運命を分けたザイル
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運命を分けたザイル (2003)
TOUCHING THE VOID
 映画『 運命を分けたザイル (2003) TOUCHING THE VOID 』をレヴュー紹介します。『 運命を分けたザイル (2003) TOUCHING THE VOID 』は 2004/05/08 の時点で邦題が分からなかったので「タッチング・ザ・ヴォイド」としておいたら『 運命を分けたザイル 』と決まった。

 映画『 運命を分けたザイル TOUCHING THE VOID 』を以下に目次的に紹介する。
■映画『 運命を分けたザイル TOUCHING THE VOID 』のポスター、予告編および映画データ
■映画『 運命を分けたザイル TOUCHING THE VOID 』の解説
 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。
■映画『 運命を分けたザイル TOUCHING THE VOID 』の主なスタッフ
■映画『 運命を分けたザイル TOUCHING THE VOID 』の音楽
■映画『 運命を分けたザイル TOUCHING THE VOID 』のトリビア
■映画『 運命を分けたザイル TOUCHING THE VOID 』のスタッフとキャスト
■映画『 運命を分けたザイル TOUCHING THE VOID 』の<もっと詳しく>
 <もっと詳しく>は映画『 運命を分けたザイル 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタばれ)です。※ご注意:映画『 運命を分けたザイル TOUCHING THE VOID 』の内容やネタばれがお好みでない方は読まないで下さい。
■映画『 運命を分けたザイル TOUCHING THE VOID 』の結末
■映画『 運命を分けたザイル TOUCHING THE VOID 』の更新記録

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幸の鑑賞評価: 8つ星 
■映画『 運命を分けたザイル 』のポスター、予告編および映画データ
運命を分けたザイル
運命を分けたザイル

Links:  Official Web Site
Trailers: Quick Time
上映時間 Runtime: 1:47
製作国 Country: イギリス
UK
製作会社
Production Company:
Darlow Smithson Productions [us]
FilmFour [gb]
Pathe
UK Film Council [gb]
全米配給会社 Distributer: IFC Films [us] (2004)
全米初公開 Release Date: 2004/01/23 (New York)
日本初公開 R. D. in Japan: 2005/ 2/11 予定
日本公開情報 : アスミック・エース
ジャンル Genre: ドキュメンタリー・ドラマ
Drama-documentary ( docudrama )
MPAA Rating 指定: Australia:M / Germany:12 / Netherlands:MG6 / Switzerland:7 (canton of Geneva) / Switzerland:7 (canton of Vaud) / UK:15
日本語公式サイト
http://unmei-zairu.com/
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com.
Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc.
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■映画『 運命を分けたザイル TOUCHING THE VOID 』の解説

 『 運命を分けたザイル (2003) TOUCHING THE VOID 』は原題と同名の実話「 タッチング・ザ・ヴォイド Touching The Void (邦題:死のクレバス アンデス氷壁の遭難)」の映画化である。『 運命を分けたザイル 』は、英国のスタッフが生と死の極限の世界をスクリーンに再現した作品。一人は命綱を切った罪悪感に苛まされ、奇跡的に生き残った一人は骨折の脚で幾多の困難の末、下山する。山岳ノンフィクションのこの映画『 運命を分けたザイル 』、ジャンルは英語では‘ Drama-documentary ’とか‘ Docudrama ’と呼ぶようである。
 『 運命を分けたザイル 』は、人間の恐怖・罪悪感・苦痛・飢餓といった要素を感動的に伝えている秀作だと評判だ。観ている間ずっと息が止まっているような緊迫感で、こういう映画って大好き! 面白かった。

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■映画『 運命を分けたザイル TOUCHING THE VOID 』の主なスタッフ

○『 運命を分けたザイル 』監督: ケヴィン・マクドナルド
『 ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実 (1999) ONE DAY IN SEPTEMBER 』
で 1999 年のアカデミー ドキュメンタリー長編賞に輝く。

○『 運命を分けたザイル 』製作総指揮: ポール・トリビッツ
家族のかたち (2002) ONCE UPON A TIME IN THE MIDLANDS

○『 運命を分けたザイル 』製作管理: ピーター・マッカリーズ
ブリジット・ジョーンズの日記 (2001) BRIDGET JONES'S DIARY
モーターサイクル・ダイアリーズ (2004) THE MOTORCYCLE DIARIES

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■映画『 運命を分けたザイル TOUCHING THE VOID 』の音楽

○『 運命を分けたザイル 』の音楽は
真夏の夜の夢 (1999) WILLIAM SHAKESPEARE'S A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM
等のアレックス・ヘフスによるが、

○『 運命を分けたザイル 』の様々な音響面のテクニシャンには、

フル・モンティ (1997) THE FULL MONTY
リトル・ストライカー (2000) THERE'S ONLY ONE JIMMY GRIMBLE
ハリー・ポッターと賢者の石 (2001) HARRY POTTER AND THE SORCERER'S STONE / HARRY POTTER AND THE PHILOSOPHER'S STONE
マグダレンの祈り (2002) THE MAGDALENE SISTERS
28日後... (2002) 28 DAYS LATER 』のフェリシティ・コットレル Felicity Cottrell 、

イン・ディス・ワールド (2002) IN THIS WORLD
CODE46 (2003) CODE 46 』のジョーキム・サンドストローム Joakim Sundstrom 、

リトル・ダンサー (2000) BILLY ELLIOT 』のアンソニー・フォースト Anthony Faust 、

堕天使のパスポート (2002) DIRTY PRETTY THINGS
処刑・ドット・コム (2002) MY LITTLE EYE
ジョニー・イングリッシュ (2003) JOHNNY ENGLISH
モナリザ・スマイル (2003) MONA LISA SMILE 』のアンディ・リチャーズ Andy Richards
らが活躍している。

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■映画『 運命を分けたザイル TOUCHING THE VOID 』のトリビア

 『 運命を分けたザイル 』はトム・クルーズ Tom Cruise (
レインマン (1988) RAIN MAN
マグノリア (1999) MAGNOLIA
オースティン・パワーズ ゴールドメンバー (2002) AUSTIN POWERS IN GOLDMEMBER
マイノリティ・リポート (2002) MINORITY REPORT
ラスト サムライ (2003) THE LAST SAMURAI
コラテラル (2004) COLLATERAL 』出演や
NARC ナーク (2002) NARC
ニュースの天才 (2003) SHATTERED GLASS 』製作)
の主演で、もう少しでハリウッド映画になるところだったそうだ。トム・クルーズは
M:I−2 (2000) MISSION: IMPOSSIBLE 2 / M:I-2
でもロック・クライミングを独力でやり遂げたし、こんな登山の話でも可能かも。でも『 運命を分けたザイル 』はスケールが違いすぎて怖すぎ…。
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【『 運命を分けたザイル 』のスタッフとキャスト】
監督: ケヴィン・マクドナルド Kevin Macdonald (Directed by)
製作: ジョン・スミスソン John Smithson (producer)
    ジーナ・マーシュ Gina Marsh (line producer)
製作総指揮: チャールズ・ファーノウ Charles Furneaux (executive producer)
    ロビン・ガッチ Robin Gutch (executive producer)
    ポール・トリビッツ Paul Trijbits (executive producer)
製作管理: ピーター・マッカリーズ Peter McAleese (Production Management)
原作: ジョー・シンプソン Joe Simpson (book 『 死のクレバス アンデス氷壁の遭難 』岩波現代文庫)
撮影: マイク・エリー Mike Eley (Cinematography by)
    キース・パートリッジ Keith Partridge (Cinematography by)
編集: ジャスティン・ライト Justine Wright (Film Editing by)
音楽: アレックス・ヘフス Alex Heffes (Original Music by)
    ビヴァン・スミス Bevan Smith (electronic music)

出演: ニコラス・アーロン Nicholas Aaron as Simon Yates
    ブレンダン・マッキー Brendan Mackey as Joe Simpson
    オーリー・ライアル Ollie Ryall as Richard Hawkin
    リチャード・ホーキング Richard Hawking as Himself
    ジョー・シンプソン Joe Simpson as Himself
    サイモン・イエーツ Simon Yates as Himself

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ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。
■映画『 運命を分けたザイル 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー

【運命を分けたザイル 第01段落】  映画『 運命を分けたザイル (2003) TOUCHING THE VOID 』の原題「 タッチング・ザ・ヴォイド Touching The Void 」の直訳は「空間を触る」「空虚に手を届かす」ことだ。雪山の絶壁で遭難したら、そんな風に感じるのだろう。この映画『 運命を分けたザイル 』は、実在の英国人登山家二人、ジョー・シンプソンとサイモン・イエーツ、それにベースキャンプの担当だったリチャード・ホーキングという三人の本人達とのインタヴュー映像を幾度も挿入しながら進めていく。

【運命を分けたザイル 第02段落】  撮影は、『 クリムゾン・リバー (2000) THE CRIMSON RIVERS / LES RIVIERES POURPRES 』のロケ地でもあるフランスのオート・サヴォア県シャモニー Chamonix, Haute-Savoie, France と、スイスのカントン州・ベルン州グリンデルワルト Grindelwald, Kanton Bern, Switzerland 、及び、実際にペルー・アンデスのシウラ・グランデ峰でもロケが敢行された。俳優も撮影班もどんなに困難を極めただろうと想像する。登山の遠景撮影のシーンでは、俳優でなくジョー・シンプソンとサイモン・イエーツ本人達が登っているそうだ。そそり立つ雪と氷の巨大な絶壁を蟻んこの如くへばり付いてアタックするのは本物の超精鋭クライマーしか出来るもんじゃない。あんな想像を絶するテクニック、俳優では絶対無理だもの!

【運命を分けたザイル 第03段落】  1985 年、英国人登山家のジョー・シンプソン(ブレンダン・マッキー)とサイモン・イエーツ(ニコラス・アーロン)は、ペルー・アンデス山脈 the Peruvian Andes で唯一人類未踏だった山シウラ・グランデ峰 Siula Grande の登頂を目指すことを決めた。シウラ・グランデ峰は 20,853 フィート(約 6356 m)もある険しい山だ。富士山の二倍の高さがあると考えただけでもその凄さは見当がつく。これまでに人がチャレンジしなかったわけではない。したけれど、誰も登頂に成功した人はいない、という難しい山なのだ。

【運命を分けたザイル 第04段落】  ジョーは 25 歳、サイモンは 21 歳という若さ。二人とも登山の技術には卓越し、自信たっぷりだった。二人はアルプスは登山経験が豊富で、若いから怖いもの知らず。今回のシウラ・グランデ峰初登頂の成功も実現できると確信していた。二人はアンデスの山麓の町からロバと荷物運びの人を雇って暫く進み、これ以上ロバの進めなくなる地点でベースキャンプを張った。そこは氷河の終点付近で、周りは黄色の岩がゴロゴロしている地域。エメラルド色の小さな湖もある。二人は下山するまでベースキャンプを守ってくれる人を雇った。全然知り合いでもない白人の旅人リチャード・ホーキング(オーリー・ライアル)である。

【運命を分けたザイル 第05段落】  ジョーとサイモンはシウラ・グランデ峰の西壁をアルペンスタイルで登り始める。アルペンスタイルというのは、ベースキャンプやら装具やらにあまり頼らずに短い行程で登頂・下山をすることだそうだ。となると、アルペンスタイルで最も重要な点の一つは、登頂するパートナー同士の絆(きずな)・信頼関係になる。命綱でくくられた二人だから、どちらかが滑り落ちれば、二名ともに死を意味する。だから、両者とも相手の技量を信頼して命綱を結び合うのだ。さて、この実際にあった話で、登山の世界では恐らく一番よく知られている遭難事件は、生還してからジョー・シンプソンが著した山岳ノンフィクション「 タッチング・ザ・ヴォイド Touching The Void (邦題:死のクレバス アンデス氷壁の遭難)」(岩波現代文庫)で世界中の人々に読まれてきた。それが今回、映画『 運命を分けたザイル 』となって蘇る。

【運命を分けたザイル 第06段落】  ジョーとサイモンは、シウラ・グランデ峰の西壁を、ほぼ垂直の氷原を用心深く進む。雪山登山の素人には信じられない怖さである。ホントに一歩一歩、雪面・氷面にアイゼン・ピッケルを打ちつけ、特殊登山靴の先を垂直に確実に‘刺し込んで’いく。幸はそんな登山靴は実際履いたことも見たこともないけど、靴の底は鋭いナイフ状のものが何本も突き出ているのだ。激しい吹雪になればピバークして、ガスボンベで雪を溶かして飲む。それだけでも1時間。物凄い寒さなのだなぁ。そうこうして、二人にとって、登頂するのは案外容易だった。二、三日でシウラ・グランデ峰初登頂を達成できた。二人は頂上で抱き合い、周囲に広がる雄大なアンデスの岩山・雪山の群れを見下ろす。

【運命を分けたザイル 第07段落】  登山の遭難事故の 80 %は下山に起こるそうだ。だから、初登頂に成功した二人も有頂天にはならず下山のことを心配して取り掛かる。しかし、下山するには、登ってきた西壁は不可能だと悟り、北壁を下ることになる。北壁は二人は熟知しておらず、ルートの計画も立てていないし、おまけに山の形状は非常に複雑で、天候も不安定だった。山の稜線からは、雪庇(せっぴ)といって張り出した庇(ひさし)状の積雪が幾つも二人の進路を塞ぎ、危険が待ち構えている。実際、雪庇を踏み外して落下しヒヤッという場面も出てくる。

【運命を分けたザイル 第08段落】  垂直な雪面・氷面を下るのは見るだけでも怖そう。命綱で二人は結び合い、一歩一歩、用具を打ち込んで靴先を刺す。よくこんなことできるわぁ、って感じ。帰途は時間が思ったよりもかかる。流石の二人も困難さを実感している。そんな時、下の位置にいたジョーが滑り落ちて、硬い氷面に脚を打ちつけて骨折させてしまった。ヤバイ、痛い、何でまたこんなことに、と自分をなじるジョーが見上げると、サイモンも何とも言えない厳しい顔。しかし、この場面でサイモンは頑張る。骨折したジョーは独力で下山できないわけだから、命綱を工夫してジョーを滑り降ろしてくれるのだ。

【運命を分けたザイル 第09段落】  サイモンは 45 メートルのザイルを二本使って 90 メートルにし、真ん中に結び目を作って操作してジョーを滑り降ろす。ジョーがザイルのその長さまで降ろされたらその場に雪の穴をこしらえて、サイモンが降りてきたらその穴で踏ん張ってジョーを滑り降ろす役目をするという手法。垂直に近い雪の面で、その作業を何度も繰り返していく。しかし、数度目に、ジョーが滑り降りる途中で雪の面がへこんでなくなり、ジョーは宙ブラリの状態で吊るされた状態になってしまった。それは上にいるサイモンには見えないし声も聞こえない。宙ブラリのすぐ下はクレヴァスの口である…。

【運命を分けたザイル 第10段落】  サイモンは咄嗟(とっさ)にはジョーの状況が把握できなかった。だからその場で雪穴にピバークして脚を踏ん張ってジョーの体重を堪え続ける。滑り落ちたジョーは宙ブラリで吊るされているが、まだ生きているとサイモンに知らせる手立てはなかった。サイモンは雪に座り続けて腰も手も凍えてくるし、酸素ボンベも減って、更に、座っている雪は新雪でサラサラだからどんどん落ちていっている。吹雪が物凄くなっていつつぶれるか分からない。このままでは、落下したジョーに引かれてサイモンまでも落ちて死ぬのだ。サイモンには滑り落ちたジョーは死んでいると思われた。ここで、サイモンは生死の究極の選択を迫られる。

【運命を分けたザイル 第11段落】  1時間半後、サイモンは決断した。ザイルを切ることを。これは、万一ジョーが生きていれば死なせてしまうことを意味する。この事は、山岳界では事実上の罪となっているという。しかし、そのお蔭で少なくともサイモンは絶壁を落下しなくてすむのだ。サイモンはザックから凍えた手でナイフを取り出し、ザイルを切った。

【運命を分けたザイル 第12段落】  まだ生きているジョーは、アッという間に奈落の底へ落ちていった。けれども、奇跡的に死ななかった。そこは深いクレバスの中。何十メートルもの氷の竪穴と思ったらいい。氷のギザギザ等があり、そこに引っかかったようである。ジョーは自分が生きていることが分かると、色々試みる。ヘルメットの懐中電灯も電池の節約のために消した。そしてじっくり考えてみようとしても、暗黒に堪えることはやはりできない。ザイルを手繰り寄せて、それは人為的に切られたのだと判明しても、ジョーはサイモンを恨まなかった。そうする他ないことを誰よりもよく理解した。ジョーは上に登ろうと無論やってみるが、片足骨折状態で到底できるものではない。痛みと絶望がジョーに襲い掛かる。

【運命を分けたザイル 第13段落】  この後、ザイルをそこに固定して、下方へ降りることにジョーは決めた。常識を吹っ飛ばす思考だナ。結果的にこのことが彼を生かしたのだ。運命も生命力も決断力も並みの人間ではないなというのを大きく感じた私。クレバスを下に行けば行き止まりならそれで終わり。途中で落下してもそれで終わり。しかし、ジョーは痛む骨折の脚をかばいながら降下していく。すると終着点の雪の底があった。そこからは別の方向の遥か上方に日光が見える。そこからがまた凄い。その痛んだ身体で、氷の穴を今度は登っていくのだから。そしてその最中、さっき降り立って底だと思っていたのは仮の底であって、その雪面が落ちていった。ゾッ。そこに居続ければ落下していたのだ。

【運命を分けたザイル 第14段落】  その頃、ベースキャンプを守っているリチャードは嫌な予感を抱いていた。二人とも遭難して死んでしまったような。或いはどちらか一人が死んでしまったような気がした。そして、こんなことを口に出してはいけないことだが、生きて帰るならサイモンの方がいいとも思った。そういう事を本物のリチャード・ホーキングが合間の画像で語る。リチャード・ホーキングは悪げのない素朴な人柄だなと思われた。そしてクライマー当人、サイモン・イエーツとジョー・シンプソンの本人達も度々画像で登場しては、その時その時の心理を述べる。二人ともイギリス人英語のアクセントがキマッテいてなかなかユニーク。 dangerous を「ダンジャラス」とか way を「ワイ」といった喋り方だ。顔つきは、サイモンはお猿さん(失礼!)みたいで目がくりくり耳が大きい。ジョーの方がハンサムかな。リチャードは人がよさそう。

【運命を分けたザイル 第15段落】  さて、サイモンはジョーとの命綱を切ってから、独り下山を果たし、無事にベースキャンプに戻ってきた。待っていたリチャードに最初に口にしたのは、命綱を切った顛末だ。しかしリチャードはそれを全然咎めなかったのでサイモンは少し救われる。でも罪悪感はサイモンの心身に染み付いてとれない。キャンプのそばの透明な湖に頭も体も浸してスッキリさせようとした。そして、本来ならばベースキャンプをたたんで去るところなのだけど、気持ちの整理がついていないのでそんな気にならず、もう二、三日ここにいるつもりだ。

【運命を分けたザイル 第16段落】  下界で仲間がそんな行動をしている時、遂に、ジョーは穴の外に出られた。そこはなだらかな雪面だった。そしてサイモンの足跡が新雪にくっきり残っていたのでその跡を追う。骨折しているから腹ばいとか大変な姿勢でだ。それに、ジョーは脱水性で喉がからからだが、ガスボンベはもう空になったからお湯も沸かせない。暫くすると吹雪になって、サイモンの足跡を消し去った。真っ白な世界で方向も分からなくなり、クレバスが数十個も口を開けている地域ではジグザグを繰り返し体力を余計に消耗した。あまりの苦しさに、眠ってそのままになるという誘惑にもかられるが、気を強く持つ。

【運命を分けたザイル 第17段落】  ジョーはこうなったからには何が何でも生き通すのだと決心している。痛くて痛くてたまらなくてもベースキャンプまで辿り着くのだと。下山してくるにつれ、雪が消え、辺りは岩や石のゴロゴロしている地域に変わる。すると、雪のように滑らないしクッションがないので、骨折の脚にもろに響く。そこで、荷物は最小限に抑えて捨てることにした。ラバーのような素材のものは痛む脚にグルグル巻きにして保護した。それでも片脚で跳んで進むというのはこんなゴツゴツした地では不可能で、一足ごとに倒れこんで脚を強打していく。

【運命を分けたザイル 第18段落】  その頃、ベースキャンプでは、待っても帰らない‘死んだ’ジョーのTシャツやズボン等を、サイモンとリチャードは燃やした。そして、サイモンの両手の凍傷が激しいこともあり、翌日、そこを発つことに決めた。

【運命を分けたザイル 第19段落】  ジョーは地面から湧き出る清水を飲んだ。すると、太宰治の「走れメロス」と同様、生まれ変わったようになる。水分補給はいかに大切か分かる。そして水が体内に入ると、尿も出た。その温かさにうっとりとするジョー。こういう極限の世界だ。しばらくこのゴツゴツした地域が続き、その地獄のような苦しみはジョーの精神をおかしくする。本国イギリスで聞いていた時はちっとも好きでなかった筈の同じ曲が何度も何度も出てきて頭から離れない。ベースキャンプにサイモンは待っていてくれるだろうか。ジョーはほぼ精神錯乱に陥っていた。

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◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。
 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say !


【運命を分けたザイル 第20段落】  骨折した脚を引きずって這って、ちっとも距離は進めない。でも湖はまだ見えないしベースキャンプはどの方向かも分からない。もう動けない。流石のジョーも汗と泥と涙と尿まみれの体と凍傷の顔や手で絶望に打ちひしがれる。「サイモ〜ン」「サイモ〜ン」と叫んでみるが応答はない。サイモンはもう去ってしまったのか。闇の中、ぐったりくるジョー。すると、いやにヘンな臭いがした。自然界では存在しない臭い。それはベースキャンプ付近の‘トイレ’の臭いだった。ということはベースキャンプは近い!「サイモ〜ン」「サイモ〜ン」とまた叫ぶ。

【運命を分けたザイル 第21段落】  吹雪いて気持ち悪い夜だった。ベースキャンプで眠っていたリチャードは「サイモ〜ン」と呼ぶ声が聞こえた気がして目が覚める。でも、そんな筈はない。亡霊の仕業だと思うリチャードは気味が悪くてじっとした寝たままにした。するとサイモンがガバッと起きた。「サイモン」と呼んでいるのが聞こえたと言う。こちらはやはりパートナーだったから、幽霊だとか思わずに実行に移る。テントの外に出て懐中電灯を照らして「ジョー」「ジョー」と探し回る。暫くして、サイモンは倒れている凄まじい姿のジョーを生きて発見できた。上半身を抱いて感激するサイモンだが、リチャードはまだ半信半疑で遠巻きに見守っている。サイモンは激しい口調でリチャードに近寄って来るように言う。

【運命を分けたザイル 第22段落】  ジョーがズボンを燃やされてしまったと知って怒って初めて、現実に生きているジョーなのだとリチャードは悟った。こうして、脚を骨折した状態で、険しい雪山に落とされた遭難状況から、生存をひたすら念じてジョーは生還した。口を開いて待っているクレヴァス、方角を麻痺させる粉雪、恐ろしい氷、凍える寒さ。こういう自然の猛威と闘い、飲み水も食料もなしで、骨折した脚を引きずって這って、遂に遭難から四日後、ベースキャンプに辿り着いたのだ。ベースキャンプからシウラ・グランデ峰に二人が出発し始めて七日目のことだった。ジョーの体重は3分の2まで減っていた。

【運命を分けたザイル 第23段落】  ロープを切ったサイモン・イエーツは、それから一生涯その罪の重さを背負っていると本人が語る。奇跡の生還を果たしたジョー・シンプソンは、下山の過酷な過程の体験を「 タッチング・ザ・ヴォイド Touching The Void (邦題:死のクレバス アンデス氷壁の遭難)」という書物に残したわけだ。この本はベストセラーとなった。その本で、ジョー・シンプソンは、サイモン・イエーツを擁護し、サイモン・イエーツのとった究極の手段を弁護している立場をとっている。映画『 運命を分けたザイル 』は、二人の登頂の過程よりもジョー・シンプソンの生還する苦悩の過程に大部分さいて撮っている。ホント、観ていて息が止まったままのようで、のめり込んでしまった。面白かった。因みに、シウラ・グランデ峰の登頂成功は、いまだにこのジョー・シンプソンとサイモン・イエーツのみだそうだ。

以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず6821文字/文責:幸田幸

参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集
       http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
      公式サイト(英語版)
       http://www.ifcfilms.com/touchingthevoid
■映画『 運命を分けたザイル TOUCHING THE VOID 』の更新記録
2004/05/08新規: ファイル作成
2004/07/12更新: ◆テキスト一部およびファイル書式更新
2004/10/07更新: ◆タイトル変更
2004/11/24更新: ◆テキスト一部
2004/11/27更新: ◆テキスト一部
2004/12/13更新: ◆一部テキスト追記と書式変更
2005/02/16更新: ◆<もっとくわしく>アップ
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幸田 幸
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