変身
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 変身@映画の森てんこ森(シャイな幸の独り言)
変身
映画「変身」って?
2004年08月21日土曜日 「シャイな幸の独り言」トップへ
 “変身”という言葉を聞くと、仮面ライダーの「変身ベルト」や「変身コスチューム」、「変身メイク」、「変身願望」、「変身コスプレ」等の言葉を幸は連想する。映画では『 変身パワーズ (2002) THE MASTER OF DISGUISE 』を書いた。
 今日は、「カフカの変身」の映画化である映画『 変身 (2002) Prevrashcheniye (原題) / METAMORPHOSIS (英題) 』を解説しようと思って「読む映画映画試写会」解説ファイルを作成したのだが、映画「変身」の資料が不足で、2004年8月21日の現時点で、映画「変身」の日本の配給元であるパンドラさんに資料を請求している状態である。

 このファイルの目次は以下です。
■映画『 変身 』の原作者カフカって?
■映画『 変身 』の原作・小説「変身」のあらすじ

【「カフカ」って?】
 映画『 変身 』の原作「 Die Verwandlung (変身)」を著したフランツ・カフカ Franz Kafka ( 1883-1924 )は、チェコの世界的に有名な作家。旧チェコスロバキアのプラハ Prague, Czechoslovakia のユダヤ系の家に生まれ、父親の考えでドイツ語の教育を受けた。だから映画『 変身 』の原作小説「変身」はドイツ語で書かれている。
変身 カフカ
カリフォルニア大学・バークレー校ドイツ学部より
引用させて頂いたカフカの写真。

「変身」のドイツ語タイトルは「 Die Verwandlung 」といい、カフカが 29 歳の時に執筆して 32 歳の時、 1915 年に出版された。カフカが「変身」を書いてから約 90 年が経ち、今年 2004 年はカフカが亡くなって 80 周年である。カフカ kafka というのはチェコ語で「烏(カラス)」という意味。役人として短い生涯を終えたカフカの作品が世に出て認められたのは死後のものが大部分だそうなので、名声を得ないまま静かに亡くなっている。プラハ城の黄金小道で先日見学したカフカの家は非常に狭かったので、カフカが生前、決して恵まれた暮らしをしていなかったと実感できる。フランツ・カフカの代表作には、この「変身 The Metamorphosis 」の他に、「判決 The Judgement 」「審判 The Trial 」「城 The Castle 」「アメリカ America 」「断食芸人 A Hunger Artist 」等がある。カフカの作風は迷宮的・不条理で、カフカは実存主義文学の先駆者と言われている。

【カフカの「変身」 小説のあらすじ】
 映画『 変身 』のあらすじは、カフカの小説「変身」が原作ということは確かなのだけど、どこまで原作に忠実かは不明だ。で一応、原作のあらすじを簡潔に書いておこう。

<カフカ「変身」第01段落>   『 変身 』の主人公グレーゴル・ザムザ(エフゲニー・ミロノフ)は若い独身男性。グレゴールと書かれる場合もあるようだ。まあまあのアパートに、両親と妹との四人家族だ。父親は五年前に事業に失敗して以来、家に篭ってやる気もなく頑固で自信を失っている。ということで、長男グレーゴルの稼ぎで一家を経済的に支えてきた。グレーゴルは旅行業のセールスをしている。列車の時刻表とにらめっこしたり、旅行地の毎日違う業者たちと連日、話を煮詰めたりして、ストレスがいっぱいだ。

<カフカ「変身」第02段落>  グレーゴルはこの夜も悪夢を見て、朝、自室で目覚めたら「虫」になっていた。本当の虫のサイズでなくて、人間サイズの虫のようである。甲羅は固く、細くて小さな脚が何本もあり、触覚まで備わっている。歯はなくて、しっかりした顎があるとか。原文でも何の種類の虫かは明らかでないけど、英語では「 horrible vermin (ひどい害虫)」となっており、私は勝手に「御器齧(ゴキブリ)」または「百足(ムカデ)」を想像している。舞台でこの「変身」を客に見せるのは困難だが、この映画『 変身 』では、CGは一切使わないそうだ。どういう風に見せるのだろう。ゴキブリかムカデの縫い包みを着るのか? それとも、芝居で、観客に虫になっていると幻想を抱かせるのか? 案外コミカルに見せるのかもしれないし。

<カフカ「変身」第03段落>  グレーゴルはベッドから起き上がるのにも一苦労。両親と妹は、出勤する時刻なのに朝食に起きてこないグレーゴルを心配する。声をかけるが、返事するグレーゴルの声は虫の声なので、よく聞き取れない。グレゴールは長年の旅行業(きっと添乗員もしているから)の習慣で部屋の鍵はロックしているので、家族に部屋に入ってこられて、へんな虫に変身した自分を見られることはない。でも、勤務先の上司も不出勤を咎めにやって来た。家族は、病気らしいのです、と必死に宥めるが、上司は結構怒っている。怠惰なら、もう仕事はやらないつもりなのか、給料はどうなってもいいのか、なんて感じで立腹しているので、グレーゴルの家族は気が気でない。何しろ一家の大黒柱はグレーゴルなのだから。母は、医者と錠前屋を呼びに行かせる。

<カフカ「変身」第04段落>  そうしている間にグレーゴルは、ベッドからやっとの思いで這い降りて、自分の顎で鍵を回してドアから半身を覗かせた。直立した、巨体のゴキブリ(か何かの虫)である。会社の上司は一目散に逃げ出す。母親は卒倒しそう。父親は目の敵みたいに怒って、ほうきで部屋に追い払う。 17 歳の妹グレーテ Grete は、親達がグレーゴルの部屋に入ろうとも会おうともしない中、兄の変身の虫に、毎朝、毎晩、‘えさ’を上げに来てくれる。そうすると、グレーゴル自身、虫になって食べ物の好き嫌いも変化したと気付く。でも、妹が毎日食べさせてくれるから、狭いながらのベッドルームでどうにか暮らしていった。

<カフカ「変身」第05段落>  グレーゴルがまだ虫に変身する前、妹はバイオリンが得意なので、音楽学校へ進学させてやろうという話をクリスマスにでも話そうとしていたものだ。それが、変身して、クリスマスも過ぎ、窓の外の気配はどんどん季節が変わっていく。妹は、流石、兄虫の世話が重荷になって、部屋に入ると窓を開け放して外の空気を吸ってないといられないくらい、本当は嫌なのだ。グレーゴルはカウチの下に潜って白いシーツを被って、醜い自分の姿を直視されないようにしたり工夫もするし、壁や天井を這い回るという新しい楽しみを覚えた。

<カフカ「変身」第06段落>  それを知った妹は、壁に家具がない方が好きなように這いまわれるだろうと考え、父の留守に、母親に手伝ってもらって、家具やデスクを部屋から運び出す。しかし、そういう家具は、グレーゴルの思い出がいっぱい詰まった大切なものなのでグレーゴルとしたらそのまま置いておいて欲しいのだ。でも伝わらない。また、雑誌から切り抜いたお気に入りの写真を額に入れてかけておいたのまで外されそうになり、グレーゴルはそのガラス面に引っ付いて抵抗する。それを見てしまった母親はショックで倒れる。そんなこんなで妹はストレスが募り募って、もうグレーゴルの部屋を掃除する気さえ失せてしまう。だから部屋は埃だらけで、グレーゴル虫が歩くだけでも白い埃が舞い上がる。

<カフカ「変身」第07段落>  ところで、一家を支えてきたグレーゴルが虫に変身してしまってから、一家は暗く、ため息ばかり。収入確保のために、父親は銀行に職を見つけて働き始めている。母親は下着縫製かなにかの内職を。妹は、いい条件の職に就けるように、速記とフランス語を習い始めている。メイドさんはいて食事を料理していたのだが、グレーゴルの変身騒ぎがあって辞めてしまった。そんな一家だけど、掃除婦のおばさんは雇っているから、そんな落ちぶれていないようでもある。この掃除婦は、グレーゴルの巨大な虫の姿に好奇心があり、覗いたりしている。

<カフカ「変身」第08段落>  このザムザ家の空き部屋を、三人の男性に貸すようになった。これで少しは収入が増える。グレーゴルは、ドアの隙間から、自分が以前座っていた食堂の椅子によその男が座るのを寂しく眺める。そういう三人に遠慮して妹がバイオリンを陰の部屋で弾き始めると、彼らjは興味を持って歓迎し、ダイニングルームで演奏させる。暫くすると、バイオリン演奏が思ったほど彼らの趣味に合わなかったらしく、タバコを吸ったりして無関心な顔に。それをひっそりと見ていた兄虫グレーゴルは、音楽学校にまで行かせてあげようと思っていたんだよと、愛する妹に近づいて行ってしまう。

<カフカ「変身」第09段落>  すると、間借り人の男性が巨体のその虫を初めて見て、隠していたことを怒り、大騒ぎになる。母も妹も泣きじゃくり、父親はリンゴをグレーゴルに投げつけるのだ。リンゴはゴキブリ状のグレーゴルの背中に命中し、グレーゴルは身体を傷めて、リンゴは体内に腐ったまま残ってしまう。また、この騒ぎでグレーゴルのか弱い細い脚はもげる。こういう苛立ちがピークに達したザムザ家の親娘三人は、これからどうしたらいいのかと肩を寄せ合って語り合う。それには兄さんに死んでもらうしかない、と言い切る妹グレーテ。そうすれば、別のアパートに引っ越して、何もかも忘れて新しい生活ができると。あの怪物が兄さんだなんて思わなければいいのだからと。

<カフカ「変身」第10段落>  それが聞こえていた兄虫グレーゴルは、もう誰も掃除してくれない埃だらけの自室で、もう動かなかった。食べ物は妹は置いてくれてはいる。でも、以前のように、どれだけ‘えさ’を食べたかとか、どれを食べてどれを残したか、なんて気にしてくれていない。兄虫グレーゴルはもう食べないようにした。じっとじっと…。果たして、翌日、干からびた巨大な虫の死骸を発見した掃除婦はご機嫌で、ポイ。後に残った父・母・妹の三人は仕事を休んで、久しぶりの遠出で楽しい一日を過ごした。三人には新しい希望の生活が待っていた。以前のようにグレーゴルに依存せず、前向きな姿勢で自立できるようになっていたのである。‘変身’したのはグレーゴルだけでななかった・・・。(※以上のカフカの小説「変身」のあらすじは幸の勝手な理解で、日本の文庫本の内容とは文学的に、または部分的に異なっているかも知れません。悪しからずご容赦ください。)

参考資料:『 変身 (2002) METAMORPHOSIS (英題) 』(映画の森てんこ森)
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
      THE PROJECT GUTENBERG EBOOK, METAMORPHOSIS
       英文 Project Gutenberg eBook/Translated by David Wyllie
       http://www.gutenberg.net/etext04/metam10.txt
      German Department, University of California, Berkeley
       http://german.berkeley.edu/ 
Text by Sati
coda21「映画の森てんこ森」幸田幸。
coda_sati@hotmail.com
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