ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 | |
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映画の森てんこ森■映画レヴュー | |
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 (1997) | |
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 |
黄飛鴻之西域雄獅 / ONCE UPON A TIME IN CHINA
& AMERICA 【解説】 映画『 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 (1997) 黄飛鴻之西域雄獅 / ONCE UPON A TIME IN CHINA & AMERICA 』の中国語題「黄飛鴻之西域雄獅」は、いかにも雄大なアメリカ西部の雰囲気が出ているでしょう。『 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 』は、私のお気に入りの一人ジェット・リーのハリウッド・デビューとなる 1998 年の「リーサル・ウェポン4」の一年前の作品。そしてハリウッド映画初の主役となる 2000 年の「ロミオ・マスト・ダイ」より三作前の、割合と最近の香港の時代劇映画だ。 『 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 』は、 19 世紀半ばに実在した武術家「黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)」を描く「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズの第6弾。ツイ・ハーク製作、サモ・ハン・キンポー監督。この「ワンス・アポン…」シリーズ、因みにマニア間では略して「ワンチャイ」と呼ぶ。第3弾までと、この第6弾『 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 』がジェット・リー出演で、その他は別の俳優で違う味なので、ご覧になるときは<もっと詳しく>を読まれてから、ご注意下さい。このレヴューは、ジェット・リーの「ワンチャイ」第1弾から第3弾までと、この第6弾『 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 』をまとめる意味で書かせてもらっています。 |
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。 | |
■ジェット・リーの『 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲
』のデータ 上映時間 99分 製作国 香港 公開情報 ヘラルド 初公開年月 1999/02 ジャンル アクション |
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【スタッフとキャスト】 監督: サモ・ハン・キンポー 洪金寶 Sammo Hung Kam-Bo 第二組監督:ラウ・カーウィン 劉家榮 Lau Kar Wing 製作: ツイ・ハーク 徐克 Tsui Hark 脚本: ロイ・ツェト Roy Szeto ソー・マンシン So Man Sing フィリップ・クオック Philip Kwok ツェ・メイイー Sze Mei Yee シャロン・ホイ Sharon Hui 撮影: ウォルター・グレッグ Walter Gregg 音楽: ローウェル・ロー 盧冠廷 Lowaell Lo 出演: ジェット・リー 李連杰 Jet Li as 黄飛鴻 ウォン・フェイフォン ロザマンド・クワン 關之琳 Rosamund Kwan as 十三姨 イー ション・シンシン 熊欣欣 Xiong Xin-Xin as 鬼脚七/阿七 チャト/アチー ジェフ・ウルフ Jeff Wolfe as ビリー・ザ・キッド リチャード・ン 呉耀漢 Richard Ng as ハン チャン・クオックポン Chan Kwok Pong Wolfe as ソー チルスタ・ベル・ユクト Chyrsta Bell Eucht as インディアン妻セーラ ジョセフ・セイヤー Joseph Sayah as ならず者のボス |
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ネタばれ御注意! このレヴューは「テキストによる映画の再現」を目指して作文しています。よって、ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。 |
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<もっと詳しく> 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第01段落】 監督のサモ・ハン・キンポーは漢字では「洪金寶」と書くので、発音に対して文字が足りないなぁと思ったら、笑ってしまった。なんと、サモは「三毛」と書き、誕生時に毛が三本生えていたのであだ名になったそうだ。全部書けば、三毛洪金寶と書くわけか。この人は香港出身で、ジャッキー・チェンやユン・ピョウと同じ中国戯劇学院という京劇の学校に入学、その後は主に俳優として 80 本もの映画に出演しているツワモノだ。俳優と並行して製作、監督、脚本までしている。この名実ともに映画人がこの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲」を監督しているので、中国的映画に不慣れな方でも、観たら結構楽しめると思う。原題は「黄飛鴻之西域雄獅」と書く。私は中国語も何となく好きなので、この漢字の題を見ただけでも、雰囲気が伝わっていいなぁと思う。 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第02段落】 製作のツイ・ハークは漢字で「徐克」と書き、中国系映画を注意深く観ていたらよく字幕で目にする名前だ。なにしろ「香港のスピルバーグ」と呼ばれる映画界の実力者で、 60 本近い作品を手掛けている。主に監督と製作業が多いが、監督・プロデュース・脚本・原案・出演、と非常に幅広くこなせる人物だ。ヴェトナムのサイゴン生まれで、 15 歳で香港に移住、 18 歳でアメリカの大学に留学してTV・映画を専攻、ニューヨークで新聞やTV関係の仕事、 26 歳で香港に帰国、 27 歳で香港映画界にデビュー。まさに世界を股にかける動き、道理でスケールが大きいわけだ。私の好きな「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」シリーズや「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズは彼の手による。また、香港のアクション映画につきもののワイヤー・アクションはツイ・ハークが編み出したものだそうだ。 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第03段落】 さて、主演のジェット・リー: 『 少林寺 (1982) THE SHAOLIN TEMPLE 』 『少林寺2 (1983) SHAOLIN TEMPLE 2 』 『 阿羅漢(あらはん) (1986) MARTIAL ARTS OF SHAOLIN 』 『 ラスト・ヒーロー・イン・チャイナ/烈火風雲 (1993) THE LAST HERO IN CHINA 』 『 マスター・オブ・リアル・カンフー/大地無限 (1993) 太極張三豊 (原題) / THE TAI-CHI MASTER (英題) 』 『 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 (1997) ONCE UPON A TIME IN CHINA & AMERICA 』 『 リーサル・ウェポン4 (1998) LETHAL WEAPON 4 』 『 ロミオ・マスト・ダイ (2000) ROMEO MUST DIE 』 『 キス・オブ・ザ・ドラゴン (2001) KISS OF THE DRAGON 』 『 ザ・ワン (2001) THE ONE 』 『 HERO (2002) HERO (英題) / 英雄 (原題) 』 『 ブラック・ダイヤモンド (2003) CRADLE 2 THE GRAVE 』 『 ダニー・ザ・ドッグ (2005) UNLEASHED / DANNY THE DOG 』 『 SPIRIT (2006) 霍元甲 (原題) / FEARLESS (英題) 』等。 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第04段落】 私のジェット・リーの他の映画のレヴューと重なりますが、敢えて説明させて下さい。)瀋陽という町の生まれだが幼少のとき北京に。中国名は李連杰(リー・リンチェイ)、8才から北京業余体育学校で中国武術を学び、すぐ頭角を現し、 11 才で中国全国武術大会(少年の部)で総合優勝。 12 歳、14 歳、15 歳、16 歳と中国全国武術大会で(子供なのに大人の部で!)連続優勝。間の 13 歳の時はご褒美に演舞を披露する海外遠征に出ていって、アメリカではホワイトハウスのニクソン大統領の目の前で武術のお披露目をしたことは有名。華麗で力強い演舞の丸坊主のリンチェイ少年に「大人になったら私のボディガードをしてもらおうかな」と大統領がご機嫌で言うと、「僕は中国の人民を守ります」と応えて、周りの者は真っ青になったという逸話がある。なにせ米国・中国がまだ国交が冷たい時分だ。リンチェイはアイスクリームや食べ物が豊富にあるアメリカに、この頃から憧れたのではなかろうか。今はハリウッドに進出成功、南カリフォルニアに豪邸を構えている。 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第05段落】 17 歳で既に武術のコーチになっていたこの武術天才少年は、18 才の時、"中国武術を紹介するために"と請われて「少林寺」に出演、 1982 年輝かしい映画デビューを果たす。強くて可愛いこのリンチェイ少年、いまだに日本の興行収入のアジア映画の歴代1位の記録を持つ大ヒットだ。そして「少林寺」三部作に成功。しかし、その後、暫く低迷期が続く。こんな時、運命の女神が引き合せてくれたのがツイ・ハークだ。香港の、いや東洋のスピルバーグは、スランプのリー・リンチェイを自分の監督・製作の中国の伝説的英雄作品の主演に抜擢し、大成功を収める。これが「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」だ。この大成功がなかったら今のジェット・リーは存在しなかっただろう。 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第06段落】 1991 年「黄飛鴻(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ天地黎明)」、 1992 年「黄飛鴻之二男兒當自強(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナII天地大乱)」、 1993 年「黄飛鴻之三獅王爭霸(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナIII天地争霸)」。各、前の漢字は原題、()内が邦題。この内、「ワンチャイ」シリーズで日本で全国ロードショー公開されたのは「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナII天地大乱」だ。こうしてリー・リンチェイは人気を不動のものにした。しかし、リンチェイとツイ・ハーク監督は三作目で契約面(当然、金銭面?だと憶測)で喧嘩別れになり、これ以降の「ワンチャイ」は、主人公は別の俳優となる。それから数年後の 1997 年、この人気シリーズ第6弾「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲」が、無事リンチェイとツイ・ハークは仲直りをしたらしく製作される運びとなった。 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第07段落】 主人公の名前は「黄飛鴻」と書き、ウォン・フェイフォンと発音する、 19 世紀半ばの実在の人物だ。父、黄麒英は虎のように強い武術の達人「広東十虎」の一人で、武芸に秀でて将軍の兵の教練もし、並行して薬局「寶芝林(ポ・チ・ラムと発音)」を開き、息子の黄飛鴻が 16 歳のとき亡くなる。黄飛鴻は幼い頃から父親に武術を教えられ、 12 歳で家伝の功夫(クンフー)の全てを修得した。更に修行を積んで、無影脚・十字拳・子母刀・羅漢袍・鉄線拳・単双虎爪・工字伏虎拳・四象標龍棍・瑶家大耙などを修めたそうだ。黄飛鴻は獅子舞の名手で、「獅王」とも呼ばれた。黄飛鴻のあまりに速い蹴りのテクニックは「無影脚」と呼ばれ、「ワンチャイ」シリーズでもリー・リンチェイは「佛山無影脚」と「南派少林十字拳」を特によく見せてくれる。 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第08段落】 黄飛鴻は医局「寶芝林」を亡き父から継いで、「薬店」兼「病院」兼「武館」として機能させた。映画でも、リー・リンチェイは普段はお医者さん、そして同時に武術家なのだ。「寶芝林」という言葉の由来は、革命家の夏重民の漢詩「宝剣出筺 芝草成林」で、「宝剣筺を出ずれば、芝草林に成る」=「宝剣を抜くところ芝草(=霊芝)が林となる」=「英雄のいるところは必ず栄える」いう意味だそうだ。この文句は「寶芝林」店の看板として書かれ、また、店内に黄飛鴻の肖像画を挟んで左右に掲げられていたそうだ。黄飛鴻の奥さんと弟子達は黄飛鴻直伝の「洪家拳」を継ぎ、武館と医院を続け、香港には「黄飛鴻武館」が設立されているという。 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第09段落】 こういう「寶芝林」とは何なのかを知っていないと、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲」を初めて観たらわかり難いと思うので、先に「ワンチャイ」第1弾〜第3弾(せめて第2弾だけでも)をご覧になることをお勧めします。先ず、黄飛鴻のリー・リンチェイ率いる一団が海岸で功夫(クンフー)の訓練をしているオープニング。デリケートな映画だけがお好みの方には、的外れでしょうが…。こういう力強く男らしいシーンは最高!そして映画の黄飛鴻にはテーマ・ミュージックがあるのだ。「男兒當自強」といい「ナム・アル・ダン・ズー・チァン」と普通話(広東語でなく北京等で話される中国語)で発音、「ワンチャイ」シリーズで、リンチェイの黄飛鴻が登場するとき流れるBGMだ。笛と太鼓と中国語の歌詞で流れるこの主題歌は、ハマッたらクセになる。 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第10段落】 これが中国圏で皆ハマッているらしい証拠に、 1997 年の香港の中国返還の記念式典では、ゲストのジェット・リーはこの曲をBGMに登場したくらいだから。あぁ、見たかった…。アヘン戦争中の 1841 年の領有宣言から 156 年間にわたって英国の植民地だった香港は 1997 年7月1日午前0時、中国に返還された。香港島の湾仔(この地名は本当にワンチャイと発音します)で開催された中・英両国主催の返還式典には、中国側から江沢民・中国国家主席、李鵬首相、香港特別行政区の初代行政長官・董建華氏、故・トウ小平氏夫人・卓琳さんらが、また英国側からはチャールズ皇太子、ブレア首相、パッテン総督らが出席。このほか、オルブライト米国務長官ら 40 以上の国・地域の四千人もの代表、来賓らの前で、我らがジェット・リーは「男兒當自強」をバックに武術を披露したのだから、スゴイ!本物! 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第11段落】 「ワンチャイ」シリーズは、英米の列強に押されてきた動乱の時代の清の時代の中国が舞台。黄飛鴻のリー・リンチェイは頭の前半分は剃り上げて、後ろの髪を弁髪にして、明らかに私たちから見たら変な髪形だが、ちゃんと似合っている。さすが、劇中の人物になりきっているのだ。服装は靴までの長さの長い服、いわゆる「古装片」。戦う時その裾をサッと片手でさばくのは、日本の時代劇の侍と同じで、結構、粋だ。 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第12段落】 共演のロザマンド・クワン(漢字で關之琳:『 ハッピー・フューネラル (2001) BIG SHOT'S FUNERAL / THE FUNERAL OF THE FAMOUS STAR / 大腕 (原題) 』等)は目の大きいはっきりした顔立ちの香港の女優さん。役柄は十三姨(イー)という、黄飛鴻と血が繋がっていないのに?黄飛鴻の叔母という設定の美人。西洋から帰国して、服も洋装で、黄飛鴻と同じくらいの年齢で、黄飛鴻が大好きという役。くそ真面目の黄飛鴻と、この十三姨は好き合っているらしいのになかなか恋愛関係に進めない。黄飛鴻がアクションで真剣に戦う場面と、この十三姨をめぐるコミカルな場面が絡まってますます娯楽作品に仕上がっているのだ。 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第13段落】 それに、欠かせないのが、黄飛鴻の弟子の役だろう。一番弟子の梁寛(フー)役は、第1作が元彪(ユン・ピョウ)、第2作・第3作が莫少聰(モク・シウチョン)で、真面目な黄飛鴻について滑稽な味を加えている。それに第6作が、香港映画界のアクション演出家・トップ殺陣師でもある熊欣欣(ション・シンシン)の出演だ。熊欣欣は漢字だけでも覚えやすい特徴のある芸名だ。彼の役柄は、西安門の人力車夫頭の鬼脚七(チャト)、あだ名は阿七(アチー)という足技が得意の黄飛鴻の弟子。熊欣欣は功夫(クンフー)がリー・リンチェイに匹敵するほどの実力で、リー・リンチェイのスタントの影武者も務めているという。同じ弁髪だと、そう言えば二人は似ていて、遠くから見たらあまり区別がつかないだろう。 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第14段落】 第6作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲」は、このような背景を知ってから観てほしい。このオープニングは、赤茶けたアメリカ西部でビリー・ザ・キッド(ジェフ・ウルフ)が野垂れ死にそうになるところから。そこに赤土を蹴散らして馬車が行く。BGMは例の「男兒當自強」のインディアン・バージョンだ。馬車には黄飛鴻と婚約者の十三姨と弟子の鬼脚七などが乗っている。「寶芝林」のアメリカ支部開局1周年の記念に、弟子の医師ソーに招かれて中国から旅に来ているのだ。馬車では、洋行体験豊かな十三姨に片言の英語を教えてもらう黄飛鴻。途中で、荒野で焦燥していたビリーを乗せてあげる。 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第15段落】 そんな平和な馬車旅行はインディアンの襲撃でぶち壊され、川に転落して、黄飛鴻だけ頭を岩にぶつけて意識をなくし流されてしまう。十三姨と鬼脚七は近くの中国人に救出され、無事にソー医師(チャン・クオックポン)と再会できた。その頃アメリカは西部開拓時代で、鉄道建設や鉱山の労働力として中国人が大勢アメリカに渡って働いていたのだ。だから、「寶芝林 PO CHI LAM 」の支部をアメリカにも創ろうとしていたのだろう。 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第16段落】 一方、川に流された黄飛鴻を助けてくれたのが、善良な種族のインディアン。頭に羽をつけ、顔にペインティングを施し、インディアンの服を着た黄飛鴻。襲来した凶悪な種族のインディアンを無意識に体から出たクンフーでやっつけ、また、一族の怪我や病気を治してあげて気に入られ、酋長の娘をパートナーにしてもらって優遇される。しかし、そのクンフーや医術がなぜできるのか、記憶を喪失した黄飛鴻は自分でもわからない。婚約者の十三姨は似顔絵を町中に貼ったり、カウボーイハットを被って馬に乗って捜しに来たりして、コミカルな行き違いがあった末、黄飛鴻は「寶芝林」支部に戻れた。 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第17段落】 しかし記憶喪失のままの黄飛鴻は婚約者も弟子もわからない。弟子の鬼脚七は黄飛鴻にわざと戦いを挑む。何もわからない黄飛鴻は本気で蹴ってくるから、鬼脚七は服の中に詰め物をしてクッションにするが、グタグタに蹴られる。そんな時、貯水樽の大量の水がほとばしり出て、そのお蔭で川に流された時の状況を思い出し、遂に黄飛鴻は正気に戻った。この二人の戦いの場面はこの映画でも最高の本格的格闘シーンだ。なぜなら二人とも本物の武芸家だから。スローモーションもしないし、カット割の撮影方法もしないし、全身を本当にそのまま撮影しているから迫力が違う。こういう本物の功夫(クンフー)を観られるのは一番嬉しい。 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第18段落】 インディアン「妻」のセーラ(チルスタ・ベル・ユクト)との黄飛鴻の絡みは面白い。黄飛鴻をイエローと呼ぶインディアン娘は、インディアン村で黄飛鴻と夫婦のように暮らし、黄飛鴻の記憶が戻ってからは諦めるように兄弟に諭されるが、その後、顔を会わす度に名残惜しそうな表情を見せる。黄飛鴻は「全然覚えがない」と婚約者の十三姨には言うが、本当は覚えているらしく、ニヤッという顔をする。リンチェイの黄飛鴻は役柄、生真面目な人物なのであまり笑わないから、笑う時はこちらもニヤッ。 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第19段落】 この後は、一人の中国人の裏切りで銀行強盗の罪を中国人たちが濡れ衣を着せられ、絞首刑にされそうになる話。機転を利かせた一人のお蔭で黄飛鴻は絞首台から脱出して仲間も救い、真犯人と戦う。ビリー・ザ・キッドも中国人側について一緒に戦う。悪党のボス(ジョセフ・セイヤー)とは黄飛鴻は最後は一騎討ち。相手は拳銃だが、黄飛鴻は蹴りが勝負。ここに有名な速い蹴り「無影脚」が幅を利かす。銃弾より速く、そして蹴った脚が地面に戻る前に片方の脚で敵を蹴っているという信じられない動き。例の長い服の裾を払って、じっと相手を見据える「虎」のように鋭い眼差しから次の瞬間に飛び出すアクション。一流れの動作が中止すると、相手は血みどろでくたくたなのに、黄飛鴻は涼しい顔で、片手をスッと差し出した何とも言えず美しい有名な構えのポーズ。大変見応えがある。 ◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say ! 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第20段落】 最後は、無事にならず者一味を打倒して中国人の潔白を証明、アメリカ西部の町の一角に「唐人街チャイナ・タウン」の建設を許され、めでたしめでたし。ビリーは保安官に。「寶芝林」も盛況に。「男兒當自強」の生演奏をバックに獅子舞を披露する黄飛鴻と鬼脚七たち。(獅子舞は「阿羅漢」の方が見せ場が多い。)馬車で帰国の途に就く黄飛鴻と十三姨が目にしたのは、中国から「赴任」し、「一日十人までよ」とか言っている、派手にお化粧した一人の「花嫁」(と、黄飛鴻は十三姨に笑いながら説明する)。ここでまた「男兒當自強」のインディアン・バージョン…。 【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲 第21段落】 因みに、 2000 年のジャッキー・チェン主演のアクション西部劇「シャンハイ・ヌーン」はこの 1997 年の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲」に非常に物語が似ている。アメリカに渡る話と言うと、どうしても似てしまうのか?でもアクションはこのジェット・リーの本格クンフーの方が遥かにスゴイ。また、同じジェット・リー作品でも、最近のカット割の撮影やワイヤー・アクションよりも、全身の動きをそのまま映す「古装片」ものの方が、私はずっと気に入っていますが、皆さんは如何? 以上。 <もっと詳しく>からスペースを含まず7701文字/文責:幸田幸 参考資料: 黄飛鴻生平事跡と銀幕上の傳説 http://www.ne.jp/asahi/sinology/lib/private/other/HuangFeihong/hfh01.html 黄飛鴻の紹介 http://www2u.biglobe.ne.jp/~feifon/feihung.html ワンチャイ資料室 http://www.eurus.dti.ne.jp/~nemoto/pages/Others/pochilum.htm the Official Jet Li Japan http://www.jetli.com/ この10年 http://www.yomiuri.co.jp/yomidas/konojune/97/97nw2.htm 「男兒當自強」の曲のサイト http://www.in106.com/win/15.htm 「男兒當自強」の歌唱のサイト http://www.june4.org.hk/m_m/ra/cd2.ram |
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(■解説とネタバレ:2002/08/25アップ ◆俳優についてリンク更新:2003/10/04) ■リンク一部更新:2004/11/30 2005/11/22更新: ◆データ追加 2006/03/15更新: ◆データ追加 |
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