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クリムゾン・リバー
THE CRIMSON RIVERS

【解説】
 監督と脚本のマチュー・カソヴィッツは、「フィフス・エレメント」「アメリ」では俳優として出演している多才な人物。主演のジャン・レノはリュック・ベッソンと知り合ってから「グレート・ブルー」「ニキータ」「レオン」に成功、以後ベッソン作品の常連として活躍し、個性的マスクと独特の芸風で、今、最も人気のあるフランス人男優と言えるだろう。ヴァンサン・カッセルは「エリザベス」「ジャンヌ・ダルク」「ジェヴォーダンの獣」出演、「シュレック」の声の出演等、最も有望な若手フランス俳優で、妻は美人で誉れ高い「イタリアの宝石」モニカ・ベルッチ。    
 凍りついた死体から始まり、少女の謎の死との二つの事件の関連と追う、ベテラン刑事と若手刑事の二人の男のアクション・サスペンス・スリラー。フランスでベストセラーとなった同名小説の映画化。英題の意味は「深紅色の川」、フランス語の題の意味は「紫色の川」。いずれも生々しく血の流れた川を指しているのだろう。
【スタッフとキャスト】

監督: マチュー・カソヴィッツ Mathieu Kassovitz
原作: ジャン=クリストフ・グランジェ Jean-Christophe Grange
脚本: マチュー・カソヴィッツ Mathieu Kassovitz
撮影: ティエリー・アルボガスト Thierry Arbogast
音楽: ブリュノ・クーレ Bruno Coulais
    ラインプロデューサー: アラン・ゴールドマン Alain Goldman
 
出演: ジャン・レノ Jean Reno
    ヴァンサン・カッセル Vincent Cassel
    ナディア・ファレス Nadia Fares
    ドミニク・サンダ Dominique Sanda
    カリム・ベルカドラ Karim Belkhadra
    ジャン=ピエール・カッセル Jean-Pierre Cassel
    ディディエ・フラマン Didier Flamand
    フランソワ・レヴァンタル Francois Levantal
    フランシーヌ・ベルジェ Francine Berg
    フィリップ・ナオン Philippe Nahon

<もっと詳しく>
 二つの犯罪の捜査。同じ日。二人の刑事は二つの奇妙な事件の捜査を命じられる。

 フランス・アルプスを舞台に、あっと言わせる事件の背景を暴くアクション・スリラーだ。二人の刑事は一連のゾッとするような殺人事件に巻き込まれ、 20 年前に発生した一人の子供の死と、アルプス山麓の小さな町の秘密の歴史に迫る。

 舞台はフランス・アルプス、季節は冬。アルプス山麓にある大学町ゲルノンは、抜群の運動能力のある学生と高い知能の学生だけを集めた大学の町。アルプスに孤立して建っているこの名高い私立大学の近くで起こった異様な殺人事件を捜査するために、ピエール・ニエマン刑事(ジャン・レノ)が雪深いこの地に派遣される。裸で、胎児のような格好にされたバラバラ死体が発見されたのだ。これはどう見ても猟奇殺人で、殺人の動機に捏造した不可解な手がかりを残しているところからすると、殺人者は非常に理論的なことが覗われた。そしてニエマン刑事の捜査に非協力的で、挑戦的な態度すら見せる大学の上層部の連中は、何やら複雑な事情をかかえているらしい。

 同じ頃、ゲルノンから 300 キロメートル離れているフランスの田舎町ザルザックに、マックス・ケルケリアン(ヴァンサン・カッセル)という若く情熱的な刑事が捜査のために到着する。 20 年前に死んだ子供の墓を誰かが荒らしている事件が起こったからだ。

 ニエマン刑事は、知るところによると、両親は二人ともリヨン市郊外の小さな中学校の教師で、幼い頃からピエールは一匹狼的な性格をしていて、家族から離れて暮らすことを心に決めていた。それで 13 歳で寄宿学校に入り、軍隊に入るために厳しい肉体訓練にうち込んだ。 17 歳でバカロレア (フランスの大学入学資格試験) に合格、夢の士官学校入学が目前だった。しかし精神分析的な適性検査で軍隊には不適と見なされ、ピエールは、他の道に進むことになる。彼は肉体訓練で備わった強靭な身体能力を評価され、B.R.I.( Brigade de recherche et d'intervention )という特殊捜査部隊のエリート・スナイパーとなった。更に RAID ( L'unite de Recherche, Assistance, Intervention et Dissuasion )と協力して特殊任務に就くはずだった。しかし、彼は暴力的な性質なので、組織としては彼を扱いにくく思っていた。そんな折、このゲルノン市で起こった猟奇殺人事件の捜査に厄介者の彼を派遣したのだった。彼は今 43 歳、長身で、見るからに暴力的な一匹狼、 MR 73 式マチュランモデルの銃をコートの中に隠し持っている。

 一方、もう一人の刑事マックス・ケルケリアンは、孤児で、ナンテール市の施設で育ち、不良グループに入ってさんざん悪を働いて少年時代を過ごした。しかし彼は独立心旺盛で、こんな不良だったが大学に通い、車泥棒をしながら 21 歳で大学の法学部を卒業した。彼は刑事が自分に一番適していると考えて、警察学校では体力も知力も優等の評価を受け、犯罪者の心理の洞察にずば抜けているはずだった。しかし、優秀で卒業後、ロット県サルザック市の警察署に駐在して現実にする仕事といったら、万引きや駐車違反を扱うだけの些細な任務だった。彼の夢は凶悪犯罪の捜査だったのに。しかし、今 26 歳にして、やっとその夢がかなおうとしていた。はじめは関連など誰もわからなかった少女の墓荒らし事件が、恐ろしい猟奇殺人事件と複雑に関連し、ピエール・ニエマンと一緒に捜査をすることになる。夜と危険が大好き人間、自動車泥棒から足を洗って刑事になった、この変わり者の若きケルケリアン刑事は、ニエマン刑事を尊敬していたのだ。

 この二つの事件は一見、何の関連もなさそう見える。二人の刑事は、奇妙な事件の捜査をそれぞれ開始する。ニエマンはバラバラ死体の第一発見者の在籍するゲルノン大学に足を運ぶ。そこで氷河研究の女子学生(ナディア・ファレス)に事情調査する。彼女はロック・クライミングの好きな、化学にも精通した、まさに体力知力を兼ね備えた魅力的女性だった。

 一方、マックス・ケルケリアン刑事は亡き娘の墓荒らしをされた母親を探し当てると、母親は今は気が狂って修道院に入所している。目の前で娘を車にひかれて、そのとき以来気が狂っているのだ。また、その娘の通っていた小学校を訪れると、つい最近、その女の子の写真と書類が紛失しているという。盗まれたようだ。こんな手がかりを得て、この少女の墓の盗掘事件には何らかのもっと複雑な背景があると推測する。そして探し当てた少女の写真をニエマンに見せて、ニエマンは愕然とする。あの、今は成長しているが第一発見者の女性の顔なのだ。なぜ?少女は死んでいるではないか?

 こうして、お互い離れて捜査していくうちに、二つの事件が別件だという線は崩れていくのだ。何の関連もなさそうだったニつの事件が、実は一つの大きな犯罪であると目星をつけ始めたベテランのニエマン刑事と向こう見ずのケルケリアン刑事は、一緒に捜査を始めることになるのだ。ニエマンの絶え間ない冷やかしと皮肉に満ちたからかいにもかかわらず、マックスはこの年上の刑事に尊敬の念を抱く。ニつの犯罪は確かにつながっている…しかし、どんなふうに?そしてこの名高い大学の遺伝学研究室やそこにいる年老いた居住者達と、このニつの犯罪は、どんな関係があるのだろうか。格式高きこの大学は一体何を隠す必要があるというのか。

 二人の刑事は協力して捜査活動を始めていくと、二人が備えている特質はカリスマ的性質だけではないことにお互い気付く。鋭い本能と、プロの狡猾さと、危険を冒してでも万事に立ち向かう性質は、ニエマンとマックスは自分達がお互い似ていると認めざるをえなかった。そしてこれらの特質は、捜査が進展するとともにお互い頼り合える事実だった。そうする間に更に謎の殺人事件が起こり始める。犯人が残していく身の毛のよだつような手がかりは増大していき、犠牲者は増えていく。そして二人は恐ろしい驚愕の事実に切迫する。ゲルノン大学は、実は、体力と知力の優秀な者の遺伝子学上の研究をして、まるでナチの思想さながらに人体実験を重ね、ウルトラ人間を作っていこうとする組織だったのだ。二人は、カギは雪深いアルプス山脈にあるとにらみ、死と氷の世界であるアルプスの山岳へと向かう。

 二人の刑事は死の山の最後の決着の場面に遭遇する。真っ白な大雪のまさに氷の世界と死への入り口との狭間の罠にはまるのか。第一発見者の女性とこの氷の山上で二人は話し合い、一連の犯人はこの女性だと思う。でも、 20 年前に死んでいるはずだ…。この時、恐ろしい形相をした別の女がすごい力で襲ってきたのだ!ここで想像を絶する事実が暴かれる。二人はこの馬鹿力の女と格闘して、この女が第一発見者の女性とうりふたつの双子だと知る。この娘は 20 年前、交通事故で死ななかったのだ。町全体が大学の遺伝子研究の事情と裏で関連して、娘は死んだことにして、暗く深遠なシナリオが脈々とこの地を流れていたのだ。

 この映画制作は岩山と雪と氷との格闘で大変だったらしい。出演者たちは短期間で岩登りを教わって、雪山での危険なシーンに臨んだという。氷の山のあまりにも怖い撮影で失神した俳優もいたそうだ。厳寒の中のロケ、ご苦労様でした。なお、数々出てくる殺され方は猟奇的で結構気持ち悪いので、心臓の弱い女性は独りで見ないほうがいいです。

以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず3043文字/文責:幸田幸
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