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ハンニバル
HANNIBAL

【解説】
  1991 年にアカデミー賞5部門を制覇したトマス・ハリス原作の「羊たちの沈黙」の続編。医学博士の肩書きを持つ連続猟奇殺人鬼ハンニバル・レクターの復活劇を、「グラディエーター」( 2000 )の巨匠リドリー・スコットが1年8カ月の歳月と、製作費 8000 万ドル(約 91 億円)を費やして映画化したサイコ・ホラー。製作は戦後間もない頃から第一線で活動し続け、新しい才能を次々に発掘している国際的な名プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティス。彼は 10 年前「羊たちの沈黙」の脚本を見逃してしまった失敗から、続編の小説が発表された途端、 1000 万ドル(約 11 億円)という破格の値段で映画化の権利を購入していた。
 レクター博士(アンソニー・ホプキンス)の犠牲者である大富豪メイスン・ヴァージャー(ゲイリー・オールドマン)の陰謀でレクター博士を捜索することになったFBI捜査官クラリス・スターリング(ジュリアン・ムーア)。イタリア・フィレンツェでフェル博士と名乗り潜伏するレクターを、地元の刑事パッツィー(ジャンカルロ・ジャンニーニ)が見破るが…。 
【スタッフとキャスト】

監督: リドリー・スコット Ridley Scott
製作: ディノ・デ・ラウレンティス Dino De Laurentiis
    マーサ・デ・ラウレンティス Martha De Laurentiis
原作: トマス・ハリス Thomas Harris
脚本: デヴィッド・マメット David Mamet
    スティーヴン・ザイリアン Steven Zaillian
撮影: ジョン・マシソン John Mathieson
音楽: ハンス・ジマー Hans Zimmer
 
出演: アンソニー・ホプキンス Anthony Hopkins ハンニバル・レクター
    ジュリアン・ムーア Julianne Moore クラリス・スターリング
    ゲイリー・オールドマン Gary Oldman メイスン・ヴァージャー
    ジャンカルロ・ジャンニーニ Giancarlo Giannini リナルド・パッツィ刑事
    フランチェスカ・ネリ Francesca Neri アレグラ・パッツィ
    フランキー・フェイソン Frankie Faison バーニー
    レイ・リオッタ Ray Liotta ポール・クレンドラ
    イヴァノ・マレスコッティ Ivano Marescotti カルロ
    ヘイゼル・グッドマン Hazelle Goodman イヴェルダ(麻薬ディーラー)

<もっと詳しく>
 「羊たちの沈黙」のバッファロー・ビル事件から 10 年が経ち、あの頃訓練生であったクラリス・スターリング(ジュリアン・ムーア)は、経験を積んだFBI特別捜査官となっている。強暴な麻薬の売人であるイヴェルダ(ヘイゼル・グッドマン)逮捕の任務を任された彼女であったが、指示に従わないPDのお蔭で、現場の魚市場で激しい銃撃戦が起こってしまう。そしてクラリス自身もイヴェルダの銃弾を受け、やむを得ず赤ちゃんを抱いた母親であるイヴェルダを射殺する。なぜか事件を嗅ぎつけたマスコミによって、その現場の映像が撮られ、ニュースで放映されたお蔭で、世間の非難を浴びる事となったFBIは、クラリスを糾弾する。

 大富豪のメイスン・ヴァージャー(ゲイリー・オールドマン)は、かつてレクター博士の患者であった頃、博士を誘って変態な享楽に耽ろうとしたところ、逆に飲まされた麻薬のせいで、大変なことをしてしまう。レクターに操られるように、自分の顔の皮膚を剥ぎ取って、犬に与えたのだ。それ以来、豪邸の中で身の回りの世話をコーデル医師(ジェリコ・イヴァネク)にさせながら、見るも無残な形相で寝たきり同然の生活を送ることになったメイスンは、レクターへの復讐を誓い、 10 年前に逃亡を図ったレクターの行方を捜しているのだ。そんな彼はバーニー(フランキー・フェイソン)という、レクターがボルティモアの精神異常犯罪者病院に収容されていた頃に雑用係で勤めていた男から、レクターとクラリスの特別な関係について聞いていた。もしかして今度のことはメイスンの罠だったのだろうか。政府に莫大な政治献金を送る影の大物であるメイスンは、政界入りを目指している司法省のポール・クレンドラー(レイ・リオッタ)を利用して、窮地に陥ったクラリスをレクター捜査の任務につける。

 イタリアのフィレンツェに潜伏しているレクター(アンソニー・ホプキンス)は、フェル博士と名前を変え、ダンテに関する膨大な知識を背景に、カッポーニ宮の司書になろうとしている。彼の前任者が行方不明となっている事件を担当しているパッツィー(ジャンカルロ・ジャンニーニ)が、レクターの許にやってくる。以前は連続殺人を担当していたパッツィーは、人の心の奥を盗み見るように話す"フェル博士"に何かを感じる。同僚がFBIからの要請で香水店の防犯ビデオを録画している画面を見て、"フェル博士"が映っているのを見たパッツィーは、FBIのサイトを調べ、"フェル博士"がハンニバル・レクターであると知る。アメリカ政府が追う十大犯人の一人であるレクターに付いた懸賞金に目が眩んだパッツィー。彼は懸賞金を得るには指紋が必要と知り、街のスリにレクターの指紋をとるよう支持する。しかし、レクターに迫ったそのスリは、指紋の採取には成功するが、レクターにお腹を切り裂かれ死んでしまう。レクターは街の雑踏の中を何もなかったように去って行く。パッツィーが送った指紋は、FBIにではなくメイスンのところに届く。レクターの所在を知ったメイスンは、早速恐ろしい復讐を実行に移そうとするのだ。

 逃亡生活を続けながらも、ずっとクラリスを見続けていたレクターは、麻薬売人の逮捕ミス事件で窮地にいる彼女に「クラリス、いまも羊たちの悲鳴が聞こえるか…?」と手紙を送る。その手紙に付いていた香水から、クラリスはレクターの居所を探る。世界中のその香水が売られている店の防犯カメラが撮影したビデオをFBIに取り寄せ、レクターが映っているか確認する。フィレンツェの香水店のビデオにレクターの姿を確認したクラリスは、早速フィレンツェの警察に電話をするが、電話に出たパッツィーの様子が怪しい。彼は自宅からFBIのサイトにアクセスしレクターのことを調べているのに、何故レクターを知らないと言うのか。クラリスの忠告も聞かず、パッツィーは電話を切る。パッツィーの携帯電話の番号を調べたクラリスが次に電話をかけたときには、もうレクターの狂気の復活が始まっていた。電話に出たのはレクター。彼のそばには、口を封じられたパッツィーが台車に縛られ立っている。パッツィーはメイスンの手下達とレクターを捕獲するためにカッポーニ宮にやってきていたが、逆にレクターに捕まってしまったのだ。レクターはクラリスの声に嬉しそうだが、今はタイミングが悪いと電話を切る。そして、パッツィーの腹を割き、窓辺から突き落とす。ぶら下がる彼の死体からは内臓が…。

 レクターの捕獲に失敗したメイスンは、レクターをもう一度おびき寄せるため、クラリスをより窮地に陥れる作戦に出る。司法省のポールを使って、クラリスがレクターに関する証拠品を隠していたと偽装させ、彼女は休職処分になる。そんな彼女のためなのか、レクターはアメリカに戻り、クラリスをショッピングモールにおびき寄せるが、彼女を尾行していたメイスンの手下に見つかり捕まってしまう。その現場を目撃したクラリスは、レクターを奪還するためにメイスン邸へ向かう。

 メイスン邸では、メイスンがこの日のために飼育してきた食人豚がレクターを待っていた。たくさんの食人豚にレクターが生きたまま食べられるのを見るのが、メイスンの思いついた復讐だったのだ。まずは足を食べさせ、それから7時間後に残りを食べさせるつもりだ。人の叫び声のテープが流れる。その声に反応するように育てられてきている豚たちは、餌を探して一目散に走ってくる。そこにクラリス登場。レクターのそばにいるメイスンの手下を射殺し、縛られたレクターの身体を解放するが、潜んでいた手下に肩を撃たれてしまう。レクターが彼女を抱き上げたと同時に、豚たちがやってくる。血の匂いに反応する豚は、倒れている手下達に襲い掛かる。クラリスを抱えるレクターが去ろうとしたとき、主治医コーデルに付き添われ車椅子に乗ったメイスンがやって来る。メイスンはコーデルにレクターを捕らえるように命令するが、悩むコーデルにレクターは自分の所為にすればいいとメイスンを豚たちが群がるところに突き落とすように言う。傲慢な病人の世話にウンザリしていたのか、コーデルはメイスンの車椅子を押す。倒れて動けなくなっているメイスンのところに豚たちが近づいてくる。

 レクターはクラリスを彼女の家に連れて帰り、傷ついた肩から銃弾を取り除く手術をする。モルヒネが切れてきたクラリスがベッドから起き上がると、黒いセクシーな服を着せられている。レクターがこの家にいると知ったクラリスはフラフラと立ち上がり電話でFBIに要請を頼む。下で料理をしているレクターには、何もかもお見通しだが、全てが計算づくなのか慌てる様子は全く無い。クラリスがなんとか階段を下りていくと、ポールが食卓に座っている。彼はクラリスに会いに来たところをレクターに襲われたのだ。何だか様子がおかしいポールの頭を傷が一周している。レクターはその切り口にナイフを入れ切り取ると、ポールの脳が丸見えになる。そしてあろうことかポールの脳を本人に食べさせる。クラリスは、何とかレクターに抵抗しようとするが、モルヒネが効いていて体が思うように続かない。レクターを追って台所に入ったクラリスは、彼を背後から襲おうとするが、腕を捕まれ冷蔵庫に押し付けられる。動けない状態にされたクラリスに、レクターはキスをするがその瞬間彼女に手錠をかけられる。FBIがもうすぐ到着するのを知るレクターは手錠の鍵を返すように言うが、クラリスは渡さない。こうなったら手を切断するしかないと考えたレクターは、彼女を脅すがそれでも鍵を渡さない。切羽詰ったレクターがとった方法は、なんと自分の手を切断することだった。FBIが到着するが、逃げたレクターはもうどこにいるか分からない。

 飛行機内で手の痛みをこらえながら食事をしようとするレクター。美食家の彼の食事はなんだかおいしそうにみえるが…。隣席の日本人の少年[私には日本人には見えなかったけど…]がレクターの食事に興味を示す。どれを食べてみたいか聞くレクターに、少年が指差したものは例のあの脳みそだった。

 前作「羊たちの沈黙」の監督のジョナサン・デミと主演のジョディ・フォスターに代わって、本作では監督はリドリー・スコット、FBI捜査官クラリス・スターリング役はジュリアン・ムーアが演じている。デミ監督とフォスターの降板の理由は、あまりにゾッとする内容だからと伝えられている。アンソニー・ホプキンスがインタヴューで答えているように、クラリス・スターリングは力強さ、勇気、正直さ、腐敗に強く絶対に汚れない道徳観を持つ女性だ。意志の強い顔立ちをしているジョディ・フォスターのはまり役だったのにと残念に思うが、「ことの終わり」( 1999 )「ブギーナイツ」( 1997 )でアカデミー主演・助演女優賞にノミネートされ、今乗りに乗っているジュリアン・ムーアのクラリスもとてもよかった。

以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず3630文字/文責:幸田幸
【参考資料】
 CNN.co.jp エンターテイメント
 CINEMA WERDA ハンニバル
 allcinema ONLINE
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