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【目次 index 】 □映画『約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語 (2009) THE VINTNER'S LUCK』情報 □映画『約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語 (2009) THE VINTNER'S LUCK』予告編 □★LINK □【cast】ソブラン・ジョドー/ジェレミー・レニエ Jeremie RENIER □★天使ザス/ギャスパー・ウリエル Gaspard ULLIEL □★オーロラ/ヴェラ・ファーミガ Vera FARMIGA □★セレスト/ケイシャ・キャッスル=ヒューズ Keisha CASTLE-HUGHES □★ニキ・カーロ Niki Caro □★撮影監督 ドゥニ・ルノワール □【wine】 □映画『約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語 (2009) THE VINTNER'S LUCK』画像 |
映画『約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語
(2009) THE VINTNER'S LUCK』
■映画情報
□メディア:映画
□上映時間:126分
□製作国:フランス/ニュージーランド
□公開情報:劇場公開(東北新社)
□初公開年月:2010/10/23
□ジャンル:ドラマ/ロマンス
□映倫:PG12
□キャッチコピー:19世紀 ブルゴーニュ、そこは天使が舞い降りる丘。
□解説:「クジラの島の少女」の女性監督ニキ・カーロが人生をワイン造りになぞらえた芳醇な愛の物語を織り上げる。→もっと詳しく・・・
□オフィシャル・サイト
http://www.yakusoku-wine.com/
□オフィシャル・サイト
http://www.thevintnersluck.com/ (英語)
(C)2009Ascension Film Kortex Acajou Films
【cast】
ソブラン・ジョドー/ジェレミー・レニエ Jeremie
RENIER
1981年1月6日ベルギーのブリュッセルに生まれる。
幼い頃からスペクタクルの世界にあこがれを抱いていた彼は、少年時代から演技とパントマイムを学び、学校の休みの間を利用してサーカスの学校にも参加していたという。いくつかのテレビ映画に子役として出演したのち、14歳のとき、いまやベルギーを代表する映画監督コンビとなった、ダルデンヌ兄弟の処女作『イゴールの約束』の主人公イゴール役に抜擢され、外国人不法労働者を斡旋する父親のもとでその手助けをする少年を演じてきわめて強い印象を残す。
これをきっかけにして、’99年にはフランソワ・オゾン監督の『クリミナル・ラヴァーズ』の主人公に抜擢され、また’01年にはフランスの歴史大作『ジェヴォーダンの獣』にトマ・ダプシェ侯爵役で出演と、またたく間にベルギーを代表する若手俳優のひとりに成長。そして’05年、再びダルデンヌ兄弟と組んでカンヌ映画祭のパルム・ドールを獲得した『ある子供』で、栄えあるヨーロッパ映画賞の男優賞にノミネート。惜しくも賞は逃したが、その演技は誰もが認めるところとなった。
その後も、ダルデンヌ兄弟の『ロルナの祈り』(’08年)、オリヴィエ・アサイヤスの『夏時間の庭』(’08年)などに出演と、ヨーロッパを股にかけ、今後も熱い活躍が期待される。’06年、すぐれた俳優に贈られるジャン・ギャバン賞を受賞。
なお、フランス語圏の作品への出演が主だが、英語劇で主人公を務めたのは今回が初めてであり、その流暢な台詞まわしも注目される。
【interview】
ソブラン役について
ワインの物語は彼の人生そのものです。彼は多くのことを望みます。美味なワインを作ること、セレストを手に入れることーー。でもそれは簡単なことではありませんでした。
ソブランの3つの愛、セレスト、オーロラ、ザスについて
妻への愛と、天使への愛は違ったものです。セレストへの愛は情熱的で性的なもの、オーロラへの愛は知的で自信に溢れたもの、天使への愛は彼自身の生を感じる内面のものです。男性にとって3つの愛を手に入れるなんてすごいことだよね。簡単なことではないけれど。
役柄へのとりくみ、言語習得について
この映画の準備を始めたとき、僕は全く英語を話さないので、言葉について不安に思っていた。全てを理解するのは難しかったけれど、とにかく英語を学びました。それから5ヶ月は、できるだけ英語で会話するようにしています。
身体的トレーニングについて
3週間のリハーサル、そして振り付けを習った。それを見ていたスタッフが『ロック映画を作るみたいだね』と言ってくることもありました。僕と天使の動きを振り付け、動きとそれに対する反応を練習しました。
天使の存在について
僕は天使の存在は信じていない。何も信じていないから(笑)。子供の頃は信じていることもあったと思うけれど、「後ろに何かいるよ」と言われたり、母親に「あなたの隣に天使がいるわよ」と言われたこともありました。
ニキとの仕事
ニキとの仕事はファンタスティックだった。映画を撮影するまでに時間がたっぷりあったから、脚本をしっかり読んだり、ギャスパーとリハーサルしたりすることができた。僕にとって、役作りの準備時間はとても大切です。役者としては、長い時間リハーサルができるのは、キャラクターがどんな方向に進むのかを理解する鍵になるので、とても大事なんです。
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★天使ザス/ギャスパー・ウリエル Gaspard
ULLIEL
1984年11月25日フランス・パリ西部近郊のブローニュ=ビヤンクールに生まれる。
12歳のとき、母親の友人がキャスティング・エージェンシーに勤めていたことから、テレビのミニ・シリーズに出演したのをきっかけに俳優の道に進む。しばらくはテレビ・ドラマへの出演が主だったが、’01年にはクリストフ・ガンズ監督の『ジェヴォーダンの獣』に出演、さらに’02年、ミシェル・ブラン監督、シャーロット・ランプリング主演の『キスはご自由に』(フランス映画祭にて上映。出演者にはメラニー・ローランも)でロイック役を演じてセザール賞の有望若手男優賞にノミネート。さらにその翌年、アンドレ・テシネ作品『かげろう』で主人公イヴァン役を演じて再びセザール賞有望若手男優賞候補となり、その翌年のジャン=ピエール・ジュネ作品『ロング・エンゲージメント』で同賞を受賞と、早くからその演技の上手さが評価される。
また、’06年には『パリ、ジュテーム』中のガス・ヴァン・サント編で清冽な演技を見せ、’07年にはピーター・ウェバー監督がトマス・ハリスの世界に挑んだサイコ・サスペンス『ハンニバル・ライジング』でハンニバル・レクター役を演じるなど、いまや世界が注目する若手俳優として活躍中。
【interview】
ザスについて
僕はザスという天使を演じました。物語のなかの比喩を演じるのはいい経験でした。天使はソブランを人生の違う意味や感情を呼び起こす旅に連れ出します。この役は人間とはちょっと違うので、異なった動きや感情を演じるのはとても勉強になりました。
天使を演じることに関して
この天使は新しい生き方を学んでいる最中で、新しい感情の置き場を学んでいるところ。新しい世界や人間関係を築いているところで、できるだけシンプルに子供のように演じることを心掛けていました。これはとても実験的だと思うんだけど、天使はソブランとの出会いのたびに強い感情を持つようになって行って、物語が進むに連れて彼はどんどん感情を現すようになって行きます。最初はとてもシャイで閉じた人物だけど、だんだんとソブランや人間界の生活にオープンになって行くのです。
物語の中でのザスの役割
人生経験はワインの味のようだということを経験していく。ワインを造っている人が彼に愛を与え、彼自身もワインの味に貢献しています。映画のテーマは人生を生きる上で、悪いことも受け入れて行くという知恵を描いています。
ジェレミーとの共演
一緒に映画に出演することをいつも話し合っていました。僕らは同い年だし、最後にすごくいい関係になるから。彼がソブラン役を演じると聞いたときはすごく驚いたよ。いつかジェレミーと撮影現場で会いたいと思っていたけれど、この映画のキャストのほとんどはフランス人ではないからちょっと変な気分だった。英語によるプロジェクトなので、この映画でジェレミーと共演するのはちょっと驚きました。
翼を初めて見たとき
カンボジアでの撮影を終えてまっすぐニュージーランドへ飛びました。初めてニュージーランドに行き、初めてニキに会いました。3日間という短い滞在だったけれど、そのときに初めて翼を見ました。ニキから翼の映像は見せてもらっていたけれど、初めて本物の翼を見たときは感動したよ。強く美しく、大きい翼だった。そのときはまだ羽根はついていなくて骨組みだけだった。だいたい1時間くらい試着して羽根を広げたり動いてみたりした。ちょっと動きが怖かったけれど、そんなに難しくないなと思った。だけど撮影初日に1時間羽根を着けただけで、重さに参ってしまいました。
空中での訓練
練習のほとんどは、屋根裏での空中撮影のためでした。スタッフとともに2週間1日3時間以上練習しました。空中を飛ぶのは好きではなかったけれど、おもしろかったし、いい挑戦にもなりました。
ニキとの仕事
ニキはいつもシーンやキャラクターに対してはっきりとしたアイディアを持っていました。そして彼女はどうやって撮影するか、編集についてさえも全て頭の中にあって、とても助けになりました。
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★オーロラ/ヴェラ・ファーミガ Vera FARMIGA
1973年8月6日アメリカ・ニュージャージー州に生まれる。
ウクライナ系移民の一家に生まれ、6歳の頃まで英語がしゃべれなかったという。少女時代は医者になることを夢見ていたが、やがて俳優を目指してシラキューズ大学でパフォーミング・アーツを学ぶ。卒業後はオフ・ブロードウェイの舞台に立つようになりキャリアを重ね、’98年、『リターン・トゥ・パラダイス』でスクリーン・デビューを果たす。2000年にはジョアン・チェン監督の『オータム・イン・ニューヨーク』、’01年にはジョン・ハーツフェルド監督の『15ミニッツ』とさまざまな映画に顔を見せるようになり、’04年、初めての主演作『Down
to the Bone』でその演技が認められ、サンダンス映画祭で審査員特別賞を受けたほか、ロサンゼルス映画批評家賞の主演女優賞を受賞。さらに’06年にはマーティン・スコセッシ監督のアカデミー賞受賞作『ディパーテッド』のヒロインに抜擢され、大きな話題を呼ぶ。また、’09年には、ジョージ・クルーニーと共演した『マイレージ、マイライフ』でアカデミー賞の助演女優賞にノミネートされるなど、充実した活躍が続く。
【interview】
オーロラについて
オーロラは死んだ叔父からフランスのワイナリーを相続しています。オーロラは知的で全ての行動に意味があり、感情で動くことが少ない合理的な考えの持ち主です。最初にソブランに会った時にも、ワイン醸造業は合理的なビジネスではないと考えていました。
役作りについて
オーロラの役作りは、彼女は葡萄であるという比喩から入りました。アイディアやコンセプトが種で、彼女はこの新しい世界に植えられた状態です。だけど何かが彼女をワイン作りから遠ざけていて、それは癌という病気でした。その行程によって、彼女は感情を持つことを学んで行くのです。
脚本について
普通じゃないし、この脚本は完璧にユニークなものでした。脚本を読んだときに感じたのは純粋さとエロティックさ、神聖と冒涜、天国と地獄、ファンタジーとリアリティのような相反するものが同居していると思いました。
衣装について
衣装について賢く説明することはできないけれど、彼女の大胆さ、上品さ、哲学が前面に出ているような衣装だと思いました。最初に時代設定に合ったものを用意して、それを真逆にするようなアプローチをしました。帽子を逆に被ってみたり。歴史的には違うかもしれないけれど、オーロラのファッションに対する考えが現れているようでした。
ニキについて
ニキはすごいわ。ニキとの仕事はいい経験になりました。彼女はリアリズムにとても強く結びついていて、新しいビジョンを生み出すことができる。彼女がやること全てに信憑性と真実がありました。彼女は大きな影響力と役者に対する尊敬があって、監督としての最も大きな資質は演じる場の空気を作ることができることだと思います。私達役者に演じる自由を与え、深く大胆に演じることができました。彼女はいつもカメラの下にいて、モニターを見ていることはなかった。彼女はいつでも私達の3人目の共演者としてすぐ近くにいてくれました。
★セレスト/ケイシャ・キャッスル=ヒューズ Keisha
CASTLE-HUGHES
1990年3月24日オーストラリア西部のドニーブルックに生まれる。4歳のときにニュージーランドに移り、育つ。
11歳のとき、ニキ・カーロ監督の長編第2作『クジラの島の少女』の主役探しのために小学校を訪れていたキャスティング・ディレクターの目に留まり、同作のヒロイン、パイケア役で幸運な映画デビューを果たす。その演技は鮮烈な驚きを呼び、アカデミー賞主演女優賞に最年少でノミネートされることとなり、またニュージーランドでもっとも権威のあるニュージーランド映画賞の主演女優賞を獲得。世界中の話題をさらった少女は、ジョージ・ルーカス監督の『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(’05年)にクイーン・アパイラナ役で出演。小さな役ではあったが、彼女の将来性をうかがわせることとなった。続いて’06年にキャサリン・ハードウィック監督の『マリア』でも主人公の若き聖母マリアを演じて高い評価を受ける。
そして再びニキ・カーロ監督と組んだ本作では、主人公の妻となって彼を支えるセレスト役を演じて成熟した魅力をかいま見せる。2011年公開予定の岩井俊二監督作『Vampire』(原題)に出演することも決定し、いまもっとも注目される女優のひとりである。
なお、本作中に登場する赤ん坊のニコレットは、彼女自身の長女フェリシティ=アモール。
【interview】
セレストについて
ソブランの妻、セレストを演じています。彼らはまだ若い10代の頃に出会い恋に落ちました。それに彼女の父親が腹をたて、二人を引き離そうとしました。家族の意見が尊重されている時代だったから。彼らは運命に弄ばれてしまいます。セレストは一方的にしかものを言わず、それは彼女の肉体から出てくるものでした。
大人の役への移り変わり
最初に脚本を読んだのは撮影の1年前で、すぐに恋に落ちました。この役は私に取って大きなステップになるだろうから怖れもあったし、映画の中で幅広い年代を演じることになるし、大人を演じること、ティーンエイジャーを演じること、母親になり、狂気を持つ役なので、全てが移り変わりだと思いました。女優として怖い部分もあったけれど、信頼しているニキとの仕事だったので、役者としてティーンエイジャーから大人へと移り変わる際に彼女の手に委ねれば大丈夫と思っていました。とても幸運だったと思います。
ニュージーランドでの撮影
たくさんのキーウィがいるニュージーランドでの撮影は素晴らしいわ。たくさんの知り合いがいるし。夏の終わりはとても美しい季節で、たった1週間しかニュージーランドでの撮影はなかったけれど、『クジラの島の少女』以来ここでは撮影していなかったのでちょっと不思議な感じもしました。
成長するということ
人々はわたしを大人のように扱ってくれたし、母親として扱ってくれた。何年時間がたとうが人々にとってわたしは小さな少女だったようで、「もう小さくないのね」とよく言われました。あの映画はかなり前の作品だし、みんな成長するものでしょう。
コスチュームについて
Tシャツにジーンズでリハーサルをしているときは、まったくセクシーには感じないけれど、スカートにはきかえ衣装を着れば、動きまですっかり変わってしまうわ。
ニキについて
もう8年にもなるので、不思議な気分です。私の最初の映画『クジラの島の少女』のときは映画製作についても何にも知らなくて、だけどとても楽しかった。そして今回また一緒にやることになって、彼女が言うところのドリームチームが集まり、とても守られている気がします。映画の撮影に入ると最初の1週間はいろいろな人に会ったりするものだけど、この映画はもう一度家族に会うようなものだった。
おもしろいことに、前の映画と全く同じようにやっているの。ニキはとてもやさしい監督で、怒鳴ることもなく、全てのスタッフがどこに進もうとしているか理解している。不思議なのは、11歳のときと今では言葉が全く違うけれど、ダイナミックさは前と全く変わっていなかったことです。
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★ニキ・カーロ Niki Caro
監督:ニキ・カーロ プロフィール1966年9月20日ニュージーランドの首都ウェリントンに生まれる。
オークランド大学のイーラム・スクール・オブ・ファインアーツに学び、現代美術の学位を取得。さらに、オーストラリアのメルボルンにあるスウィンバーン映画・テレビ専門学校で脚本と演出を学ぶ。
ニュージーランドに帰国後、いくつかの短編やテレビ・ドラマの監督・脚本を手がける。’92年、プロデューサーのオーウェン・ヒューズに招かれて30分もののテレビ・ドラマの演出を担当し、その作品『The
Summer the Queen Came』はニュージーランド映画・テレビ賞のテレビ部門の脚本賞と監督賞にノミネートされる。’94年には短編『Sure
to Rise』がカンヌ映画祭の短編部門に招待され、’96年にはユニークなドキュメンタリー作品『Footage』がその年のヴェネツィア映画祭で上映されるなど、次第に頭角を現す。
'98年、ピーター・ウェルズの短編小説を題材に、自ら脚本を書いた処女長編『Memory
& Desire』を発表。新婚旅行でニュージーランドを訪れた日本人カップルの物語を描いたこの作品は、カンヌ映画祭の批評家週間に出品されて注目を集めるとともに、その年のニュージーランド映画・テレビ賞の審査員特別賞を受けた。
そして2002年、祖父の理解を得られないままに運命を切り開こうとするマオリ族の少女の物語を描く『クジラの島の少女』を発表。13歳の新人女優ケイシャ・キャッスル=ヒューズに、史上最年少でのアカデミー賞主演女優賞ノミネートをもたらしたほか、すぐれたインディーズ映画を讃えるインディペンデント・スピリッツ賞の外国映画賞、サンダンス映画祭の観客賞、ロッテルダム国際映画祭の観客賞、さらにニュージーランド映画・テレビ賞の脚本賞と監督賞の二冠に輝くなど、彼女の名前を決定的なものにした。
さらに、’05年にはシャーリーズ・セロンを主演に迎えて、鉱山で働く女性がセクシャル・ハラスメントに対する勝利を勝ち取るまでを描いた『スタンドアップ』で再び大きな話題を呼び、主役のセロンにアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞主演女優賞ノミネート、共演のフランシス・マクドーマンドに同賞の助演女優賞ノミネートをもたらした。
長編第4作となる本作『約束の葡萄畑〜あるワイン醸造家の物語』では、前3作と雰囲気をガラリと変えて、エリザベス・ノックスのベストセラー小説を映画化。舞台も19世紀のフランスに設定され、ニキ・カーロの演出力が存分に発揮される。
フィルモグラフィ 1994年 Sure to Rise(短編)
1998年 Memory & Desire
2001年 Dark Stories: Tales from Beyond the
Grave(TVドラマ)
Mercy Peak(TVシリーズ)
2002年 クジラの島の少女
2005年 スタンドアップ
2009年 約束の葡萄畑〜あるワイン醸造家の物語
【interview】
映画について
この映画は19世紀のフランスのワイン醸造家の物語です。彼はいままで味わったことのないような、すばらしく美味しいワインを作ることに情熱をかけていました。彼を支えていたのは、彼の人生において愛を捧げて来た3人ーー忍耐強く支え続けた若い妻セレステ、ヴェローナの理知深いパトロン、そして彼が十代の頃に夢に出てきて、以降ずっと彼の側に居続ける天使の存在です。人生においてしてワインは作られていったのです。すばらしいワインはすばらしい人生によって作られます。大きな喜びと大きな苦しみ、芸術的センス、そしてワイン醸造家としての勤勉さがあるような人生です。
ワインと人生について
フランスのワイン業界には“テロワール”という言葉があります。ワインの根本的な味はその土地から来る、という意味です。ワイン醸造家のやり方だけではなく、土地に与えられたもの、植物の状況によって味が変わってくるのです。若い頃ソブランが作ったワインは人々を魅了し、より多くのワインを作ることが期待されていました。そして彼は成功し、大量生産できるようになった頃にはその味は失われてしまっていたのです。絶望の中で作ったワインは飲むことはできなかったけれど素晴らしく、人生の最期においてようやく彼自身の運命を導いていた肉体、知力、精神と和解できたとき、最高のワインを作ることができたのです。
原作の映画化について
原作を映画化する際に変えたことは、女性のキャラクターを前面に出したことです。ソブランと天使の関係が原作では中心に描かれていましたが、映画ではひとりの男性の人間性、そして天使との精神的な愛だけではなく全ての愛情に焦点を当てることにしました。
共同脚本家のジョーン・シェッケルとの仕事について
ジョーンとは『クジラの島の少女』からのつきあいで、彼女は脚本編集者でした。彼女から学んだことは大きく、映画にとっても大きな意味を持っていました。『約束の葡萄畑〜あるワイン醸造家の物語』を脚本化しているとき、私はちょうど妊娠中だったので、脚本化に集中することができませんでした。彼女との共同執筆作業はとても助けになったし、大変満足しています。
天使のキャラクターについて
天使のキャラクターは文化によって違います。ですが、天使を神の使いとしての存在だけにはしたくなかったので、人間の精神の中にいる存在にしました。ギャスパーと出会ったことにより、天使に純粋さだけを求めるのはやめようと思いました。そして最近の映画では天使の羽根はCGで作られることが多いけれど、私はそこにあるものとして演出したかったので、ギャスパーが着ける羽根は本物にしました。スクリーンで観たときにも本物らしく見えたし、天使をドキュメンタリーのように現実味を持って描きたいという最初のもくろみ通りになりました。
ロケ地のインスピレーション
フランスでの撮影は神聖的でした。特に地方での撮影では、風景、料理、ワイン、人々、そしてフランス語の響き……全てがとてもロマンティックでした。ワインが作られる土地を歩く経験は代え難く、『クジラの島の少女』の撮影でも感じた数千年にも及ぶその土地に暮して来た人々の息吹を感じる体験でした。それはとても意義のあることだったし、この土地で行なわれていた仕事にとても勇気を与えられました。というのは、この映画はフランスのワイン製造と映画製作にオマージュを捧げているから。
映画のスタイル
わたしは長いこと映画を作り続けているから、撮影に入る前にも個人的にいろいろ準備していました。今までもそうだったけれど、今まで以上に本能に基づいて映画を作ったような気がします。そうした本能的なものによって、この映画には一定のリズムーー例えば上のほうからクレーンを使って撮影されているなか、みんなが厳かに歩くような通常の時代映画にはない新鮮さをもたらすことができたんじゃないでしょうか。この映画はミュージック・ビデオのように撮影されました。16mmカメラを手持ちで撮影したり、とても男性的で動きのある撮影方法を取っています。
ケイシャについて
ケイシャとの仕事は、最初の映画のときも、そして大人の俳優になった今もとてもユニークでいい経験でした。子役として最初の映画、大人になって最初の映画を共有できるというのはとても稀な経験だと思います。わたしとケイシャの関係は少しも変わっていなくて、11歳のときと18歳のときの彼女は全く変わっていなかったのです。ケイシャの特筆すべき点は、11歳の当時でもわたしたちの関係は対等で、子供だとか大人だとか関係なく接していました。だからこうして再び一緒に仕事をするのも簡単だったのです。彼女の成長の全ての段階で一緒に映画を作って行きたいと思うし、そのことをとても誇りに思っています。
ヴェラ・ファーミガについて
ヴェラはとても純粋で強く、めずらしい精神力の持ち主です。そして彼女は非凡な才能の持ち主です。彼女はきっとオーロラ役に複雑さ、優雅さ、痛み、喜びの全てをもたらしてくれるだろうと信じていました。まるで楽器を演奏するように演じるヴェラの小さな動きをフィルムに修めるのは、純粋に監督としての喜びに満ちた体験でした。
ジェレミーのキャスティングについて
ダルデンヌ兄弟の『ある子供』に出たジェレミーの演技がとても好きだったのと、エリザベス・ノックスも彼をキャスティングしたいと思っていたんです。エリザベスは彼の映画をずっと前に観ていて、私に写真を送ってくれていたんです。ヨーロッパでオーディションを繰り返していて、私はオンラインでそれを観ていたんですが、ジェレミーは英語を話せないことを差し引いても、彼のオーディションテープにすっかり魅せられてしまいました。彼しかいない、というのはとてもはっきりしていました。直感的に彼なら言語を会得するだろうと思ったし、時間もあったから。言葉を抜きにしても、彼はソブランそのもので、他の誰もソブランを演じることはできないと思いました。言語の問題は資金的なものもあって、彼を選ぶというのは大きな挑戦だったけれど、彼は英語を見事に習得してくれました。
ギャスパーのキャスティングについて
ギャスパーもまた、天使を演じることのできるただひとりの俳優だと思いました。彼には中性的な美貌と、優しさ、静けさ、そして愚直さがあるから。そしてジェレミーとも仲が良く、俳優として、そして映画の中のキャラクターとして、ひとりは情熱的で地に足の着いた物語の中心人物として、もう一人は空気のような静けさを持った人物として、お互いに協力し合っているところがいいと思いました。
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★撮影監督 ドゥニ・ルノワール
ニキ・カーロとの仕事について
ニキはほんのときどきはっきりしたアイディアを持ってくるけれど、ほとんどの場合は役者たちがステージの上でどのように動くかを見て、それをどう撮るかの話し合いをするような感じでした。カメラワークが大げさになりすぎないように、というのはいつもはっきりしていました。
撮影スタイルについて
ニキは多くのフランス映画の“ブルーナイツ(?)”を嫌っていて、それよりは時代映画の美しいスタイルを好んでいました。彼女はカメラにもオーガニックで生々しく、はっきりしたものを求めていました。美しいけれどギラギラしすぎている英国の時代映画よりは。あとから「スーパー16mmはどう?」と提案したら、「いいわね!」と言ってくれました。ブルーバックで天使を撮影した特殊効果のシーンには既に35mmフィルムを使っていたから。
コスチューム・デザイナー
ベアトリス・アルナ・パストール
ホアキン・バラブリガ
ルックとコスチュームについて
ベアトリス
当時の歴史のなかから少しだけ抽出したのと、素朴さにこだわりました。だからいつもの歴史映画で見るような、農夫がスカーフを被りエプロンをしているような衣装ではなく、手を使って働いていることがわかるように飾りすぎない素材を使うようにしました。
ホアキン
僕らが気をつけていたのは、歴史的な正しさよりも、衣装が映画の中で正しく感じられ、正しく見えるということでした。
ニキ・カーロとの仕事について
ベアトリス
ニキは特別な監督です。ニキのような芸術的に秀でた監督との仕事は特別だし、彼女はいくつかのシーンに関してしか意見しませんでした。ニキが「これは私が考えているのとちょっと違うかもしれません」と言うと、私たちも修正するようにしていました。
彼女はいつも何が正しいかわかっていて、その通りに進ませてくれました。こういうことはコスチューム・デザイナーにとってそんなに多くなくて、もっと規制があったりするのに、どのセクションの人も芸術的センスがあって、自分自身が思うよりもずっと高いレベルの仕事ができたと思っています。
天使の衣装について
ベアトリス
天使の衣装が最も難しかった部分です。どんな映画でも天使の衣装は難しいでしょう。天使の羽根についても気にしなくてはいけないし、技術的に羽根について知っていなければいけなかったから。最初、シンプルな白いパンツを考えていて、そのあとでジュエリーについてなどを提案しました。それらを考えるのはとても難しく、結局、天使の羽根が充分ゴージャスで芸術的なのでそのままにすることにしました。
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【wine】
ブドウ産地解説ワイン大国フランスにおいても、つねにワイン愛好家の羨望を集めるブルゴーニュ。この地で本格的なブドウ栽培、ワイン醸造がスタートしたのは、2世紀ごろのことである。5、6世紀にかけて一時的な衰退期はあったものの、その後中世には、教会や修道院を中心にワイン造りが発展。パリから近いことも功を奏して当時から名声を確立し、パリに住む王侯貴族などに愛飲され続けていた、伝統の銘醸地だ。
パリ南東のオーセールからリヨンまで、300キロにわたり丘陵地が続くブルゴーニュは、基本的に石灰岩の基盤に粘土や砂が堆積した土壌で、ブドウ畑は小高い丘の斜面に形成。内陸部のため寒暖の差が激しく、とくに冬は厳寒な気候となる。このような環境下で育ったブドウは、果実味とともに酸やミネラルを豊富に含み、造られるワインは、高貴で複雑味のあるエレガントなスタイルとなる。また、数多く連なる丘に作られた畑は、標高や斜面の向き、微妙に異なる土壌構成などにより、ブドウの育つ環境(テロワール)に多様性をもたらし、これこそがブルゴーニュワインの奥深さや面白さの要因と言っても過言ではない。一般的に、単一のブドウ品種から造るのが特徴のブルゴーニュワインだが、白ワインはシャルドネ、赤ワインはピノ・ノワールというブドウを通して、ブルゴーニュの複雑なテロワールを表現している。単一品種で造るワインだからこそ、テロワールの個性をダイレクトに体感できるのだ。
さて、6地区に区分されるブルゴーニュ地方の中でもっとも偉大な産地といえば、コート・ドール(黄金の丘)と呼ばれるコート・ド・ニュイ地区とコート・ド・ボーヌ地区にほかならない。北部のコート・ド・ニュイ地区は、かの有名な「ロマネ・コンティ」や、ナポレオンが愛したとの逸話もある「ル・シャンベルタン」など、赤ワインのグラン・クリュ(特級畑)が数多く存在。一方、南部のコート・ド・ボーヌ地区には、美食家で知られる文豪アレクサンドル・デュマが「脱帽し、ひざまづいて飲むべし」と語ったという「コルトン・シャルルマーニュ」や、エレガントなブルゴーニュ白ワインの極みとして崇められる「ル・モンラッシェ」などのグラン・クリュがあり、銘醸白ワイン産地として名高いエリア。両者とも、ワインマニア垂涎の最高峰ブルゴーニュワインの数々が産出される、憧れの産地である。ちなみに、ブドウの収穫が終わった後の晩秋にコート・ドールを訪れると、ブドウの葉が黄金に色付き、まさに“黄金の丘”が一面に広がる光景を目にすることができる。この美しさは、とにかく圧巻だ!
もちろん、コート・ドール以外のエリアでも、クオリティの高いワインは多数存在。コート・ドールに比べ、リーズナブルな価格でバランスのよい赤、白ワインの産地として近年注目のコート・シャロネーズ地区や、南部ならではの熟れた果実味と酸やミネラルのメリハリがきいた、良質白ワインが多く存在するマコネ地区などは、ブルゴーニュ入門編としては、お勧めのエリア。まずは、このあたりからブルゴーニュワイン探求の第一歩を踏み出してみよう。
シャルドネ Chardonnay
適応能力が高いため今や世界各地で栽培されるシャルドネ。品種個性が少ないのが特徴のため、畑の環境や栽培方法、醸造スタイルが直球で伝わるブドウだ。冷涼で石灰質を多く含む土壌のブルゴーニュのシャルドネは、酸とミネラルに富んだエレガントなスタイルで、高品質なものは長期熟成にも耐えうる。最北部でとくに冷涼なシャブリ地区では、硬質に引き締まったワインが誕生。一方、コート・ドール以南の地区では、果実味豊かで円やかなボディのワインが多い。
Pinot Noir
ピノ・ノワール
高貴なブドウとして人気が高いが、皮が薄く、病害虫に弱く、醸造も気が抜けない、気むずかしい品種だ。冷涼地を好み、石灰質土壌との相性がよいピノ・ノワールは、やはりブルゴーニュでこそ本領を発揮。輝き、透明感のある艶やかな色調で、赤系果実や花の香りが漂い、引き締まりながらもなめらかで上品。グラン・クリュ・クラスは、長期熟成の後、華開くワインも少なくない。繊細なブドウだからこそ、ブルゴーニュの細分化されたテロワールの多様性を映しだすことができる。
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映画の森てんこ森
幸田 幸