで、不良少年達のグループと過ごすようになり始める。スティーヴ・マックィーンが起こした犯罪のために、母親は彼をカリフォルニアの更正施設、ボーイズ・リパブリック Boys Republic へ送った。 9 年生の後に、スティーヴ・マックィーンは形式上の教育を棄て、国をしばらく放浪した後、 1947 年に海兵隊に入隊。海兵隊員たちとの生活は、マックィーンの反権力主義的態度にほとんど変化をもたらさなかった。 2 週間無届外出した後、 41 日間帆船で過ごすこともあった。
 1950 年に海兵隊を離れた後、スティーヴ・マックィーンはニューヨークへ引っ越し、自分が人生でしたいことを決めようとしている間に、たくさんの短期労働に就いた。友人の勧めでスティーヴ・マックィーンは演技に興味を持ち、舞台に熱狂するようになる。 1952 年、スティーヴ・マックィーンはサンフォード・マイズナー Sanford Meisner のネイバフッド・プレイハウス Neighborhood Playhouse で演技の勉強をし始める。多くの小さなオフ・ブロードウェイの作品で印象的な役を演じた後、スティーヴ・マックィーンはリー・ストラスバーグ Lee Strasberg の名門アクターズ・スタジオ Actor's Studio に合格し、より演技の腕を磨く。 1956 年、スティーヴ・マックィーンはブロードウェイ・デビューを飾り、喝采を受けたドラマ『 A HATFUL OF RAIN 』の主役ベン・ギャザラ Ben Gazzara (『 バッファロー'66 (1998) BUFFALO '66 』『 ドッグヴィル (2003) DOGVILLE 』等)に取って代わったとき、べたほめの批評を得る。同年、スティーヴ・マックィーンは映画デビューを果たし、『 傷だらけの栄光 (1956) SOMEBODY UP THERE LIKES ME 』でポール・ニューマンの脇で役を得る。そしてスティーヴ・マックィーンはダンサーのニール・アダムス Neile Adams と結婚する。 1958 年、舞台とテレビ出演で 2 年過ごした後、スティーヴ・マックィーンは映画で初の主役を得た。それはSFカルト『 マックィーンの絶対の危機(ピンチ) (1958) THE BLOB 』での気高くかなり激しいティーンエイジャー役だった。その後、同じ年にもう一つの主役を得る。TVシリーズ『 拳銃無宿 (1958) WANTED, DEAD OR ALIVE 』だ。賞金稼ぎジョッシュ・ランダル Josh Randall 役はスティーヴ・マックィーンをスターダムへとのし上げた。 1960 年に大作『 荒野の七人 (1960) THE MAGNIFICENT SEVEN 』に出演し、大画面でもスターとしての地位を確かなものとする。 1961 年、スティーヴ・マックィーンは『拳銃無宿』シリーズを仕上げて映画に集中し、アクションと同様にコメディにも出演。 1963 年、第二次世界大戦のアクションドラマ『 大脱走 (1963) THE GREAT ESCAPE 』でハリウッドで最も稼げる主役級俳優の一人として大成功を納める。この作品におけるスティーヴ・マックィーンの向こう見ずなバイク・スタントは有名なシーン。スティーヴ・マックィーンはオフスクリーンではバイクやカー・レースに情熱を注いでいた。バイク・レースのドキュメンタリー映画『 栄光のライダー (1971) ON ANY SUNDAY 』でナレーター・出演を務めるほどである。

 1960 年代の後半を通して、スティーヴ・マックィーンが出演する映画は成功し続けるが、 1970 年代初期に 2 つの作品で予期せずガックリきてしまう。 1971 年の『 栄光のル・マン (1971) LE MANS 』。有名な 24 時間レースの興奮を捕らえきれなかったレーシング・フィルムだ。そして 1972 年の『 ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦 (1972) JUNIOR BONNER 』。熱狂的な批評を得たサム・ペキンパー Sam Peckinpah 監督の質の良い映画だが、収益が悪かった。その後、スティーヴ・マックィーンは再びペキンパーと組み、もっと典型的なアクション・フィルム『 ゲッタウェイ (1972) THE GETAWAY 』を作る。 1971 年にスティーヴ・マックィーンはニール・アダムスと離婚し、『 ゲッタウェイ 』の撮影中に共演者のアリ・マッグロー Ali MacGraw とロマンティックな関係になる。 1973 年、マッグローはプロデューサーのロバート・エヴァンス Robert Evans と離婚し、スティーヴ・マックィーンと結婚。二人の結婚は 1977 年まで続いた。

 『 パピヨン (1973) PAPILLON 』と『 タワーリング・インフェルノ (1974) THE TOWERING INFERNO 』の 2 つの大作映画に出演した後、スティーヴ・マックィーンは数年間スクリーンから姿を消す。 1977 年、スティーヴ・マックィーンはヘンリック・イプセン Henrik Ibsen の『 民衆の敵 (1978) AN ENEMY OF THE PEOPLE 』で主演と製作総指揮を兼ねるが、完成後ついに封切られると、批評家にも観客にもウケが悪かった。その後、スティーヴ・マックィーンがクレジットなしで共同監督している野心的な西部劇『 トム・ホーン (1979) TOM HORN 』と現代の賞金稼ぎを演じたアクション『 ハンター (1980) THE HUNTER 』の 2 つの映画に出演する。その年の 1 月にスティーヴ・マックィーンは三度目の結婚をする。お相手はモデルのバーバラ・ミンティ Barbara Minty 。しかし、そんな突然の活動がスティーヴ・マックィーンの病気を隠した。胸膜中皮腫 mesothelioma と診断されたマックイーン。石綿(アスベスト)に曝されたために悪性の肺ガンに冒されていたのだ。通常の治療では病気の進行を抑えることができず、スティーヴ・マックィーンはメキシコのファレス Juarez, Mexico へと旅行し、そこの実験的なガン・クリニックで治療を受ける。本人と医師達の努力にも拘わらず、俳優スティーブ・マックイーンは 1980 年 11 月 2 日に亡くなった。マックイーンは二人の子供を残している。一人は俳優のチャド・マックイーン。もう一人はテリー・マックイーンで 1998 年にガンで亡くなっている。

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●ダスティン・ホフマン as ルイ・ドガ @『 パピヨン 』
『 卒業 (1967) THE GRADUATE 』< 1968 年アカデミー主演男優賞ノミネート>
『 真夜中のカーボーイ (1969) MIDNIGHT COWBOY 』< 1970 年アカデミー主演男優賞ノミネート>
『 レニー・ブルース (1974) LENNY 』< 1975 年アカデミー主演男優賞ノミネート>
『 クレイマー、クレイマー (1979) KRAMER VS. KRAMER 』< 1980 年アカデミー主演男優賞受賞>
『 トッツィー (1982) TOOTSIE 』< 1983 年アカデミー主演男優賞ノミネート>
レインマン (1988) RAIN MAN 』< 1989 年アカデミー主演男優賞受賞>
『 ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ (1997) WAG THE DOG 』< 1998 年アカデミー主演男優賞ノミネート>
ジャンヌ・ダルク (1999) JOAN OF ARC / THE MESSENGER: THE STORY OF JOAN OF ARC
ムーンライト・マイル (2002) MOONLIGHT MILE
コンフィデンス (2003) CONFIDENCE
ニューオーリンズ・トライアル (2003) RUNAWAY JURY
ネバーランド (2004) FINDING NEVERLAND
ハッカビーズ (2004) I HEART HUCKABEES / I LOVE HUCKABEES
レーシング・ストライプス (2005) RACING STRIPES 』等

●ドン・ゴードン as ジュロ〔護送船で知り合った囚人〕 @『 パピヨン 』
 スティーヴ・マックィーンの良き友人で、『 ブリット (1968) BULLITT 』、本作『 パピヨン (1973) PAPILLON 』、『 タワーリング・インフェルノ (1974) THE TOWERING INFERNO 』で共演している。

●ロバート・デマン as マチュレット〔ゲイの囚人〕

●ウッドロウ・パーフレイ ( 1922-1984 ) as クルジオ〔囚人仲間〕 @『 パピヨン 』
 十代の頃に孤児となり、大恐慌時代は極貧で暮らした。
 第二次世界大戦中のバルジ作戦 the Battle of the Bulge で戦い、負傷してドイツ軍に捕らえられたという経験が、彼が演じることの多かったタフで風変わりなキャラクターの役作りに役立った。

●ビル・マミー as ラリオ @『 パピヨン 』

●ジョージ・クールリス ( 1903-1989 ) as シャタル医師 @『 パピヨン 』

●ラトナ・アッサン as Zoraima 〔海辺の村の若い娘〕 @『 パピヨン 』
 1940 年代の MGM 契約女優、デヴィ・ジャー Devi Dja の娘。

●ロン・ソーブル ( 1932-2002 )as サンティニ @『 パピヨン 』

●ウィリアム・スミザーズ as ウォーデン・バロ〔サン・ローラン刑務所の看守〕 @『 パピヨン 』

●ヴィクター・ジョリイ ( 1902-1982 )as 海辺の村の酋長 @『 パピヨン 』
 兵役中、沿岸警備隊のボクシングとレスリングのチャンピオンであった。

●アンソニー・ザーブ as トゥーサン〔ハンセン病患者植民地首領〕 @『 パピヨン 』
マトリックス リローデッド (2003) THE MATRIX RELOADED
マトリックス レボリューションズ (2003) THE MATRIX REVOLUTIONS 』等
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【『 パピヨン 』のスタッフとキャスト】
『 パピヨン 』の監督: フランクリン・J・シャフナー Franklin J. Schaffner (Directed by)
『 パピヨン 』の製作: ロベール・ドルフマン Robert Dorfmann (producer)
             フランクリン・J・シャフナー Franklin J. Schaffner (producer)
『 パピヨン 』の製作総指揮: テッド・リッチモンド Ted Richmond (executive producer)
『 パピヨン 』の原作: アンリ・シャリエール Henri Charriere (novel)
『 パピヨン 』の脚本: ダルトン・トランボ Dalton Trumbo (Writing credits)
             ロレンツォ・センプル・Jr. Lorenzo Semple Jr. (Writing credits)
『 パピヨン 』の音楽: ジェリー・ゴールドスミス Jerry Goldsmith (Original Music by)
『 パピヨン 』の撮影: フレッド・コーネカンプ Fred Koenekamp (Cinematography by)
『 パピヨン 』の編集: ロバート・スウィンク Robert Swink (Film Editing by)
『 パピヨン 』の美術: アンソニー・マスターズ Anthony Masters (Production Design by)
『 パピヨン 』の衣装: アンソニー・パウエル Anthony Powell (Costume Design by)

『 パピヨン 』の出演: スティーヴ・マックィーン Steve McQueen as Henri 'Papillon' Charriere
             ダスティン・ホフマン Dustin Hoffman as Louis Dega
             ヴィクター・ジョリイ Victor Jory as Indian chief
             アンソニー・ザーブ Anthony Zerbe as Toussaint Leper Colony chief
             ドン・ゴードン Don Gordon as Julot
             ロバート・デマン Robert Deman as Maturette
             ウッドロウ・パーフレイ Woodrow Parfrey as Clusiot
             ビル・マミー Bill Mumy as Lariot
             ジョージ・クールリス George Coulouris as Dr. Chatal
             ラトナ・アッサン Ratna Assan as Zoraima
             ロン・ソーブル Ron Soble as Santini
             ウィリアム・スミザーズ William Smithers as Warden Barrot

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ストーリー展開の前知識やネタバレがお好みでない方は、読まないで下さい。
■映画『 パピヨン (1973) PAPILLON 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー

【パピヨン 第01段落】  フランス領ギアナ刑事局。ここは悪名高き刑務所だ。フランスから遠く離れた南米ギアナの流刑地に送られる囚人の殆どが終身刑。しかも過酷な労働や慣れない気候で囚人の半分は最初の一年で死んでしまうらしい。もし万が一刑期を終えたとしても、 8 年以上の刑を科された者は植民地労働者としてギアナに留まらなければならない。植民地の司令官(ダルトン・トランボ)が囚人達に叫ぶ。“ Forget France! (フランスを忘れろ!)”

【パピヨン 第02段落】  20 世紀初頭のフランス。厳重な警備の中、大勢の囚人達が港へ向けて、ゾロゾロと通りを歩く。絶望の色が隠せない表情の囚人達を押し黙って見送る人々が通りの脇を埋め尽くしている。囚人には珍しくメガネをかけた男(ダスティン・ホフマン)を、ジャーナリストらしき男が写真を撮ってその場を去る。そのメガネ男に上流階級っぽい美しい女性が手を振った。きっとその女性はメガネ男の妻だろう。また、若い女性から“パピヨン Papillon ”と声を掛けられた囚人(スティーヴ・マックィーン)がいる。若い女性は“ You'll be back. (あなたは戻ってくるわ。)”と悲しげだ。“ No, you won't. (お前は戻らないよ。)”パピヨンの隣を歩く男が呟いた。

【パピヨン 第03段落】  ギアナに向かう護送船の底に囚人達が次々と収容され、灰色の鉄格子の大きな部屋に囚人達が自分用のハンモックを吊るしていく。脱獄を考えているパピヨンは、ナイフとお金を隠し持っている。夜、他の囚人が寝静まると、パピヨンはお札を小さく丸めて金属の小さな筒に入れていく。その筒はお尻に入れるつもりだ。パピヨンの名の由来は、彼の胸にある大きな蝶の刺青。パピヨンは世にその名を知らしめた犯罪者らしく、面識のない者でも、胸の刺青で彼が誰なのかが分かるようだ。向かいのハンモックの囚人ジュロ(ドン・ゴードン)は、以前にもギアナに送られたことがあり、パピヨンに脱走のアドヴァイスをしてくれる。地獄の沙汰も金次第で、刑務所の中もそう。ジュロは、パピヨンに偽札作りのプロであるドガと組むように勧めた。メガネの男ルイ・ドガは、 1928 年に偽の国債を発行したことで有名な人物だ。

【パピヨン 第04段落】  雨の日。甲板での食事時に、パピヨンは一人で居るルイに話しかける。ニセ国債の事件で有名なルイを、誰もが殺したがっているので、自分が守ってやろうと持ちかけた。実際、荒くれで無教養な者の多い囚人の中で、メガネのルイはういていて、すでに危険な輩から目を付けられている。しかし、ルイは、ポン引き殺しで終身刑となり、検事を脅迫したことで世間を騒がせた金庫破りのパピヨンを警戒した。パピヨン自身は人殺しを否認し、無実だと主張しているが、ルイはパピヨンの話に乗らなかった。

【パピヨン 第05段落】  暑い船底。苛酷な環境と精神的なストレスのためだろう、若い 18 歳の囚人が咳をしている。看守が囚人達にごついホースで水を掛ける。余りの暑さに囚人達はホースの方に群がった。一人その群れから離れるパピヨンは、今度はジュロに声を掛け、一緒に脱走しようと持ちかけた。失敗すれば独房へ送られるので、他人の巻き添えを負いたくないと、ジュロはきっぱりと断った。

【パピヨン 第06段落】  夜。床に流れる大量の血。ルイのハンモックの横の囚人が殺されている。看守がそれに気付き、報告のためにその場を離れると、数人の囚人が死んだ囚人から私物を盗んだ。この出来事に怯えたルイは、翌朝、パピヨンに自分を守ってくれるように頼んだ。自らは脱走する意志がなく、パピヨンの脱走のための資金を保証すると言うルイ。パピヨンは引き受ける。その夜、早速狙われたルイをパピヨンは約束通り守り、ルイを殺そうとした囚人達をナイフで切りつける。その叫び声に看守が気付く。牢屋内がパニックになる中、パピヨンはナイフを看守に没収されないように即座にルイに託した。この事件で、パピヨンは一番振動のきつい船のエンジン室で縛られて過ごすという罰を負う。

【パピヨン 第07段落】  海の向こうに刑務所のあるサン・ヨセフ島が見えてきた。一見すると、海を泳いで脱走できるように思えるが、それは無理。島の周りは潮の流れが速く、押し戻されてしまう。囚人を乗せた船は、フランス領ギアナに到着。役人や労働者の中に、銃を持った男が二人。彼らは“ハンター”と呼ばれる元囚人だ。刑期を終えた後、脱獄者を捕まえる仕事に就いている。これから囚人達はここでのキャンプ労働かサン・ヨセフ島の刑務所に送られるかが決められる。島送りになると、もう絶対戻れない。ジュロはパピヨンにナイフを貸してくれるように頼む。囚人となってここに送られるのが二度目ジュロは、このままでは島送りになる。自分の右膝をナイフで思い切り突いたジュロは、船を降りる時にわざと転げ落ち、願い通りに島ではなく病院送りになった。 18 歳の囚人は、海に逃げようとして銃殺された。サン・ローラン刑務所へ向かうため、ギアナの町を歩く囚人達の中には、暑さと疲労で倒れる者もいた。

【パピヨン 第08段落】  サン・ローラン刑務所。囚人たちが整列させられた広場の真ん中には、ギロチン台。バロー刑務所長(ウィリアム・スミザーズ)からの話によると、脱走者は 2 年間独房入り、 2 度目の脱走者は 5 年間独房入り、そして 3 度目はギロチン台へということになるらしい。ここでは囚人達は今まで着ていた茶色っぽい囚人服を脱ぎ、白とオレンジのストライプの囚人服を着る。足かせをはめて固い床の上で眠らされて一晩過ごし、朝はたたき起こされる。囚人たちが庭で整列させられると、一人の囚人が取り押さえられてやって来た。神父がお祈りを捧げ始める。囚人の首がギロチン台から飛んだ。

【パピヨン 第09段落】  以前からこの刑務所にいる囚人が、ルイに賄賂の話を持ちかけてきた。その囚人の知り合いの看守にお金を送れば、キャンプに残ることができるらしい。ルイとパピヨンは、彼の話に乗り、二人で 2000 フラン支払うことにした。形式的な身体検査を受けた後、ここでの労働の種類が決められる。看守に二人の賄賂は届いていたが、ルイが作ったニセ国債のせいで一家破産したという別の看守が、パピヨンとルイに“キロ 40 ”での重労働を命じた。湿地で大木を運ぶのが、“キロ 40 ”の仕事だ。足は泥に取られるし、ワニはいるしでかなり辛くて危険だ。

【パピヨン 第10段落】  ジャングルでの昼食時、パピヨンとルイが座った場所の前に囚人が一人倒れていた。先にその場所にいたクルジオ(ウッドロウ・パーフレイ)という囚人が、その男は木ぎれを喉に押し込んで自殺したと教えてくれた。クルジオは死んだ男の昼食を取ると、 3 等分してくれた。また、クルジオはマラリアに効くキニーネという薬もくれた。食事が済むと、クルジオは死んだ男を片づけるため、ずるずると引きずっていった。パピヨンとルイはクルジオをいい奴だと思った。

【パピヨン 第11段落】  ジャングルには、ブルーモルフォ(『 天国の青い蝶 (2004) THE BLUE BUTTERFLY 』にも出てくる青い蝶)という、青い羽がアメリカ紙幣の染料となる綺麗な蝶がいる。その蝶を集めている男が看守にお金を払い、囚人達に蝶の採集をさせている。クルジオによると、その蝶を集めている男にお金を払えば、脱走のためのボートを使わせてもらえるかもしれない。ジャングルの中、囚人達が網を振り回して蝶を追う。囚人達は蝶を捕まえると、男のところへ渡しに行く。パピヨンはルイに捕まえてもらった蝶を持って、男のところへ。看守が監視しているので、パピヨンは胸の蝶の入れ墨を見せて、自分の意志を相手に伝えた。男は脱走目的のパピヨンのことを看守に伝えようとしたが、パピヨンは男に金額を提示してそれを阻止。男は前金で 2000 フラン、ボートの引き替え時に 2000 フランを要求した。一週間後、約束の場所で取引が行われることになった。

【パピヨン 第12段落】  雨の夜、以前ルイは脱走したいと思っていなかったが、過酷な環境にこのままでは死んでしまうと思い、パピヨンに考えが変わったことを伝えた。パピヨンの脱走にクルジオとルイの二人が加わることになる。ところが、その翌日、事件が起こる。看守から死体を運ぶように命令されたパピヨンとルイ。その死体は病院からの脱走を図ったジュロ。ナイフの傷が生々しいその遺体を見て、ルイは気持ちが悪くなって、吐き回す。そんなルイに看守が暴行を加えた。パピヨンはルイを助けようと、看守に手を出してしまう。追われる身となったパピヨンは、看守達の手を逃れ、約束の日よりも早く、蝶の男が指定した場所へ行った。しかし、パピヨンの背後にはハンターの銃口が2つ。

【パピヨン 第13段落】  パピヨンは独房送りとなった。独房は天井も鉄格子で、上からも看守の見張りがある。雨も直接かかるし、吸血コウモリもやってくる。部屋は 5 歩歩くのがやっとの大きさ。食事ももっと不味くなった。最高に劣悪な環境である。普通ならかなりメゲるところだけど、流石パピヨンは違う。体力が大切だと腕立て伏せをする。規則的にドアにある小さな窓から独房の囚人達の顔を出させる日がある。パピヨンが顔を出すと、左隣の独房の住人は今にも死にそうな顔をした髪も顔色も白い男。男はジョージョーだと名乗り、自分が元気そうに見えるかパピヨンに尋ねてきた。パピヨンは元気そうだと言ってやった。ある日、顔を出したときには、もう隣の独房には誰もいなかった。

【パピヨン 第14段落】  ある日、食事が入った器の中に、ココナッツの実とメモが入っていた。器には蓋がついているので、中にそんなものが入っていると、看守達は気付かなかったようだ。メモには”やぶにらみの男より”と署名されていて、ルイからだと察しがついた。命がけで自分を助けてくれたパピヨンのために、ルイはこれから毎日ココナッツを御飯の器に入れるつもりだ。パピヨンは久しぶりに新鮮な食べ物を口にした。しかし、しばらくしてこの幸運が看守達にバレてしまった。所長は、ドアの小窓から顔を出させたパピヨンに誰がココナッツを入れたのか詰問したが、パピヨンはしらを切った。それでパピヨンの食事は半分に減らされ、半年間明かりのない生活をすることになる。極限状態にさらされたパピヨンは、徐々に精神も狂い始めてくる。

【パピヨン 第15段落】  ルイとクルジオは、ココナッツのことが看守にバレたことを知った。パピヨンが飢え死にするか、自分たちの名前を看守にしゃべるか。ルイとクルジオは心苦しくなる。錯乱して、自制心がなくなってしまえば、パピヨンはしゃべってしまうだろう。それは仕方のないことだとルイはクルジオに言った。

【パピヨン 第16段落】  飢えに苦しんだパピヨンは、ゴキブリも食べた。半年経ち、明かりが戻る。パピヨンはあまりのまぶしさにベッドの下に隠れた。所長がやって来た。またもパピヨンにココナッツの犯人を教えるように言った。パピヨンはそれでも答えなかった。ある日、パピヨンがドアの小さな窓から顔を出したとき、いつかのジョージョーのように、パピヨンも隣の独房のフランシスコに自分が元気に見えるかどうか尋ねた。フランシスコの返事もいつかのパピヨンのと同じだった。

【パピヨン 第17段落】  もう我慢の限界。パピヨンは所長を呼んでくれるように大きな声を出した。壁の穴から取り出した嘗てのメモを持って、パピヨンはドアの小窓から顔を出した。ところが、所長の顔を見たとたん、パピヨンの考えは変わった。パピヨンは名前を思い出せなくなったと気がおかしくなった振りをした。所長はそんなパピヨンを一瞥し、じきに死ぬと言った。小窓が閉じられると、パピヨンは誘惑に負けないようにメモを食べた。

【パピヨン 第18段落】  パピヨンの精神は限界を超えていた。ルイと一緒にフランスに凱旋し、人々に歓迎される夢を見る。オープンカーに乗って、歓声を浴びながら、いつか歩いた通りを行く。すると、急に人通りが無くなり、死んだジュロと 18 歳の囚人の二人だけがパピヨンを呼んでいる。走って二人の方に近寄っていくと、二人の顔が不気味に青ざめている。そんな夢を見ていると、独房に入ってから一度も開くことの無かったドアが急に開き、所長が刑期満了を告げた。廊下に出たパピヨンは、「1,2,3,4,5」と数えながらゆっくりと歩いた。 2 年間歩いたことの無かった 6 歩目を歩こうとしたとき、パピヨンはバタリと倒れた。

【パピヨン 第19段落】  事務系の楽な仕事に就くようになっていたルイは、偶然に独房から運ばれてきたルイと出会う。ルイは衰弱しきったパピヨンを抱きしめた。パピヨンは病院に連れられて行った。マチュレット(ロバート・デマン)という青年がルイからの肉入りスープを病床のパピヨンに届けてくれた。マチュレットは病人の世話をする役割の囚人のようだ。マチュレットがスプーンで口にスープを運んでくれるのを待てず、パピヨンは枕から顔を上げてスープの皿にがっついた。ルイがお見舞いに訪れた時には、もうパピヨンの顔色は良くなっていた。ルイの妻と弁護士が彼の減刑を法務省に嘆願中で、ルイはパピヨンの分も頼んでいると話した。減刑に希望を抱くルイの頭には脱走なんてこれっぽっちもなかったが、パピヨンは違った。パピヨンは、出所するのによくても 3 年もかかる減刑嘆願より、ルイにボートを要求した。

【パピヨン 第20段落】  クルジオが眼病を装って病院に入院してきた。目的はパピヨンと一緒に脱走するためだ。囚人であるインド人医師の刑務所外の友人が、ボートを売ってくれるということになったのだ。そのインド人医師に会うため、ルイの手配によりパピヨンはレントゲン検査を受ける。医師は前金 3000 フランとその場でボートの持ち主に 3000 フラン支払うことを要求した。裏切れば殺すと脅し、パピヨンは医師の要求を飲むことにする。

【パピヨン 第21段落】  病室には夜になると、看守の手伝いをしている囚人がやって来る。看守は病気の感染を恐れて、病室には入らない。それで、その囚人が病室を見回り、死人がいると外へ引っ張っていく。汚くて醜いその囚人は同性愛者で、割と小綺麗な青年であるマチュレットのことが大好き。ベッドに横たわっているマチュレットにいかがわしいことをしては、病室を出ていく。もしかしたら、マチュレットはそういうことを条件に、その囚人のコネで病院にいるのかもしれない。明らかにその囚人は気持ち悪いが、マチュレットはそれを我慢しているのだから。

【パピヨン 第22段落】  マチュレットに髭を剃ってもらっている時、パピヨンは彼に 1000 フランやるから、看守手伝いの囚人を 10 分間トイレに連れ込んで喜ばせてやるように言った。その言葉にカッときたマチュレットはひげ剃りナイフをパピヨンの首に当てながら、自分がゲイであることを否定した。しかし、その夜、マチュレットはパピヨンを呼びつけると、言う通りにするから、お金もいらないし、自分も脱走仲間に入れて欲しいと頼んだ。パピヨンは首を振るが、マチュレットは食い下がる。自分がゲイであることを認め、パピヨンと違って本当に人殺しをしているんだとアピールする。パピヨンは頷いた。

【パピヨン 第23段落】  ルイの指示で、パピヨンたちの脱走は、刑務所で音楽会が開かれる日に決行されることが決まった。しかし、ルイは逃げるつもりが無い。ルイは妻がしている釈放運動を信じていた。刑務所に入ってもう 2 年以上。終身刑の夫を待つ妻がいるだろうか。しかも、知的なルイは、刑務所の役人達にとって便利な人材だ。連中がルイを手放すはずがない。パピヨンはルイに一緒に逃げようと誘うが、ルイはやっぱり断った。

【パピヨン 第24段落】  夜、屋外で音楽会。優雅なメロディーが不穏な物音を消し去ってくれる。ルイが役人達に飲み物を給仕している。マチュレットが看守手伝いの囚人を病室に招き入れた。囚人は喜んだのも束の間、殴られて気絶。パピヨンはその囚人の服に着替え、囚人を死人に見せかけるために自分の病院服を着せた。次は、ドアの外で見張る守衛兵を倒し、パピヨンとクルジオとマチュレットの三人は病室の外へ出た。病院での出来事を知るルイは、三人の行動が気付かれないように、看守に話しかけて気を逸らさせる。マチュレットとパピヨンは二人で協力して高い塀を越えるが、遅れたクルジオは守衛兵に見つかり倒されてしまう。その光景を見ていたルイは、守衛兵が塀の上でクルジオを待っていたパピヨンに気付いたと思い、守衛兵に飛びかかっていった。こうなるとルイも脱走しなければならない。刑務所に残っても、ひどい刑罰を受けるだけだ。ルイはパピヨンの助けで塀の向こう側に飛び降りた。その時、元々体育会系でないルイは足を怪我してしまう。びっこを引いてパピヨン達と逃げる。

【パピヨン 第25段落】  インド人医師の友人と思われる男が現れ、三人を先導。ボートに乗せて、引き渡すボートのある場所へと連れて行く。ジャングルの中、パピヨン達がボートを下りると、遠目に青色のボートが見える。三人をここまで連れてきた男は 3000 フランを受け取ると、すぐにその場を去った。パピヨンが青いボートに入ると足の重みで底が抜けた。また裏切られた!ボートはオンボロで、乗ることなどできない。最悪の事態!しかもルイのケガは骨折で、歩くことができない。ツボを心得たマチュレットがルイの足の骨つぎをする。

【パピヨン 第26段落】  いかにもジャングルにいるような鳥の鳴き声が響き渡った。パピヨンが声のする方を探りに行くと、網に入れられた鳥が木にぶら下げられていた。パピヨン達は裏切られたわけではなかったのかもしれない。ボートの持ち主の男と仲間かどうかは定かではないが、顔に刺青を入れた白人の男が現れた。男はパピヨンたちを待っていたと言い、これからどうやって逃げればいいのか教えてくれた。その男は 2 人のハンターも始末してくれていた。男の指示で、パピヨン達は竹でイカダを作り、ボートを手に入れるために島民が全員ハンセン病に感染しているピジョン島へ向かった。

【パピヨン 第27段落】  ピジョン島に到着したパピヨンたちはもう囚人服ではなく、民間人の格好をしている。きっとあの刺青の男に用意してもらった服だろう。パピヨンは島民の住処に入るのをためらった。お金を持っていないので殺されるかもしれないし、病気に感染するかもしれない。〔※注意:昔は恐れられ、患者は迫害を受けたハンセン病ですが、今は感染力の極めて弱い病気だということが分かっており、第二次世界大戦後に有効な治療薬が普及し、1950 年代には国際らい学会などが患者隔離を否定する考えを発表しています。〕 パピヨンが戻ろうとすると、家の中から「誰だ?」と声がした。脱獄囚のパピヨンであることを伝えると、家の中に入るように言われ、もう引き返せない。

【パピヨン 第28段落】  病気のために姿が変形してしまった男達がテーブルについている。リーダー格の男トゥーサン(アンソニー・ザーブ)がパピヨンに話しかけるが、パピヨンはその顔を直視することができない。密輸で生計を立てている彼らは、本土でボートを盗む。それでこの島にやって来た者は、口止めのために殺すのが常だ。トゥーサンは自分が吸っている葉巻をパピヨンに勧めた。きっとこれが殺すかどうかを決める儀式なのだろう。葉巻を吸って感染しても死ぬし、断っても殺される。パピヨンは葉巻を吸った。リーダーの男は自分の病気は乾性なので感染する心配はないと言った。これでパピヨンたちはボートをゲットできた。翌日、ピジョン島を離れる時、トゥーサンは島民が貯めてきたお金をパピヨンに贈った。わざわざお金に消毒していると言う男の手を、パピヨンは感謝の気持ちで握った。

【パピヨン 第29段落】  ホンジュラス Honduras へ向かって意気揚々と船出したボートだが、途中嵐に遭遇。マストがルイの足の上に落ち、足の傷がもっと悪くなってしまう。大海の小船の中、足が腐り、衰弱していくルイ。夜、ルイを助けるため、海上の手術が行われる。パピヨンがルイの体を抑え、マチュレットが火であぶったナイフでルイの足の腐った部分を切り取る。強烈な痛みに耐えたルイに、パピヨンは体が冷えないように優しく布を掛けて抱きしめてやる。

【パピヨン 第30段落】   ホンジュラスの浜辺にやっと到着。しかし、浜辺で治安部隊に声を掛けられてしまう。せっかくここまで来たのに!歩くことができないルイを浜辺に残し、パピヨンとマチュレットはその場から逃げようとする。マチュレットは銃に当たって倒れるが、パピヨンはそのまま走り続ける。ちょうどその部隊に逮捕されていた南米人の男もこの機会に逃亡。この辺りの地理に詳しい彼が、パピヨンを導いてくれる。途中、疲労困憊のパピヨンに、スペイン語を話すその逃亡者は麻薬を食べさせて元気を取り戻させた。この地域では、原住民に逃亡者の捜索をさせている。とても原始的な彼らだが、狩猟の腕前は可也のもの。パピヨンの先達はジャングルに仕掛けられていた罠にかかって無残にも殺されてしまった。そしてパピヨンも吹き矢の餌食に。フラフラとなったパピヨンは、崖から川に転落!

【パピヨン 第31段落】   パピヨンが気がつくと、そこは海辺の集落。穏やかな時間が流れている。殆ど裸の村民と言葉は通じないが、パピヨンは客人としてもてなされ、村の美しい少女(ラトナ・アッサン)を世話係としてあてがってもらう。パピヨンはまさに楽園のような日々を過ごす。この村では真珠を取っていて、それを酋長(ヴィクター・ジョリイ)が商人と交渉をして物々交換している。ある日、酋長は胸の蝶の刺青と同じものを自分にも彫って欲しいとパピヨンに身振りで頼んだ。きっとパピヨンがこの集落に受け入れられたのは、蝶の刺青のせいだったのかもしれない。パピヨンは彫り師ではなかったが、必死に酋長の胸に蝶を彫り、見事な刺青を仕上げた。パピヨンはぐったり疲れて少女と共に家に戻った。

【パピヨン 第32段落】   翌朝、パピヨンが目覚めると、浜辺の集落には誰もいなかった。パピヨンは辺りを歩いてみるが、人っ子一人いない。家の屋根に小さな袋がぶら下げられている。パピヨンが袋の中のものを手に空けてみると、 7 粒の真珠が入っていた。

【パピヨン 第33段落】   乗り合いバスに乗ったパピヨン。ところが検閲がパピヨンの行く手を阻んだ。ここで見つかればあの地獄の刑務所に連れ戻される。ちょうどそこに修道女が、検閲のために停められたバスの乗客に、献金を募りにやって来た。パピヨンは彼女のコップに真珠を一粒入れると、修道女が乗ってきた幌馬車に座った。修道女はこの状況に理解を示し、パピヨンを教会へ連れて行くことにした。幌馬車は難なく検閲を通り過ぎた。・・・

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◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。
 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say !


【パピヨン 第34段落】   パピヨンは修道院長に面会し、匿ってくれるように頼む。院長が教会のものをパピヨンが盗むかもしれないと警戒すると、パピヨンは信頼を得るために、残りの真珠を全部院長に預けた。教会の一室で寝ているパピヨン。もしかしたらこれでやっと逃げおおせたかもしれない。院長がドアの外でパピヨンを呼ぶ。目覚めて急いでドアを開けたパピヨンは、治安部隊に取り押さえられた。パピヨンの罪はさっきの献金で償われたので恐れることはないと、修道院長はまことしやかにパピヨンに言った。…おいおい、それじゃぁ、あんたが泥棒じゃん。

【パピヨン 第35段落】   二度目の脱走の刑罰は 5 年の独房。 5 年の刑期が満了し、真っ白の髪をしたパピヨンがよたよたと独房のある棟から外へ出てきた。すると向かいの棟からも刑期満了者が担架に乗せられて出てきた。パピヨンが引きずるような足取りでその男の方に歩いていくと、マチュレットだった。若く美しかった 5 年前の姿は見る影もなくなっている。「パピ、出たぞ。」 マチュレットはそう言って咳を一つすると静かに息を引き取った。夕方、海に捨てられたマチュレットの遺体にサメが群がるのを、パピヨンは陸からじっと見ていた。

【パピヨン 第36段落】   パピヨンは刑期を終えたが、 8 年以上の刑を科されたので、フランスには帰れない。大海原に面し、潮風が吹きつける島の断崖の上にある空き家で暮らすように看守に勧められる。この辺りには、パピヨンのように生き残ることのできた数少ない元囚人の老人が暮らしている。そんな元囚人が作ったのだろうか、遥か海の向こうを見渡せる岸壁の上には石のベンチがあった。パピヨンはそこに腰掛け、遠くを見た。すると老人がやって来て、そこはキャプテン・ドレフェスの席だとパピヨンに怒鳴った。
老人: Who are you? (誰だ?)
パピヨン: Nobody.(名無しさ。)
老人: You know who I am.(オレも名無しさ。)
 老人は気がすんだようでどこかへ行った。

【パピヨン 第37段落】   メガネをかけた男が畑で野菜をとっている。ルイだ。パピヨンは喜んで声をかけるが、ルイはそそくさと逃げた。パピヨンが追いかけていくと、ルイは自分の家に入り、庭の豚にせわしなくエサをやり始めた。ルイはパピヨンに背中を向けたまま、「こんな所に来るな!」と怒った。でもすぐに二人はまた仲良くなる。パピヨンはルイの家でザリガニ料理を食べさせてもらった。ルイの妻は一緒に釈放運動をしていた弁護士とずっと以前に結婚していた。昔はいつか最愛の人に会えるという希望があり、相手も自分を想ってくれていた。今は希望もない上に、彼女も自分を忘れてしまった。

【パピヨン 第38段落】   希望や人生のときめきを失ったまま、残された時間を殆ど誰もいない自然環境の厳しいこの場所で自給自足しながら淡々と生きていかなければならない。オランダ映画『 マゴニア (2001) MAGONIA 』では、希望を失った人の精神は壊れてしまった。ここの住人は皆そうかもしれないが、ルイも少しおかしくなっている。パピヨンが脱走について話そうとしたとき、ルイは「出て行け!」と急に立ち上がり、彼にしか感じない幽霊を外の畑に追い立てに行った。パピヨンも脱走への思いに取り憑かれていた。具体的な策も無いのに、ルイに急に脱走の話をしに来たりする。希望を失うか、希望を持ち続けるか、パピヨンの心はその狭間で揺れていた。

【パピヨン 第39段落】  毎日、パピヨンは蹄〔ひづめ〕の形をした断崖の入り江に打ち付ける波を見続ける。ボートを出せないこの絶壁からどうすればこの海を渡っていけるだろうか。パピヨンは椰子の実をつめた袋に乗っていくことを思いついた。そんなものに乗って、波に漂いながら 40 キロ先の本土に行こうなんて、かなり無謀。しかも、パピヨンはもう若くない。しかし、パピヨンにとっては成功するかどうかなんて問題じゃなかった。パピヨンはルイの前で実験してみた。実験用の椰子の実を入れた袋は岸壁に打ち付けられて無残にもバラバラになった。

【パピヨン 第40段落】  それでもパピヨンは断崖に打ち付ける波を見続け、 7 回に 1 度来る波は大きいという法則を知る。この波に乗れば、ルイと一緒に島を出ることができる! パピヨンは椰子の実の入った袋を二つ用意し、ルイを誘いに行った。ルイは断崖までパピヨンと一緒にやって来たが、それ以上は断った。きっと死ぬことになるから、やめて欲しいとパピヨンに頼むルイ。パピヨンの決意は固い、というか、行くことが彼の性なのだ。パピヨンとルイはしっかりと抱き合う。パピヨンは先に椰子の実の袋を海に投げ込むと、続いて自分も飛び込んだ。普通の人なら死んでしまう高さの絶壁だと思うけど、パピヨンは墜落死することなく、無事に椰子の実の袋まで泳いだ。ルイは、袋に乗って沖に出て行くパピヨンを嬉しそうに眺めると、くるりと振り返って自分の家へと戻っていった。

【パピヨン 第41段落】  “ Hey you bastards, I'm still here. (バカ野郎、オレは生きてるぜ。)”パピヨンは波に流されていく。

【パピヨン 第42段落】  ギアナの刑罰制度はまもなく廃止されたそうだ。
〔 1946 年にフランス政府は囚人移送を廃止したそうです。〕

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■映画『 パピヨン (1973) PAPILLON 』の感想

【パピヨン 感想 第01段落】  子供の頃、『 大脱走 (1963) THE GREAT ESCAPE 』のスティーヴ・マックィーンを観て、なんだかおサルさんみたいだと思い、母の美的感覚を疑っていた。ところが、少し大人になった頃、TVの深夜放送でこの作品『 パピヨン (1973) PAPILLON 』に遭遇し、大感激。海に漂うスティーヴ・マックィーンに涙した。そしてなんてカッコイイ人だろうと彼の魅力を認識した。

【パピヨン 感想 第02段落】  その時、Never-Give-Up なパピヨンの生き方に心底感動したものだが、今回この映画に再度出会った感動は少し違う。人生は“シーシュポスの神話 le Mythe de Sisyphe”。無益で希望のない不条理の世界そのものだ。本質的には、島を離れたパピヨンと島に留まったルイに違いがないような気がする。パピヨンが求めた世界に住む人々の生活はオブラートに包まれているだけで、その本質はルイが留まった孤独な世界と変わりがない。まるで僻地に住む修道士のようなルイの生活は、本質と向き合わなければならないもの。だから島での生活は過酷だ。『 マゴニア (2001) MAGONIA 』的な映画なら、パピヨンは海で死んでしまうだろうが、この映画は実話なので、事実に基づきパピヨンは生きて本土に辿り着く。パピヨンの希望は達成するが、生き続ける限り新たな希望が彼を悩ますだろう。そしてその希望とは一体何なんだろう。

【パピヨン 感想 第03段落】  今度またこの映画『 パピヨン (1973) PAPILLON 』を観た時、また別の感動を感じることができるだろうか。ちょっと楽しみだ。

以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず12327文字/文責:幸田幸

参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集
       http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
      Yahoo! Movies
      The Free Dictionary.com
■映画『 パピヨン (1973) PAPILLON 』の更新記録
2004/11/07新規: ファイル作成
2004/11/11更新:◆解説とネタばれおよび俳優についてリンク
2004/12/05更新:◆新型ファイルに変更
2005/03/18更新:◆一部追記
2005/05/04更新: ◆データ追加
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幸田 幸
coda_sati@hotmail.com
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