グリーンデイル
表紙目次読む映画試写会レヴュー観たい度映画予告編エッセイ日誌試写会情報リンク集
映画人解説・レヴュー一覧表映画ゲーム思い出映画ブロードバンド(B)版旅行の森てんこ森
映画の森てんこ森■読む映画試写会■映画解説
グリーンデイル (2003)
GREENDALE
 映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』を紹介します。

 映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』を目次的に紹介する。
■映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』のポスター、予告編および映画データ
■映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』の解説
 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。
■映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』の主なスタッフ
■映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』の映画のジャンルは?
■映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』のあらすじ
■映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』のスタッフとキャスト
■映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』の<もっと詳しく>
 <もっと詳しく>は映画『 グリーンデイル 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタばれ)です。※ご注意:映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』の内容やネタばれがお好みでない方は読まないで下さい。
■映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』の更新記録

>>
「映画解説・レヴュータイトル一覧表」へ(画面の切り替え)
幸の観たい度: 8つ星 
■映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』のポスター、予告編および映画データ
グリーンデイル
グリーンデイル
ポスターは公式ページから
引用させて頂きました。

Links:  Official Web Site
Trailers:

Quicktime
high - low

上映時間 Runtime: 1:27
製作国 Country: アメリカ
USA
製作会社
Production Company:
Shakey Pictures
Lookout Management [us]
全米配給会社 Distributer: Shakey Pictures
全米初公開 Release Date: 2004/03/12 (San Francisco, California)
日本初公開 R. D. in Japan: 2004/12/03 予定
日本公開情報 : ボイド
ジャンル Genre: ミュージカル/ドラマ
Musical / Drama
MPAA Rating 指定: Not Rated but contains some language, a PG-13 or R.
日本語公式サイト
http://boid.pobox.ne.jp/
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com.
Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc.
▲TOPへ
■映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』の解説

 映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』はミュージシャンのニール・ヤングが監督を始め6役を務める風変わりなジャンルのインディ系映画。架空の町グリーンデイルの架空の一家に焦点を当てて、アメリカの腐敗を訴え、地球保護・資源保護に目覚める過程をアルバム「グリーンデイル Greendale 」の曲を使って展開していく。こういう手法で注目されている作品だ。 allcinema ONLINE では「劇場未公開」となっているが、2004/09/20 の段階で、公開されるという情報を得たので調べてみた。

▲TOPへ

■映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』の主なスタッフ

 映画『 グリーンデイル 』はミュージシャンのニール・ヤングが独りで作ったと言っても過言ではなさそう。『 グリーンデイル 』では、ニール・ヤングの名で製作・脚本・撮影・音楽、バーナード・シェイキーという別名で監督・出演。殆ど自分でやっているのだもの。バーナード・シェイキーとはニール・ヤングのことだから、製作会社・配給会社シェイキー映画社 Shakey Pictures というのは、勿論彼の会社のことだ。ただし編集は、Total Media GroupToshi Onuki 氏が担当している。

○『 グリーンデイル 』の6役を務めるニール・ヤングが映画音楽を作曲しているのは:
アメリカン・ビューティー (1999) AMERICAN BEAUTY
愛しのローズマリー (2001) SHALLOW HAL
華氏911 (2004) FAHRENHEIT 9/11

○『 グリーンデイル 』の編集を担当している Toshi Onuki 氏とは:
 本作『 グリーンデイル 』を IMDb で調査した時、Toshi Onuki という和名らしき表示に興味をもった。映画の本場アメリカで映画編集する日本人はデータとしては余り見かけない。私としては是非これからもどんどん作品を送り出してほしい。大いに応援します!
 以下に Toshi Onuki 氏のプロフィールを紹介しておく。以下のデータは大貫氏ご本人からメールで直接いただき、原文のまま、本人の許諾により掲載している。

◆Toshi Onuki (大貫敏之 )プロフィール◆
職業:  彫刻家、ビデオエディター。
1964 東京生まれ
1983 東京都芸術高校 油絵科卒
1988 サンフランシスコ アート インスティテュート New Genre 科卒業
     インスタレーションを中心にした彫刻作品、ビデオアートを制作発表。
     1990−1995 帰国。東映化学赤坂ビデオセンターに契約社員として勤務。
     企業ビデオ、ミュージックビデオ、CM、各種テレビ番組の編集をする一方
     作家活動を続ける。
1992、93 イメージフォーラムフェスティバル 招待作家としてビデオ作品を出品。
1996 渡米。フリーランスエディターとしてサンフランシスコで働く。
     Interactive TV試験放送制作に参加。 Silicon Graphics
1998 Sub-techs: the new post-digital Sculpture, Lab, San Francisco に出品
1999 個展, Southern Exposure, San Francisco
     アメリカ永住権を取得。Total media group にスタッフエディターとして勤務。
     Adobe Systems, GAP, Oracleなどの各種企業ビデオ 、
     ESPN, KGO等のネットワーク番組、ミュージックビデオを編集。
2002以降 Shakey Pictures, Neil Young, を中心にした映画編集, DVD制作 に携わる。
     Neil Young Greatest Hits 2004, DVD ではアートディレクションを担当。
2004現在 Total media group, でチーフエディターとして働く。

Toshi Onuki (大貫敏之 )の主な編集作品:
  Cremaster 5 by Mathew Barney, 35mm
  Bonnaroo Music Festival 2003 by Upstream Multimedia, DVD
  Greendale, the film by Shakey Pictures, 35mm, DVD
  Inside Greendale by Shakey Pictures, DVD,
  Neil Young Greatest Hits 2004, DVD
  Human Highway、(directors cut) by Shakey Pictures, 35mm, DVD

○『 グリーンデイル 』の音響ゲイリー・コッポラは:
ベッカムに恋して (2002) BEND IT LIKE BECKHAM
17歳の処方箋 (2002) IGBY GOES DOWN
エバーラスティング 時をさまようタック (2002) TUCK EVERLASTING
ウィラード (2003) WILLARD
キューティ・ブロンド/ハッピーMAX (2003) LEGALLY BLONDE 2: RED, WHITE & BLONDE

フランシス・フォード・コッポラ Francis Ford Coppola (『 ヒューマン・キャッチャー (2003) JEEPERS CREEPERS 2 』)、娘ソフィア・コッポラ Sofia Coppola (『 ロスト・イン・トランスレーション (2003) LOST IN TRANSLATION 』)、甥ニコラス・ケイジ Nicolas Cage 本名ニコラス・コッポラ Nicolas Coppola (『 ナショナル・トレジャー (2004) NATIONAL TREASURE 』『 ゴーストライダー (2007) GHOST RIDER 』)というあのコッポラ一族ではないようだけど、同じ映画界にいるし、遠い親戚かもネ。

▲TOPへ

■映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』の映画のジャンルは?

 映画『 グリーンデイル 』は映画のジャンルにはまりきれない映画だ。
 映画『 グリーンデイル 』は、米国西海岸のグリーンデイルという架空の町のある一家の三世代のメンバー達の思想の推移のお話。ニール・ヤングの 2003 年のアルバム「グリーンデイル Greendale 」から十曲を使い、それらの歌を言わば脚本にして映画は進む。こういう展開の、非常に稀なタイプの作品なので、「ミュージカル小説 musical novel 」「ロック・オペラ rock opera 」等と表現されている。

 「グリーンデイル」は、アメリカ事情のある意味と、アメリカが抱えている増大しつつある‘損失’という意味を表すように名づけられた小さな町なのだそうだ。

▲TOPへ

■映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』のあらすじ

 映画『 グリーンデイル 』の舞台は架空の町「グリーンデイル」。グリーンデイルはカリフォルニア州北部の太平洋に面した町という設定だ。グリーンデイルの町だからか、主人公一家の苗字も「グリーン」という。グリーン家の祖父(ベン・キース)は高齢化したヒッピー。息子は芸術家としてもがいているアール・グリーン(ジェームズ・マジオ)。アールの娘、つまりおじいちゃんから見たら孫であるのは、若いサン・グリーン(サラ・ホワイト)。サンは、テレビで災害を見て、部屋で踊り回り、夏を想像して楽しそう。三世代いるグリーン一家は何の問題もない理想的な家庭だった。

 先ず、玄関ポーチで、祖父は息子のアールに世界の情勢を嘆く。祖父は古き良き昔を偲んでいる。何事も今よりもっと質素で簡単だった。メディアは差し出がましい真似をしなかった。人間はもっとよかった。そして、何事でも愛情を持ってやれば世界はもっとよくなると呟いている。これは「♪ Falling From Above 」という曲で、歌詞は「・・・ a little love and affection / in everything you do / makes the world a better place ・・・」という先ずは楽観的な側面から映画は始まる。

 それがひっくり返ったのは、ドラッグ中毒の甥のジェド・グリーン(エリック・ジョンソン)が警官を銃で撃ち殺すという衝撃的な事件だ。悪魔 the Devil が赤い服とそれに合ったテニスシューズという出で立ちではしゃいで登場し、ジェドの事件を誘発する。祖父も祖母(エリザベス・キース)も大変なショックを受ける。グリーンデイルの街は悲しみに沈み、それに追い討ちをかけるようにTV局などのメディアが街に押し寄せる。記録映像で、ペンシルベニア州知事 Governor of Pennsylvania ( 1995-2001 )だった人で、米国の国土安全保障省( DHS=Department of Homeland Security )のトム・リッジ長官までもTVで出てくる。祖父はメディア相手にショットガンを持って、怒って追い返そうと応対しているうちに、心臓麻痺で死亡してしまうのだ。

 こういう悲劇に、一家に新しい希望が芽生えてくる。理想主義者の孫娘サン・グリーンは、これまでの気楽な人生から政治的に開眼して左派の活動家に変身する。先ず、法人の複合企業に関わって地球保護の立場で活動し、それからアラスカまでヒッチハイク。石油問題から大自然を護るためにだ。エネルギー問題で、複合企業に抗議する。キャストを見てビックリするのは、ノークレジットで記録映像だけれど、オサマ・ビン・ラディンが登場することだ。『 華氏911 (2004) FAHRENHEIT 9/11 』でもあったように、石油事業で米国と裏で親密な関係があったラディン一族のことなんかも話に入れるのだろうか。

 ニール・ヤングの「♪バンディット Bandit 」というスローテンポでもの悲しい瞑想の曲は、映画の最も感情的なシーンで使われる。映画のラストでは、「♪ Be the Rain 」が流れ、行動主義と自然[資源]保護への叫びを象徴しているらしい。映画『 グリーンデイル 』は、このようにアルバム「グリーンデイル Greendale 」からの十曲を台詞のように使って、政治問題・プライバシー尊重を欠くメディアのこと・アメリカという言わば大企業の貪欲さと腐敗・貪欲な事業や政府の無関心からアラスカの環境を保護する競争を訴える作品なのだ。
▲TOPへ
【『 グリーンデイル 』のスタッフとキャスト】
監督: バーナード・シェイキー Bernard Shakey (Directed by)
製作: L・A・ジョンソン L.A. Johnson (producer)
    ニール・ヤング Neil Young (producer)
製作総指揮: エリオット・ラビノウィッツ Elliot Rabinowitz (executive producer)
脚本: ニール・ヤング Neil Young (Writing credits)
撮影: ニール・ヤング Neil Young (Cinematography by)
編集: Toshi Onuki (Film Editing by)
音楽: ニール・ヤング Neil Young (Original Music by)
音響: ゲイリー・コッポラ Gary Coppola (Sound Department)
 
出演: サラ・ホワイト Sarah White as Sun Green
    エリック・ジョンソン Eric Johnson as Jed Green/the Devil
    ベン・キース Ben Keith as Grandpa Green
    エリザベス・キース Elizabeth Keith as Grandma Green
    ジェームズ・マジオ James Mazzeo as Earl Green
    バーナード・シェイキー Bernard Shakey as Wayne Newton
    エリック・マークガード Erik Markegard as Earth Brown
    アダム・ドンキン Adam Donkin as Imitator/Echobrain
    ディラン・ドンキン Dylan Donkin as Imitator/Echobrain
    ブライアン・サグラフィナ Brian Sagrafena as Imitator/Echobrain
    オサマ・ビン・ラディン Osama bin Laden as Himself (archive footage) (uncredited)
    トム・リッジ Tom Ridge as Himself (archive footage) (uncredited)

▲TOPへ
<もっと詳しく>

ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。
 映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』の「テキストによる未公開映画の再現」レヴューは、現在まだ書けておりません・・・。

 ボイドの樋口氏からのお知らせです。
 映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』の公開は、
 <12月3日(金)より、吉祥寺バウスシアターにて、爆音レイトショー>
 ライヴ用のPAを使い、スピーカを左右に4段ずつ積み上げて、上映します。
 通常の映画とは全く違った体験が得られます。

●以下は、樋口氏からいただいた映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』のプレス資料です。
『ニール・ヤング/グリーンデイル』

だんだん良くなっているものもあるが
それ以外はちょっと悪くなってる
まるで呪いのような状況だ
―― ニール・ヤング

『華氏911』にラスト・テーマ曲を提供したニール・ヤングが描く、もうひとつのアメリカの物語

いつの日か おまえは探しているものすべてを 見つけるだろう
―― ニール・ヤング

ニール・ヤング監督作品『ニール・ヤング/グリーンデイル』
12/3(金)より吉祥寺バウスシアターにて爆音レイトショー


皆さん、これからちょっとした旅に出るところだ……これからやる曲はどれもグリーンデイル、つまり緑(green)の谷(dale)という地名の場所を題材にしていてね……この町ではいろんなことが起きている。
グリーンデイルはとてものんびりした町に見える。それほど大きくないが、十分な大きさはある。刑務所もあって、そこには悪魔が棲んでいる。
グリーンデイルには小さな港があり、波止場がある。それは小さな木で作られた桟橋で、朽ちつつある。もう使われていないけれど、まだそのままにされている。いずれ使用禁止になって壊されるだろう。
ハイウェイが終わればその場ですべてが終わる。地図は……他には何もなく、地図だけ。車で道を走り続け、「グリーンデイル出口」の標識にたどりついたら、地図から消える。
―― CD『グリーンデイル』収録のニール・ヤングによる解説より抜粋


フィクションと音楽が交錯する、ニール・ヤング監督作日本初公開!
『Human Highway』以来20年以上の時を経て、再びニール・ヤングが劇映画を製作。変名バーナード・シェイキーとして監督を務めた他、撮影、音楽をも手がけ、同名のスタジオ・アルバムで歌われた物語のコンプリート・ヴァージョンともいえる作品を作り上げた。「日本のオーディエンスにフィルムで体験して欲しい」というニール・ヤングの熱意により、劇場公開が実現! 昨年の来日公演でも舞台上のセットで上演された、架空の町「グリーンデイル」の人々の物語をニール・ヤング自ら映像化したものである。

ニール・ヤングの描くアメリカ
全編でアルバムの楽曲が流れ、ニール・ヤングの歌がそのまま登場人物の台詞になるという、ロックミュージカル仕立ての本作は、1曲ごとに章立てされたグリーンデイルの人々のエピソード集でもある。平和な町に突如起こった警官殺人事件を軸に、環境破壊、マスメディアの問題など、現代社会のさまざまな問題が人々の上に降りかかる。そこに、ホワイトハウスや大企業への批判も厭わない反骨精神、そして未来を担う若い世代への希望という、ふたつのヴィジョンが交錯し、ニール・ヤングのアメリカの物語が出来上がった。

吉祥寺バウスシアター限定! 『イヤー・オブ・ザ・ホース』を越える爆音でのフィルム上映
ニール・ヤングの手によって8ミリ・フィルム、ビデオなどで撮影された映像は35ミリにブローアップされ、スクリーンにもうひとつのアメリカのヴィジョンを映し出す。それはジム・ジャームッシュによるニール・ヤングのドキュメント『イヤー・オブ・ザ・ホース』を越える、ニール・ヤングそのものの映像と音響!上映は通常の映画の音響セッティングではなく、音楽ライヴ用のPAを使った「爆音ヴァージョン」のセッティングで。音楽、映像、物語が一体となったかつてない映画の響きを体感せよ!


STAFF&CAST
監督・音楽・撮影:ニール・ヤング(バーナード・シェイキー)
製作:LA.ジョンソン、エリオット・ラビノウィッツ、ニール・ヤング
編集:トシ・オーヌキ
出演:アダム・ドンキン、ディラン・ドンキン、エリック・ジョンソン、ベン・キース、エリザベス・キース、サラ・ホワイト
2004年/アメリカ/35mm/82分

バーナード・シェイキー・フィルモグラフィ
■Greendale (2003)
■Neil Young: Human Highway (1982)
■Rust Never Sleeps (1979) <ニール・ヤング名義>
■Journey Through the Past (1972)


Voice of ニール・ヤング

●もう映画を作るしかない
(『華氏911』に「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」を提供したのは)マイケル・ムーアから、直接、エンディングにあの曲を使いたいといってきたんだ。彼の作品には興味を持っていたし、ラフ編集の段階で映像を観させてもらって、それでOKした。
今は、ラジオは完全に閉ざされている。僕が新しい作品を発表しても、かけてくれるステーションはほとんどとない。テレビや雑誌は大きな資本にコントロールされてしまっているし、レコード会社もそうさ。だから、本気でなにかを表現し、伝えたいと思ったら、もう映画をつくるしかない。自分ですべてをコントロールしてね。マイケル・ムーアの仕事には、そういう僕の気持ちと共通するものを感じていたんだ。

●「グリーンデイル」の始まり
『グリーンデイル』のレコーディングをスタートさせたのは2002年の8月だった。録音がすべて終わったのは、その年の12月だ。曲はすべて、そのレコーディングを進めながら書いていったもので、最終的にいったいどんなものになるか、じつは、自分でもよくわかっていなかった。ただし、レコーディングをスタートさせた時点から、ヴィジュアル的なことは意識していた。実際、スタジオにビデオ・カメラを据えて、窓にはグリーン・スクリーンを貼って(註;日本では一般的にブルーバックと呼ばれる撮影手法。青や緑の部分に、別に収録した背景などの映像を合成する)、今までとなにか違うことをやろうとは考えていたんだ。でも、繰り返すけど、なにを表現するかはまったく決まっていなかった。そのうち、キャラクターや、歌詞として歌われている言葉、つまり、彼らの交わす会話がどんどん生き生きとしたものになってきて、そのグリーン・スクリーンに合成させるための映像をつくることになったのさ。それが、アイディアを煮詰めていくうちに、ただのビデオではなくて、きちんとした映画としてつくろうということになった。そして、音づくりをすべて終えてから、それぞれの曲の歌詞を出演者たちがリップシンクで語っていく形でストーリーの撮影を進めていったんだ。
だから、『グリーンデイル』はきわめて自然なものとして僕のなかに浮かんできた、というか、生まれてきたものなんだ。ひとつの曲が完成すると、そのなかから新しいキャラクターが生まれて、それがまた次の曲にインスピレイションを与えていく。アルバム全体がそうやってつくられていったんだ。最初から僕の頭のなかに決められたストーリーがあったわけじゃない。

●可能な限りシンプルに
今回、ビリーとラルフだけを呼んでレコーディングをしようと考えたのは、クレイジー・ホースと一緒にやりはじめたころの一体感をもう一度取り戻したいと思ったからだ。ここ15年か20年ぐらい、いろいろな要素を取り込んだせいもあって、そういう昔の一体感のようなものが希薄になっていたことは否定できない。だから、『グリーンデイル』では、可能なかぎりシンプルに、ということを頭に入れていた。結果的に、シンプルなサウンドにしたことがストーリーをより際立たせることにもなったと思うよ。
コード進行も、曲の構成も可能なかぎりシンプルなものにした。コードがふたつしかない曲もたくさんあるほどさ。原点に立ち戻る、とでもいったらいいのかな。たとえば昔の泥臭いブルースみたいな感じだよ。構成がシンプルであればあるほど、僕も含めて、バンドのメンバーが、ここでリズムを変えなくちゃいけないとか、いろいろと余計なことに気を使わないで、演奏だけに集中できる。それが狙いだった。

●新しい作品を歌いつづける
ちょうど『グリーンデイル』が完成した時、ヨーロッパでアコースティック・ツアーがブッキングされていたんだ。もともと僕はツアーで誰も知らない新しい曲を歌うのか好きだし、『グリーンデイル』に関していえば、適当にピックアップして何曲かだけ歌って済ませるわけにはいかないアルバムだった。だから、少しずつストーリーを紹介したり、説明したりしながら、アルバムの曲をすべて歌うことにしたのさ。ソングライターとして生きる者にとっては、オーディエンスの前で新しい作品を歌いつづけることはとても大切なことなんだよ。
よく知られた昔の曲やヒット曲だけを歌っていたら、毎日、ステージに立って、もっと金を稼げると思う。でも、アーティストとして、ソングライターとしていちばん大切なのは、新しい作品を書いて、それを発表する機会をずっと持ちつづけるということなんだ。過去の自分を再現するだけなんて、まったく価値のないことさ。
もちろん、どの街でも、どの国でも、オーディエンスはみんな、昔の曲や、ヒット曲を期待して会場にやって来る。なぜかというと、テレビとかメディアにそう誘導されているからさ。たとえば、エンタテイメント・トゥナイトとかね。そういうメディアが、アーティストはこうあるべきだとか、イメージをつくり上げてしまうんだ。支配している、といっていいかもしれないね。新しい作品についてはほとんど関心を示そうとしないし、たとえば僕のオーディエンスはみんな「孤独の旅路」を聴きたいと思っているはずだ、という前提で番組をつくり上げていく。でも、それは実際の僕がやっていることではないし、そんなことはしたいとも思っていない。

●若者たちにこそ、地球の将来がかかっている
それぞれの街で、違うグループの若者たちに登場してもらったけれど、彼らはみんないい連中だったよ。エネルギーにあふれていたし、自分のやりたいこともよくわかっていた。だから、ひとつひとつのステップや言葉の意味も、よく説明すると理解してくれたしね。みんなが心をひとつにすれば、世の中をかえることができる、という気持ちもよく表現してくれた。なにしろ、僕はもう58歳だし、バンドもみんな同じぐらい。その連中がずっと演奏していて、登場人物は歌詞をリップシンクで表現していく。そういうステージがずっとつづいて、最後になってサン・グリーンと一緒に彼女の仲間や若いダンサーたちが登場するのは、とてもエキサイティングだった。作品に込めたメッセージがより的確な形で伝わったと思うよ。
僕が『グリーンデイル』に込めたメッセージは、若者たちにこそ、地球の将来がかかっているということだ。物語は、年齢を重ねた人たちからスタートするよね。それぞれに関係があって、自分の人生を生きているわけだけど、みんな、それぞれにいろいろと問題を抱えている。そこに、明るい希望として、サン・グリーンや彼女の友人たちが登場する。グランパは死んでしまうけれど、彼女がなにかを受け継いで、それを新しいものに変えていく。これは、ずっと繰り返されてきた話でもあるわけだけどね。

●撮影のスタート
映像の撮影をスタートさせたのは、2002年の12月で、2003年の3月にはほぼ作業を終えていた。最初の段階では、前にもいったとおり、スタジオに貼ったグリーン・スクリーンに合成させるための映像というふうに考えていたんだけど、音とシンクさせて編集を進めていくうちに、いろいろな手応えを感じてね、長篇映画としてまとめて、きちんとした形で発表しようと考えるようになった。エレクトリック・オペラと呼ぶ人もいるだろうし、あるいはロック・オペラとか、いろいろな受け止め方をされるだろう。まあ、どう呼んでもらってもいい。要するに、音楽と物語が一体になったもの、ということだね。

●仲間や友人や家族たちの出演
出演者は、ごく一部、プロの人もいるけれど、彼らも、もともと友達だった連中で、あとは、僕の仕事の仲間や友人や家族に演じてもらった。ここではこうするべきだとか、そういう既成概念みたいなものを持っているプロの俳優よりも、フレッシュな感覚で作品に取り組んでもらえる人のほうがよかったんだ。それに、プロの俳優を起用すると、マネージャーとかなんだとか、作品とは関係のない人たちがたくさんやって来て、いつもうろうろしたりして、現場の雰囲気を変えてしまいかねない。僕が求めていたイノセントな感覚がこわされてしまうかもしれない。それよりは、経験なんかなくてもいいから、若くて、ほんとうに作品そのものにエキサイトしてくる人たちに出てもらいたかったのさ。

●8ミリ・カメラでの撮影
撮影はすべて、僕自身が、小型の8mmフィルム・カメラで行なっている。ドイツ製で、アンダーウォーターと呼ばれているものだ。1秒間に18コマで撮影していくタイプ(通常は24コマ、ビデオは30フレーム)だから、なんとなく動きがコミカルな感じにみえるのが気にいってね。昔の映画のようでもあるし、ホームビデオのようでもあるし、そのコミカルな感じが逆にリアルなんだ。普通の映画のようにはしたくなかったし、ビデオっぽくもしたくなかったから、そういう意味でも8ミリは最適だった。もちろん、16mmでやってもよかったんだけどね。それに、カートリッジが3分しかもたないというところもよかった。出演者たちはとりあえず3分だけ集中してくれればいいんだから、そんなに難しいことにはならないからね。そして、フィルムを入れ替えているあいだに、僕が彼らにあれこれと指示を与えたり、みんなで意見を出しあったり。その繰り返しさ。あとはもう、カメラのうしろにいる僕を信じて自由にやってくれ、っていう感じだった。

●バーナード・シェイキー
ニール・ヤングとバーナード・シェイキーの関係は、それはまあ、バランスの問題だね。それに、ニール・ヤングという名前ばかりが前に出すぎて、その固定観念みたいなもので受け止められてしまうのもいやなんだ。もちろん、音楽はいいよ。それは、結局、僕そのものであるわけだからね。そういう理由もあって、1972年にシェイキー・ピクチャーズを設立して、映像作品はそこで手がけたもの、ということにしてきたのさ。いってみれば、まあ、バーナードは僕も分身でもあるし、独立した人格のようでもある。だから、馬鹿な話のように聞こえるかもしれないけれど、あるシーンを撮影すると、バーナードに、今の感じでいいかな、って聞いている自分がいたりする。でも、いずれにしても、僕たちは同じシーンを繰り返して撮影したり、なんてことはしない。フィルムがもったいないし、大事なのは、そこで起こっていることをきちんと、そのままフィルムに記録していくことだからね。


12月3日(金)DVD同時発売(BMGファンハウス)
レーベル:Sanctuary  BVBM-41008
税込価格:4935円

●配給:BMGファンハウス
●配給協力・お問い合わせ:boid(担当:樋口)TEL:03-5934-7089 e-mail: boid@pobox.ne.jp
●宣伝・お問い合わせ;スリーピン(担当:原田/携帯電話 090-7903-8534)
杉並区阿佐谷北4-21-16-401 デジタルムービー工作室内TEL:03-5327-3771 FAX:03-5327-3772
●劇場問い合わせ:吉祥寺バウスシアター(0422-22-3555)
追加情報は、boidサイト(http://boid.pobox.ne.jp)にて順次掲載


参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集
       http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
      公式サイト(英語版)
       http://www.neilyoung.com/greendale_frames.html
■映画『 グリーンデイル (2003) GREENDALE 』の更新記録
2004/09/20新規: ファイル作成
2004/11/03更新: ◆<もっと詳しく>のデータ追記
2004/11/09更新: ◆主なスタッフの追記
2004/12/07更新: ◆一部テキスト追記と書式変更
2007/02/05更新: ◆データ追加
▲TOPへ
幸田 幸
coda_sati@hotmail.com
「映画の森てんこ森」へ 「旅行の森てんこ森」へ
映画解説・レヴュータイトル一覧表
映画の森てんこ森 バナー03

映画の森てんこ森 coda21幸田幸 クレジット バナー01
幸のイタリア各都市情報へ
旅行の森てんこ森 バナー03
136x70
本サイトの作文、データ及び画像などのコンテンツの無断転用はお控え下さい。
貴サイトへの御掲載についてはメールにてお知らせ頂ければ幸いです。
© 2003-2005 Sachi CODA at Eigano-Mori Tenko-Mori, CODA21. All Rights Reserved.