フィオナが恋していた頃
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フィオナが恋していた頃 (1998)
フィオナが恋していた頃
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THIS IS MY FATHER

【解説】
 映画『 フィオナが恋していた頃 (1998) THIS IS MY FATHER 』は、監督と脚本ポール・クイン、撮影デクラン・クイン、出演アイダン・クインのアイルランド移民兄弟が作った 1998 年作品。アイルランドを愛する人々が作ったためか、映画『 フィオナが恋していた頃 』の風景がとても美しい。
 映画『 フィオナが恋していた頃 』の主人公、シカゴの高校教師キアレン・ジョンソンは、生徒達と真剣に触れ合うことができない、虚しい日々を送っている。それには彼を取り巻く状況が深くかかわっている。彼は妻に先立たれ、子供がいない。母が発作で倒れて寝たきりに。妹は母の介護と息子の養育で精神的にも体力的にも参っている。そんなある日、彼は若い頃の母親の写真を見つけ、その写真に母と一緒に写っている男性が自分の父親ではないかと思い、自分のルーツを探るためアイルランドへと旅立つ…。
 映画『 フィオナが恋していた頃 』の物語は、クイン兄弟の母親が聞かせてくれたアイルランドの悲恋の物語をベースにしているらしい。直訳すると「これは私の父です」となる原題“THIS IS MY FATHER”に、『 フィオナが恋していた頃 』というキレイな邦題をつけたのは上手だなぁ。

●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
■『 フィオナが恋していた頃 』のデータ
 上映時間 121分
 製作国 アメリカ
 公開情報 日本ヘラルド映画
 初公開年月 2000/10/21
 ジャンル ロマンス
 《米国コピーTagline》
【スタッフとキャスト】

監督: ポール・クイン
製作: ニコラス・クレアモント Nicolas Clermont
    フィリップ・キング
脚本: ポール・クイン
撮影: デクラン・クイン Declan Quinn
音楽: ドナル・ラニー
 
出演: エイダン・クイン Aidan Quinn
    ジェームズ・カーン James Caan
    スティーヴン・レイ Stephen Rea
    ジョン・キューザック John Cusack
    モイヤ・ファレリー
    ジェイコブ・ティアニー Jacob Tierney
    コルム・ミーニイ Colm Meaney
    ドナル・ドネリー
    ブレンダン・グリーソン Brendan Gleeson
ネタばれ御注意!
 このレヴューは「テキストによる映画の再現」を目指して作文しています。よって、ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。
<もっと詳しく>

 「フィオナが恋していた頃(原題: This Is My Father )」は、人生に悩むシカゴの高校教師の旅の記録である。彼は父親を求めて甥とアイルランドへと旅する。

 やもめで子供のいない、寂しい男であるキアレン・ジョンソン(ジェームズ・カーン:『 ゴッドファーザー (1972) THE GODFATHER 』『 ゴッドファーザーPART II (1974) THE GODFATHER: PART II 』『 フォー・ザ・ボーイズ (1991) FOR THE BOYS 』『 フィオナが恋していた頃 (1998) THIS IS MY FATHER 』『 裏切り者 (2000) THE YARDS 』『 シティ・オブ・ゴースト (原題) (2002) CITY OF GHOSTS 』等)は今ではもう生徒達と関わることができなくなっている。家族環境のおかげで、彼の精神状態は衰弱していた。母親(フランソワーズ・グラトン)が発作で倒れ、話をすることができなくなっていた[話そうとはしなくなっていた]。離婚して実家に戻っている妹のベティ(スーザン・アルムグレン)は、思春期のティーンエイジャーである息子ジャック(ジェイコブ・ティアニー)の養育と母の介護で疲れ果てていた。

 キアレンとジャックは、キアレンの父親と思しき男性と腕を組んで写っている若い頃の母親の古い写真と<キアレン>という名が記されたイェーツの詩集を見つける。この事がきっかけとなり、キアレンは自分のルーツを探し出すため、ジャックを連れてアイルランドへと旅立つ。この旅は、過去についてだけでなく未来についても多くを語ってくれることになるだろう。

 アイルランドでは、キアレンとジャックは定住したアイルランド版ジプシーが経営する宿に泊まった。宿の主人シーマス・カーニー(コルム・ミーニー)の占い師の母親(モイラ・デディ)が、キアレンの母と父の悲恋の物語を聞かせてくれた。

 1939 年のことだ。気の強い若い娘フィオナ・フリン(モイヤ・ファレリー)は、全寮制の学校から家に戻されてきたばかりだ。修道女たちとちょっとした騒ぎがあったらしい。彼女は、怒りっぽい未亡人(ジナ・モクスリー)の娘である。キアレン・オデイ(アイダン・クイン:『 妹の恋人 (1993) BENNY & JOON 』『 フィオナが恋していた頃 (1998) THIS IS MY FATHER 』『 ミュージック・オブ・ハート (1999) MUSIC OF THE HEART 』『 歌追い人 (2000) SONGCATCHER 』等)は8歳のときに貧しい農家の養子になったが、彼と養父母の間にはちょっとした距離がある。その生い立ちのためか、彼は人付き合いをあまりせず、村の人々から変わり者だと思われていた。彼と養父母のマーニー夫妻はフリン未亡人の土地の借りて農業を営んでいた。

 ある日フィオナはハンサムなキアレンをダンスに誘い、彼はそれを受けた。村の若者達がケアレンをからかうために、こっそりとアルコールを入れたジュースを彼に渡す。酔っ払った彼はいつもより大胆になり、フィオナの名誉を守るためにケンカをする。この紳士的な態度で、フィオナはキアレンに惹かれ、二人はすぐに恋に落ちた。ダンスパーティーでのケンカを教会で咎められたため、二人の逢瀬は慎重になり、お互いの贈り物や手紙を入れる場所<ギフト・ツリー>を介して、絆を深めていくのだった。

 年齢と階級差があるにもかかわらず、二人の気持ちは激しくなっていく。このことはすぐに地域の住民や司祭の知れ渡るところとなり、激しく厳しい宣教司祭のクイン神父(スティーヴン・レイ)が村に招かれ、徹底的にキアレンを脅かした。しかし、キアレンの愛は恐れ以上に強まり、フィオナと一緒に逃げることを誓う。その夜、お互いの情熱は抑えることができなくなってしまった。

 しかし執念深いフィオナの母親である未亡人が、キアレンとフィオナの逢引を見つけてしまい、分かち合うはずの二人の未来は打ち砕かれてしまった。そして、恋人達を引き離そうする圧力が二人を脅かすのだった。二人は一緒になりたかったが、未亡人と宗教に縛られた地域の住民が無茶苦茶にしてしまった。未亡人は娘が犯されたと警察に訴えた。彼女はキアレンとその養父母を自分の土地から追い出し、妊娠したフィオナをイギリスの全寮制の学校に送るつもりだ。

 そんな時、キアレンに郵便が届く。フィオナと浜辺でデートをしていたときに出会ったアメリカ人カメラマン、エディ・シャープ(ジョン・キューザック:『 すてきな片想い (1984) SIXTEEN CANDLES 』『 スタンド・バイ・ミー (1986) STAND BY ME 』『 セイ・エニシング (1989) SAY ANYTHING 』『 真夜中のサバナ (1997) MIDNIGHT IN THE GARDEN OF GOOD AND EVIL 』『 コン・エアー (1997) CON AIR 』『 フィオナが恋していた頃 (1998) THIS IS MY FATHER 』『 シン・レッド・ライン (1998) THE THIN RED LINE 』『 マルコヴィッチの穴 (1999) BEING JOHN MALKOVICH 』『 ハイ・フィデリティ (2000) HIGH FIDELITY 』『 セレンディピティ (2001) SERENDIPITY 』『 アメリカン・スウィートハート (2001) AMERICA'S SWEETHEARTS 』『 アダプテーション (2002) ADAPTATION 』『 アイデンティティ (原題) (2003) IDENTITY 』『 ランナウェイ・ジュリィ (原題) (2003) RUNAWAY JURY 』等)からそのときに撮った二人の写真が届いたのだ。キアレンはその写真の裏にプロポーズの言葉を書き、何故か新聞を貼ってその部分を覆い、ギフト・ツリーに入れる。

 キアレンは車を運転しているフィオナと話をしようとするが、フィオナの横に乗っていた未亡人が制止したため、フィオナは彼を無視して走り去る。また、自分達の保身を思った養父母のマーニー夫妻は、キアレンに家を出て行くように言うのだった。今まで一緒に暮らしてきた家族からも捨てられ、再び最愛のフィオナに会うことができなくなったと絶望したキアレンは、自らの命を絶ってしまう。フィオナはマーニー夫妻が追い出されなくてもすむように未亡人に約束させ、キアレンとの逃亡を計画していたが、すべてはあとの祭りとなってしまった。自殺者は教会内の墓地には埋葬することができないので、キアレンは古い墓地に埋められることになった。遺体を乗せた馬車が、フィオナの家の前を通るとき、マーニー氏は棺を下ろして呪いの言葉を浴びせるのだった。

 フィオナはジプシーのカーニー夫人の馬車に乗って、アメリカへと発つ船が待つ港へと向かうのだった。道中フィオナはカーニー夫人に事の成り行きを語ったのだそうだ。

 アイルランド旅行で父親が誰かを知り、母親への愛情が甦ったキアレン・ジョンソンは、生きる力を取り戻す。アメリカに戻り、自分の父と母の物語を生徒達に聞かせるのだった。

 「…アイルランドという国を現在と過去の両面で扱っている。誰もが、アイルランド人であることの呪いと祝福の両方と格闘し、若い世代はそこから生じる結果と格闘している。でも、それはいいことだ。なぜなら、アイルランドにとってはそれが時代が変わることであり、すでに大きく激しい変化が起きている。一部はよりよい方向に進んでいるが、そうでないものもある――アイルランドのアメリカ化やマクドナルド化だ。」(日本語版オフィシャル・サイトからの引用)と主演のアイダン・クインは語っている。アイルランド人であることの呪いと祝福とは一体何なのだろうか。私はアイルランドについて少しも詳しくないが、勉強・考察してみる。

 陽気で親しみやすいが頑固、機知に富み、団結心が強く、勇敢で、喧嘩っ早く、楽天的で自惚れが強く、お酒と歌が好きといったアイルランド人独特の性格。この<アイルランド気質>こそが呪いであり、祝福なのではないか。一つの性格は諸刃の剣である。

 上記に挙げた<アイルランド気質>を見ると、彼らが感情的な国民であることがわかる。ゆえに、論理的で外交上手な国であるイギリスに長く支配されることになったと思う。WASPが指導的立場にあったアメリカに移民したアイルランド人も、民族的な違いとカトリック信仰を維持し続けたことから不利な立場においやられた。しかし、その豊かな感情が文学・演劇や音楽といった数多くの素晴らしい文化を作り出している。小さな島国なのに、文芸方面で有名人がなんと多いことか!

 この映画にも名前が出ていた、アイルランドの国民的詩人のウィリアム・バトラー・イエーツ( 1865 - 1939 )、「ガリヴァー旅行記」のジョナサン・スウィフト( 1667 - 1745 )、「ユリシーズ」のジェイムズ・ジョイス( 1882 - 1941 )、シェイマス・ヒーニー( 1939 - ) 、「幸福の王子」のオスカー・ワイルド( 1854 - 1900 )、「マイ・フェア・レディ」のバーナード・ショー( 1856 - 1956 ) 、サミュエル・ベケット( 1906 - 1989 )など。イェーツ、ヒーニー、ショー、ベケットはそれぞれノーベル文学賞を受けている。

 伝統的なアイルランド音楽は旋律がとても美しく、日本人にも親しみやすい。ポップシーンでも、多くのアイルランド歌手が活躍している。私はクランベリーズなんか好きかも。エンヤのCDも欲しい。ビートルズはイギリス人だが、リバプールはアイルランドに面した港町で、彼らの音楽に対するアイルランド音楽の影響は計り知れないものがあると思う。

 <アイルランド気質>がアイルランド人に苦難の歴史を与え、また、素晴らしい文化を育ませた。呪いと祝福である。アイダン・クインはアイルランドのアメリカ化を嘆いているが、それもまた<アイルランド気質>のなせることなのかもしれない。アイルランドは近年著しい経済成長をしている国の一つである。最も急成長を示している産業分野はエレクトロニクスと医薬品、これらは海外、特にアメリカからの積極的な投資に支えられているらしい。アイルランド系であるクリントン前大統領が積極的に経済支援したおかげである。[アイルランド系アメリカ大統領には、ジョン・F・ケネディ、ロナルド・レーガンがいる]在米アイルランド人の票稼ぎの政策だが、アメリカで成功をした同胞を思う仲間意識の強いアイルランド系移民が故国を思って投資していることもあると思う。他国でも見られるように、経済発展していくとアメリカ化は避けられないが、経済的に潤うことはいいことである。これもまた呪いと祝福なのかなと思う。

(■解説とネタばれ:2002/08/24アップ ◆俳優についてリンク更新:2003/10/03)
以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず4318文字/文責:幸田幸

参考資料:
     「フィオナが恋していた頃」日本語版・英語版オフィシャルサイト
     在日アイルランド大使ホームページ
     藤原正彦(著)「心は孤独な数学者」
     野村達朗(著)「『民族』で読むアメリカ」
     eigotown.comあなたが知らない素顔のアイルランド
coda_sati@hotmail.com
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