バーバー
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バーバー (2005)
THE MAN WHO WASN'T THERE
 映画『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』をレヴュー紹介します。

 映画『 バーバー THE MAN WHO WASN'T THERE 』を以下に目次的に紹介する。
■映画『 バーバー THE MAN WHO WASN'T THERE 』のポスター、予告編および映画データ
■映画『 バーバー THE MAN WHO WASN'T THERE 』の解説
 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。
■映画『 バーバー THE MAN WHO WASN'T THERE 』の主なスタッフ
■映画『 バーバー THE MAN WHO WASN'T THERE 』の主なキャスト
■映画『 バーバー THE MAN WHO WASN'T THERE 』の音楽
■映画『 バーバー THE MAN WHO WASN'T THERE 』のトリビア
■映画『 バーバー THE MAN WHO WASN'T THERE 』のスタッフとキャスト
■映画『 バーバー THE MAN WHO WASN'T THERE 』の<もっと詳しく>
 <もっと詳しく>は映画『 バーバー 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタバレ)です。※ご注意:映画『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』の内容やネタバレがお好みでない方は読まないで下さい。
■映画『 バーバー THE MAN WHO WASN'T THERE 』の結末
■映画『 バーバー THE MAN WHO WASN'T THERE 』の感想
■映画『 バーバー THE MAN WHO WASN'T THERE 』の更新記録

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幸の鑑賞評価: 8つ星 
■映画『 バーバー THE MAN WHO WASN'T THERE 』のポスター、予告編および映画データ
バーバー
バーバー
nostalgia.coより許諾のもとに引用
Links:  Official Web Site
Trailers:
上映時間 Runtime: 1:56
製作国 Country: アメリカ USA
製作会社
Production Company:
Good Machine [us]
Gramercy Films LLC [us]
Mike Zoss Productions [us]
The KL Line [us]
Working Title Films [gb]
全米配給会社 Distributer: USA Entertainment (USA) (DVD)
USA Films [us]
Universal Pictures [us] (2002) (USA) (TV) (as Universal)
全米初公開 Release Date: 2001/10/31
日本初公開 R. D. in Japan: 2002/04/27
日本公開情報 : アスミック・エース
ジャンル Genre: ドラマ/犯罪/コメディ
Comedy / Drama / Crime
MPAA Rating 指定: Rated R for a scene of violence.
日本語公式サイト
http://www.barber-movie.com/
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com.
Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc.
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■映画『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』の解説

 日本公開は2002年4月27日公開のアスミック・エース配給の映画『 バーバー 』は、『 ミラーズ・クロッシング (1990) MILLER'S CROSSING 』『 バートン・フィンク (1991) BARTON FINK 』『 ファーゴ (1996) FARGO 』のコーエン兄弟が、ビリー・ボブ・ソーントンを起用して渋いハード・ボイルド調に仕上げた話題作。2001年カンヌ国際映画祭で監督賞、2002年イタリアのダヴィッド・デ・ドナテッロ賞で最優秀外国映画賞を受賞。また、撮影のロジャー・ディーキンスは、カラーフィルムで撮影したのちモノクロフィルムに焼き付けるという凝った映像処理を行い、 2001年LA批評家協会撮影賞、2001年英国アカデミー賞を受賞。数々の賞にノミネートされた佳作。
 無口な捉えどころのない理髪店のエド・クレインが、妻の不倫の相手に脅迫状を送りつけて、あわよくば1万ドル手に入れて、自分の人生を変えるべく、クリーニング店のベンチャー・ビジネスのうまい話に乗る。それから事態はうまくいくように見えたが・・・。ところどころにいかにもディーテールに拘るコーエン兄弟らしい演出も見られ、見せ所落とし所を考えた作りになっている。

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■映画『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』の主なスタッフ

○映画『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』の監督:コーエン兄弟
 ジョエル・コーエン Joel Coen とイーサン・コーエン Ethan Coen
 ジョエル・コーエン Joel Coenの作品または幸が取り上げた映画は、
レディ・キラーズ (2004) THE LADYKILLERS 』 監督/製作/脚本
ディボース・ショウ (2003) INTOLERABLE CRUELTY 』 監督/脚本
バッドサンタ (2003) BAD SANTA 』 製作総指揮
『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』 監督/脚本
オー・ブラザー! (2000) O BROTHER, WHERE ART THOU? 』 監督/脚本
ファーゴ (1996) FARGO 』 監督/脚本
『 バートン・フィンク (1991) BARTON FINK 』 監督/脚本
『 ミラーズ・クロッシング (1990) MILLER'S CROSSING 』 監督/脚本
等その他

○映画『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』の製作:
 イーサン・コーエン Ethan Coen の作品または幸が取り上げた映画は、
レディ・キラーズ (2004) THE LADYKILLERS 』 監督/製作/脚本
ディボース・ショウ (2003) INTOLERABLE CRUELTY 』 監督/製作/脚本
バッドサンタ (2003) BAD SANTA 』 製作総指揮
『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』 製作/脚本
オー・ブラザー! (2000) O BROTHER, WHERE ART THOU? 』 製作/脚本
ファーゴ (1996) FARGO 』 製作/脚本
ホネツギマン (1998) THE NAKED MAN 』 脚本
『 バートン・フィンク (1991) BARTON FINK 』 製作/脚本
『 ミラーズ・クロッシング (1990) MILLER'S CROSSING 』 製作/脚本

○映画『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』の脚本:コーエン兄弟
 ジョエル・コーエンとイーサン・コーエン

○映画『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』の撮影:
 ロジャー・ディーキンス Roger Deakins の作品または幸が取り上げた映画は、
レディ・キラーズ (2004) THE LADYKILLERS
ヴィレッジ (2004) THE VILLAGE
ディボース・ショウ (2003) INTOLERABLE CRUELTY
砂と霧の家 (2003) HOUSE OF SAND AND FOG
ビューティフル・マインド (2001) A BEAUTIFUL MIND
『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』
13デイズ (2000) THIRTEEN DAYS
オー・ブラザー! (2000) O BROTHER, WHERE ART THOU?
ザ・ハリケーン (1999) THE HURRICANE
マーシャル・ロー (1998) THE SIEGE
ファーゴ (1996) FARGO
ショーシャンクの空に (1994) THE SHAWSHANK REDEMPTION
『 バートン・フィンク (1991) BARTON FINK 』
等その他

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■映画『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』の主なキャスト

●ビリー・ボブ・ソーントン as 主人公エド・クレイン@バーバー
がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン (2005) BAD NEWS BEARS
プライド 栄光への絆 (2004) FRIDAY NIGHT LIGHTS
アラモ (2003) THE ALAMO
ラブ・アクチュアリー (2003) LOVE ACTUALLY
ディボース・ショウ (2003) INTOLERABLE CRUELTY
バッドサンタ (2003) BAD SANTA
バンディッツ (2001) BANDITS
『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』
『 もののけ姫 (1997) PRINCESS MONONOKE 』英語版の“ジコ坊”声優等

●フランシス・マクドーマンド as 妻ドリス・クレイン@バーバー
恋愛適齢期 (2003) SOMETHING'S GOTTA GIVE
デブラ・ウィンガーを探して (2002) SEARCHING FOR DEBRA WINGER
しあわせの法則 (2002) LAUREL CANYON 』
『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』
ファーゴ (1996) FARGO 』等

●ジェームズ・ガンドルフィーニ as 妻の上司ビッグ・デイヴ@バーバー
ザ・メキシカン (2001) THE MEXICAN
『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』
ラスト・キャッスル (2001) THE LAST CASTLE 』等

●スカーレット・ヨハンソン as ピアノの女子高生バーディ・アバンダス@バーバー
アイランド (2005) THE ISLAND 』
イン・グッド・カンパニー (2004) SYNERGY / IN GOOD COMPANY 』
理想の女(ひと) (2004) A GOOD WOMAN
ママの遺したラヴソング (2004) A LOVE SONG FOR BOBBY LONG
真珠の耳飾りの少女 (2003) GIRL WITH A PEARL EARRING
ロスト・イン・トランスレーション (2003) LOST IN TRANSLATION
スパイダー パニック! (2002) EIGHT LEGGED FREAKS
『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』等

●ジョン・ポリト as ドライクリーニング店のベンチャー企業家クレイトン・トリヴァー@バーバー
ハッピー・フライト (2003) VIEW FROM THE TOP 』
『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』
ブラックマスク2 (2001) 黒侠II (原題) / BLACK MASK 2: CITY OF MASKS (英題)
『 バートン・フィンク (1991) BARTON FINK 』
『 ミラーズ・クロッシング (1990) MILLER'S CROSSING 』等

●トニー・シャルーブ as 弁護士フレディ・リーデンシュナイダー@バーバー
ファイティング×ガール (2004) AGAINST THE ROPES
『 スパイキッズ3−D:ゲームオーバー (2003) SPY KIDS 3-D: GAME OVER 』
メン・イン・ブラック2 (2002) MEN IN BLACK II
ブロンド・ライフ (2002) LIFE OR SOMETHING LIKE IT
『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』
13ゴースト (2001) THIR13EN GHOSTS / 13 GHOSTS
ギャラクシー・クエスト (1999) GALAXY QUEST
マーシャル・ロー (1998) THE SIEGE
『 バートン・フィンク (1991) BARTON FINK 』

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■映画『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』の音楽

 映画『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』の音楽は、カーター・バーウェル。
 カーター・バーウェル Carter Burwell の作品または幸が取り上げた映画は、
アラモ (2003) THE ALAMO
レディ・キラーズ (2004) THE LADYKILLERS
愛についてのキンゼイ・レポート (2004) KINSEY
ディボース・ショウ (2003) INTOLERABLE CRUELTY
オールド・ルーキー (2002) THE ROOKIE
シモーヌ (2002) SIMONE/S1M0NE
アダプテーション (2002) ADAPTATION
ROCK YOU! [ロック・ユー!] (2001) A KNIGHT'S TALE 』
『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』
等その他
 クラシック音楽:
 ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト Wolfgang Amadeus Mozart の「フィガロの結婚」
   ("Che soave zeffiretto" from opera "The Marriage of Figaro" {"Le nozze di Figaro"}")
 ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン Ludwig Van Beethoven
   (from "Piano Sonata No.8 in C minor, Op.13 {Pathetique}", "Piano Sonata No.14 in C sharp minor, Op.27 No.2 {Moonlight}", "Piano Sonata No.15 in D major, Op.28 {Pastoral}", "Piano Sonata No.23 in F minor, Op.57 {Appassionata}", "Piano Sonata No.25 in G major, Op.79", "Piano Sonata No.30 in E major, Op.109" and "Piano Trio in B flat major, Op.97 {Archduke}")
ベートーベンのピアノソナタ
 第8番 ハ短調 《悲愴》 作品13 [1797-8]
 第14番 嬰ハ短調 《月光》 作品27-2 [1801]
 第15番 ニ長調 《田園》 作品28 [1801]
 第23番 ヘ短調 《熱情》 作品57 [1804-5]
 第25番 ト長調 《かっこう》 作品79 [1809]
 第30番 ホ長調 作品109 [1820]
 ピアノトリオ 「大公」第3楽章
等その他

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■映画『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』のトリビア

【バーバーのトリビアその1】: ジョエル・コーエンとイーサン・コーエンは映画『 未来は今 (1994) THE HUDSUCKER PROXY 』に取り組んでいるとき、40年代の床屋のポスターを見て、この『 バーバー 』を思いつき物語を展開したそうだ。

【バーバーのトリビアその2】: 映画『 バーバー 』は、カラーで撮影されたが、その後モノクロフィルムに焼き付けられ特別処理され、映像はセピア調のように白っぽかった。しかしながら、少なくとも1つのフィルムリールはラボのミスで元の正常な色のままだった。それが最初の映画でリリースされたそうだ。 さぞコーエン兄弟は怒ったろう。

【バーバーのトリビアその3】: ドライクリーニング店のベンチャー企業家クレイトン・トリヴァーが逗留していたホテルは、“the Hobert Arms”と呼ばれ、映画『 三つ数えろ (1946) THE BIG SLEEP 』でのハンフリー・ボガート Humphrey Bogart(『 カサブランカ (1942) CASABLANCA 』等)が演じた 主人公フィリップ・マーロー Philip Marlowe の住んでいたアパートの建物と同じ名前だそうだ。

【バーバーのトリビアその4】: ビッグデイヴ・ブリュースターの店「Nirdlinger ナードリンガー」は、ジェームズ・M・ケインの本『 深夜の告白 DOUBLE INDEMNITY 』 の中の女性の登場人物の名前を引用している。映画版の『 深夜の告白 (1944) DOUBLE INDEMNITY 』では、郡検査官の名前は Diedricksonに当たる。

【バーバーのトリビアその5】: トニー・シャルーブ演じる弁護士フレディ・リーデンシュナイダーの「リーデンシュナイダー」の名前は、映画『 アスファルト・ジャングル (1950) THE ASPHALT JUNGLE 』の中のサム・ジャッフェ Sam Jaffe が演じた Doc Erwin Riedenschneider へのオマージュ(敬意)だそうだ。

【バーバーのトリビアその6】: ビリー・ボブ・ソーントンは、台本を読む前に映画出演にOKしたそうだ。

【バーバーのトリビアその7】: 映画はカリフォルニアはサンタ・ローザの町での話だが、サンタ・ローザという町は実在している。コーエン兄弟は、アルフレッド・ヒッチコックの『 疑惑の影 (1942) SHADOW OF A DOUBT 』の映画のセットと同じ町の名前を使ったそうだ。
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【『 バーバー 』のスタッフとキャスト】
監督: ジョエル・コーエン Joel Coen (Directed by)
    イーサン・コーエン Ethan Coen (uncredited)  (Directed by)
製作: イーサン・コーエン Ethan Coen (producer)
    ティム・ビーヴァン Tim Bevan (executive producer)
    エリック・フェルナー Eric Fellner (executive producer)
    ジョン・キャメロン John Cameron (co-producer)
    ロバート・グラフ Robert Graf (associate producer)
脚本: ジョエル・コーエン Joel Coen (Writing credits)
    イーサン・コーエン Ethan Coen (Writing credits)
音楽: カーター・バーウェル Carter Burwell  (Original Music by)
    ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト Wolfgang Amadeus Mozart
    ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン Ludwig Van Beethoven

出演: ビリー・ボブ・ソーントン Billy Bob Thornton as Ed Crane エド・クレイン
    フランシス・マクドーマンド Frances McDormand as Doris Crane ドリス・クレイン
    マイケル・バダルコ Michael Badalucco as Frank フランク
    キャサリン・ボロウィッツ Katherine Borowitz as Ann Nirdlinger アン・ナードリンガー
    リチャード・ジェンキンス Richard Jenkins as Walter Abundas ウォルター・アバンダス
    ジョン・ポリト Jon Polito as Creighton Tolliver クレイトン・トリヴァー
    ジェームズ・ガンドルフィーニ James Gandolfini as Dave 'Big Dave' Brewster デイヴ・ブリュスター(ビッグ・デイヴ)
    スカーレット・ヨハンソン Scarlett Johansson as Rachel 'Birdy' Abundas レイチェル・アバンダス(バーディ)
    トニー・シャルーブ Tony Shalhoub as Freddy Riedenschneider フレディ・リーデンシュナイダー
    アダム・アレクシ=モール Adam Alexi-Malle as Jacques Carcanogues ジャック・カーカノグス

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<もっと詳しく>

ストーリー展開の前知識やネタバレがお好みでない方は、読まないで下さい。
■映画『 バーバー 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー
ATTN: Please stop reading here because my review reveals the movie content.

 さて、映画『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』のストーリー。

【バーバー 第01段落】  映画『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』は、理髪店の三色サインのズーム・インから始まる。
 
【バーバー 第02段落】  『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』の舞台は米国カリフォルニア州のサンタ・ローザ Santa Rosa, CA という小さな町、 1949 年の夏のことである。サンタ・ローザはサンフランシスコ San Francisco北方にある。この町の床屋で、エド・クレイン(ビリー・ボブ・ソーントン)は、義弟フランク(マイケル・バダルコ)店長の片腕としてずっと床屋の人生を送ってきた。ビリー・ボブ・ソーントンのエドは劇中では無口で余り喋らず、ナレーションの形で語っていく。画面はモノトーンで、コーエン兄弟のフィルム・ノワールの世界へ誘い込まれていく。

【バーバー 第03段落】  この理髪店はフランクの父親が商いを始めて三十年した時に急病であっけなく亡くなってしまった。それで息子のフランクが跡を継ぎ、娘ドリスと結婚したエドが助手として、二人で床屋をやっているのだ。エドはドリス(フランシス・マクドーマンド=実生活では本作『 バーバー 』の監督ジョエル・コーエンの奥さん)と結婚してはいるけれど、便宜上結婚しているようなもので、愛はない。エドは寡黙で内省的で、タバコを絶えず吸っているという大人しい、何を考えているのか分からない男。一緒に床屋をしている義弟フランクは対照的に陽気で社交的で、散髪中に客とお喋りをしたり愚痴をこぼしたりしているのを、エドはじっと黙って聞いている。

【バーバー 第04段落】  実は、エドの妻ドリスはアルコール依存症であり、愛と悦びのない結婚生活から安堵を見つけるために不倫をしていた。相手はドリスの勤め先の上司デイヴ・ブリュスター、通称ビッグ・デイヴ(ジェームズ・ガンドルフィーニ)で、エドは前から感づいていたけれど、見て見ぬ振りをしていた。妻の不貞に立腹するほどの愛情も持ち合わせていなかったのである。ホームパーティにデイヴ夫妻を招いても、ドリスは上司デイヴと笑い合ったり、戦争の手柄話をするデイヴを持ち上げ、夫は身体検査で落ちたのだと嘲笑するような女性である。

【バーバー 第05段落】  そんな時、閉店前に理髪店の客に見知らぬ男がやって来た。主人のフランク店長は先に帰った。その男はクレイトン・トリヴァー(ジョン・ポリト)といい、仕事で各地を旅している。トリヴァーが話すには、ドライクリーニングという新奇の洗濯方式に投資すれば大儲けできると言う。いわば当時ではベンチャー・ビジネスの投資話だ。

【バーバー 第06段落】  エドはその儲け話に関心を寄せるが、そんなお金はない。そこで考え付いたことは・・・。

【バーバー 第07段落】  ベンチャー企業家クレイトン・トリヴァーが散髪に来たその日の夜、迷う自分の頭がイカれているのか、彼がペテン師か信用できる奴かと思案を巡らす。またもやタバコをくゆらせながら。入浴中の妻に「ハニー」と呼ばれて、彼女の脚の毛を剃らされる。“I love you, honey.”という妻の言葉も“嘘らしい”と思い無口で聞き流す。その後エドはホテルのトリヴァーを訪ねた。

【バーバー 第08段落】  トリヴァーはエドのことを覚えてはいなかった。床屋で出資話に興味があると言うと態度が一変する。エドはビジネスの仔細を質問した。金を出すだけで儲けを折半するというオイシイ話。エドは一週間後に資金を用意すると言い切った。

【バーバー 第09段落】  話はうまく言った。トリヴァーはエドに酒を勧めて、自分は一気に飲み干しベッドにもたれる。そしてネクタイを緩めチョッとウインクっぽくエドを見つめる。エドは勘違いするな、ときっぱり断る。トリヴァーはゲイなのだ。

【バーバー 第10段落】  エドは、理髪店でもタバコを吸い続け世の中の時が過ぎていくのを傍観していれば満足しているような見かけだけど、実はちっとも幸福な生活を味わっていなかったのだ。それで、妻の不倫をドライクリーニングの投資のお金に利用しようと思いついたわけだ。そこで、早速、エドは匿名でビッグ・デイヴに脅迫状(ゆすり=恐喝の手紙)をタイプする。

【バーバー 第11段落】  脅迫状の文章はこうだ。 “I know about you and Doris Crane. Cooperate or Ed Crane will know. Your wife will know. Everyone will know. Gather $10,000 and await instructions. 俺はお前とドリス・クレインのことを知っている。言うことを聞け、さもないとエド・クレインに知らせる。お前の女房にも知らせる。世間も知ることになる。1万ドルを用意して指示を待て。” (字幕スーパー=ドリスとの関係をエドと世間にバラすぞ。口止め料に1万ドル用意して次の連絡を待て。)

【バーバー 第12段落】  妻ドリスが働いているのはナードリンガー Nirdlinger という老舗の百貨店で、上司で不倫相手ビッグ・デイヴは、そのデパートのオーナーの娘アン・ナードリンガー(キャサリン・ボロウィッツ)と結婚している。富豪の跡継ぎという立場のアン・ナードリンガーは堅い感じの地味な女性だ。

【バーバー 第13段落】  裕福な家のビッグ・デイヴは、妻の“七光り”が内心気に入らないのか、現在の雇われ社長というのがプライドを傷付けるのか、支店を開き独立して店を持つ野心を持っている。会社を興してドリスを経理部長にするとも言っている。ビッグ・デイヴは、支店開業資金として $10,000 (当時の$1=¥360 換算として 360万円)を貯えてあるのだ。と言うと聞こえはいいけど、妻からかすめとっただけであり、それは本人も情けないと自覚している。その不正な大金は、ドリスに二重帳簿をつけさせて手に入れてきたものだった。だが、その開店資金をゆすりとられれば、この計画も水の泡となってしまう。

【バーバー 第14段落】  妻ドリスに促されてやって来たクリスマスセールの販売促進パーティで、ビッグ・デイヴはエドに、ゆすられている、助けてくれと相談を持ちかける。勿論ドリスとの不倫は隠して、別人との不倫で、ゆすっている人間も心当たりあるという。情事のホテルで目撃されているに違いない、ある男から投資話を持ちかけられたが、インチキ話のオカマ野郎と断った腹癒(はらい)せに、脅してきたのだという。この話を聞いた時にはエドは、ドライクリーニングのベンチャービジネスのクレイトン・トリヴァーの事だと気づいていたのだろうか?どうなんだろう?幸はエドの表情からは読み取れなかった。

【バーバー 第15段落】  「どうしたら?」と混乱して男泣きして涙するビッグ・デイヴ。エドは優しく振る舞い、胸のハンカチを渡し、ビッグ・デイヴからもらった葉巻を手に、ニヒルに “Why don't you just pay it, Dave? 金を払ったらどうだ。” (字幕スーパー=金を払うんだな。)と答える。ビッグ・デイヴが弱気になって、彼のトラブルごとを打ち明けたことを詫びた。エドは、それを聞いた後、一人で暗闇の中で、タバコに火を点けて少し考えた。「思えば奴も気の毒だ。奴にとって1万はデカい。ドリスとの不倫で後ろめたさも感じている。」

【バーバー 第16段落】  エドはタバコを吸って歩きながら、実際のところは同じ境遇であるビッグ・デイヴに同情をしているとき、微(かす)かにピアノの音が聞こえてくる。エドはそのほうに引き寄せられるように近づいていく。若い女性が弾いている。後姿を見ながら少し聞き入る。♪・・・。終わるとエドは「いい曲だ。」と声を掛ける。「君が作ったのか」エドの額の深い縦皺(たてじわ)が微笑みの中に消えている。「まさか。ベートーベンの曲よ。」エドは知らない恥ずかしさをチョッと口元に表すが「とてもよかった。」と言葉を被(かぶ)せる。※この曲は「ベートーベン(ベートーヴェン)ピアノソナタ第8番ハ短調《悲愴》作品13」です。♪・・・をクリックすると聴けます。曲は[.mid]形式で約5分11秒ありますが映画ではサビの部分前半約1分10ばかりです。

【バーバー 第17段落】  このピアノを弾く女性は、ティーンエージャーの美しい娘レイチェル・アバンダス、愛称バーディ(スカーレット・ヨハンソン)だ。ハイスクール生だろうか。彼女は父ウォルター・アバンダス(リチャード・ジェンキンス)とエドの理髪店に来ていた痩せた女の子だったと言う。

【バーバー 第18段落】  エドがバーディと音楽が好き嫌いの話をし始めると、そこに急に妻のドリスが「エド!」と呼びかけ、横柄な態度で立っている。帰るつもりだ。

【バーバー 第19段落】  帰りの車の中で、ドリスは機嫌が悪い。上司ビッグ・デイヴのことを「あのバカ」とも呼ぶ。ビッグ・デイヴがドリスを新店舗で経理部長にしてくれると言っていたのにその話がなくなってしまったと。

【バーバー 第20段落】  名前がビッグ・デイヴで身体が大きいが気が小さいのか、不倫をバラすという脅かしは直ぐに効いた。ビッグ・デイヴは銀行から金を下ろし、指示した通りにホテルのゴミ箱に置いて立ち去った。それを遠めに車の中で見張るエド。

【バーバー 第21段落】  何知らぬ顔でやって来たエドはホテルのゴミ箱から、ビッグ・デイヴから独立資金である $10,000 をまんまと手に入れた。それも案外簡単に。エドは、せしめた金を持って階上に宿泊しているあの男クレイトン・トリヴァーのもとにそのお金を持っていった。そうドライクリーニングのベンチャービジネスの投資話を持ってきた鬘(カツラ)をつけたゲイの男だ。やはりチョッと胡散臭(うさんくさ)い。

【バーバー 第22段落】  ホテルの彼の部屋で取引話だ。クレイトン・トリヴァーは何だかそわそわ。小切手ではなく、エドが差し出した現金を見ると眼の色も声色も変わってしまっているようだ。契約書にサインする前、さすがのニヒルなエドも不安になったのか、「ペテンじゃないな?」と一言尋ねた。このベンチャー企業家は、疑うなら弁護士にこの書類を見せろとか、金を持って帰れとか、凄い剣幕で言う。結局、最初の話どおり、事業はトリヴァーが、資金はエドが、ということで、儲けは 50 - 50(フィフティ・フィフティ=半々)でという契約を済ませた。

【バーバー 第23段落】  その翌日くらいに妻ドリスの従妹の結婚披露宴があり、エドとドリスは連れ立って郊外のパーティ場まで車で赴いた。これから行く結婚披露宴は相手がイタリア系なので、イタリア人は嫌いだといって悪態をつくほど不機嫌である。

【バーバー 第24段落】  結婚披露宴はイタリア式のにぎやかなガーデンパーティでイタリア人がいっぱい。ドリスのイタリア人軽蔑は、態度にありありだ。パーティではお酒ばかり飲んでいる。夜、帰宅すると、お酒で潰れているドリスはベッドに横たえられるのも分からないくらいのバク睡。そこにビッグ・デイヴから電話がかかる。

【バーバー 第25段落】  夜なのに、直ぐに来てくれ、お願いだ、店にいる、というから、エドはデパートの入り口の鍵を妻のハンドバッグから取って、ビッグ・デイヴに会いに行った。すると、ビッグ・デイヴは先日エドに泣きついて相談したのと打って変わった様子。「 What kind of man are you? お前は一体どんな人間だ?」と軽蔑したように責める。脅迫状を送ったのはエドだと知ったからだった。自称ベンチャー企業家クレイトン・トリヴァーは、エドに会う前に百貨店の社長(雇われだけど)ビッグ・デイヴにその話をもっていったが、ビッグ・デイヴはインチキだからと一蹴していたのだ。その後、ビッグ・デイヴはトリヴァーを殴って事実を聞き出して、エドとのことを白状させたのだと怒って語る。

【バーバー 第26段落】  脅迫して金を取って自分を一文無しにしたのはエドだったと分かったビッグ・デイヴはこうしてエドを呼びつけたわけである。そしてビッグ・デイヴは激怒して、帰ろうとするエドに襲いかかる。エドは凄い力に振り回され殴られる。ビッグ・デイヴはエドの首を絞め続けガラス窓が割れそうになったとき、エドは咄嗟(とっさ)にビッグ・デイヴのナイフで首を刺した。ビッグ・デイヴの首から血が噴出してくる。苦しそうにぶっ倒れる。血が大量に床に広がる。エドはビッグ・デイヴを殺してしまった。そのナイフは、第二次世界大戦中に日本兵から巻き上げたとビッグ・デイヴが自慢していたナイフである。そんな自慢のものが凶器になったとは皮肉なものだ。それに、床屋さんが髭剃りで常に剃刀(かみそり)の刃を当てている首だとは。さすが、といって良いものか、いとも簡単に鮮やかにそこを刺した。

【バーバー 第27段落】  理髪店でいるエドのところに警察の人間が二人やってくる。エドは覚悟しているように見える。ところが、妻のドリスが刑務所入りになったと刑事が仕事中のエドに伝えに来たのだった。エドがデパートに侵入したのは、ビッグ・デイヴに呼ばれて店内に入るために使った妻ドリスの鍵だったため、妻が容疑者になって逮捕されてしまった。思いがけない展開に戸惑うエド。更に、その日、この殺人事件の前に、妻ドリスは結婚式で酔っ払い、事件の時刻にどこにいたかも思い出せないために余計に容疑は濃くなってしまう。

【バーバー 第28段落】  夜、喪服に身を包んだアン・ナードリンガーつまり故ビッグ・デイヴの妻が、エドの家を訪問した。何事か? ドリスに夫を殺されて恨み言をいいに来たのか? すると、そうではなくて、ヘンなことを言い出す。夫ビッグ・デイヴは以前にUFOに遭遇してエイリアンに誘拐されたことがある。それを政府は秘密にしたくて夫を抹殺したに違いない。だから奥さんドリスが犯人だとは思っていませんから、という趣旨の玄関先の訪問だった。

【バーバー 第29段落】  エドは床屋の客で地元の民事訴訟の弁護士である友人ウォルター・アバンダスに妻の件の相談をしに行った。彼は上述のティーンエージャーのピアニスト、バーディの父親だ。その時、玄関にちょっと顔を出したバーディに、若い娘の爽やかさを感じ取って幾分、心が和むのだった。ウォルター弁護士は、殺人事件なんて自分の器でも専門でもないからと、カリフォルニア州の州都サクラメント Sacramento で無敗のナンバーワン弁護士を紹介する。

【バーバー 第30段落】  エドと義弟フランクは、妻、姉ドリスを救うために刑事専門のその高給の弁護士を雇うことにした。その為には銀行から多額の借金をし、父親から譲り受けた理髪店は担保物件となってしまう。早速やって来たフレディ・リーデンシュナイダー(トニー・シャルーブ)という弁護士は、大都会のやり手で神経質で几張面な早口の男である。リーデンシュナイダーはスイートルーム宿泊費も食費も様々な雑費も別料金で、調査で雇う私立探偵の調査代も必要だと事務的にまくし立てる。

【バーバー 第31段落】  エドは自宅に帰っても誰もいないし、街でも皆、自分を避けているようで、まるで自分はゴースト(亡霊 ghost )だと思った。そしてドリスと初めて出会ったダブルデートのこと、ドリスは無口な自分を結婚相手として二、三週間で選んだこと、結婚なんて、男と女なんて、知らないことばかりでもやっていけるものなんだ、等、もの思いに耽る。そういうエドに、十代のまばゆい女の子バーディの存在は煌いて思えた。バーディのピアノ演奏を聴きに、毎晩のように彼女の家を訪れる。バーディの父親ウォルターは、亡き奥さんの家系を七代もさかのぼって調べるという変わった趣味の持ち主で、よく家を留守にしている。

【バーバー 第32段落】  さて、エドはリーデンシュナイダー弁護士と打ち合わせの際、事件の時刻、妻ドリスは酔って眠りこけ、自分は妻と一緒にいましたと申し出るが、そんなのアリバイにされない。それで、エドは自分が殺したことを告白するが、弁護士はそれは妻をかばっているのだと思って問題にしない。警察は、ドリスが会社の金を横領して殺人もしたと考えている。エドは投資話を表に出せば妻の容疑は晴れるかと思い、クレイトン・トリヴァーの行方を捜すが、どこにもいなかった。紙ッ切れ一枚でそんな男の話に乗ってしまったことをエドは後悔する。

【バーバー 第33段落】  リーデンシュナイダー弁護士は、私立探偵に被害者ビッグ・デイヴの身上を調べさせた。すると、ビッグ・デイヴは小さな問題事を起こしてきたし、兵役に関しては、第二次世界大戦で勇敢に戦ったという話はでっち上げで、デスクワークしかしていなかったことが判明する。リーデンシュナイダー弁護士は、こういう兵役に対するビッグ・デイヴの大きな嘘を裁判で表沙汰にして陪審員に訴えるという作戦を練った。これでまた勝訴に間違いない。

【バーバー 第34段落】  いよいよドリスの裁判の日。ちっとも被告が現れない。すると裁判官が検事と弁護士に何か耳打ちしている。そして閉廷。どうしたのだろう。何と、ドリスは留置場で自殺してしまったのだ。夫エドが差し入れた、裁判のとき用のドレスのベルトで首を吊ったと言う。また勝訴を増やせると皮算用していたリーデンシュナイダー弁護士は後味の悪い思いで法廷を発った。

【バーバー 第35段落】  理髪店を担保にしてまでのせっかくの借金も無駄になり、姉ドリスを失った弟フランクはショックで酒に溺れる。エドは、フランクが仕事に出てこないので自分が店長になって、若い助手の男を雇った。またもやおしゃべりだ。エドは、借金を返済するために、何が何でも働き続けなければならない。無言でひたすら客たちの散髪を続ける。

【バーバー 第36段落】  そんなある日、別の刑事風の男が訪れた。エドが真犯人だと分かってしまったのだろうか、一瞬ドキッとする。バーで話を聞くと、奥さんドリスを司法解剖した結果、妊娠三ヶ月だった、こういうことは知らせる必要もないがお知りになりたいでしょうから、とその解剖医は夫エドを気遣って教えてくれる。けれども、エドはこの数年間、妻とは夫婦関係はなかったと伝え、解剖医は何ともバツの悪い顔で去っていった。妻ドリスは不倫の相手ビッグ・デイヴとヤッパリ...。

【バーバー 第37段落】  愛していなくても妻はいなくなり、家は寂しいし、自分の可能性をもっと引き出して人生やり直そうという思いか、エドは、ピアニストとしての若き女性バーディに心底のめり込む。高校の発表会のようなステージでベートーベンのソナタを演奏しているバーディを、エドは保護者たちに交じって観客席で真剣に聴く。会の終了後、ホールの出口では、バーディはボーイフレンドと連れ立って仲良くしていた。いいトコのお嬢ちゃんでも、青春している証拠。

【バーバー 第38段落】  エドは彼女の才能を信じるし、バーディが自分の代わりに人生の成功を達成してくれるような気がして、彼女に有名なピアノ教師をつけさせてあげようと勝手に思い込む。

【バーバー 第39段落】  そして決心してバーディの家に出向く。父親に挨拶をして彼女の部屋に上がる。プロのピアニストになる手助けになるから、自分をマネージャーにしてくれとさえエドはバーディに頼むのだった。彼女は最初は断るが、チョッとした興味からやってみようと受け入れる。

【バーバー 第40段落】  遠方のフランス人の音楽家ジャック・カーカノグス(アダム・アレクシ=モール)の面接・実技テストをさせに、エドはバーディを車に乗せて連れて行ってあげる。そのテスト結果とコメントは、バーディは美しく正確に弾けているだけであって、音楽性・芸術性は全然ないから完全に不合格。音楽に素人のエドが上手だと思うのと、プロが聞いたのとでは、丸っきり違うのだと思い知らさせる。エドが失望の顔でドライブする帰途、助手席のバーディはプロのピアニストになろうとは思っていないのだからと、逆に慰める。そして運転しているエドの頬に急にキスし、腿に手を当て、突然、「お礼に」と言って顔をエドの股間に沈めた。エドは拒んでもバーディは止めない。「やめてくれ〜!バーディー!」

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◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。
 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say !


【バーバー 第41段落】  止めさせようとして気を取られている間に対向車。ワッ危ない!対向車を避けて、エドの車は宙を浮いて崖を落下していった。タイアのホイールキャップがクルクル宙を舞ってUFOになり、そしてまた病院のライトに変わる。いかにもコーエン兄弟らしい演出だ。負傷したエドは病院に運ばれ治療を受け、意識も朦朧としてベッドに寝かされている。そこに最初の刑事が二人、意識が戻りましたか、なんて医師に訊いているではないか。同乗させていたバーディが死んでしまったの? そうではなかった。バーディは鎖骨を折っただけで済んだという。あなたを殺人容疑で逮捕します、と。

【バーバー 第42段落】  あぁ、遂にビッグ・デイヴ殺しがばれてしまったのか。とエド本人も観客もそう思う。すると、ベンチャー・ビジネスのあの男クレイトン・トリヴァーの死体が見つかり、クレイトン・トリヴァー殺しでエドは逮捕されるという。トリヴァーは殴り殺されて池に車ごと沈められていた。契約書にエドの名があり、エドが犯人ということになったのだ。でも、これって、ビッグ・デイヴが開店資金を脅し取られて、真実を吐かせる為にデイヴはトリヴァーを殴ったと言っていたけれど、殴るだけでなく殺してもいたのだ。その犯人がエドに回ってくるなんて自暴自得というか。

【バーバー 第43段落】  しかし、やっぱり弁護士は雇った。ドリスの時と同じ、あの敏腕弁護士リーデンシュナイダーである。ドリスの裁判では中途半端で終わってしまったからと、リーデンシュナイダーは報酬はまけてくれたけど、やはりエドは借金が必要だった。今度はエドの自宅が担保になった。そしてエドの裁判では、エドは床屋であって、決して人を殺すような人間ではない、“現代人だ”という論法でリーデンシュナイダー弁護士は陪審員たちを納得させつつあった。するとその時、ドリスの弟フランクが横から騒いだので審議は中止となり、別の弁護士に替えねばならなくなる。今度は公選弁護士なので、陳腐な弁明しかせず、裁判は「死刑」という判決で結審する。

【バーバー 第44段落】  独房に入れられたエドはあとは死刑を待つのみ。死刑を待つ心境を知りたいと言う雑誌社に原稿を書いている。映画の初めから終わりまでのナレーションは追想ではなく、エドの書き下ろした文章なのだと、最後に分かる。死刑執行の前夜だろうか?「ロズウェル事件」のUFOが飛ぶ。それを見てドアを閉めてまた独房に入るエド。幻想だ。

【バーバー 第45段落】  死刑執行の日。白い部屋の中で電気椅子がエドを静かに待っている。死刑執行を見届ける立会人の顔、顔、顔。エドはゆっくりと電気椅子に近づいて行く。手足にベルトを巻き付けられ、電気がよく通るように脚の毛を剃られる。このシーンは浴室で妻ドリスの脚の毛を剃ったのと同じだ。あれって、ある意味ではドリスの死刑執行を意味していたのかな?不気味な電気係が様子を見て、何の感情もなく、ただ物理的に電気椅子のレヴァーを下ろし通電する。あ〜、エドの人生は終わった。

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■映画『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』の感想

【ハーバーの感想01】  先ず本作『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』のタイトルは邦題「バーバー(床屋)」も原題「 The Man Who Wasn't There そこにいなかった男」もどちらもぴったりだ。「バーバー」は、床屋主人公エド・クレインそのものだし、「 The Man Who Wasn't There そこにいなかった男」という題は、本来の自分の居場所を、ふとしたことで間違えてしまって破滅の人生を送ってしまった、バカな男の生き様を示している。

【ハーバーの感想02】  2回立て続けに観なくちゃ良さが分からない私ってチョッとお〜って感じですけど。映画『 バーバー 』のストーリーはイケてます。俳優はそれぞれの持場をキチンと演じているし音楽も映画にぴったりって感じがする。映像はフィルム・ノワール風に特殊処理したことは、見ていくうちに全く感じなくなる。そして予想が追いつかない、思いがけない結末が起こってくる。そしてその繋がりがエドの破滅へと繋がって行く。

【ハーバーの感想03】  ニヒルなハード・ボイルド風エド・クレインは物静かな感情を面に表さない。いわば異邦人のモルソー君が結婚して床屋になったって感じ。アメリカは自由な国と認識して妻の浮気も自由と考える。彼にとっては床屋はただ仕事だからしているだけ。客は髪を切ってもらってお金を払い、毛は捨てられる。人間の身体の一部なのに。切っても伸びる髪の毛。床屋は切っても生えてくる髪の毛を永遠に切り続ける。この不条理をビリー・ボブ・ソーントンが巧みに演じる。現代人風モルソー君って感じがよく出ていた。

【ハーバーの感想04】  エドと妻ドリスには子供がいない。計画的に生んでいないのか、子供に興味がないのか、共稼ぎで忙しくてその余裕がないのか映画からは分からない。それともアル中状態のドリスが子供を生みたがらないのか、エドに生殖器障害があるのだろうか。いずれにしても、彼らはディンクス( DINKS:Double Income with No Kids )を生活信条として実行している夫婦に違いない。エドとドリスの夫婦は『 キャメロット・ガーデンの少女 (1997) LAWN DOGS 』にでてくる住宅地ほどリッチじゃなさそうだけど所謂プチブルで、郊外の綺麗な住宅地で快適な生活をしている。DINKSはアメリカの一時的な風潮でもあったそうだ。彼らが生きていれば老後どのような暮らしになったのか知りたいものだ。

【ハーバーの感想05】  映画『 バーバー 』のシーンのあちこちに、さすがコーエン兄弟、細かなところまで描いてあるなッて感じる。1万ドルと領収書。上等なハバナの葉巻の処理をした日本兵のナイフ。インチキがばれた相手とカモった相手。「バーバー 第28段落」と雑誌に掲載されている「ロズウェル事件」とエドのUFOの幻想。そしてビッグ・デイヴが言ったセリフと義弟フランクが裁判の最後にエドを殴って言ったセリフ“What kind of man are you? お前は一体どんな人間だ?”等

【ハーバーの感想06】  また、アメリカ社会の一面も映像に盛り込んでいく。高慢な銀行。銀行ローンために働き続ける庶民。犯罪も弁護士手腕一つで有罪も無罪も決まる陪審員制度。お金持ちが得をする社会へのチョッとした皮肉。そして富める国の国民は肥満だといわんばかりに、パーティで会話を交わす男性や刑務所で面接する母娘や看守たち。調査をする探偵。出てくる登場人物の殆どが太っている。どれも豊かなアメリカ社会の現象だ。

【ハーバーの感想07】  本作のキーワードは盛り沢山だ。1940年代・ ビンゴ・恐喝・チェーンスモーカー・デパート・ドライクリーニング・パイ食い競争・肥満・カツラ・アル中・同性愛・フェラチオ・オーラルセックス・ロリータ・現代人・不確定性原理・実存主義・横領・自殺・殺人・自動車事故・UFO・探偵・刑事・弁護士・地方検事・検屍官・霊媒師・電気椅子・死刑・死刑囚棟など枚挙に暇(いとま)がない。

【ハーバーの感想08】  映画『 バーバー 』にもやはり国辱的な表現がある。まあ、それはそれでアメリカ人の日本の見方で面白いのだが。映画『 ファーゴ (1996) FARGO 』にも確か変な日系人?が出ていたっけ。日本兵は物資補給がないから、虫や草を食べるだけでなく、ニキビ面のアメリカ兵「鳥ガラ野郎」の人間も食べたとか。そしてドリスはイタリア人を嫌悪する。確かにアメリカは日本やイタリアと戦った。イタリア人には「サッコとバンゼッティ事件」のように1920年代からの激しい人種的・思想的差別感情があるのだ。ドイツ人への国辱的表現はどこに?そうそう、弁護士リーデンシュナイダーはドイツ系の名前だ。彼は仕事ができるかも知れないが、自己虫の打算的な報酬を要求する人間だ。弁護士は見方によればタカリの人種?でもそれはアメリカのビジネスの慣習じゃないのかな。

【ハーバーの感想09】  高校生役のスカーレット・ヨハンソンが又若い。 1949 年だからまだサバービア時代じゃないかもしれないが、アメリカン・サバービアそのもののような今どきの女の子。ちょっと『 アメリカン・ビューティー (1999) AMERICAN BEAUTY 』に通じるところがある。弁護士の父を持つ豊かなお嬢さんは、表面はおとなしく振舞いながら、とっても大胆な事をやってのける。

【ハーバーの感想10】  映画『 バーバー 』は極めてヨーロッパ的な映画と言えなくはない。フランス映画、アール・エ・エッセだ。この映画はわたし的には結構イケテル映画だ。

【ハーバーの感想11】  最後に、弁護士リーデンシュナイダーの弁護人の最終論告及び最終弁論から・・・
 陪審員とサンタローザの皆さん、検事は実に忌むべき男の素顔を皆さんに語りました。エドがいかに孤独であったか、巧妙な犯罪計画を練れるような男ではない、事件の裏に頭のいい真犯人がいる。モダンアートのように複雑な犯罪だ。この男をよく見なさい。彼が犯罪者に見えますか?どう見ても床屋です。ただの床屋だ。とても人殺しをする顔じゃない。蝿も殺せぬ男。彼の罪は世間からはみ出たこと。ドライ・クリーニングは考えても殺人など!彼が理髪師として直面した悩みは現代人の悩みです。彼を有罪にすることは自分たちの首を絞めること。事実でなく真実の意味を見よ。事実は無意味なのだ。
 
 “What kind of man are you? お前は一体どんな人間だ?”

以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず12361文字/文責:幸田幸

参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集
       http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
■映画『 バーバー (2001) THE MAN WHO WASN'T THERE 』の更新記録
2005/03/22新規: ファイル作成
2005/03/23更新: ◆テキスト追記
2005/09/10更新: ◆テキスト追記
2007/02/05更新: ◆データ追加
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幸田 幸
coda_sati@hotmail.com
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