イル・ポスティーノ
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イル・ポスティーノ (1994)
IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題)
 映画『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』をレヴュー紹介します。

 映画『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』を以下に目次別に紹介する。
■映画『 イル・ポスティーノ 』のポスター、予告編および映画データ
■映画『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』の解説
 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。
■映画『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO 』の主なスタッフ
■映画『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO 』の主なキャスト
■映画『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO 』のスタッフとキャスト
■映画『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO 』の<もっと詳しく>
 <もっと詳しく>は映画『 イル・ポスティーノ 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタバレ)です。※ご注意:映画『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』の内容やネタバレがお好みでない方は読まないで下さい。
■『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』の感想
■映画『 イル・ポスティーノ 』の更新記録

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幸の鑑賞評価: 8つ星 
■映画『 イル・ポスティーノ 』のポスター、予告編および映画データ
イル・ポスティーノ
イル・ポスティーノ

上映時間 Runtime: 1:48
製作国 Country: イタリア/フランス/ベルギー
Italy / France / Belgium
製作会社
Production Company:
Blue Dahlia Productions [fr]
Cecchi Gori Group Tiger Cinematografica [it]
Esterno Mediterraneo Film [it]
Penta Films S.L. [es]
全米配給会社 Distributer: Miramax Films [us]
全米初公開 Release Date: 1995/06/14
日本初公開 R. D. in Japan: 1996/04
日本公開情報 : ブエナ
ジャンル Genre: ドラマ/ロマンス
Drama / Romance
MPAA Rating 指定: Rated PG for mild thematic elements.
日本語公式サイト 調査中
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com.
Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc.
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■映画『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』の解説

 映画『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』は、主演で脚本も手がけているイタリアの俳優マッシモ・トロイージが命を捧げた名作。 1996 年アカデミー賞で外国語作品でありながら 5 部門にノミネートされ、作曲賞に輝いた。インド出身のマイケル・ラドフォード(『 ヴェニスの商人 (2004) THE MERCHANT OF VENICE 』等)監督作品。
 イタリアはナポリ沖にある島に、故国チリを国外追放になった世界的に有名な詩人パブロ・ネルーダ Pablo Neruda 〔※〕(フィリップ・ノワレ)が滞在することになった。島の青年マリオ(マッシモ・トロイージ)は、世界中から手紙が届くネルーダの郵便配達人(イル・ポスティーノ)となる。偉大な詩人に憧れ、影響を受けるマリオ。そんな時、マリオは島一番の美女ベアトリーチェ(マリア・グラツィア・クチノッタ)に出会い…。

〔※〕(1904-1973) チリの詩人。近代派や超現実主義の影響を受け、愛や新大陸の自然、歴史を宇宙論的規模にうたいあげた。また政治的関心も深く、政治詩も多い。代表作「マチュピチュの頂」<「大辞林」より>映画『 パッチ・アダムス (1998) PATCH ADAMS 』では、彼のロマンティックな詩が用いられている。

☆「映画の森てんこ森」内にあるイタリア映画
ラ・マスケラ (1988) LA MASCHERA
踊れトスカーナ! (1996) IL CICLONE (原題) / THE CYCLONE (英題)
星降る夜のリストランテ (1998) LA CENA
海の上のピアニスト (1999) THE LEGEND OF 1900
マレーナ (2000) MALENA
ペッピーノの百歩 (2000) I CENTO PASSI (原題) / THE HUNDRED STEPS (英題)
息子の部屋 (2001) LA STANZA DEL FIGLIO (伊題) / THE SON'S ROOM (英題)
フェリーニ 大いなる嘘つき (2001) FELLINI: SONO UN GRAN BUGIARDO (伊題) / JE SUIS UN GRAN MENTEUR (仏題) / I'M A BORN LIAR (英題)
法王の銀行家 ロベルト・カルヴィ暗殺事件 (2002) I BANCHIERI DI DIO - IL CASO CALVI (原題) / THE BANKERS OF GOD - THE CALVI AFFAIR (英題)
これ以上の幸せはない (2002) LA FELICITA NON COSTA NIENTE (原題) / HAPPINESS COSTS NOTHING (英題)
ピノッキオ (2002) PINOCCHIO
ぼくは怖くない (2003) IO NON HO PAURA (原題) / I'M NOT SCARED (英題)
赤いアモーレ (2004) NON TI MUOVERE (原題) / DON'T MOVE (英題)
(2004/11/22現在)

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■映画『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO 』の主なスタッフ

○『 イル・ポスティーノ 』の監督&脚本: マイケル・ラドフォード
『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』< 1996 年アカデミー監督賞&脚色賞ノミネート>
ヴェニスの商人 (2004) THE MERCHANT OF VENICE 』等

○『 イル・ポスティーノ 』の製作: マリオ・チェッキ・ゴーリ ( 1920-1993 )
『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』< 1996 年アカデミー作品賞ノミネート>

○『 イル・ポスティーノ 』の製作: ヴィットリオ・チェッキ・ゴーリ
踊れトスカーナ! (1996) IL CICLONE (原題) / THE CYCLONE (英題)
『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』< 1996 年アカデミー作品賞ノミネート>

○『 イル・ポスティーノ 』の製作: ガエタノ・ダニエレ
『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』< 1996 年アカデミー作品賞ノミネート>

○『 イル・ポスティーノ 』の製作総指揮: アルベルト・パッソーネ
『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』等

○『 イル・ポスティーノ 』の原作: アントニオ・スカルメタ
 原作「イル・ポスティーノ」(徳間文庫)は、 1960 年代のチリが舞台で、ネルーダはもちろんマリオもチリ人という設定だそうだ。

○『 イル・ポスティーノ 』の脚本: アンナ・パヴィニャーノ
『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』< 1996 年アカデミー脚色賞ノミネート>

○『 イル・ポスティーノ 』の脚本: フリオ・スカルペッリ
『 I COMPAGNI (1963) 』< 1965 年アカデミー脚本賞ノミネート>
『 ゴールデン・ハンター (1965) CASANOVA '70 』< 1966 年アカデミー脚本賞ノミネート>
『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』< 1996 年アカデミー脚本賞ノミネート>
星降る夜のリストランテ (1998) LA CENA 』等

○『 イル・ポスティーノ 』の脚本: ジャコモ・スカルペッリ
『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』< 1996 年アカデミー脚色賞ノミネート>
星降る夜のリストランテ (1998) LA CENA 』等

○『 イル・ポスティーノ 』の脚本: マッシモ・トロイージ ( 1953-1994 )
『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』< 1996 年アカデミー脚色賞ノミネート>

○『 イル・ポスティーノ 』の音楽: ルイス・エンリケス・バカロフ
『 奇跡の丘 (1964) IL VANGELO SECONDO MATTEO (原題) / THE GOSPEL ACCORDING TO ST.MATTHEW (英題) 』< 1967 年アカデミー音楽(編曲賞)賞ノミネート>
『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』< 1996 年アカデミー音楽賞受賞>
キル・ビル (2003) KILL BILL: VOLUME 1
キル・ビル Vol.2 (2004) KILL BILL: VOL. 2
アサンプション (原題) (2004) THE ASSUMPTION 』等

○『 イル・ポスティーノ 』の撮影: フランコ・ディ・ジャコモ
『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』
星降る夜のリストランテ (1998) LA CENA
復活 (2001) RESURREZIONE 』等

○『 イル・ポスティーノ 』の編集: ロベルト・ペルピニャーニ
『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』
復活 (2001) RESURREZIONE 』等

○『 イル・ポスティーノ 』の美術: ロレンツォ・バラルディ
『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』等

○『 イル・ポスティーノ 』の衣装: ジャンニ・ジッシ
『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』等

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■映画『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO 』の主なキャスト

●マッシモ・トロイージ ( 1953-1994 ) as マリオ・ルオッポロ
 15 歳から舞台で演技を始めたマッシモ・トロイージが、まさに言葉通りに命を捧げた作品がこの『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』。 1996 年アカデミー賞の脚色賞と主演男優賞にノミネートされた。治療が必要な心臓病を患っていたトロイージだが、映画『 イル・ポスティーノ 』の製作がより大切だと信じ、撮影を終えてから 12 時間後に 41 歳の若さで亡くなった。彼の死後、イタリア南部にある生まれ故郷のサン・ジョルジョ・ア・クレマノ市 San Giorgio a Cremano にある広場に彼の名前が付けられたそうだ。

●フィリップ・ノワレ as パブロ・ネルーダ
 ナイトクラブから古典的劇場まで全ての舞台で働いてきたフィリップ・ノワレは、フランスの偉大な性格俳優の一人。
『 ニュー・シネマ・パラダイス (1989) NUOVO CINEMA PARADISO 』等

●マリア・グラツィア・クチノッタ as ベアトリーチェ・ルッソ
 1m79cm も身長があって、とってもグラマラスなイタリア美人。
007/ワールド・イズ・ノット・イナフ (1999) THE WORLD IS NOT ENOUGH 』等

●リンダ・モレッティ as ドンナ・ローサ

●アンナ・ボナルート as マティルデ

●レナート・スカルパ as テレグラファー

●マリアーノ・リジッロ as ディ・コジモ

●ブルーノ・アレッサンドロ as パブロ・ネルーダ (voice)
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【『 イル・ポスティーノ 』のスタッフとキャスト】
監督: マイケル・ラドフォード Michael Radford (Directed by)
製作: マリオ・チェッキ・ゴーリ Mario Cecchi Gori (producer)
    ヴィットリオ・チェッキ・ゴーリ Vittorio Cecchi Gori (producer)
    ガエタノ・ダニエレ Gaetano Daniele (producer)
製作総指揮: アルベルト・パッソーネ Alberto Passone (executive producer)
原作: アントニオ・スカルメタ Antonio Skarmeta (novel Ardiente Paciencia)
脚本: アンナ・パヴィニャーノ Anna Pavignano (Writing credits)
    マイケル・ラドフォード Michael Radford (Writing credits)
    フリオ・スカルペッリ Furio Scarpelli (also story)
    ジャコモ・スカルペッリ Giacomo Scarpelli (also story)
    マッシモ・トロイージ Massimo Troisi (Writing credits)
音楽: ルイス・エンリケス・バカロフ Luis Enríquez Bacalov (Original Music by)
撮影: フランコ・ディ・ジャコモ Franco Di Giacomo (Cinematography by)
編集: ロベルト・ペルピニャーニ Roberto Perpignani (Film Editing by)
美術: ロレンツォ・バラルディ Lorenzo Baraldi (Production Design by)
衣装: ジャンニ・ジッシ Gianna Gissi (Costume Design by)

出演: マッシモ・トロイージ Massimo Troisi as Mario Ruoppolo
    フィリップ・ノワレ Philippe Noiret as Pablo Neruda
    マリア・グラツィア・クチノッタ Maria Grazia Cucinotta as Beatrice Russo
    リンダ・モレッティ Linda Moretti as Donna Rosa
    アンナ・ボナルート Anna Bonaluto as Matilde
    レナート・スカルパ Renato Scarpa as Telegrapher
    マリアーノ・リジッロ Mariano Rigillo as Di Cosimo
    ブルーノ・アレッサンドロ Bruno Alessandro as Pablo Neruda (voice)
    セルジオ・ソッリ Sergio Solli
    カルロ・ディ・マイオ Carlo Di Maio
    ナンド・ネリ Nando Neri
    ヴィンチェンツォ・ディ・サウロ Vincenzo Di Sauro
    オラツィオ・ストゥラクッツィ Orazio Stracuzzi
    アルフレド・コッツォリーノ Alfredo Cozzolino

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ストーリー展開の前知識やネタバレがお好みでない方は、読まないで下さい。
■映画『 イル・ポスティーノ 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー

【イル・ポスティーノ 第01段落】  1950 年代、イタリアはシチリア州 Sicily, Italy にある水道もない貧しい島。(ロケは主にエオリア諸島のサリーナ島 Salina Island, Aeolian Islands で行われた。) そこに暮らす無職の青年マリオ(マッシモ・トロイージ)は、ベッドの上でアメリカに渡った友人からの葉書を見つめた。小さな家の窓からは、大きな海が広がっていた。漁師である父たちの小船が入り江に入って来る。マリオの父は無口な海の男。マリオは漁師の仕事を嫌っていて、船の上では鼻がぐずるとか文句を言って、父の仕事を継がずにいる。「アメリカでもどこでもいいから仕事をしろ。」そんな息子に父が言う。

【イル・ポスティーノ 第02段落】  過去にも未来にも何にも起こりそうもないイタリアの小さな漁村に、大きなニュースが舞い込んだ。共産思想が原因で国外追放となった、チリの偉大な詩人、パブロ・ネルーダ(フィリップ・ノワレ)がこの村に逗留することになったのだ。村の小さな映画館でその大ニュースが伝えられると、満場の観客が拍手を送る。その中の一人であるマリオは、老人なのにも拘わらず熱狂的な女性ファンがいる、愛の詩人パブロ・ネルーダに自分が求める何かを感じたような気がした。

【イル・ポスティーノ 第03段落】  ドアに貼られた求人広告に誘われ、郵便局に入るマリオ。パブロ・ネルーダが来ると、世界中から山のような郵便物が届くことになる。ネルーダのためだけの郵便配達夫が必要なのだ。共産党員でネルーダのファンである郵便局長のジョルジョは、マリオに給料は雀の涙だとすまなそうに言った。(しかも使用する自転車も自分のもの。) 郵便配達夫はチップが収入なのだそうで、配達先が一件しかないマリオの給料は週に一度の映画代くらいなのだ。それでもマリオは、偉大な詩人ネルーダのポストマンになることにした。何だか嬉しいマリオは、家でも制帽を被って夕食を食べる有様だ。

【イル・ポスティーノ 第04段落】  初配達。ネルーダの家は、海を見渡せる岬の上にあり、自転車をこいでそこまで行くのは割と大変だと思う。マリオは緊張の面もちで、沢山の小包や手紙を門越しにネルーダに手渡す。“アモール amor ”と呼び合う夫婦は仲が良く、奥様のマティルデ(アンナ・ボナルート)は老齢なネルーダより若くて美しい。別の日には、マリオは家の中で情熱的に抱き合っている夫婦を目撃する。これまでパブロ・ネルーダの存在すら知らなかったマリオだが、自分には微塵もない地位も名声も愛情も手にした知的な文化人に対する憧れは日増しに強くなっていった。

【イル・ポスティーノ 第05段落】  マリオはネルーダにサインを貰うことにした。郵便物もないのに制帽を被ってネルーダのところへ行く。ネルーダは家の外で山を見ながら玉ネギをむいていた。マリオは、玉ネギで手がベトベトになっているネルーダに詩集とペンを渡す。玉ネギのせいでペンを持つのを少しためらったネルーダに、マリオは自分の服の袖を差し出して手を拭かせた。しかし、マリオはネルーダが書いたサインに満足しなかった。“マリオ・ルオッポロ”と自分の名前を言ったのに、ネルーダはサインに宛名を書いてくれなかったのだ。ネルーダからサインを貰って欲しいとマリオに彼の詩集を渡すジョルジョに、自分が貰ったのをあげようと言うほどガッカリしていた。ジョルジョはマリオの申し入れを受け入れない。自分のものが欲しいのだ。最初はマリオにサインを求めるのは良くないと言っていたのにね。

【イル・ポスティーノ 第06段落】 もうすぐ選挙。この島の有力者で現職のコジモ(マリアーノ・リジッロ)が選挙活動を展開している。マリオはというと、ローサというしっかり者のおばさん(リンダ・モレッティ)が経営するバールで読書に耽っていた。ネルーダの詩集に熱中しているのだ。‘ Walking Around ’という詩の「人間であることに疲れる(〔西〕 Sucede que me canso de ser hombre. /〔英〕 I happen to be tired of being a man )」というフレーズに共感し、生まれて初めて言葉に感動するマリオ。郵便配達でネルーダを訪ねたとき、マリオはネルーダから初めて「隠喩 (〔伊〕metafora /(pl) metafore)」という言葉を学ぶ。「雨が降る」を「空が泣く」という風に喩えることが隠喩だと知り、マリオは新しい知識に目の前が明るくなったような気がした。それでもっとネルーダに素朴な疑問をぶつけた。図々しくも自分が感動した詩についての説明を偉大な詩人に請うたのだ。詩は説明すると陳腐になると、ネルーダは素朴な田舎の青年の問いを却下した。家に帰ったマリオは夜の窓辺で詩を考えようとするが、一向に何も思い浮かばなかった。

【イル・ポスティーノ 第07段落】  ネルーダはマリオに郵便物の中にある一枚の封筒を開けさせた。マリオは何だかネルーダとの距離が縮まったような気がして嬉しかった。手紙はスウェーデンからで、ノーベル賞候補になったという知らせだ。(因みにネルーダがノーベル賞を受賞したのは 1971 年。)ネルーダは他の手紙の封はマリオに切らせなかった。自分も詩人になれたら嬉しいと率直に話すマリオに、ネルーダは今のまま郵便配達夫を続けた方が余程いいとアドヴァイス。しかし、詩が書けたら女性から相手にしてもらえるとマリオは言い、どうしたら詩人になれるのかネルーダに尋ねた。ネルーダは入り江に向かってゆっくり歩くことを勧めた。そうすれば、隠喩が浮かんでくる? マリオは一応ネルーダの言葉に従ったようだが、隠喩に巡り会えたとは思えない。

【イル・ポスティーノ 第08段落】  ネルーダが岸壁沿いの海岸を歩いていると、マリオが郵便物を届けにやって来た。水が出なくなったと不満を言うネルーダに、マリオは島の水事情について話した。貯水槽の水が空っぽになるのはいつものこと。島に水道を引くという約束はあるが、それには時間がかかるらしく、ずっと約束が反故になったままなのだ。共産思想のネルーダはみんなで団結すればと言うが、なかなかこの島でそんなことは起こりそうもない。美しい島なのにとネルーダが残念がると、マリオは今まで島を美しいと感じたことがない様子。そんなマリオにネルーダは目の前の海を題材に、即興で詩を披露した。マリオは変な気持ちがした。言葉のまっただ中で揺れる小舟のようだとマリオは自分の感想を述べた。マリオの素晴らしい隠喩にネルーダは感心。隠喩ができて嬉しいマリオは、ネルーダに難題をぶつける、「世界全体が何かの隠喩になっているのですか?」。ネルーダは、泳いでいる間に考えて、明日君に答えようと、海の中に入っていった。

【イル・ポスティーノ 第09段落】  ドンナ・ローサのバールに足を運んだマリオはそこで運命の女性に出会う。縮れた長い黒髪を持つそのグラマーなセクシー美人は、ローサの姪のベアトリーチェ・ルッソ。サッカーゲームをしているベアトリーチェにマリオは釘付けになる。マリオは彼女と一緒にゲームに興じるが、彼女の方ばかり見てゲームの進行には上の空。ゲームを終えると、ベアトリーチェはサッカーゲームの白いボールを口に挟んで、マリオに渡した。マリオは挑発的な彼女の振る舞いにすっかりマイった。

【イル・ポスティーノ 第10段落】  大切な用事があるとマリオは急いでネルーダを訪ね、詩人に恋を打ち明けた。マリオの思い人の名前がベアトリーチェだと知ったネルーダは、ダンテ・アリギエーリ Dante Alighieri 〔※〕だと言い、多くのベアトリーチェが恋を生み出したと話した。ネルーダの言葉を宝物のように感じるマリオは、ダンテ・アリギエーリを忘れないようにその名を手に書こうとした。マリオがアリギエーリの綴りが分からないので、ネルーダが代わりにマリオの手に書いてあげる。女性に不慣れなマリオは、ベアトリーチェに 5 語しか話さなかった。“ Come ti chiami? (コメ・ティ・キアーミ 君の名前は?)”の 3 語とそれに対するベアトリーチェの答え“ Beatrice Russo.(ベアトリーチェ・ルッソ。)”を繰り返しただけ。
〔※〕(1265-1321) イタリアの詩人。フィレンツェの国政に関与して追放され、放浪生活を送る。終生の理想の女性ベアトリーチェを主人公として人類救済の道を示す叙事詩「神曲」、清新体詩の抒情詩集「新生」を著した。ほかに「俗語論」「帝政論」「饗宴」など。<「大辞林」より>

【イル・ポスティーノ 第11段落】  きっと西洋では甘い言葉をささやけない男性は、魅力がないと見なされるのだろう。マリオは自分を魅力的にみせるため、おそれ多くもノーベル文学賞候補の詩人にベアトリーチェの詩を書いて欲しいと頼んだ。もちろんネルーダはカチンとくる。詩人はその霊感の対象を知らなければならないと言うネルーダに、言葉一つ書くのにこんな調子ではノーベル賞も取れないとマリオは無礼にも文句をたれる。イタリア人男性は饒舌な人が多いかと思っていたけど、マリオによるとこの島ではそんな一般的な概念が当てはまらないようで、マリオの周囲には無口な男しかいず、誰も頼りにならないらしい。詩を書いてくれないネルーダに気分を害したマリオは、チップを貰わないで帰った。

【イル・ポスティーノ 第12段落】  マリオは大切そうに見える郵便物と、きっと先日の無礼のお詫びなのだろう、自分からの差し入れとしてお酒のボトルをネルーダのところに持ってきた。ネルーダはそんなマリオに、隠喩の勉強に役立つと綺麗なノートをあげた。仲直り成立だ。マリオが配達した郵便物は、チリにいるネルーダの同志達からの音声メッセージが録音されたテープだった。レコーダーから聞こえる懐かしい声と、彼らが‘大いなる歌 Canto General / General Song ’( 1950 )というネルーダの作品を出版してくれるという嬉しい知らせを聞き、ネルーダの心は熱くなった。そして早速返事のメッセージを録音し始めた。出版の喜びを伝えた後、自分の友人が話すと言い、マリオにマイクを向けた。ネルーダから島で一番美しいものを言うように言われたマリオは、恥ずかしそうに“ベアトリーチェ・ルッソ”と答えた。その答えが気に入ったネルーダは、これからベアトリーチェに会いに行くことにした。

【イル・ポスティーノ 第13段落】  ローサのバールにあのパブロ・ネルーダが現れた。店内の客たちは有名人の突然の来訪に驚いた顔をする。マリオは得意げだ。奥のテーブル席に座ると、ベアトリーチェが注文を訊きにやって来た。ネルーダは赤ワインを注文し、ペンを持ってくるように頼んだ。それから、持ってきたマリオのノートを開かせ、ベアトリーチェが注文の品を持ってくると、ベアトリーチェに見えるように“私の親友で同志のマリオに パブロ・ネルーダ”と書いた。そして「君はもう詩人だ…」とマリオに言った。明らかにベアトリーチェのマリオに対する印象は変わったようだ。

【イル・ポスティーノ 第14段落】  海岸を歩いているベアトリーチェにマリオが話しかけた。それも詩で。実はその詩はネルーダの作品だが、この島にその事が分かる人物はいないだろう。ロマンティックな詩の言葉に、ベアトリーチェは家に帰ってからもベッドの上でぼんやりその余韻に浸っていた。姪の変化を敏感に察知したローサは、マリオに何を言われたと訊いた。「隠喩よ。」とベアトリーチェは答え、“君のほほえみは蝶のように顔に広がる”等と言われたことを話した。隠喩が何か知らないローサは、そんな甘い言葉で姪が誑(たぶら)かされ、若い二人の間に何かあったと信じて疑わなかった。言葉というものが一番危険なのだ。

【イル・ポスティーノ 第15段落】  ベアトリーチェの胸元にあるマリオから貰った詩の紙を奪い取ったローサは、司祭のもとへ。司祭が少しその詩を声に出して読むと、その情熱的な内容に、司祭もローサもビックリ。

【イル・ポスティーノ 第16段落】  詩作中のネルーダは、マリオに網はどんな感じかと尋ねた。マリオは悲しいと答えた。突然マティルデはアルゼンチン・タンゴの名曲♪マドレセルバ Madreselva ♪のレコードをかけ、ネルーダと一緒にダンスをし始めた。すると、そこへ怒り心頭のローサが現れた。この一ヶ月ほどマリオが店の周りをうろついて姪を誘惑したと言うローサ。マリオがベアトリーチェに何をしたとネルーダが訊くと、ローサはすごい剣幕で「隠喩。」と答えた。まるで“隠喩”という言葉が、ローサにとってはいかがわしい悪魔の所作という風に。ローサは司祭に見せた詩をネルーダにも見せた。ローサはマリオがベアトリーチェの体を見たからその詩が書けたと断言。そして二度とベアトリーチェに会わないように、会えば銃で撃つと、ネルーダからマリオに言ってくれるように頼むと、ローサは帰った。

【イル・ポスティーノ 第17段落】  ローサに見つからないように隠れていたマリオ。ネルーダはマリオに一曲聴かせたかったと“クックルックルー”と恋に悩む青年をからかった。この歌は、恋人を失った気持ちを歌ったラテン音楽のスタンダード・ナンバーで、映画『 トーク・トゥ・ハー (2002) HABLE CON ELLA (原題) / TALK TO HER (英題) 』でも用いられていた。マリオは、ネルーダに自分に言葉の使い方を教えてくれた責任があると、恋をしたのはネルーダのせいだと責めた。逆に、ネルーダが自分がマティルデに捧げた詩を使ったとマリオを責めると、マリオは詩は書いた人間のものではなく、必要な人間のものだとなかなか民主的で立派な考えを披露する。人生経験豊富な老人は、恋にやつれた若者に優しくアドヴァイスした。家に帰って寝なさい。

【イル・ポスティーノ 第18段落】  夜の窓辺で、ネルーダに貰ったノートを開き、ベアトリーチェの詩を考えようとしているマリオ。満月の美しさ、ベアトリーチェの丸みを帯びた柔らかな美しさ、彼女がその美しい口にくわえた白いボール…。言葉が浮かばないマリオは、ノートにボールのような円を描いた。

【イル・ポスティーノ 第19段落】  ネルーダは、詩だけでなく、その思想においてもマリオに影響を与えていた。島に水道を引くという公約を守らないキリスト教民主党のコジモに、マリオは今度は共産党に投票すると言ったのだ。ネルーダに傾倒しているマリオにコジモが言う。「詩人はときに面倒を起こす。」 コジモの部下が漁師から値切ろうとしたとき、マリオは漁師はそれでなくても搾取されていると声を上げた。しかし、元々値段は値切られるのを見越してふっかけていたもの。マリオのお陰でお客に逃げられた漁師は、余計な口を挟むなと怒った。

【イル・ポスティーノ 第20段落】  後 50 年もすればベアトリーチェも醜くなると話すジョルジョに、マリオはベアトリーチェは違うときっぱりと言う。(おばさんがドンナ・ローサなんだから、ジョルジョは正しいカモ…) その時、郵便局にコジモがやって来た。コジモは恋煩いのマリオに、愛国詩人ガブリエレ・ダヌンツィオ Gabriele D'Annunzio 〔※〕によるベアトリーチェの詩を詠んだ。いくらベアトリーチェでも、マリオは極右詩人の詩は気に入らなかったようだ。

〔※〕(1863-1938) イタリアの詩人・小説家。官能的唯美主義と英雄主義を特徴とする。詩集「楽園詩篇」「天と地と英雄たちの讃歌」、小説「死の勝利」、戯曲「聖セバスチャンの殉教」「ヨーリオの娘」<「大辞林」より> 日本語では、ダヌンチオ、ダンヌンツィオとも表記される。 1919 年にフィウメ事件を起こした。

【イル・ポスティーノ 第21段落】  ベアトリーチェもマリオに会えずに沈んでいた。バールの閉店が近づいてきた夜、警察署長が一杯飲みにやって来た。ベアトリーチェが美しくなったと褒める署長に、ドンナ・ローサはこの子を躾(しつけ)るのも大変だと話す。ベアトリーチェはそんな会話をしている二人を置いて、自分は店をあがった。そして部屋で休む振りをして、家を抜け出し、郵便局で鬱(ふさ)いでいるマリオを訪ねた。こうなったらもう誰も若い二人を止めることはできない。店じまいをして二階に上がったローサは、ベアトリーチェがいなくなったことに気付き、銃を持って姪の名前を叫ぶ。

【イル・ポスティーノ 第22段落】  マリオとベアトリーチェは、教会へ行き、司祭に二人の結婚式の立会人にネルーダを勧めている。しかし、司祭は立会人は共産党員じゃない方がいいとした。神を信じないネルーダを神が信じるはずがないと言うのが理由だ。冷戦時の共産主義は、西側の保守的な人々からは、理屈抜きでひどいレッテルを貼られていたようで、司祭はロシアの共産党員は子供を食べるという根も葉もない噂を言った。ネルーダが立会人になれないなら、結婚式をやめるというマリオに、ベアトリーチェはネルーダと私のどっちが大事なのかと怒る。ところが、きっと祖国への帰郷を願っていたのだろう、ちょうどいい具合にネルーダが教会にお祈りに来ていた。

【イル・ポスティーノ 第23段落】  島に黄色の可愛い花が咲き乱れる季節に、マリオとベアトリーチェは結婚式を挙げた。ドンナ・ローサのバールで披露宴が開かれ、コジモなど島の人が大勢招待された。息子が仕事を持ち、妻を娶(めと)ったことを心底喜んでいるマリオの父の話に感激しているのは、同じ立場のローサだけのようだ。みんなワイワイと宴を楽しんでいる。ジョルジョから電報を渡されたネルーダは、その吉報に歓喜し、マティルデと抱き合った。マリオとベアトリーチェのために詩を披露したネルーダは、最後にその嬉しい知らせをみんなに発表した。ネルーダの逮捕命令が取り消され、ネルーダ夫妻がチリへ帰国できるようになったのだ。アコーディオンの音が流れ、ネルーダは美しい花嫁と一緒にダンスを踊る。

【イル・ポスティーノ 第24段落】  家の中を片づけているネルーダの元に、マリオが最後の郵便を持ってきた。ネルーダはこれからマリオが失業することになると、チップ以上のお金を渡そうとしたが、マリオは断った。ネルーダは手紙をくれますかというマリオの質問に頷いた。チリは政情不安定でいつまた追放になるかもしれないと、当分の間ネルーダはここの家の荷物を置いておくことにした。それで、マリオに時々ここを見に来てくれることと、その時が来たらチリにここの荷物を送ってくれることを頼んだ。ダンテの他にもベアトリーチェの詩を書いた詩人がいて、それがダヌンツィオだと話したマリオは、ネルーダにもベアトリーチェの詩を書いて欲しかったと言った。ネルーダとマリオは抱き合い、別れを惜しんだ。

【イル・ポスティーノ 第25段落】  マリオはネルーダから貰った綺麗なノートに詩を書こうと頭をひねるが何も出てこない。ネルーダが居たときから詩は書けなかったが、マリオは何だかツキが失われたような気になっていたと思う。帰国してからのネルーダは、ロシア等の各国を飛び回って忙しい日々を送っており、約束した手紙は一向にマリオの元に届かなかった。イタリアに近いフランス・パリにネルーダがやって来たとき、新聞記事にネルーダのイタリア滞在時についてのコメントが掲載された。バールでマリオたち一家に、ジョルジョが記事を読み聞かせる。しかし、マリオ達が期待したような言葉は一言も載っていなかった。ネルーダのコメントは、島の自然についてばかりで、人に関しては素朴な人々と評しただけ。ローサは餌を食べた鳥は飛び去ると皮肉を言った。マリオは失望を隠せなかったが、それでもネルーダを尊敬し続けた。

【イル・ポスティーノ 第26段落】  選挙もイタリア全土でキリスト教民主党が圧勝し、マリオとジョルジョが支持する共産党は負けた。島でもコジモ達の工作で以前と変わりのない結果に終わった。マリオは思う。この島で束縛を打破した後、何があるのだろう? 選挙前、コジモは水道工事を遂行させ、ローサのバールで労働者たちの朝夕の食事を賄(まかな)わさせた。しかし、選挙に勝利すると、水道工事は中断し、 2 年間労働者達の食事を用意する約束も反故になった。マリオは店に食事しにやってきたコジモに嫌みを言ったがどうにもならない。共産主義の同志ドン・パブロがいたら、選挙はうまくいったかもしれない。ネルーダが居なくなってから、良いことがないと思っていたとき、ベアトリーチェが妊娠した。マリオは産まれてくる子供の名前をパブリートと決めた。マリオは島から出て、チリでパブリートを育てようとベアトリーチェに言った。この島ではみんな余りにも無知だから…。

【イル・ポスティーノ 第27段落】  島のお祭りの日。聖母マリアの人形を担いで通りを練り歩き、その人形を海に流す。マリオにチリから手紙が届いた。初めて受け取るネルーダからの手紙に心躍るマリオは、ドキドキしながらその手紙をそっと撫でる。しかし、またマリオの期待は裏切られた。手紙はネルーダ本人からではなく、彼の秘書からだった。しかもえらく事務的な文面で、島に残した荷物をチリに送って欲しいという内容が書かれていた。ネルーダが島を出てから 1 年以上も経つのに、マリオに対して一言の挨拶もない手紙にみんなガッカリした。また餌を食べた鳥は飛び去ると言うローサに、マリオは自分の方がドン・パブロに世話になったと言い、自分が詩人の器でないことを彼が知っていたと落ち込んだ。ベアトリーチェは生まれてくる子供をパブリートと呼ばないつもりだ。

【イル・ポスティーノ 第28段落】  マリオは荷物を取りにネルーダの家を久しぶりに訪ねた。マリオは夫妻がよく聴いていた♪マドレセルバ♪のレコードをかけた。懐かしさに駆られたマリオは、以前ネルーダと一緒に録音したテープを聴きながら、机の上にあるものを撫でた。テープから聞こえるドン・パブロの懐かしい声。その声がマリオに島の美しいものは何かと尋ねる。照れながら“ベアトリーチェ・ルッソ”と答える自分の声に、マリオは微笑んだ。

【イル・ポスティーノ 第29段落】  マリオはネルーダのレコーダーをジョルジョに改良して貰って、外でも使えるようにした。マリオは島の美しいものの音をジョルジョと一緒にそのレコーダーに録音していった。波の音、風の音、父の悲しい網の音、教会の鐘の音(と司祭の声)、星の輝き、そしてベアトリーチェのお腹にいるパブリートの心音。そのそれぞれがマリオの詩の作品だ。マリオはレコーダーに作品番号も録音する。マリオは今まで気付かなかった島の美しさに感動した。以前、自分がネルーダに質問した「世界全体が何かの隠喩になっているのですか?」という問いの答えがマリオには分かった。ベアトリーチェはお腹にマイクを当てられながら、パブリートとは呼ばないとまた言った。 ・・・

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◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。
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【イル・ポスティーノ 第30段落】  ドンナ・ローサのバールへと向かう二人の豊かそうな外国人。ネルーダ夫妻だ。店内はまだ誰もいないようだ。夫妻は店に飾られたネルーダが写っているマリオの結婚式の写真を見た。自分は写っていないと妻マティルデが言う。そこへ小さな少年が現れた。奥の部屋から「パブリート!」と少年を呼ぶ声が聞こえてきた。声の主はベアトリーチェ。以前より髪を短くし、お母さんっぽくなったベアトリーチェが現れた。 

【イル・ポスティーノ 第31段落】  マリオはもうこの世にいなかった。死後数日で子供が産まれたので、マリオはパブリートを知らない。マリオは共産党の集会に出席し、そこでの騒動に発砲した警官の銃弾に倒れたようだ。ベアトリーチェはマリオに集会に行かないで欲しいと頼んだが、ネルーダが誇りに思うだろうと言って彼は行ってしまった。集会でマリオは同志ネルーダに捧げる詩を発表する予定だったのだ。ベアトリーチェはマリオがネルーダに送るために作った例のテープを聞かせた。ベアトリーチェは夫の思い出の品を手元に置いておきたくて、ネルーダに送らずにいたのだ。

【イル・ポスティーノ 第32段落】  テープからネルーダ夫妻が好きだった曲♪マドレセルバ♪が流れると、「親愛なるドン・パブロ」とマリオの声が聞こえてきた。あの時答えられなかった島の美しさが分かったから、今このテープを送る。すてきなものはみんなあなたが持っていってしまったと思っていたけど、色んなものを残してくれていた。詩を書いたが、恥ずかしいのでここでは読まない。党の大会でその詩を朗読するんだ…。ネルーダは党大会でのマリオを想像した。もしかしたらこのテープには、大会での音も録音されていたのかもしれない。スピーカーからこれからマリオが詩を発表すると大勢の党員達に知らされる。ジョルジョと一緒に人混みをかき分けて前へ進もうとするマリオ。激しくなる騒音。ジョルジョのマリオを呼ぶ声。パトカーの音。人々のざわめき。人々を沈静化させようとするスピーカーからの声。海岸を歩きながら、詩人は言いしれぬ悲しみにとらわれた。

POETRY
And it was at that age...Poetry arrived
in search of me. I don't know, I don't know where
it came from, from winter or a river.
I don't know how or when,
no, they were not voices, they were not
words, nor silence,
but from a street I was summoned,
from the branches of night,
abruptly from the others,
among violent fires
or returning alone,
there I was without a face
and it touched me.

-Pablo Neruda

■『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』の感想
 人は死が近づくと、世界のあらゆる物、どんな些細な事象にも、愛おしさを感じるらしい。言い換えれば、それは自分という存在に対する愛おしさなのだろう。この映画『 イル・ポスティーノ 』には、早くして世を去った主人公マリオ=俳優マッシモ・トロイージの、そんな気持ちがみてとれる様な気がする。島の美しさに気付いたマリオは、その感動を言葉ではなく、音声に残した。マッシモ・トロイージは、人生の美しさ、生の美しさを、映画『 イル・ポスティーノ 』の映像に残した。彼らの作品は、自らの存在に対する感動の“メターフォレ(隠喩)”であるとも言えるだろう。

 外の世界に憧れているけど海外に出て行く勇気もなく、父の仕事を嫌って一時は仕事もなく、島一番の美女と結婚するけど成り行きで妻の家で働いている。利益優先の資本主義社会の物差しで計ると、マリオは何だかダメ男だけど、一人の人間として彼の人生を考えると、とても幸せだったように思う。ネルーダという知の巨匠と知り合い、影響を受けて、新しい世界や考えに目が開かれたマリオは、最終的に美しい自然の中に生きる今の自分に満足することができたから。マリオは師と仰いだネルーダにも引けを取らない立派な人生を送ったといえよう。

以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず11070文字/文責:幸田幸

参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集
       http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
      
■映画『 イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題) 』の更新記録
2004/11/16新規: ファイル作成
2004/11/23更新:◆解説とネタばれおよび俳優についてリンク
2005/09/05更新: ◆データ追加
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幸田 幸
coda_sati@hotmail.com
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