ノボケイン 局部麻酔の罠
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ノボケイン 局部麻酔の罠 (2001)
NOVOCAINE
ノボケイン 局部麻酔の罠
ノボケイン 局部麻酔の罠


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■『 ノボケイン 局部麻酔の罠 』のデータ
 上映時間:95分
 製作国:アメリカ
 アメリカ初公開年月:2001年11月16日
 日本初公開年月:2002年8月17日
 ジャンル:コメディ/サスペンス

【解説】
 映画『 ノボケイン 局部麻酔の罠 (2001) NOVOCAINE 』は、歯科医と麻酔薬をめぐる珍しいタッチの面白い作品。監督と脚本のデヴィッド・アトキンスが父と兄弟が歯科医なので、歯科医の物語を書こうとずっと思っていたそうだ。『 ノボケイン 局部麻酔の罠 』は、自ら歯科医に扮して親兄弟の歯科医院で1ヶ月以上観察し、自分で体験して書いた脚本。治療が目的でなく麻酔薬欲しさに来院する患者達を多く見てきて、こんなトッピなストーリー『 ノボケイン 局部麻酔の罠 』ができたのだ。
 『 ノボケイン 局部麻酔の罠 』は、コメディ・ポルノ?・サスペンス・フランス映画、というように展開していくので、ジャンルを一言では定義づけられない。観ながら、これアヤシイのでは?とまで勘違いしてしまった。最後まで"オチ"がわからない、そういう意味でスリルに満ちた映画と言えよう。ヒントとしては、主人公が歯医者さんだから、最後は歯医者の力を見せつける、というところ。
 『 ノボケイン 局部麻酔の罠 』主役には「花嫁のパパ」のスティーヴ・マーティン(『 女神が家(ウチ)にやってきた (2003) BRINGING DOWN THE HOUSE 』『 ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション (2003) LOONEY TUNES: BACK IN ACTION 』『 12人のパパ (2003) CHEAPER BY THE DOZEN 』等)が、ホームドラマ路線と別の味を見せる。彼は 1986 年の「リトルショップ・オブ・ホラーズ」でもサドな歯科医を演じている。
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
【スタッフとキャスト】
監督: デヴィッド・アトキンス David Atkins
製作: ポール・モネス Paul Mones
    ダニエル・ローゼンバーグ Daniel Rosenberg
製作総指揮: ミシェル・ワイズラー Michele Weisler
脚本: デヴィッド・アトキンス David Atkins
撮影: ヴィルコ・フィラチ Vilko Filac

出演: スティーヴ・マーティン Steve Martin フランク・サングスター
    ヘレナ・ボナム=カーター Helena Bonham Carter スーザン・アイヴィー
    ローラ・ダーン Laura Dern ジーン・ノーブル
    イライアス・コティーズ Elias Koteas ハーラン・サングスター
    スコット・カーン Scott Caan ドゥエイン・アイヴィー
    キース・デヴィッド Keith David ラント
    リン・シグペン Lynne Thigpen パット
    チェルシー・ロス Chelcie Ross マイク
    ケヴィン・ベーコン Kevin Bacon  ランス・フェルペス (uncredited)
<もっと詳しく>

ストーリー展開の前知識やネタバレがお好みでない方は、読まないで下さい。
■映画『 ノボケイン 局部麻酔の罠 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー
 私は日本公開前に字幕スーパーなしの英語で観たので、わかる範囲でレヴューします。映画データについては調査した時点と公開される時点で異なる場合があります。本作の内容については、語学力と経験・常識不足のため、間違いや勘違いや適切でない表現があるかもしれません。どうかご理解賜りますようお願いいたします。また、リンクやメールをいただく場合はここを必ずお読みくださいますように。
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 共演の女優二人は対照的。ヘレナ・ボナム=カーターは曾々祖父が元イギリス首相、叔父は映画監督のアンソニー・アスクィス、父が銀行頭取、母が精神科医という超ハイソなお嬢さん。「眺めのいい部屋」( 1986 )、「ラ・マスケラ」( 1988 )、「 PLANET OF THE APES 猿の惑星」( 2001 )等に出演の、小柄で黒髪、ヨーロッパ的なコケティッシュな魅力。一方、ローラ・ダーンは両親がハリウッド俳優の芸能一家の娘。「ジュラシック・パークT&V」( 1993 & 2001 )、「 I am Sam アイ・アム・サム」( 2001 )等に出演のブロンド長髪の大柄女優。劇中でも背が高いね、と言われるから、米国女性としても大型なのだろう。

 タイトルの「 NOVOCAINE ノボケイン」とは、歯科医や産婦人科で用いる局所麻酔薬の名前だそうだ。ノボカインとも表示する。コカインの分子構造が明らかにされた際、人工的に合成されて、リスクの大きいコカインの代わりに用いられるようになったそうだ。さあ、この局部麻酔薬、この映画のいつ、どこで使われるのか、最後までじっくり観て下さい!因みに、中国語ではこの映画は「奪命麻酔剤」という怖いタイトルだ。冒頭のクレジットのバックには顔や人体のレントゲン写真が何枚も出てきて、予備知識ゼロで観た私は、一体どんな映画なのだろうかとドキドキ。

 舞台は成功している洗練された歯科オフィス。白衣の院長フランク・サングスター(スティーヴ・マーティン)はスタッフと慌しく業務をこなしている。予約リストの通り患者達をさばくのに大忙しで、コーヒーにありつく時間もない。同じオフィスで働く大柄の(ちょっと馬面の?)歯科衛生士ジーン・ノーブル(ローラ・ダーン)は婚約中の恋人だ。看護婦か総務のパット(リン・シグペン)はしっかり物で、院長フランクの手はずを整える役割だ。今日も患者達が口を大きく開けて、麻酔を打たれて、治療されていく。米国だけあってプライバシー尊重のため、ひと部屋に診療椅子を複数並べることはしない。ひと部屋に一人ずつだ。それに、患者の目の前にはTVモニターが設置され、ヨーロッパの風景等(これ伏線!)が映って患者の気をそらしたり麻酔の効き具合を確かめたりするのに役立っている。この辺り、古き良き時代のアメリカ映画でよく耳にする喋り方のナレーションつきで、コメディかなと思った。

 美人の患者が来た。スーザン・アイヴィー(ヘレナ・ボナム=カーター)だ。この患者、治療に来たというのに香水つけている。フランクは先ず香水に平常心を失う。翌朝7時半に予約を入れたが、それまで我慢できないから痛め止めを欲しがる。 10 錠欲しいと言っても5錠しかダメです、とフランクは言って処方箋を渡す。少し経って薬局から、スーザン・アイヴィーという客に痛み止め 50 錠を売ってしまったがいいのだろうか、と連絡が来る。処方箋を書き直したのだな。

 フランクは自宅に帰ると、部屋の中が荒らされている。ここでフランクが不審者が隠れていると思って手にする"武器"が笑っちゃう。一本の歯の形、しかも抜いた歯の形、の数十センチもある大きくて重そうな置き物(飾り物?歯科見本?)だ。ここもコメディっぽい。そして、血まみれの男が倒れている、と思ったら、赤いペンキでそう見せかけている、弟のハーラン・サングスター(イライアス・コティーズ)だった。兄の洗練スタイルと全然違う、ちょっと変わったワイルドな弟で、成功している兄を妬んでいる。それにしても、スティーヴ・マーティンの白髪というのだろうか、鮮やかに白いなあ。「 MISSION: IMPOSSIBLE スパイ大作戦」のジム・フェルプス役のピーター・グレイヴスもそうだったけど、われわれ黄色人種が知っているおじさん、おばさんの白髪とは別物で、あれはシラガではないのかしら。

 翌朝、朝一番7時半の予約の例のスーザン・アイヴィーはすっぽかして来ない。フランクは診療の途中で、恋人ジーンに院長室で「椅子でしない?」なんて事を言って、ジーンは「夜にね」と受けてニヤリ。そうしてまた忙しい日が過ぎていった。夜、スタッフがみんな帰宅した後に帰ろうとしたフランク、そこにスーザン・アイヴィーがやって来た。何と、夜の7時半だと思っていたなんてわざとらしいうそをつく。仕方なく診察するフランクは、昨日の大量の痛み止めの件を叱ろうとするが、彼女の色香にまいってしまう。「椅子でしたことある?」なんて、フランクの"好み"で攻められたもんだからたまらない。診察椅子で…。この辺から、ワタシ間違って porno 観ているのかしら、と心配になってしまった…。こうして、スーザンは大量の薬"ドラッグ"を上手く手に入れる。フランクはジーンとの夜のデートの約束は口実を作って破って、ジーンはこの時、柔道のトレーシング。

 ドラッグの売買は犯罪なので、フランクは誰も知らない間にスーザンから薬を取り戻そうと考え、法廷に出すぞと脅かすが、またもや彼女の魅力に負けてしまう。翌日、スーザンの弟のドゥエイン・アイヴィー(スコット・カーン)がフランクの歯科オフィスになだれ込んでくる。「姉から手を引け」と、すごい荒れ方だ。どうも、この弟、姉に特別な感情を抱いているタイプらしい。スタッフは何事かと驚き、フランクはジーンに適当にうそをついて、その場を濁す。それでも、スーザンを脅かしに行ったと聞いて、初めから警察を呼べばよかったのにとジーンに言われる。スーザンと関係を持ったことはまさか話せない。

 その夜、フランクはスーザンの所に行って、弟がオフィスに暴れて入ってきたことを告げると、ベッドに寝ていたのは弟のドゥエインだった。そこで格闘になって、ドゥエインの手のひらをハサミで刺して逃げる。バーに寄ってから帰宅すると、男が殺されていた。ドゥエインだ。でも僕は手を刺したけど殺してはいない、とドギマギしていると、ジーンが来る。警察に電話しようとするが、空港に行くからいいと言っている間に警察が来てしまった。ここが注目すべきシーン。ケヴィン・ベーコンが、カメオ出演しているから。今度の映画で刑事の役をするので事情聴取のやり方を実地"勉強"したい俳優ランスということで。本物の刑事に、練習しなさいよと言われて、その気になってノッて刑事ぶる。このケヴィン・ベーコン、面白い。「インビジブル」( 2000 )の役はあまり好きでなかったが、ここではいい味出しているな。

 フランクはこの連日の奇妙な進展に頭がおかしくなってきて、歯科医院にいる気がしなくなって出ていく。あのスーザンと知り合ってからさんざんだ。ドラッグ騒ぎでは悪者呼ばわりされるし、殺人の容疑者にまでされている。フランクがスーザンの家に来た時、警察がやって来る。フランクの寄る所、警察がすぐ嗅ぎつく。何か変だ。この辺からサスペンス風。フランクは慣れていないのに、バスルームのサン・ルーフから屋根伝いに逃亡、でも、スパイでもアクション・スターでもないから、屋根から落ちちゃった。そして警察へ。手錠で繋がれたフランクだが、古い椅子のアームは簡単に外れ(またコメディ・タッチ)、そこに再度ケヴィン・ベーコンのお出まし。"スター"のランスに引っ付いて、逃げおうせた。そして、あの死体にはフランクの歯型がたくさん残っていたという情報を俳優ランスから聞く。歯医者さんの話らしくなってきた!

 スーザンはミシガンまで車で去ろうとしている。そこに殺人犯の容疑者フランクが来る。また護衛か尾行の役の警官が近寄ってきたので、フランクは車のトランクへ。途中のモテルでスーザンは警官から手錠の鍵を入手し、フランクはやっと手錠が外れた。フランクとスーザンはお互いに殺人事件には無関係なことをわかって、謎を解くために一緒に行動する。二人がジーンの家に侵入すると、 Frank Sangster というサインの練習の跡がある。ジーンは新しい会社を共同で始めようとしているようだ。更に調べていくと、ジーンの趣味らしい動物の縫いぐるみがいくつもある。そして、ドキッ、白い熊さんの縫いぐるみの口に、人間の上下完璧の歯型が挟んである!グッと全部の歯を、それも人間の歯を見せる縫いぐるみは奇怪だ。「羊たちの沈黙」( 1990 )のハンニバル・レクターが移動の際、面を被せられていた口と同様の異様さ。フランクが手にして見てみると、自分の歯型だった。思えば、いつか、ジーンが練習にフランクの歯型をとったっけ。

 そこにジーンが帰宅して、二人は隠れる。ジーンは 15 分後にフランクの歯科医院で誰かと落ち合う約束をしている。それに、この歯型も縫いぐるみの口から取って、持っていった…。歯科医院でジーンが会っていたのは、フランクの弟のハーランだった。ジーンは「完璧でいることにもうウンザリ!他人の為にいい子ぶって尽くすのはもうイヤ!」と言うや否や、ハーランを撃ち殺す。そして、フランクの歯型をたくさん死体につける。またもやフランクが犯人にされてしまうではないか!

 ひとあし遅くオフィスに入ってきたフランク。弟の死体を発見するが、動揺せず、ここで歯医者の特権を最大限に生かすのだ。死んでいる弟の口から、歯を一本一本抜いていく。それを歯型に収めて、次に、タイトルの「ノボケイン」局部麻酔薬。この名前の瓶がアップで映る。何をしでかすのだろうか?フランクはノボケインを自分の口に注射した!そして、自分の歯を、一本一本抜いている。血まみれだが麻酔が効いて、痛くない。この自分の歯を弟の口に植えた!それが済むと自分の歯科医院なのに放火して、逃走する。実に落ち着いた一連の動作だった。

 ジーンが銃を発砲する瞬間を、オフィス内のモニターが撮っていた。そして、火事現場の死体の歯はフランクの歯だから、殺されたのはフランクということになるわけ。これで全ての犯行はジーンによると断定され、ジーンは逮捕されて警察でヒステリックになっている。自分の歯型のトリックを上回る歯型のトリックに負けた…。

 ハリウッド口調のナレーションが楽しげに続ける。スーザンとフランクは空港に向かい、フランク著作の歯科の本の印税を溜め込んだお金で、フランスの田舎に家を買った。ヒマワリが咲き乱れ太陽が降り注ぐ南仏?の可愛い家。「じゃ、明日ね」とか「こんにちは」とかをフランス語で言っているフランク。寄り添うのは、お腹の大きいスーザン。いかにもフランス映画、あるいはイタリア映画のイメージだ。

 「男にとって最悪の事態は、歯をなくす事だ。」というしゃれた文句の後、 The End ではなく、 fin というフランス語で終わるのも、最後までしゃれているな。

以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず4375文字/文責:幸田幸

参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集
       http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
      ノボケイン公式サイト
      ロゴスの森 人体と医学
       http://logos.vis.ne.jp/medicine.html
2002/07/22新規: ファイル作成
2005/10/06更新: ◆追記
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